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【ファンタジー】ドラゴンズリング7【TRPG】

0001ティターニア@時空の狭間 ◆KxUvKv40Yc
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2018/07/24(火) 23:52:17.15ID:dYeYUj8t
――それは、やがて伝説となる物語。
「エーテリア」と呼ばれるこの異世界では、古来より魔の力が見出され、人と人ならざる者達が、その覇権をかけて終わらない争いを繰り広げていた。
中央大陸に最大版図を誇るのは、強大な軍事力と最新鋭の技術力を持ったヴィルトリア帝国。
西方大陸とその周辺諸島を領土とし、亜人種も含めた、多様な人々が住まうハイランド連邦共和国。
そして未開の暗黒大陸には、魔族が統治するダーマ魔法王国も君臨し、中央への侵攻を目論んで、虎視眈々とその勢力を拡大し続けている。
大国同士の力は拮抗し、数百年にも及ぶ戦乱の時代は未だ終わる気配を見せなかったが、そんな膠着状態を揺るがす重大な事件が発生する。
それは、神話上で語り継がれていた「古竜(エンシェントドラゴン)」の復活であった。
弱き者たちは目覚めた古竜の襲撃に怯え、また強欲な者たちは、その力を我が物にしようと目論み、世界は再び大きく動き始める。
竜が齎すのは破滅か、救済か――或いは変革≠ゥ。
この物語の結末は、まだ誰にも分かりはしない。

ジャンル:ファンタジー冒険もの
コンセプト:西洋風ファンタジー世界を舞台にした冒険物語
期間(目安):特になし
GM:なし(NPCは基本的に全員で共有とする。必要に応じて専用NPCの作成も可)
決定リール・変換受け:あり
○日ルール:一週間
版権・越境:なし
敵役参加:あり
名無し参加:あり(雑魚敵操作等)
規制時の連絡所:ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/3274/1334145425/l50
まとめwiki:ttps://www65.atwiki.jp/dragonsring/pages/1.html
       
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(単章のみなどの短期参加も可能)

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過去スレ
【TRPG】ドラゴンズリング -第一章-
ttp://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1468391011/l50

【ファンタジー】ドラゴンズリング2【TRPG】
ttp://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1483282651/l50

【ファンタジー】ドラゴンズリングV【TRPG】
ttp://mao.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1487868998/l50

【ファンタジー】ドラゴンズリング4【TRPG】
ttps://mao.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1501508333/l50

【ファンタジー】ドラゴンズリング5【TRPG】
ttps://mao.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1516638784/l50

【ファンタジー】ドラゴンズリング6【TRPG】
ttps://mao.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1525867121/l50
0056スレイブ ◆T/kjamzSgE
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2018/09/24(月) 15:22:30.69ID:A8wLSQQH
『個体番号11496の活動停止を確認。防疫の為自己消化体液による構成体の消却を実施します』

『現住生物による攻撃行動を検知。大型の刃物を所持。緊急対応プロトコル:ベータを展開します』

建築物の中から現れたゴブリンもどきの一体が、こちらへ向けて長銃のようなものを構える。
その引き金が引き絞られる前に、スレイブも腰から銃を抜き放って射撃した。
ザイドリッツから預けられた長銃をシャルムに改修してもらった、ソードオフライフルだ。

風魔法によって加速した鉛玉は銃手のゴブリンもどきの胴に風穴を開けて、やはり死骸はすぐに崩壊した。
取り落とされた長銃が地面に落下すると同時に暴発する。
大気を劈く雷鳴じみた音と共に、紫電を帯びた光条が空を駆け上っていった。
数秒のち、空を覆っていた雲が大きく抉れ、吹き散るのが見えた。

『電磁弾体加速装置の暴発により高度5600mの大気層に軽度の損傷。補修完了まで5秒――コンプリート』

「馬鹿な……天上の雲を穿っただと……?あんな小さな長銃に、それほどの威力が!」

>『再構築の妨害行為を確認。迎撃用ドローンを展開』

スレイブの驚愕をよそに、拡声魔法を通したような越えが響き渡る。
白磁の建物が左右に開き、中から無数のゴーレムが地響きを立てながら這い出てきた。
帝国のものでも、ハイランドのものでもない。どの国家の機影にも該当しないゴーレムだ。

>「ジャン、ティターニア。一旦どけ。前を吹き飛ばす」

行く手をゴーレムに阻まれ立ち往生した一行に、アルバートの援護が飛ぶ。
魔剣の炎がゴーレムを呑み尽くし、焦げ付いた道が拓けた。

>「……ありがとうございます!急ぎましょう!
 アレの言っていた事が全て真実なら、思っていたより時間は残っていないかもしれません!」

「72分……と言っていたな。世界の命運を分けるには、随分と中途半端な時間だ!」

驚愕することばかりで皮肉にも切れがない。
とまれかくまれ、アルバートの稼いだ時間を使って、指環の勇者一行は活火山の火口を目指す。

「クソ、方向感覚がまるで利かないな……俺たちは今山道をちゃんと登れているのか?」

白磁の建築物は進むごとに密度を増し、視界を著しく狭めていく。
真っ白な林を最早掻き分けんばかりに進んでいくと、やがて視界が拓けた。
0057スレイブ ◆T/kjamzSgE
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2018/09/24(月) 15:22:56.14ID:A8wLSQQH
「これは……街、なのか……?」

眼の前に広がる光景は、おそらく定義の上では『都市』と呼ばれるものなのだろう。
しかし、スレイブの知るダーマの王都やシェバト、帝都とはまるで異なる様相を呈していた。

足元の真っ黒な石畳は、石の一つ一つが非常に細かく、平坦で僅かに柔軟性がある。
見上げれば首が痛くなるほどに高くそびえ立つ尖塔は、何故か外壁が全て透明な硝子製だ。
広々とした往来の端には、色とりどりの金属と硝子で構成され、車輪の4つ付いた荷車のようなものが置かれている。
見たことのない言語で書かれた看板と思しき板は、きらびやかに輝く燭灯で覆われていた。

舗装路があり、建物が密集しているという都市の条件を満たしてはいるが、到底スレイブには理解ができない。
既存の知識と眼の前の光景があまりにもかけ離れていて、脳が認識を拒否していた。

『居住区画αに現住生物の侵入を確認。排除プロセスを実行します。
 該当区域の構成員は40秒以内にポーターを起動し、区域から退去して下さい。
 これは管理当局による指示です。従わない場合に発生した損害については、免責事項に含まれます』

そのとき、頭上から鳴り響く声と共に、大気を叩く羽ばたきの音がした。
鳥や飛竜の羽ばたきにしてはあまりにも高速で連続した羽音の主は、林立した尖塔の影から姿を現す。
鮫に似たずんぐりとした胴体。その側面に翼はなく、代わりに上部で何かが高速で回転している。
おそらく風車の原理を逆に利用して、羽根を回転させることで風を生み出し、その風で巨体を宙に浮かせているのだ。

「飛竜……?」

『区画αにて現住生物を発見。無人戦闘ヘリによる迎撃を開始します』

飛竜もどきの"頭部"と思わしき部分から、束ねた筒のようなものがせり出てきた。
軍人としての直感がスレイブに防御を選択させる。

『機載ガトリング砲、斉射』

風魔法による障壁を展開したと同時、飛竜もどきが"ブレス"を吐き出した。
無数の鉛礫。一発一発なら風竜の障壁を貫けるものではないが、その数が余りにも多かった。
1秒に20発を数えるペースで撃ち出される鉛の弾丸に、多重展開した障壁が一枚また一枚と割られていく。

「馬鹿な……この物量は……!」

指環の無尽蔵とも言える魔力を全て障壁に回しているにも関わらず、スレイブは押し込まれつつあった。
斉射開始から10秒経過してなお、飛竜もどきのブレスに衰える気配はない。
0060創る名無しに見る名無し
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2018/09/25(火) 21:28:30.30ID:59l5nkgr
ドラリン終わったのかな?
0061創る名無しに見る名無し
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2018/09/26(水) 16:47:59.29ID:pEBkjQh6
◆ロールプレイング・ノベル入門【1】◆
https://mao.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1537503921/

【VRP=バーチャル・ロールプレイング】
コテハンで架空のバーチャル・キャラクターを作って、ロールプレイをする遊びです。
応用すればTRPGや、個人あるいは共同での小説執筆のようなことも可能です。
スレッドを都市や建物に見立てて、大規模RPGのような事も出来るかもしれません。
まだ未完成ですが、みんなでその遊び方やシステムを完成して行きましょう。

【RPN=ロールプレイング・ノベル】
RPNとはVRPを基礎とし多人数で小説創作のようなことを行う遊びと演習を兼ねた究極のメソッドです。
0062ジャン ◆9FLiL83HWU
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2018/09/27(木) 19:40:16.96ID:m/s9ql3v
カバンコウは以前ジャンが訪れたときとは違ってすっかり様変わりしており、簡易的な要塞となっていた。
異形化した魔物たちの死体や残骸が街の入り口近くに転がり、連合軍や帝国軍の兵士たちが
交代で周囲の見張りをくまなく続けていた。

そして一行はオディウム活火山へと向かうために、連合軍に突破口をこじ開けてもらうことになった。
おそらく最後の武器の手入れと薬の補充を終え、ジャンはオディウム活火山を見上げる。

「……前に見たときは、あんな気味の悪いもんじゃなかったな」

暗雲に包まれ、隙間から雪が降ったかのように真っ白に染められたその山は、
まるで何かの祭壇のようだ。変異した魔物や動物も全てあそこを中心に発生しているという偵察隊の情報から、
ほぼ間違いなく、虚無の竜が本体と融合する時間稼ぎに環境を変化させているのだろう。

一時期とはいえ共に戦った仲間の大槌と、守るべき者のために戦った戦士の槍。
そして再戦を誓った黒鳥騎士の短剣をそれぞれの鞘に収納し、新調した鋼の胸当てと脛当てを身に着ける。
凪いだ海のように蒼く輝く指環をひとしきり布で磨いて付け直せば、準備は整った。
そして一行は連合軍がこじ開けた突破口を進むべく、オディウム活火山への道を歩き始める。

>「なんだこれは……何が起こっている?」

>「これは……一体……」

岩と砂、わずかの草木が生える山肌が突如として白一色に塗りつぶされる。
そこにあるのは塵一つない舗装された道と、継ぎ目がまったく分からない数々の建造物。
さらにその奇妙な街を闊歩する、生物というより人形と呼んだ方が正しい生き物たち。

>「ようこそ、ニモニックの世界へ。ここは只今、再構築の最中です。
 この先への進入はシステムが完全にリブートされるまでお待ち下さい」

その一体がこちらに近づき、笑顔のような表情を浮かべてこちらへと話しかけてくる。
言語こそジャンも話せる共通語だが、どこか発音が奇妙だ。まるで台本をそのまま読み上げているような、感情の籠らない声。
シャルムが魔導拳銃を突きつけて事情を問い質せば、返ってきた答えはまったく訳の分からないものだった。
ジャンにはそれが理解できず、だが徐々にこちらを取り囲むように現れる生き物に微妙な違和感を感じていた。

>「何だ……?何を言っている?」

「こいつらヒト……なのか?なんだか集まってきてるけどよ、正直不気味だぜ」

背中の鞘からミスリルハンマーをいつでも取り出せるよう柄に手を添えて、辺りを警戒する。
周囲の音をよく聞いてみれば、普通の街のような賑わいや生活音といったものが一切しないのだ。
虚無の竜は何を考えてこんなものを作り上げたのか、ティターニアに聞いてみるかとジャンが口を開いた瞬間だ。

>「……ご、ごめんなさい!余計な事をしました!」

「こんな不気味な街に長居するこたあねえ!とっとと進むぞ!」

こちらに近づいてきた生物の頭をシャルムが撃ち抜き、それと同時に一斉に周りの生物が飛び掛かってくる。
その内の一体がジャンの振り下ろしたミスリルハンマーに黒光りする刃物をぶつけ、そのまま押し潰された。
力はジャンよりはるかに劣るが、使っている武器は異常なほど切れ味がいい。

ぶつけられた部分に欠けが生じていることに気づいたとき、ジャンはそのことに気づいて鳥肌が立った。
生物を殺すための、純粋な威力を徹底して追及した武器なのだ。ドワーフが鍛えたミスリルハンマーのように、
技術や武勇を誇る目的があるものではなく、ただ効率的に殺すことだけを追求した、凄まじい切れ味の短剣。
0063ジャン ◆9FLiL83HWU
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2018/09/27(木) 19:41:00.98ID:m/s9ql3v
>「馬鹿な……天上の雲を穿っただと……?あんな小さな長銃に、それほどの威力が!」

「こりゃまともに相手できねえぞ!胸当てや鎧なんて意味がねえ!」

どこかの路地や建物に潜り込み、いったんやり過ごさなければそこら中から撃ち抜かれるか、切り裂かれるか。
飛び掛かってきた生物の死体が握っていた刃物をとりあえず一本拝借し、ジャンは途方に暮れながらも応戦する。

>「ジャン、ティターニア。一旦どけ。前を吹き飛ばす」

さらには、ジャンがかつて戦ったスチームゴーレムをより洗練されたデザインにしたようなゴーレムまで
無数に現れるが、それらを薙ぎ払うようにアルバートが魔剣の炎を解き放ち、無理矢理道をこじ開ける。
シャルムが解読したことが正しければ、あと1時間と少しでこの世界がこの不気味な世界に塗り替えられてしまう。
一行は時折現れる人形めいた生物たちを排除し、純白の建造物が立ち並ぶ通路を駆け抜けていく。

>『居住区画αに現住生物の侵入を確認。排除プロセスを実行します。
 該当区域の構成員は40秒以内にポーターを起動し、区域から退去して下さい。
 これは管理当局による指示です。従わない場合に発生した損害については、免責事項に含まれます』

そうして白一色から、少しだけ色のついた風景へと周囲が移り変わった直後。
翼のない飛竜のような何かが、轟くような低音を響かせて空中に静止していた。
その何かは無機質な音声と共に鋼鉄の筒を束ねたものを先端から突き出すように展開し、こちらへと向ける。

>『機載ガトリング砲、斉射』

あまりの発射間隔の短さに、一つの音として連なって聞こえるほどの銃声が辺りに響き渡る。
スレイブが指輪の魔力を使って障壁を展開するが、魔力を全く感じさせないにも関わらず凄まじい速度で展開する内から砕かれていく。

>「馬鹿な……この物量は……!」

「こいつは逃げきれねえな、前に出るぜ!」

障壁の裏からジャンは飛び出し、拳を飛竜もどきに向けて振りかぶったかと思うと、
指環から放たれた水流がジャンの構えを真似るように巨大な拳を形作り、ジャンが振り上げた瞬間、
水流の拳が飛竜もどきを下から思い切り突き上げ、その衝撃で一時ではあるが銃声が止み、飛竜もどきは大きく体勢を崩す。
そしてその上部で回転を続けていた何かが周囲の建物にぶつかり、身体を歪ませて高度を下げていき、やがて墜落した。
0064ジャン ◆9FLiL83HWU
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2018/09/27(木) 19:41:28.96ID:m/s9ql3v
「ハッ、時間かけてらんねえんだよ!
 出し惜しみはしねえぞ、とっとと行こうぜ!」

これまでの旅で鍛えた実力を誇るように、ジャンは威勢よく走り出す。
この飛竜もどきは他にもいるのか、遠くから同じような低音が徐々に大きく聞こえて近づいてくるのがはっきりと分かる。
いくら防御が薄いとはいえ、周囲からあれを一斉に撃たれればあっという間にひき肉にされるだろう。

路地から路地へ、開けた場所で戦わないよう気を付けつつ一行は進む。
狭い場所ならばこちらと同程度の大きさの敵しか遭遇せず、それならば恐れることはなかった。

『……みんな、気づいてるかい?
 虚無の竜が僕たちに注意を向けた、ヒリヒリするような圧力を前から感じるよ』

「アクア!そいつは吉報ってもんだ、わざわざこの道が正しいって教えてくれてるんだからな!」

火口だった場所に作り上げられた硝子の塔は、先程よりずいぶんと大きく見える。
上空を飛び回る飛竜もどきはより数を増し、時折遭遇する人型生物も甲冑を纏ったものや大型の武器を持ったものが増えてきた。
先頭を走るジャンはそれに怯むことなく突き進み、アクアの助言にも前向きに返してみせる。
だが、かすかな不安がジャンの頭をよぎる。他の仲間と違ってジャンは指環なしでは魔術を使えず、
現れる敵は指環の加護なしで殴り合えばこちらの身体がもたないほど強力な武器を持つ。

(指環の魔力はすぐに補充できるもんじゃねえ……俺はそれを補えるほど武術を極めたわけじゃねえ。
みんなと違って魔術も使えねえ、なら……)

いざというときには自らが囮となり、他の仲間を先に行かせなければならない。
ジャンは覚悟を決め、より早く突き進み、道を塞ぐもの全てを殴り倒していった。
0065ティターニア ◆KxUvKv40Yc
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2018/09/30(日) 21:55:23.86ID:x/s8XSyA
「何だこれは……」

山道を登っていると突然、見たこともないような街の風景が目の前にひらけた。
もしかしたら、遥か昔に虚無の竜が統べていた、今は滅び去った世界なのだろうか。
二足歩行の奇妙な生物が歩み寄ってくる。

>「ようこそ、ニモニックの世界へ。ここは只今、再構築の最中です。
 この先への進入はシステムが完全にリブートされるまでお待ち下さい」

「にもにっく……?」

>「我々はこの世界の住人です。あなた達がしている事は看過し難い侵略行為です。
 今すぐ中断して下さい。拒むのであれば……」
>「システムのリブートはあと72分で完了します。もう暫くお待ち下さい。
 また、再構築における処理の高速化の為、知的生命体は可能な限り、
 現在の組成に近い存在へと変換されます。ご安心下さい」
>「あなたはシャルル・フォルシアン。そちらの方はファン・ジェンナー。
 あなたはタイターン・グッドフェロウ。あなたはアレックス・トーレティアとして。
 ご安心下さい。あなた達は既に新世界での席を獲得しています」
>「いずれも存在構築律の一致度は70%を超えています。再構築の前後において、あなた達はほぼ同一人物のままです」

「いやいやいや、何一つご安心できないぞ! そもそも名前からして全然違うやん! ってか誰が誰だ!」

シャルムが思わず一体のアンノウンを撃ち抜くと、明確に敵と認識されたらしく
全てのアンノウン達が一斉に襲い掛かってきた。

>『再構築の妨害行為を確認。迎撃用ドローンを展開』

「今度は何だ!?」

奇妙な街のあちこちから、魔力が一切感じられないゴーレムのようなものが出現。
これはこの世界とは全く別の力によって発展し、そしてその力によって滅び去った世界なのだろうか。

>「ジャン、ティターニア。一旦どけ。前を吹き飛ばす」
>「悪いが、援護はこれまでだ。この連中に山を下らせる訳にもいかないだろう?」
>「……ありがとうございます!急ぎましょう!
 アレの言っていた事が全て真実なら、思っていたより時間は残っていないかもしれません!」

アルバートをはじめとする援軍たちはここに留まり、奇妙な生物達の侵攻を食い止めることになった。
0066ティターニア ◆KxUvKv40Yc
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2018/09/30(日) 21:56:33.71ID:x/s8XSyA
>「72分……と言っていたな。世界の命運を分けるには、随分と中途半端な時間だ!」

「再構築とは一体……。虚無の竜とは全てを虚無に帰す存在ではないのか……?」

虚無の竜とは本当は、滅び去った自らの世界を再現しようとする存在なのかもしれない。
尤も、滅びるべくして滅んだ世界をそのまま再現したところでそれも遠からず滅びるのだから、結果は一緒だが。
訳が分からないながらもとにかく前身していくと、都市のような場所に出た。

>「これは……街、なのか……?」

>『居住区画αに現住生物の侵入を確認。排除プロセスを実行します。
 該当区域の構成員は40秒以内にポーターを起動し、区域から退去して下さい。
 これは管理当局による指示です。従わない場合に発生した損害については、免責事項に含まれます』

頭上から謎の声が鳴り響くとともに、巨大な飛行物体が出現。

>「飛竜……?」
>『区画αにて現住生物を発見。無人戦闘ヘリによる迎撃を開始します』

「いや、生物ではなさそうだ。どうやら”無人戦闘ヘリ”というものらしいな!」

>『機載ガトリング砲、斉射』

打ち出されたブレスのようなものの正体は無数の鉛礫だった。
スレイブが魔法障壁で防ぐも、その連射速度は常軌を逸しており、見る見るうちに削られていく。

>「ハッ、時間かけてらんねえんだよ!
 出し惜しみはしねえぞ、とっとと行こうぜ!」

指輪の力を使ったジャンが”無人戦闘ヘリ”を撃墜。

「囲まれたらひとたまりもないな。あれが狙ってこられないような狭い道を進もう」

上空からの攻撃を避けるように、路地から路地へと進む。

>『……みんな、気づいてるかい?
 虚無の竜が僕たちに注意を向けた、ヒリヒリするような圧力を前から感じるよ』
>「アクア!そいつは吉報ってもんだ、わざわざこの道が正しいって教えてくれてるんだからな!」
0067ティターニア ◆KxUvKv40Yc
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2018/09/30(日) 21:58:27.08ID:x/s8XSyA
前を見据えると、一際大きな硝子の塔が見える。

「……あれか?」

『ええ、どうやら火口があった場所に建っているようです。
あの塔こそが虚無の竜の肉体の元へ――世界の中心へ至る道かもしれない』

やがて一行は硝子の塔へたどり着いた。
透明な横開きの扉の前に立つと、どういった原理なのか、一行を歓迎するかのように自動的に扉が開く。

「入れ、ということか……」

入ってみると、空間の中心に円形の小部屋のようなものがあり、扉の横にこのような形のボタンが付いている。



「上に行くか下に行くかということか? シェバトにあった昇降機のようなものなのかもしれないな」
0068 ◆fc44hyd5ZI
垢版 |
2018/10/04(木) 21:05:02.40ID:KetR5zrt
異様な様相の街並み。
飛行能力を持つ、巨大な……鯰のような、飛竜のような、何か。
魔力を伴わず、しかし風竜の防壁すら削り取るブレスの雨。

……ブレスの轟音に紛れて響く金属音。周囲に散らばる小さな金属の礫。
似ている。私の『竜の天眼』に。
先ほどの長銃と言い、この異界の技術は……。
いえ、やめておきましょう。それは今考えるべき事ではありません。

私達は火口を目指して更に前へと進みました。
シノノメさんの闇の指環を用いて路地に身を隠し、
ラテさんの光の指環によって作り出された彷徨う幻影の中を紛れるように。

>『……みんな、気づいてるかい?
 虚無の竜が僕たちに注意を向けた、ヒリヒリするような圧力を前から感じるよ』
>「アクア!そいつは吉報ってもんだ、わざわざこの道が正しいって教えてくれてるんだからな!」

私達の進む先に見えるのは……巨大な硝子の塔。
なおも身を隠しながら前進し、その目の前にまで辿り着くと……
何の前触れもなく、扉が左右に滑り、開きました。

>「入れ、ということか……」

「怪物がただ、獲物を前に口を開いただけ、とも受け取れますよ」

結界魔法を何重にも重ねがけして、私達は塔内へと踏み込む。
この異界における特異的な技術。
それらは私の目には、まだ、現実離れした現象の羅列にしか見えません。
ですが……それらは全て魔力を伴わずに発生する。
もしも罠があれば、それは恐らく私やティターニアでは探知出来ない。

幸いにも私達が塔に侵入し一歩二歩と進んでも、何か異変が起こる事はありませんでした。
塔の広間には、ただその中心に小さな硝子張りの、扉のない円形の小部屋があるだけ。

>「上に行くか下に行くかということか? シェバトにあった昇降機のようなものなのかもしれないな」

「昇降機?これがですか?」

昇降機と言ったら……城壁の上に素早く登る為に用いられる設備の事ですよね?
転移魔法よりもローコストで、大抵は滑車と縄と重りを利用して作られるような……。
……いえ、やめましょう。
今は私の知らない技術体系について考察するべき時間ではありません。

「虚無の竜の魂は、火口から肉体に戻ろうとしている。
 であれば……下に向かうべき、ですよね」

……とは言ったものの。

「……火口に潜っていくんですよね?こんな硝子張りの部屋で?
 不可能ですよ。こんなの、罠に決まっています」

「でも……虚無の竜は確かにこの真下にいるみたいだよ?
 ここに来てからメアリさんの予知も殆ど利かなくなってるけど……それは、間違いないよ」

「……か、仮にそうだとしても、火口ですよ?火口。
 適切な準備なしに潜ろうものなら、虚無の竜に辿り着く前に焼け死んで……」

「指環の勇者が七人揃ってる。準備は万端、でしょ?
 急がないと。あと一時間とちょっとで、再構築?が終わっちゃうんでしょ。
 私にはよく分からなかったけど……それが良くない事だって事くらいは、分かるよ」
0069 ◆fc44hyd5ZI
垢版 |
2018/10/04(木) 21:05:20.80ID:KetR5zrt
……確かに、ラテさんの言う通りです。
それでも……火口、溶岩……大地の、この星の力そのもの。
いくら指環の力があるとは言え……そう簡単に不安を拭い去る事は出来ません。

「……いざとなったら、頼みますからね」

私は両手の指に光る指環を見下ろして、思わずそう呟きました。
バフナグリーさんに託された、全の指環。
その輝きが、ほんの刹那の事でしたが、一際強く瞬きました。

全竜のくれた指環は……何の反応も示しません。
……本当に、頼みますよ。
あなたの戯れの後始末をしているようなものなんですからね。
0070 ◆fc44hyd5ZI
垢版 |
2018/10/04(木) 21:06:18.65ID:KetR5zrt
「では……」

一度大きく深呼吸をしてから、私は昇降機の側面にあった三角形の模様に触れる。
場違いに明るい、鉄琴を叩くような音が響きました。
と同時、硝子張りの部屋が床に沈んでいく。

……言え、違います。
沈んでいるのは部屋ではなくその外壁だけ。
扉がどこにもないと思ったら、こんな形で開閉を……。
こんな状況でなければ非常に興味深い建築様式だったのですが。

ともあれ私達は、昇降機の床に足を踏み入れます。
……一度沈んだ外壁が、再び競り上がってくる。
そして完全に密閉されました。
まるで昆虫標本の気分……とは、口に出さないでおきましょう。

そして……硝子張りの部屋が、僅かに揺れました。
それから訪れる僅かな浮遊感……下降によって発生する慣性。
……確かに、この部屋は昇降機だったみたいです。

という事は……。

不意に、硝子の壁の外が眩く光りました。
目が眩むような、強烈な赤い輝き……本当に、私達は今、溶岩の中を通過している……。

「ひ、ひえぇ……み、皆さん。防御魔法の備えだけは抜かりのないように……!」
0071 ◆fc44hyd5ZI
垢版 |
2018/10/04(木) 21:06:58.25ID:KetR5zrt
そう呼びかける私の声は……ひどく上ずっていました。
思わずディクショナルさんの左腕を掴んで、身を縮こめてしまいます。
ですが……私の不安とは裏腹に、昇降機は何事もなく溶岩の中を下へ、更に下へと潜っていきました。

それから数十秒が経過して……不意に部屋の外が暗くなりました。
溶岩の海を抜け……どこか、薄暗い空間へ。
……また、ぽーん、と気の抜けるような明るい音が響きました。

昇降機が停止して、硝子の壁が床に沈んでいく。
ここは……一体……?

……白く艷やかな床、壁、天井。
部屋の壁際には……金属と硝子で造られた、何かの装置めいた物があります。
錬金術に用いられる、培養器のようにも見えますが……。
駄目ですね……薄暗くて、よく分かりません。
照明は……機能していないのでしょうか。
0072 ◆fc44hyd5ZI
垢版 |
2018/10/04(木) 21:07:13.16ID:KetR5zrt
『再構築エラー、デバイスが正しくセットされていません。
 ユリウス・クラウレイを再構築出来ません。
 デバイスを正しくセットしてから再試行して下さい』  

『再構築エラー、デバイスが正しくセットされていません。 
 ユリウス・クラウレイを再構築出来ません。
 デバイスを正しくセットしてから再試行して下さい』

『再構築エラー、デバイスが正しくセットされていません。
 ユリウス・クラウレイを再構築出来ません。 
 デバイスを正しくセットしてから再試行して下さい』

この、どこからともなく聞こえてくる声も……一体、何を言っているのか……。 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:1341adc37120578f18dba9451e6c8c3b)
0073 ◆fc44hyd5ZI
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2018/10/04(木) 21:07:47.13ID:KetR5zrt
ラテさんが指環に光を灯して、室内を照らします。
部屋の奥には……扉がありました。
あの装置がなんなのかは気になりますが、今は……

「……先に進みましょう」

私達が近づくと扉は塔の入り口の時同様、独りでに開きました。
瞬間、隣の部屋から流れ込む生暖かい空気。それに異臭。
この臭いは……知っている。
一度嗅いだら、二度と忘れられない……死臭です。

ラテさんが隣の部屋を指環をかざす。
照らし出されたのは……床に転がる、大量の……死体。
白衣を身に纏った、金髪の、背の低い……女性の死体。

服装も、背格好も、髪の色も……私にそっくり。
ですが……そんな事よりも、もっと恐ろしいのは……
この死体の山は、一つとしてまともな形状をしていないという事。
力加減を誤った粘土細工のように手足や頭がなかったり……捻れていたり。
逆にそれらが一つ二つ、余計に生えていたり……。

「うっ……」

思わず左手で口元を抑える。
……吐きそうです。気持ち悪い……。

『再構築エラー、存在構築律を正しく読み込む事が出来ません。  
 シャルル・フォルシアンを再構築出来ません。
 記憶媒体の状態を確認してから再試行して下さい』
『再構築エラー、存在構築律を正しく読み込む事が出来ません。
 シャルル・フォルシアンを再構築出来ません。  
 記憶媒体の状態を確認してから再試行して下さい』
『再構築エラー、存在構築律を正しく読み込む事が出来ません。
 シャルル・フォルシアンを再構築出来ません。
 記憶媒体の状態を確認してから再試行して下さい』   

……この声が何を言っているのか。
少しずつ分かってきてしまった気がします。
だけど……それをわざわざ、口にしたいとは、思えません……。

「……行きましょう」

部屋の奥には、更に扉が一枚あります。
その先に何が待ち受けているとしても……この光景よりは、マシなはずです。

扉を潜ると……その先に待っていたのは、明るい照明の光。
それに……またも散らばる、大量の死体。

ただ一つだけ、さっきの部屋と違うのは……
その大量の死体の中心に、一人、五体満足な状態の男が座っているという事です。
長身痩躯、長い金髪に、宝石のように鮮やかな緑の瞳。
……ティターニアさんに少し似ているようにも思えます。
0074 ◆fc44hyd5ZI
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2018/10/04(木) 21:08:15.07ID:KetR5zrt
「諸君らは……これが二回目か?それとも、まだ一回目か?」

男は私達を見上げると、そう尋ねました。

「……何を言っているのか、理解出来ませんが……理解するつもりもありません」

……私は、彼に魔導拳銃を突きつけました。
ティターニアさんに銃口を向けているようで、あまり気分はよくありませんが。

「ここがどこで、どうすれば虚無の竜を止められるか。今すぐ答えて下さい」

「なるほど、まだ一回目か。であれば……嫌だね」

男は不敵な笑みを浮かべて、そう言いました。
……魔導拳銃に魔力を流す。
発射された弾丸は男の耳を掠め、痛みを与える……はずでした。
ですがそうはならなかった。
弾丸は耳をすり抜け……男の姿が一瞬、陽炎のように揺れました。
0075 ◆fc44hyd5ZI
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2018/10/04(木) 21:08:57.67ID:KetR5zrt
「幻影魔法……」

「惜しいな。魔法ではない。これはホログラムというものだ。
 ……そう怖い顔をするな。案ずる事はない。
 諸君らが虚無の竜を止めてくれると言うのなら、私がそれを阻む理由はない」

……だったら何故、さっきは嫌だなどと。

「だが……少しばかり、我らに弁明の時間を与えて欲しい」

「……弁明?」

「ああ……異世界への侵略など、我らの望む所ではなかった。
 どうせ滅ぶのなら、悪逆非道の侵略者ではなく……
 せめてただの愚かな道化として消えてゆきたい」

……これがただの時間稼ぎである可能性は、否定出来ない。
全の竜やあのアンノウン共の言動から推察するに、虚無の竜の機能とは
世界から別世界へと飛び渡り、そしてそこを彼らにとっての元の世界へと変化させる事。
しかしその工程は、まだあと一時間近くかかるはず。
彼もそれを知っていて、少しでも時間を稼ごうとしているのかもしれない。

……ですが。

「手短に。そして私達にとって有益に。それを忘れないように」

私は、再び男に魔導拳銃を突きつけます。
……可能性の話をするなら、虚無の竜に対抗する有益な情報が得られる可能性だってある。
賭けになりますが……そう望みは薄くない、はずです。
この男が容姿と語り口だけではなく、気質もティターニアさんに似ているといいんですが。

「……ありがとう。では……まずは何から話そうか。
 そうだな……我らの世界が、異世界からの侵略を受けた時の事からにしよう」

「異世界への侵略……?全の竜はそんな事にまで手を出して……?」

「いや。あれが君達の世界によるものかは分からない。
 それに、我らは復讐者でもない。異世界による侵略は成功しなかったからだ。
 八人の仲間達と共に、科学の力と勇気をもって敵を撃退した。あの頃は楽しかったなぁ」

「……あまり長くなるようなら、あなたを無視して先に進みますよ」

「つれないな。まぁ、我らは侵略者共を追い返した訳だが……しかし考えてしまったのだ。
 確かに一度は撃退した。だが奴らがいつ、また我らの世界を攻めてくるか分からないと。
 明日や明後日ならいい。だが十年後は?百年後、我らが死んだ後に再び奴らが攻めてきたら?」

男は私達を指差して、双眸を細めました。

「どうだ?これは諸君らもそろそろ直面する問題ではないか?」

「ふん、そんな事。この戦いが終わったらゆっくりと魔法の研究をさせてもらいますよ。
 百年後に再び虚無の竜が蘇っても、問題ないようにね」

「そう。いつ訪れるか分からない次に備える……我らも同じ事を考えた。
 異世界から持ち込まれ、接収した魔法技術。
 その中には、物事が本来持つ性質を奪い去る力と、その制御法もあった」
0076 ◆fc44hyd5ZI
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2018/10/04(木) 21:09:15.38ID:KetR5zrt
「……虚無」

「ああ、奴らもその力を、そう呼んでいたな。ともあれ……我らはこう考えたのだ。
 それら魔法の力を上手く使えば、世界が再び危機に陥った時……
 我らもまた再び蘇り、世界を護る事が出来るのではないかと」

……女王パンドラは、星都でかつて命を落とした英雄達を蘇らせていた。
理屈の上では……確かに不可能ではないのでしょう。
彼らは、それを実現させた……?いえ、それどころか……
0077 ◆fc44hyd5ZI
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2018/10/04(木) 21:10:18.77ID:KetR5zrt
「更には、我らがもしも世界を護り損ねても、世界そのものをそうなる前に戻す事すら出来るはずだと。
 我らはその仕組みを、最も手強かった敵の名を借りて、虚無の竜と名付けた」

「……それがどうして、こんな事に?」

男は私の問いを受けると少し俯き、目を閉じ、苦い表情を浮かべる。
ですがそれはほんの数秒の事……彼はすぐに再び目を開き、私達を見上げました。

「……虚無の竜は、機械だ。絡繰り人形、ゴーレム、ロボット……その手の類だ。
 手入れをしなければ壊れてしまう。
 だが、世界を護る為の最終兵器の存在を誰かに知らせておく訳にもいかない」

……それは、そうでしょうね。
侵略者にその存在が知られてしまえば、虚無の竜はその使命を果たし得ない。

「故に虚無の竜には、自己再生機能を与えた。
 自分自身を虚無の力によって定期的に、あるいは損傷を受けた際に再構築するように。
 ……それが失敗だった」」

男の顔に再び、苦々しい……後悔の表情が浮かぶ。

「自己再生するという事は、コピーエラーが起こり得るという事だ。
 ある時、我らの世界で戦争が起きた。地殻の奥底に隠した虚無の竜にさえ被害が及ぶほどの戦争だった。
 虚無の竜は自分を再構築した。しかしそれは不完全だった」

……自己の複製の失敗。それ自体は別に、珍しい事ではありません。
自然界においても、頻繁にとは言えませんが、発生している事です。
新種や亜種の魔物が発見されるのは、大抵それが原因です。
……つまり、虚無の竜にもまた……彼ら達にとっても予想外の進化が起きた」

「そうだ。機体の半分以上が損壊した虚無の竜は、自己複製の為に新たな機能を自ら構築した。
 再構築の為のエネルギーを、周囲の環境から回収する機能を。
 だがそんな事を何度も繰り返していれば……どうなるかは分かるだろう?」

……聞かれるまでもありません。
彼らの世界がどうなったのか、私達はもう知っているのですから。
進化した虚無の竜は世界を消費する事で、世界の再生を繰り返した。
そして彼らの世界を完全に消費してしまった後は……更なる進化を遂げ、恐ろしい侵略者へと変貌した。
……といったところでしょうか。

「……なぁ、教えてくれないか。我らはどうするべきだったのだ?
 虚無の竜は記録上、少なくとも三度は、崩壊した世界を再生させていた。
 だが……最後にはこんな事になってしまった。我らはどうすればよかったのだ」

……その問いに、私は答える事が出来ませんでした。
彼らは世界を救い、自分達が死んだ後の備えさえも整えた。
それ以上何をするべきだったのか……。
ジャンソンさんやティターニアさん、ディクショナルさん、バフナグリーさんなら、分かるのでしょうか。

男は一度深く溜息を吐いて項垂れ……それから程なくして、再び顔を上げました。

「……つまらない言い訳に付き合ってくれてありがとう。約束は、守ろう。
 虚無の竜は、今言った通り、外部の環境からエネルギーを回収する。
 だが、それは本来あるべき核融合炉……エネルギー源を失っているからだ」

「……そのエネルギー源そのものの再構築は、されないんですか?」

「ああ。奴にとって核融合炉は、不慮の事故によって一度破壊された機能だからな。
 不確実性の高い機関と認識されているのだろう」
0078 ◆fc44hyd5ZI
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2018/10/04(木) 21:10:54.30ID:KetR5zrt
……なるほど。つまり総合すると、

「虚無の竜はエネルギー効率において万全ではなく、
 また一度破壊された機能を再生すべきか正しい判断が出来ない。
 間違いないですか?」

「……ああ、その通りだ。こう言ってはなんだが……虚無の竜は我らの最高傑作だ。
 ユリウス・クラウレイ、シャルル・フォルシアン。そしてこの我、タイターン・グッドフェロウの。
 まともに戦えば、たった7人で勝てる相手ではない」

「……他に、私達にとって有益な情報は?」

「ああ、もう一つある。さっきも言ったが、虚無の竜は機械だ。
 戦闘行動を開始するまでには一定のプロセスを踏むよう設計してある。
 侵入者に対する警告と、セキュリティクリアランスの確認だ」

「セキュ……なんですって?」

「招かれざる客かどうかを、まずは尋ねるという事だ。
 その間、虚無の竜は臨戦態勢を取るものの、先手を取ってくる事はない。
 いいな。最初の一撃で、可能な限り奴の武装を破壊するのだ」

男はそう言うと……突然、時が止まったかのように静止しました。
0079 ◆fc44hyd5ZI
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2018/10/04(木) 21:11:21.54ID:KetR5zrt
「……どうしたんですか?もしもし?」

私が呼びかけても、目の前に手をかざしても、何の反応も示さない……。
かと思いきや、数秒後、彼は再び私達を見上げます。

「諸君らは……これが二回目か?それとも、まだ一回目か?」

……この発言は。
なるほど……ここにあるのは、まさしくただの残響でしかないんですね。

「……二回目ですよ。聞くべき事はもう聞きました」

「そうか……尻拭いをさせてしまって悪いが、健闘を祈るぞ。
 願わくば、このホログラムが二度と起動されない事もな」

……そうして私達は、先に進みました。
五つの、壊れた培養装置の設置された部屋を通り抜けて。
その先にあった、今までよりも一回り大きな扉の前に立つ。
扉は独りでに開き……その先には、村一つ分ほどの、開けた空間がありました。
そしてその奥に見えるのは……金属の光沢を帯びた、巨大な竜。

「あれが……虚無の竜」

左右の翼には、あの飛竜もどき……無人戦闘ヘリと同様の兵装が見えます。
他にも……恐らくは砲門、銃口と思しき機関が幾つも。
むしろ兵器によって構築されていない部位を探す方が難しい……。
帝都の要塞城に設置された兵器を全て掻き集めても、あれほどの物々しさを発揮出来るかどうか……。

「……あの兵装を全て使用されたらと考えると、背筋が凍りますね。
 最初の一撃で、どれだけ破壊出来るのやら……」

……バフナグリーさんから託されたこの全の指環。
使用するのは、出たとこ勝負になってしまいましたが……仕方がありません。
あなたが信じたバフナグリーさんが、信じてくれた私です。
どうか力を貸して下さいよ、女神様……

『――侵入者を発見。前回の戦闘発生経緯から、事前の警告は無用と判断します。
 全武装を解禁中。セキュリティクリアランスの申告は武装解禁が完了するまでに行って下さい』

「……なんですって?そんな……馬鹿な。話が違う……」

まさか、騙された?……いや、違う。
あの幻影は、私達との会話の内容を覚えていなかった。
ただ決められたメッセージを伝える為だけに残された残響。
であれば……私達よりも更に前に、誰かと会話を行っていたとしても、彼はそれを覚えていられない。

虚無の竜がこの世界に来るよりも前。
私達と同じように世界を守ろうとしてここに辿り着いて、
しかしそれを成し遂げられなかった者達がいたとしたら……。

「……これは、不味い!」

『全武装解禁。リビルドデバイスと虚無の竜の接続を解除。
 プロトコル・ホロウの進行を一時停止。戦闘行動を開始します』
0080 ◆fc44hyd5ZI
垢版 |
2018/10/04(木) 21:12:05.53ID:KetR5zrt
「っ、『フォーカス・マイディア』!!そして……全の指環よ!!」

防壁を張ってもジリ貧になる事は既に経験済み……。
ならば私がすべき事は!
 
「投射物を可能な限り迎撃します!なんとか前へ出て下さい!」

そして……虚無の竜の姿が、無数の兵器の発射炎によって覆い隠された。
金属礫、砲弾、閃光、紫電、爆炎……最早判別不能な、殺傷力の嵐が私達へと迫ってくる。

「『竜の天眼(ドラゴンサイト)』……!撃ち落とせ!!」

竜の天眼による砲撃と、天眼本体による斜線妨害。
未だかつてないほどに、私は集中しています。
魔力制御は完璧。全の指環による魔力によって星都の時以上の弾幕も張れている。
しかし……それでも、あまりにも虚無の竜の物量が圧倒的すぎる。防ぎ切れない。
早く、少しでもあの武装を削り取ってくれないと……このまま、薙ぎ払われる可能性すら……



【長々と色々書きましたけど9割趣味なので気にしないで下さい】
0082創る名無しに見る名無し
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2018/10/11(木) 05:31:34.31ID:LCwfTCHQ
ラスボス終わったあとのアルダガ戦は黒騎士オールスター相手にすればいいんじゃないかな?
そうすりゃ消化不良の黒狼も活躍させられるし、裏ボスとして申し分ない迫力になるかと
0083スレイブ ◆T/kjamzSgE
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2018/10/11(木) 22:49:17.72ID:sjrKy4Ep
『機載ガトリング砲』なる名称の"ブレス"は、スレイブの張った障壁を着実に削っていた。
飛び道具に対してことさらに相性の良い風魔法でさえ、威力を完全に逸しきることができない。
指環の力をもってしても障壁の修復に回す魔力の供給が追いつかず、破られるのは時間の問題だった。

(『呑み尽くし』は……駄目だ、魔力が捉えられない……!)

恐るべきことにこの超威力のブレスには魔力の気配が一切感じられなかった。
魔法ではない。性質としては弓や弩に近い、純粋な質量の投射攻撃なのだ。
間断なく着弾する暴威にスレイブが苦痛を覚悟した刹那、ジャンの迎撃準備が完了した。

>「こいつは逃げきれねえな、前に出るぜ!」

地表からかち上がるように隆起した水流の拳が、超質量のアッパーカットを飛竜もどきに叩き込む。
空中で大きく体勢を崩した飛竜もどきは、そのまま側の尖塔に激突し、墜落していった。

>「ハッ、時間かけてらんねえんだよ!出し惜しみはしねえぞ、とっとと行こうぜ!」

「あの"回転する翼"は胴体よりも遥かに脆いようだ!勝ち筋が見えたぞ!」

ジャンが短く挙げた勝鬨にスレイブも応じ、障壁を解いて前に出た。
後詰とでも言うように現れる第二第三の飛竜もどきを、翼を狙って的確に撃墜する。
倒し方が分かったとはいえこのままではキリがない。一行は大通りを避けて都市内を進行した。

アクアの導きに従って進んでいくと、やがて一際大きな硝子の尖塔にたどり着く。
塔の出入り口と思しき硝子製の扉は、一行が前に立つとひとりでに開いた。

>「入れ、ということか……」
>「怪物がただ、獲物を前に口を開いただけ、とも受け取れますよ」

「目につく物を無警戒に口に入れるというなら好都合だ。拾い食いは腹を壊すという教訓を、身体の中から教えてやろう」

尖塔の内部は拓けた空間だった。大理石に似た無機質な床は、不気味なほどに磨き上げられて平坦だ。
そして、空間の中央にはこれも硝子製の小部屋がある。

>「上に行くか下に行くかということか? シェバトにあった昇降機のようなものなのかもしれないな」

「こいつはどうやって使うんだ?俺には分からん。塔に登るのに昇降機など使ったことがないからな」

シェバトの尖塔群には確かに、この手の昇降機が備え付けられている。
ダーマの王都には、どれだけ高い建物にもおおよそ階段や昇降機と呼べるものはない。
魔族のほとんどは自前の翼や転移魔法で外から直接上階へ入れるからだ。
跳躍術式を持つスレイブもまた、上下の行き来に設備を利用する習慣がなかった。
0084スレイブ ◆T/kjamzSgE
垢版 |
2018/10/11(木) 22:49:53.80ID:sjrKy4Ep
>「虚無の竜の魂は、火口から肉体に戻ろうとしている。であれば……下に向かうべき、ですよね」
>「……火口に潜っていくんですよね?こんな硝子張りの部屋で?不可能ですよ。こんなの、罠に決まっています」

「だとすれば、随分と手の込んだ罠だ。それこそ、俺たちがこの塔に入った段階で如何ようにも料理はできる。
 虚無の竜の性格が、エルピスや全竜ほど捻じ曲がっていないことを祈るしかあるまい」

しばらく躊躇していたシャルムだったが、ようやく覚悟を決めたようだ。
彼女が操作盤と思しき三角形の記号に触れると、既存の知識では形容し難い明るい音が響いた。
小部屋の外壁が降りて中に入れるようになり、一行が足を踏み入れると再びせり上がる。

「外壁自体が開閉する仕組みなのか……大型物資を搬入するためなのか?」

スレイブの場違いな考察をよそに、小部屋はやがてゆっくりと下り始めた。
重力に惹かれるように、下降の速度はどんどん上がっていく。
小部屋のすぐ下は筒状の空洞になっているらしく、砲身を駆け抜ける砲弾のように部屋自体を下方向へ滑らせているのだ。
胃袋を掴み上げられるような浮遊感に目眩がした。

>「ひ、ひえぇ……み、皆さん。防御魔法の備えだけは抜かりのないように……!」

しばらくすると、硝子一枚隔てた向こうが赤く染まる。
火口の中身……すなわち熱く溶解した地殻の内部を、昇降機はくぐり抜けている。
シャルムが怯えたように声を挙げ、スレイブの左腕を掴んだ。

「大丈夫だ、地熱はこちらまで届いていない。この硝子は温度を遮る機能を持っているようだ。
 ……それに、いざとなればこの部屋の天井をぶち抜いて、地上まで飛んで戻ればいい。
 指環の力をフルに使えば十分可能だ。俺たちにはそれができる。魔力の供給も十分だ。何も心配はない。」

やけに早口で、自分に言い聞かせるようにスレイブは言った。
カバンコウを出てからこっち、これまでの常識を覆されるような光景に直面してばかりだ。
シャルムの動揺は痛いほど理解できるし、スレイブもまた無意識のうちに彼女に寄り添う。
いつでも抱えて逃げられるように、シャルムの細い肩を浅く抱き寄せた。

時間にすれば1分にも満たない、されど悠久にも思える溶岩遊泳を経て、小部屋の下降が止まった。
外壁が再び降り、身構えたスレイブの警戒とは裏腹に、冷ややかな空気だけが流れ込んでくる。
どうやら昇降機は、目的の階層に到達したようだった。
辿り着いた空間は、多少の光源はあるものの、細部まで光が届いておらず、薄暗い。

「この明かりは……溶岩や燭灯とは違う。稲光を弱く、安定させたような……不思議な光だ」

白と緑の弱々しい光を放つ板。
どうやら緑の下地に白抜きで文様を描いてあるらしく、しかし意味は判然としない。
なんとなく、『出口へ向けて走っている人間』を想起させるような構図だ。
0085スレイブ ◆T/kjamzSgE
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2018/10/11(木) 22:50:24.77ID:sjrKy4Ep
シャルムは光源よりも部屋の中の設備に興味を惹かれたらしく、しきりにあたりを見回している。
やがてラテが光の指環で明かりを灯すと、部屋の奥に扉があるのが見てとれた。

>「……先に進みましょう」

扉の前に立つと、尖塔の入り口と同じように、ひとりでに戸板が開いた。
向こう側の空気とこちらの空気が混ざり合い、匂いが鼻孔に漂ってくる。
スレイブは一度鼻を鳴らすと、弾かれたように剣を抜いて構えた。

「……死臭!」

腐敗した肉と空気に触れた血液が放つ、『死』の臭い。
戦場で幾度となく嗅ぎ慣れたその臭気が、スレイブに戦闘者としての感覚を取り戻した。
だが、想定される危機は一向に襲ってこない。
警戒しながら先へ進むと、信じがたい光景が目に飛び込んできた。

「馬鹿な……これは……シアンス……?」

部屋の中央に山のごとくうず高く積まれた、無数の死体。
その全てが、ことごとく、同じ人間の顔をもっていた。
――スレイブの側で驚愕に震える、シャルム・シアンスに、瓜二つだ。
そして、死体たちには顔の他に共通する点がある。捏ね潰された粘土細工のように、奇形だ。
損壊した死体、ではない。死体に外傷はなく、異質な形状をもって生まれた"何か"が、生まれ落ちた瞬間に死んだかのよう。

「なんだこれは……なんなんだ!!」

スレイブはたまらず叫び声を挙げた。
本当に叫び出したいのは、自分と同じ顔の、それも奇形の死体を目にしたシャルムだろう。
しかし、スレイブもまた、視界を埋め尽くすシャルムの死に顔に耐えられなかった。

>『再構築エラー、存在構築律を正しく読み込む事が出来ません。  
 シャルル・フォルシアンを再構築出来ません。記憶媒体の状態を確認してから再試行して下さい』

無機質な声が、同じ内容を何度も読み上げる。
専門家ではないスレイブにも、目の前の現状と照らし合わせて、おぼろげに理解ができた。

シャルル・フォルシアン。
あのゴブリンもどきの口にした、再構築後のシャルムの名前。
ここへ来た時点で、すでに再構築は始まっていたのだ。しかし、それはうまくいかなかった。
エラー。正しく構築されなかった『シャルム』は破棄され、システムは再び構築を繰り返す。

何度も。何度も何度も何度も。
その結果が、目の前に積み上げられた、"不正な"シャルムの遺骸たちなのだ。
0086スレイブ ◆T/kjamzSgE
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2018/10/11(木) 22:50:58.13ID:sjrKy4Ep
>「うっ……」

シャルムが青い顔でえずいた。
スレイブは胃袋からせり上がってくる何かをどうにか堪えて、シャルムの肩を引き寄せた。

「もう見るな。こんなもの、研究も分析も必要ない。これから俺たちが跡形もなく破壊するんだ。
 一片たりとも残すものか。こんな狂ったシステム、目の前から全て消してやる」

シャルムが落ち着くまで、スレイブは彼女の肩を抱き続けた。
何かの支えになるとも思えないが、何もせずにはいられなかった。

>「……行きましょう」

やがて冷静さを取り戻したシャルムの先導で、一行は次の扉を抜ける。
そこにはやはり積まれた大量の死体と……一人の男が立っていた。
どことなくティターニアに似ている。耳は短く、眼鏡もかけてはいなかったが。

>「諸君らは……これが二回目か?それとも、まだ一回目か?」

――シャルムの問いに応じて男の語った内容。
かつて、世界には現在とまったく異なる文明と技術があった。
『虚無の竜』は異世界からの侵略者ではなく……逆だ。
その時代の人類が創出した、世界を保護し、繁栄の時代に回帰させるための装置だった。

しかし、地殻の奥底に封印されていた虚無の竜は、戦争の影響で大きなダメージを負うことになる。
自己修復に失敗し、その有り様を捻じ曲げ、それでもなお本来の機能を発揮しようとした。
結果は、これまでの旅で目にしてきた通りだ。
不完全な形で再構築された世界と、周囲から属性を無制限にしぼり取り、枯渇させる虚無の竜。

そして、虚無の竜はもう一度、歪んだ姿に世界を作り直そうとしている。
――背後の部屋に積み上げられた、シャルム達の死体のように。
それだけは、なんとしても、止めなければならない。

>「諸君らは……これが二回目か?それとも、まだ一回目か?」

必要な情報を話し終えると、男は最初と同じ言葉を問いかけてきた。
ホログラムという技術はよくわからないが、つまりこの男は今、生きているわけではない。
対話が可能な過去の映像……まるで想像もつかない話ではあるが、そういうことだと納得するしかないのだ。
0087スレイブ ◆T/kjamzSgE
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2018/10/11(木) 22:51:20.74ID:sjrKy4Ep
>「……二回目ですよ。聞くべき事はもう聞きました」
>「そうか……尻拭いをさせてしまって悪いが、健闘を祈るぞ。願わくば、このホログラムが二度と起動されない事もな」

「進もう。俺たちの世界は、失敗作なんかじゃない。これ以上、神の真似事をされてたまるか」

さらに扉をくぐる。
その先には、これが建物の内部だということを忘れてしまうような広大な空間が拓けていた。
そして、空間の中央に丸まっている、金属で構成された……竜。

>「あれが……虚無の竜」

「……眠っている、のか?」

虚無の竜は沈黙していた。
男のホログラムとやらが言うには、あの装置は自ら敵性存在を排撃するようにはなっていないらしい。
少なくとも、こちらから攻撃を加えるまでは、中立の状態を保つ……
つまり、必ず先制攻撃が可能ということだ。

>「……あの兵装を全て使用されたらと考えると、背筋が凍りますね。
 最初の一撃で、どれだけ破壊出来るのやら……」

「出し惜しみはなしだ。俺も竜装を纏う。ジャン、もしものときはもう一度頼んだ」

スレイブはそう言い残して、バアルフォラスの切っ先を自分に向けて構えた。
竜装『愚者の甲冑』は、指環からの魔力供給のタガを外すことで短時間に莫大な威力の魔法を放つことができる。
最初の一撃に全てを賭けなければならないこの状況なら、魔力を全部吐き出した後の無力も問題にはなるまい。
知性を自ら手放すことに対する僅かな躊躇いをねじ伏せて、切っ先を己の胸に埋める――その直前。

>『――侵入者を発見。前回の戦闘発生経緯から、事前の警告は無用と判断します。
 全武装を解禁中。セキュリティクリアランスの申告は武装解禁が完了するまでに行って下さい』
>「……なんですって?そんな……馬鹿な。話が違う……」

「なんだと……!?最初に一撃入れるまで、奴は無防備なんじゃなかったのか!?」

何か……致命的な計算違いがあった。
それを推し量ることはスレイブにはできないが、当初の計画が全て無に帰したことだけはわかる。
先制攻撃は不可能。指環の勇者たちは、初めから敵対した状態の虚無の竜を相手にしなければならない。

>『全武装解禁。リビルドデバイスと虚無の竜の接続を解除。プロトコル・ホロウの進行を一時停止。戦闘行動を開始します』
>「っ、『フォーカス・マイディア』!!そして……全の指環よ!!」

驚愕からいち早く立ち直ったシャルムが適性拡張術式を行使し、ドラゴンサイトを展開する。
一瞬遅れて、スレイブも剣を抜き放った。
0088スレイブ ◆T/kjamzSgE
垢版 |
2018/10/11(木) 22:51:49.19ID:sjrKy4Ep
>「投射物を可能な限り迎撃します!なんとか前へ出て下さい!」

「了解。防御は全部あんたに任せる。俺は全魔力を攻撃に回すぞ。
 ――ウェントゥス、状況はわかってるな?」

『またぞろ儂の風で突撃するとか言うんじゃろ?ああもう、とっくに準備できとる儂の甘さに腹が立つ!
 心配せんでもちゃんと運んでやるわい。そろそろお主とは、短い付き合いでもないしの』

「……全部終わったら、千年分の飴を買ってやる」

『ほしたら是が非でも生き残ってもらわんとな。……約束は守れよ、儂の契約者』

それ以上の会話は不要とばかりに、スレイブは弾丸の如く己が身を飛ばした。
雨霰とばかりに降り注ぐ虚無の竜の砲撃に対し、一切の防御行動を取らない。
避ければその分、走る速度が落ちる。盾などとうの昔に置き去りだ。
それでも迫りくる威力の嵐に、恐怖心はない。

>「『竜の天眼(ドラゴンサイト)』……!撃ち落とせ!!」

スレイブの元に攻撃が届く前に、その尽くを、シャルムの魔法が迎撃していくからだ。
だから彼は、ただ真っ直ぐに、最短の距離を進むだけで良い。

「……届いた!」

跳躍。逃げ場のない空中で、針山のごとく生えた無数の砲門がスレイブに集中する。
ドラゴンサイトの弾幕が目の前をなぎ払い、嘘のように凪いだ虚空をその身で貫く。

「一伐の槍・二王の弓・三寅の斧。四方世界を結ぶ氷獄の刃。
 その命を切り、神の名を冠す杖を無窮の原野に立てよ――」

凝縮した魔力を纏わせ、巨大な氷柱と化した長剣を、投槍のごとく投擲する。
氷柱は虚無の竜の体表に突き立った瞬間、内包する魔力を全て解き放った。

「――『クアドラプルフロスト』!!」

氷柱から四方に向けて波濤の如く冷気が奔り、砲門を尽く凍てつかせていく。
氷波は砲門を芯まで凍てつかせ、内側から食い破るようにして破裂させた。
魔力を解き放ち終えた剣の柄を握り、しかしスレイブはそれを抜かない。
間髪入れずに、新たな魔力を注ぎ込んだ。

「爆ぜろ、『炸轟』」

突き立った剣を通して莫大な魔力が虚無の竜の体内へ流れ込む。
瞬間、爆裂。内部からの爆発は竜の装甲を無視して巨大な穴を穿つ。
『スレイブ極太ビーム』と双璧を為す近接技、『剣の先っちょから爆発出る奴』。
かつて知慧の魔神バアルフォラスを討滅した際の決め手となった技だ。

「細かい武装は俺が削ぎ落とす!ジャン、ティターニア、大物を頼む!」
0090ジャン ◆9FLiL83HWU
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2018/10/16(火) 18:22:33.32ID:x4qd9L7k
一行が辿り着いた硝子の塔は、見た目からは想像もできないほど頑丈に組み上げられていた。
内部は広く、生き物めいた骨格が長大な建造物を支えている。
天井は入り口からは見えないほど高く、奇妙な振動音が時折鳴り響く。

>「上に行くか下に行くかということか? シェバトにあった昇降機のようなものなのかもしれないな」

「こりゃちょうどいいぜ、敵が自分から招待してくれるんだからよ!
 ……それに、迷ってる時間はねえ」

他の仲間は親切すぎる案内に怪しんでいるようだが、ジャンは違った。
罠があれば踏み抜き、伏兵が出てくれば殴り倒す。その思考は今でも変わることはない。
むしろそういったものを仕掛けているということは、敵にとって大事なもの……虚無の竜の肉体があるという証明でもある。

>「ひ、ひえぇ……み、皆さん。防御魔法の備えだけは抜かりのないように……!」

小部屋が目的地を目指してまっすぐに下降を始め、やがて小部屋の向こう、硝子の外壁一つ挟んだ外が溶岩に覆われる。
あらゆる者の制御を拒んだ莫大なエネルギーが、今も荒れ狂い続けているのだ。

>「大丈夫だ、地熱はこちらまで届いていない。この硝子は温度を遮る機能を持っているようだ。

「こんな硝子一枚で溶岩に耐えたり、変なもん作ったり……どんな魔法使ってんだろうな?
 塔の壁だって軽く小突いてもヒビ一つ入らねえしよ」

『……これは魔法というより技術、だね。
 魔力が一切感じられない、一体どうやって……』

やがて小部屋全体の振動が止まり、下降が終わったことを示すように外壁の一部が音もなく開く。
淡く光る白と緑の光源に導かれるようにして通路を歩き、触ることなくドアが開いた。

>「……死臭!」

スレイブと同じく、ジャンもその臭いを感じれば即座に長矛を構える。
アンデッドの類かそれともスケルトンか、と思ってゆっくりと前に進めば、そこにあるのはおぞましい光景だった。

>「うっ……」

>「馬鹿な……これは……シアンス……?」

「……死霊術で作られたゾンビ共の群れの方がまだマシな光景だな。
 何の目的で作ったのかまったくわかりゃしねえ」

もしこれが自分だったなら、すぐさま滅茶苦茶に叩き潰してしまうだろう。
こんなものを見せつけられて正常でいられるヒトなどいないはず。ジャンはそう考えて、
できるだけ早くこの部屋から離れることを促した。
0091ジャン ◆9FLiL83HWU
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2018/10/16(火) 18:26:18.67ID:x4qd9L7k
>「……行きましょう」

なんとか落ち着いてきたシャルムの様子を見ながら、次の扉が音もなく開く。
またも大量の死体と、今度はその傍らに立つ一人の男。
エルフとは思えない容姿をしているのに、不思議とティターニアに似ていると感じてしまう。

>「諸君らは……これが二回目か?それとも、まだ一回目か?」

そして彼が話し出すのは虚無の竜が作られた兵器であるという事実。
そしてその構造と、目的。ジャンにはほとんど理解できない内容だったが、アクアがかみ砕いて説明してくれる。

『つまり虚無の竜は世界を守るゴーレムだった。
 それをヒトどうしの戦争のせいで壊れてしまって、自分で直そうとしてさらに壊れた。
 誰かに直してもらうこともできず、壊れ続けた結果……世界を滅ぼすゴーレムになってしまった』

「やることは変わんねえわけだな、説明ありがとよ。
 最初の一撃で殴り倒してやるぜ」

いかなる事情であれ、この世界が丸ごと作り直されるという事実は変わらない。
長槍を持った手を握りしめて、ジャンは最後の扉を通った。

>「あれが……虚無の竜」

広く大きな空間は、全てが透明だった。
あらゆる色を吸収し、光沢というものが一切ない不思議な素材で作り上げられた空間。

そこに鎮座するのは、虚無の竜と呼ぶには相応しくないように思える、金属を纏った竜。
しかし身体の各所に取り付けられた武装らしきものは空飛ぶ鮫よりもはるかに多く、あれが一斉に放たれれば
こちらは一瞬で血煙となるだろう。

>「……あの兵装を全て使用されたらと考えると、背筋が凍りますね。
 最初の一撃で、どれだけ破壊出来るのやら……」

>「出し惜しみはなしだ。俺も竜装を纏う。ジャン、もしものときはもう一度頼んだ」

「おうよ、手加減なしで顔面吹っ飛ばすぜ」

ジャンもスレイブの横に立ち、竜装を纏っていつでも飛び込めるよう準備する。
実際のところ、開幕の一瞬で倒せる相手ではないことは確かだ。ならば自分ができるだけ近くで、引きつけ続ける必要があるだろう。

「ティターニア、ありったけ支援頼む。
 ……全員で、生きて帰るぞ!」

しかし、直後に聞こえてきた無機質な声が事態の急変を告げる。

>『――侵入者を発見。前回の戦闘発生経緯から、事前の警告は無用と判断します。
 全武装を解禁中。セキュリティクリアランスの申告は武装解禁が完了するまでに行って下さい』

>「……なんですって?そんな……馬鹿な。話が違う……」

>『全武装解禁。リビルドデバイスと虚無の竜の接続を解除。プロトコル・ホロウの進行を一時停止。戦闘行動を開始します』
0092ジャン ◆9FLiL83HWU
垢版 |
2018/10/16(火) 18:27:26.46ID:x4qd9L7k
そして戦闘開始を告げるように、虚無の竜がその瞳を見開いた。
全身から放たれる暴力の嵐が勇者たちを襲えば、指環を発動したシャルムがそのほとんどを押し留める。
元々の魔力制御の技術と指環の魔力が合わされば、まるで一つの軍隊のようにあの球体たちを制御し、弾幕を形成してみせた。

>「――『クアドラプルフロスト』!!」

スレイブがそれに合わせて突撃し、砲門の一つを粉砕する。
さらには虚無の竜内部へ魔力を撃ち込み、内部からの爆発で装甲に穴をこじ開けた。

>「細かい武装は俺が削ぎ落とす!ジャン、ティターニア、大物を頼む!」

「任されたぁ!いつも通りに行くぜ、あのゴーレムをぶん殴る!」

翼を生やし、鱗を纏い。アルマクリスの長矛を両手に持ち、はるか上へと飛んでいく。
そして長矛に水流を纏わせ、巨大な水流槍を作り上げた。

「まずは前足っ!」

ブン、と鈍い風切り音を立てて水流槍が虚無の竜の前足を貫いて砕き、破壊する。
バランスを崩し、動きを止めたところで薄くなった弾幕に構うことなく接近し、装甲に空いた穴から見える構造物に向かって
両手を組んで思い切り叩きつければ、何か甲高い音と共に内部が破壊されていく。

「ははっ!虚無の竜も肉体は脆いもんじゃねえか!
 これなら全の竜の方がよほど手ごわかったぜ!」

ジャンを引き剥がそうとする抵抗もなく、ジャンは次々と穴を開けては内部構造を両手で粉砕する。
やがて虚無の竜が動きを止めたとき、その身体のほとんどは粉々に砕かれていた。

「……これで終わりか?後は降りてきた本体ぶちのめせば――」

『虚無の竜の肉体ユニット破壊を確認しました。全肉体ユニット候補および警備ユニットを起動。
 再構築システムをパターン14に移行。工程35から321を省略。全隔壁を閉鎖し精神ユニット到着まで一切の操作を拒否します。
 作業員の皆様は対異常存在スーツの着用をお願いします。地熱エネルギーの充填完了と共にパターン14は終了されます』

再生を防ぐために、頭と心臓らしき部分を念入りに破片の塊になるまで砕いたところであの無機質な声が再び聞こえる。
それと同時に周囲の壁の一部が駆動音と共に開き、中から異形の街で遭遇した、鋼鉄の鎧を纏い長銃や短剣を持った戦士たちが現れた。
さらにその後ろには、武装は少なく一回り小さいものの、あの虚無の竜とほとんど同じ外見をした鋼の竜が8体、
一行を取り囲むようにゆっくりと姿を見せる。

【肉体(一つだけとは言っていない)】
0093創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/10/17(水) 14:24:41.39ID:ZU7x6aHX
中学生でもできるネットで稼げる情報とか
暇な人は見てみるといいかもしれません
いいことありますよーに『金持ちになる方法 羽山のサユレイザ』とはなんですかね

TUD
0094ティターニア ◆KxUvKv40Yc
垢版 |
2018/10/19(金) 22:32:05.06ID:53+trL7v
下に向かえばいいことは分かりつつも躊躇する一行を、ラテが鼓舞する。

>「指環の勇者が七人揃ってる。準備は万端、でしょ?
 急がないと。あと一時間とちょっとで、再構築?が終わっちゃうんでしょ。
 私にはよく分からなかったけど……それが良くない事だって事くらいは、分かるよ」

>「……いざとなったら、頼みますからね」

意を決して下へと向かう一行。

>『再構築エラー、デバイスが正しくセットされていません。
 ユリウス・クラウレイを再構築出来ません。 
 デバイスを正しくセットしてから再試行して下さい』

不可思議な声が響く中、白い部屋へ到着。
そこで目に飛び込んできたものは、大量の奇形の女性の死体だった。
その上、シャルムにそっくりだ。

>「馬鹿な……これは……シアンス……?

>『再構築エラー、存在構築律を正しく読み込む事が出来ません。
 シャルル・フォルシアンを再構築出来ません。
 記憶媒体の状態を確認してから再試行して下さい』   

>「……行きましょう」

次の部屋も、またも大量の死体。
しかしその中心に一人、ティターニアに似た男性が座っていた。

「そなたは一体……」

>「諸君らは……これが二回目か?それとも、まだ一回目か?」

シャルムとの問答の中で、虚無の竜の誕生と、それが恐ろしい侵略者へと変貌した経緯が語られる。
その終盤。

>「虚無の竜はエネルギー効率において万全ではなく、
 また一度破壊された機能を再生すべきか正しい判断が出来ない。
 間違いないですか?」
>「……ああ、その通りだ。こう言ってはなんだが……虚無の竜は我らの最高傑作だ。
 ユリウス・クラウレイ、シャルル・フォルシアン。そしてこの我、タイターン・グッドフェロウの。
 まともに戦えば、たった7人で勝てる相手ではない」

シャルル・フォルシアンはシャルム・シアンスの再構築後の名ということが先程分かってしまった。
同じように考えるとタイターン・グッドフェロウはティターニア・ドリームフォレスト。
(再構築前と再構築後で必ずしも種族や性別が同じとは限らないのだろう)
ユリウス・クラウレイは名前の響きからジュリアン・クロウリーと推測できる。

「もしやとは思うが……そなたらの世界には三つの大国がありはしなかったか?
そなたら三人はそれぞれの国を代表する魔術師……いや、技術者だったのではあるまいか?」

「そうだが――よく分かったな」
0095ティターニア ◆KxUvKv40Yc
垢版 |
2018/10/19(金) 22:33:38.71ID:53+trL7v
パラレルワールド仮説――先日明らかになった旧世界の存在も驚きだったがそれどころではく、
この世界以外に無数の平行世界が存在するというトンデモ仮説がある。
隣り合わせの世界はとてもよく似ていて、離れるほど全く違う世界になるとか。
もしかしたら彼らの世界は、その中の一つなのかもしれない。
この世界とどこか似ていながら、されど魔法とは全く違う技術体系で発展した世界。
世界を食らいつつ隣接する世界へと移動してきたとしたら、ここに至るまでに一体どれだけの世界が食らわれたのだろう。
タイターンは最後に、戦闘開始時にありったけの先制攻撃をしろとのアドバイスを授け、会話は終了する。

>「諸君らは……これが二回目か?それとも、まだ一回目か?」
>「……二回目ですよ。聞くべき事はもう聞きました」
>「そうか……尻拭いをさせてしまって悪いが、健闘を祈るぞ。願わくば、このホログラムが二度と起動されない事もな」
>「進もう。俺たちの世界は、失敗作なんかじゃない。これ以上、神の真似事をされてたまるか」

「ああ。もしかしたら……この世界だけではなく無数の世界の命運がかかっているのかもしれないな」

この世界には偶然か必然か、全の竜というある種の保険があったため、長い時間足止めを食らうことになった。
しかしその保険はもうない。もしも負ければ、虚無の竜はこの世界を食らいつくした後、次なる世界に解き放たれるということだ。
ついに最後の扉を潜り、虚無の竜と対面する。そこにいたのは、全身機械仕掛けの巨大な竜だった。

>「あれが……虚無の竜」
>「……眠っている、のか?」
>「出し惜しみはなしだ。俺も竜装を纏う。ジャン、もしものときはもう一度頼んだ」
>「おうよ、手加減なしで顔面吹っ飛ばすぜ」
>「ティターニア、ありったけ支援頼む。
 ……全員で、生きて帰るぞ!」
「よし、重ね掛け出来る限りの補助魔術をかけるから少し待ってくれ。まずは……」

こちらから仕掛けるタイミングが計れる場合に使える、いわゆる戦闘開始前のドーピングである。
しかし、定番のフルポテンシャルを全員になんとかかけおわったところで、事態は急変。

>『――侵入者を発見。前回の戦闘発生経緯から、事前の警告は無用と判断します。
 全武装を解禁中。セキュリティクリアランスの申告は武装解禁が完了するまでに行って下さい』
>「……なんですって?そんな……馬鹿な。話が違う……」
>「なんだと……!?最初に一撃入れるまで、奴は無防備なんじゃなかったのか!?」

先代勇者の時は、虚無の竜を完全に滅ぼすことは諦め魂の側を封印という形でひとまずの平和を取り戻した。
つまりここで虚無の竜の肉体との対決はしていない。
しかし、その更に前のいつかの代の勇者か、あるいは虚無の竜が以前経由してきた世界のどこかの時点で、これに立ち向かった者達がいたのかもしれない。
ここで、虚無の竜が機械仕掛けの竜だとしたら、その”魂”とは一体何だったのだろうか――
という疑問が浮かぶが、今は考えている場合ではない。
今やるべきことは一刻も早く目の前の竜を破壊することだ。
0096ティターニア ◆KxUvKv40Yc
垢版 |
2018/10/19(金) 22:33:47.84ID:53+trL7v
パラレルワールド仮説――先日明らかになった旧世界の存在も驚きだったがそれどころではく、
この世界以外に無数の平行世界が存在するというトンデモ仮説がある。
隣り合わせの世界はとてもよく似ていて、離れるほど全く違う世界になるとか。
もしかしたら彼らの世界は、その中の一つなのかもしれない。
この世界とどこか似ていながら、されど魔法とは全く違う技術体系で発展した世界。
世界を食らいつつ隣接する世界へと移動してきたとしたら、ここに至るまでに一体どれだけの世界が食らわれたのだろう。
タイターンは最後に、戦闘開始時にありったけの先制攻撃をしろとのアドバイスを授け、会話は終了する。

>「諸君らは……これが二回目か?それとも、まだ一回目か?」
>「……二回目ですよ。聞くべき事はもう聞きました」
>「そうか……尻拭いをさせてしまって悪いが、健闘を祈るぞ。願わくば、このホログラムが二度と起動されない事もな」
>「進もう。俺たちの世界は、失敗作なんかじゃない。これ以上、神の真似事をされてたまるか」

「ああ。もしかしたら……この世界だけではなく無数の世界の命運がかかっているのかもしれないな」

この世界には偶然か必然か、全の竜というある種の保険があったため、長い時間足止めを食らうことになった。
しかしその保険はもうない。もしも負ければ、虚無の竜はこの世界を食らいつくした後、次なる世界に解き放たれるということだ。
ついに最後の扉を潜り、虚無の竜と対面する。そこにいたのは、全身機械仕掛けの巨大な竜だった。

>「あれが……虚無の竜」
>「……眠っている、のか?」
>「出し惜しみはなしだ。俺も竜装を纏う。ジャン、もしものときはもう一度頼んだ」
>「おうよ、手加減なしで顔面吹っ飛ばすぜ」
>「ティターニア、ありったけ支援頼む。
 ……全員で、生きて帰るぞ!」
「よし、重ね掛け出来る限りの補助魔術をかけるから少し待ってくれ。まずは……」

こちらから仕掛けるタイミングが計れる場合に使える、いわゆる戦闘開始前のドーピングである。
しかし、定番のフルポテンシャルを全員になんとかかけおわったところで、事態は急変。

>『――侵入者を発見。前回の戦闘発生経緯から、事前の警告は無用と判断します。
 全武装を解禁中。セキュリティクリアランスの申告は武装解禁が完了するまでに行って下さい』
>「……なんですって?そんな……馬鹿な。話が違う……」
>「なんだと……!?最初に一撃入れるまで、奴は無防備なんじゃなかったのか!?」

先代勇者の時は、虚無の竜を完全に滅ぼすことは諦め魂の側を封印という形でひとまずの平和を取り戻した。
つまりここで虚無の竜の肉体との対決はしていない。
しかし、その更に前のいつかの代の勇者か、あるいは虚無の竜が以前経由してきた世界のどこかの時点で、これに立ち向かった者達がいたのかもしれない。
ここで、虚無の竜が機械仕掛けの竜だとしたら、その”魂”とは一体何だったのだろうか――
という疑問が浮かぶが、今は考えている場合ではない。
今やるべきことは一刻も早く目の前の竜を破壊することだ。
0097ティターニア ◆KxUvKv40Yc
垢版 |
2018/10/19(金) 22:35:59.68ID:53+trL7v
『全武装解禁。リビルドデバイスと虚無の竜の接続を解除。
 プロトコル・ホロウの進行を一時停止。戦闘行動を開始します』

シャルムがいち早く驚愕から立ち直り迎撃態勢に入る。

>「っ、『フォーカス・マイディア』!!そして……全の指環よ!!」
>「投射物を可能な限り迎撃します!なんとか前へ出て下さい!」
>「『竜の天眼(ドラゴンサイト)』……!撃ち落とせ!!」
0098ティターニア ◆KxUvKv40Yc
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2018/10/19(金) 22:36:37.47ID:53+trL7v
『全武装解禁。リビルドデバイスと虚無の竜の接続を解除。
 プロトコル・ホロウの進行を一時停止。戦闘行動を開始します』

シャルムがいち早く驚愕から立ち直り迎撃態勢に入る。

>「っ、『フォーカス・マイディア』!!そして……全の指環よ!!」
>「投射物を可能な限り迎撃します!なんとか前へ出て下さい!」
>「『竜の天眼(ドラゴンサイト)』……!撃ち落とせ!!」
0099ティターニア ◆KxUvKv40Yc
垢版 |
2018/10/19(金) 22:37:34.35ID:53+trL7v
シャルムが投射物を遮って道を作り、スレイブが最短距離で突撃する。
相変わらず見事なコンビネーションだ。

>「一伐の槍・二王の弓・三寅の斧。四方世界を結ぶ氷獄の刃。
 その命を切り、神の名を冠す杖を無窮の原野に立てよ――」
>「――『クアドラプルフロスト』!!」

スレイブが長剣を突き立て、凍てつく冷気の魔法を炸裂させる。しかしそれだけでは終わらない。

>「爆ぜろ、『炸轟』」

内部から魔力が爆発し、装甲に巨大な穴が開いた。

>「細かい武装は俺が削ぎ落とす!ジャン、ティターニア、大物を頼む!」

>「任されたぁ!いつも通りに行くぜ、あのゴーレムをぶん殴る!」

「合わせるぞジャン殿。竜装――”ダイナスト・ペタル”! 吸い尽くせ――”ミスルトゥ”」

植物属性の竜装を纏い唱えるは、内部からエネルギーを吸い尽くしながら崩壊させる凶悪無比な寄生樹の魔法。
穴が開いた部分から植物の根のようなものが周囲を破壊しつつ広がっていく。

>「まずは前足っ!」

一方のジャンは、単純明快且つ強力無比な外部からの攻撃で粉砕していく。

>「ははっ!虚無の竜も肉体は脆いもんじゃねえか!
 これなら全の竜の方がよほど手ごわかったぜ!」

内と外、両方から破壊され、虚無の竜はすぐに半壊状態となった。

>「……これで終わりか?後は降りてきた本体ぶちのめせば――」

>『虚無の竜の肉体ユニット破壊を確認しました。全肉体ユニット候補および警備ユニットを起動。
 再構築システムをパターン14に移行。工程35から321を省略。全隔壁を閉鎖し精神ユニット到着まで一切の操作を拒否します。
 作業員の皆様は対異常存在スーツの着用をお願いします。地熱エネルギーの充填完了と共にパターン14は終了されます』
0100ティターニア ◆KxUvKv40Yc
垢版 |
2018/10/19(金) 22:40:48.35ID:53+trL7v
どうやらここにあるのが“肉体ユニット”、そして魂が”精神ユニット”ということらしい。
それはいいのだが、武装した兵隊達と、一回り小さいとはいえ今しがたボロボロにした虚無の竜とほぼ同じようなものが8体登場する。

「これが警備ユニットか……少々警備が厳重すぎるだろう!」

間髪入れずに、八方向からの一斉砲撃が始まった。
プロテクションでは防ぎきれない。シャルムの竜の天眼でも打ち落としきるのは不可能だろう。

>「鏡の世界(スペクルム・オルビス)――」
>「ストームソーサリー!」

とっさに旧世界攻略の時に編み出されたジュリアンとの連携魔法でなんとか防ぐが、どこまで持つか分からない。
その上、脅威は八体の機械の竜達による砲撃だけではない。

「ティターニア様、ヤバイってこれ!」

「言われなくても分かっておるわ!」

鎧を纏った戦士達の猛攻により、前衛勢は防戦で手一杯となり、基本アイテム持ち係のパックまで参戦を余儀なくされている。
流石移動式壁とも呼ばれる種族だけあって今のところ何とか持ちこたえているが……。
防戦一方となっているのは誰の目にも明らかだった。このままでは押し切られるのは時間の問題だ。

【どうも接続状況が良くないようで途中二重になってすまぬ。
1ターン目ということでとりあえず圧されてみた】
0101 ◆fc44hyd5ZI
垢版 |
2018/10/23(火) 19:26:53.78ID:aeP8rpj+
襲い来る無数の弾丸と砲撃。
一つ一つ認識して迎撃していては間に合わない。
ですが……既に私は、魔力の網を幾層にも重ねて張り巡らせている。
そしてそれらに弾丸が触れる際の入射角から、半自動的に弾道を予測し撃ち落とす術式を組み上げれば。

「……後は、任せましたよ!」

展開した『竜の天眼』が、虚無の竜の弾幕の尽くを撃ち落とす。
切り開かれた道を真っ先に駆け抜けたのは……やはり、あなたですよね。ディクショナルさん。

>「細かい武装は俺が削ぎ落とす!ジャン、ティターニア、大物を頼む!」

虚無の竜の胸部から生えた四門の……ガトリング砲とやらが破壊される。
発射速度、弾速共に、最も優れた兵装が……つまり奴の弾幕の主軸が挫かれた。
最早、虚無の竜に私達の接近を拒む事は出来ない。

>「任されたぁ!いつも通りに行くぜ、あのゴーレムをぶん殴る!」
>「合わせるぞジャン殿。竜装――”ダイナスト・ペタル”! 吸い尽くせ――”ミスルトゥ”」

そうなってしまえば、後は竜の指環による大火力が物を言います。
虚無の竜は見る間に破壊され、がらくたへと変えられていきます。

>「……これで終わりか?後は降りてきた本体ぶちのめせば――」

……虚無の竜の肉体は、これで完全に破壊されました。
終わってしまえば早い決着となりましたが……一歩間違えば私達があの弾幕に塗り潰されていました。
未だに心臓が暴れ回っています。思わず、私はその場にしゃがみ込んでしまいました。

とは言え、まだ完全に決着がついた訳ではありません。
封印されていた虚無の竜の魂をやっつけてしまわないと。
もっとも……肉体のない魂に果たして何が出来るのか。
万全を期して封印ないし討滅した方がいいのは間違いないんですが。
それにそもそも……

「……参りましたね。これでは虚無の竜の魂が帰ってくるのかどうか……」

>『虚無の竜の肉体ユニット破壊を確認しました。全肉体ユニット候補および警備ユニットを起動。
  再構築システムをパターン14に移行。工程35から321を省略。全隔壁を閉鎖し精神ユニット到着まで一切の操作を拒否します。
  作業員の皆様は対異常存在スーツの着用をお願いします。地熱エネルギーの充填完了と共にパターン14は終了されます』

……不意に、部屋全体に響き渡るような声が聞こえました。
無機質で抑揚のない……虚無の竜の声が。
肉体ユニット……候補ですって?
なんだかものすごく、嫌な予感がします。

それが気のせいであって欲しいと祈る間もなく、今度は周囲から奇妙な音が響きました。
ここに来るまでにも何度か耳にした……扉が滑るように開く音。
それが、幾重にも重なって聞こえてきた。

嫌な予感は、既に確信に変わっていました。
周囲を見回せば目に映ったのは……やや小型化された、しかし紛れもない虚無の竜の肉体。
それが八体。更に数えきれないほどの鎧の兵士。

「なるほど……自分自身を再構築出来るなら、あらかじめ予備の肉体を作っておく事だって出来る。そりゃそうですよね……。
 最初からその機能が搭載してあれば、こんな厄介な事にもならずに済んだものを……」

虚無の竜の予備の肉体は、先ほど倒したものよりも幾分か小型化されています。
兵装の数も減っていますが……それは奴の弱体化を意味しません。
何故なら装備を削減するという事は、当たり前ですが……より効果的なものを残すという事です。
0102 ◆fc44hyd5ZI
垢版 |
2018/10/23(火) 19:27:15.05ID:aeP8rpj+
奴の兵装の内、それが何かと言えば……あのガトリング砲です。
恐ろしいほどの回転率と弾速、長い射程。
素晴らしい汎用性を誇る兵装です。
……案の定、それは全ての虚無の竜に搭載されていました。

そして……竜の咆哮のごとき銃火が響き渡る。
竜の天眼による半自動迎撃がそれを迎え撃つも……防ぎ切れない。
0103 ◆fc44hyd5ZI
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2018/10/23(火) 19:27:35.95ID:aeP8rpj+
>「鏡の世界(スペクルム・オルビス)――」
>「ストームソーサリー!」

私達の目の前で無数の砲弾、銃撃が砕け散る。
ティターニアさんとクロウリー卿の防御魔法……間一髪、間に合いましたか。

ですが魔法とは神の奇跡ではありません。
その発動には当然、原動力……魔力を要します。
これほどの物量を跳ね返し続ければ……魔力は恐ろしい勢いで削り取られる。
それに伴って術式そのものの強度も失われていく。

十秒と持たずに穿たれた穴から、鎧の兵士達がなだれ込んできます。
前衛職の皆さんがすぐにそれを押し留めますが……どうにも多勢に無勢。
パックさんまでもが加勢してなんとか勢いが拮抗したところで、私が咄嗟に結界の穴を防ぎます。
一度は凌ぎはしましたが……敵は大波のように何度でも押し寄せてきます。
いつまでも持ち堪え続ける事は出来ない……。

「……散開しましょう。それしかありません」

結界に走る亀裂を生じる傍から修復しながら、私はそう言いました。

「あの火力を一点に集中されては防戦一方。
 奴らに対して、私達が間違いなく勝っている点は的の小ささです。
 私がきっかけを作りますから……行きますよ。三、二、一……」

瞬間、私は指環の魔力を最大限に解放しました。
膨大な魔力を用いて構築するのは……無数のゴーレム。
ローレンスさんにぶつけたような、巨大な兵隊ではありません。
あの火力を相手に巨兵をぶつけても的が大きくなるだけです。
作り出すのは……私達そっくりのゴーレム。
それを何体も、何十体も同時に、結界の外へと飛び出させる。

「今です!」

虚無の竜達による弾幕がばらけた。
このまま散開して各個撃破する。
それ以外に私達に活路はありません。
つまり……私も最低一体は、アイツの相手をしなくちゃならないって事です。
クロウリー卿もパックさんの護衛に手一杯でしょうしね。

「敵に突撃して接近戦に望みをかけるなんて、魔術師の戦い方じゃないんですがね!」

皆さんが散開したのを確認してから、私は魔導拳銃を抜きました。
そして虚無の竜、その内の一体へと銃口を向ける。
走らせる術式は『空路滑走(スウィフトステップ)』。
短距離転移の魔法によって、私は虚無の竜へと接近。

懐に潜り込む事は成功しました。
が……虚無の竜の胸部に設置されたガトリング砲は、殆ど一瞬で私を捕捉しました。
数十の砲口が私を睨む……あの弾幕を相手に防御は下策。
再びスウィフトステップを用いて、今度は虚無の竜の背後へ。

ですが……虚無の竜の背面にも、ガトリング砲は装着されていました。
今度は、回避は間に合いそうにない……。
0104 ◆fc44hyd5ZI
垢版 |
2018/10/23(火) 19:28:47.71ID:aeP8rpj+
あの弾幕を相手に防御は下策……なんですが。

「っ、『審判の鏡(プロセ・ミロワール)』」!」

自身の前方に集中させる形で結界を展開。
直後に響く、嵐のような射撃音。
防壁に瞬く間に走る亀裂に背筋が凍ります……が、臆している暇はありません。

「指環の力よ!」

指環の魔力に物を言わせて、結界を多重展開。
砲撃を防ぎながら虚無の竜の背面に着地します。
0105 ◆fc44hyd5ZI
垢版 |
2018/10/23(火) 19:32:45.77ID:aeP8rpj+
「『造兵(クラフトゴーレム)』」

そしてその背面に魔法陣を描き込みました。
虚無の竜が生物ではなくゴーレムであるなら……この魔法が通用するはず。

虚無の竜に描き込んだ魔法陣から何体もの小さなゴーレムが湧き出てくる。
虚無の竜自身を材料として、です。
ゴーレム達は至るところから虚無の竜の内部へと侵入し……破壊可能な部品を手当たり次第に壊していきます。
よし……これなら私は防御と回避に専念するだけで……

『何らかの魔法行使を確認……原因を特定。ただちに破壊します。
 内部構造の損傷を確認……内蔵リビルドデバイスを使用。
 機体内の異物を利用し、再構築を実行します』

私の描いた魔法陣が……消えた?
……なるほど。流石は虚無の魔法を操るゴーレム。
魔法の無効化もお手の物ですか。

ですが……であれば何度でも、幾つでも、魔法陣を描き込むまでです。
作り出したゴーレムを絶えず砲口や関節に入り込ませれば、少なくともこちらへの攻撃の手は緩む。
奴自身の体からワイヤーを作り出して巻き付かせたり、銃口、砲口を錬金術で塞ぐ事も有効でした。

襲い来る鎧の兵士達は魔導拳銃で足を重点的に狙います。
まずは機動力を奪い……そして『造兵』の魔法陣を刻み込む。
こうすれば敵の手数を減らし、代わりに私の手数を増やす事が出来る。

しかし……そこまでしてもなお、攻撃に転じる事が出来ない……。
兵装を無力化しても、完全に破壊した訳ではないからすぐに再構築されてしまう。

さりとて私は、攻撃に全ての力を注ぐ訳はいきません。
全の指環は私に力を貸してはくれますが……信仰心の不足故でしょうか。
女神様の声が、私には聞こえない。

それはつまりディクショナルさんのように、指環との連携で身を守る事が出来ないという事。
こんなゴーレム風情と刺し違えるなんて冗談じゃありません。

このままでは……やられはしませんが、倒せもしない……。
ですが……これはボードゲームではありません。
千日手は実現しない。状況は必ず変化する。

私の体力、魔力、集中力が切れるのが先か。
虚無の竜の弾切れ……は、再構築がある限り望めそうにありませんが。
ディクショナルさんや、皆さんが虚無の竜を倒して加勢に来てくれるのが先か。

あるいは……虚無の竜の魂が帰ってくるのが先か。

……ですがそれに関しては、むしろ、帰ってきてくれた方がありがたいかもしれません。
何故なら、虚無の竜の魂が肉体へと帰還するその瞬間。
その瞬間に、魂と一つになった肉体を無力化すれば。
もう二度と虚無の竜が復活する事はなくなる。
結果的に倒すべき敵の数は変わらなくても、後顧の憂いを断つ事が出来る。

……私は回避と防御を繰り返しながらも、魔導拳銃に少しずつ、指環の魔力の余剰分を蓄積させています。
奴を吹き飛ばす為の術式を少しずつ組み上げながら。
準備は整いつつあります。後は機を伺うのみ……
0106 ◆fc44hyd5ZI
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2018/10/23(火) 19:33:07.69ID:aeP8rpj+
『――精神ユニットの帰還を確認。インストールを開始します』

不意に、抑揚のない無機質な声が聞こえました。
声を発したのは、私の目の前にいる虚無の竜。

「どうやら、当たりを引いたのは私だったようで……」

『また前回の不明なエラーによる精神ユニットの消失に備え、
 並行してクラウドサーバーへのアップロードを開始します……アップロードが完了しました』

……なんだ?今、奴は何をしたんだ?
分かりません……が、なんにせよ魂の帰還したこの肉体をさっさと始末する事に変わりは……
0107 ◆fc44hyd5ZI
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2018/10/23(火) 19:37:21.90ID:aeP8rpj+
『――精神ユニットの帰還を確認。インストールを開始します』 
『――精神ユニットの帰還を確認。インストールを開始します』  
『――精神ユニットの帰還を確認。インストールを開始します』   
『――精神ユニットの帰還を確認。インストールを開始します』    
『――精神ユニットの帰還を確認。インストールを開始します』      
『――精神ユニットの帰還を確認。インストールを開始します』       
『――精神ユニットの帰還を確認。インストールを開始します』         

……背後から、虚無の竜の声が聞こえた。
馬鹿な。そんな馬鹿な。まさか、まさかこいつ……

「……魂を再構築して、複製した?」

『オペレーティングAI『ピースメイカー7.02』のインストールが完了しました。
 自動運転プログラムのタスクの終了を確認……戦闘プログラムの最適化を実行します』

くそ……完全に奴の能力を読み違えました……。
ですが……だとしても私のするべき事は変わりません!
魔力の蓄積は既に十分。私は魔導拳銃を虚無の竜へと突きつける

「『フォーカス・マイディア』……そして指環の力よ!」

指環の魔力を溜め込んだ魔導拳銃を、錬金術によって長大化。
銃身の延長、銃口の拡大、刻み込んだ術式の拡張。
巨大化して支え切れなくなった魔導拳銃の照準を、錬金術によって土台を形成し安定させる。

「さあ……吹き飛びなさい!」

放たれたのは、一つ一つが砲弾並みの大きさを誇る無数の散弾。
虚無の竜の全身にくり抜いたような穴が空く。

「まだまだ終わりませんよ!」

更に散弾を発射。
今度は弾速を下げ……代わりに砲弾の内部に炎魔法を封入したものを。
散弾が虚無の竜の装甲にめり込み……炸裂する。

「これで……とどめ!」

最後にお見舞いするのは……この砲身そのもの。
土台を消滅させ、代わりに長い柄を形成。
つまり……即席の、巨大なメイスを作り出す。

この状態で砲撃を行えば、砲身はその反動で強烈な加速度を得る。
砲身に魔力を流し込むと爆音が響き……凄まじい慣性が私の体を振り回す。
そして……両腕が痺れるような激しい手応え。
虚無の竜の体が、甲高い金属音を立ててばらばらに飛び散りました。

「……ふん、運が良かったですね。バフナグリーさんかジャンソンさんなら、もっと無残な姿にしてくれたんですがね」

ともあれ……これだけ粉々にしてやれば、もう再構築も出来ないでしょう。
ディクショナルさんの方は……皆さんは、大丈夫でしょうか……。 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:1341adc37120578f18dba9451e6c8c3b)
0108 ◆fc44hyd5ZI
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2018/10/23(火) 19:38:17.48ID:aeP8rpj+
私は背後を振り返って……瞬間、体が意図しない方向へとよろめきました。
なんとか手傷こそ負わずに済みましたが、紙一重の戦いの中で、散々脳を酷使しましたからね。
流石の私も、少し疲れ……



……不意に、左胸に焼けるような痛みが走りました。
思わず視線を下へと向けると……細長い銀色の棘が、私の方を貫いていました。
咄嗟に、スウィフトステップでその場を脱します。
0109 ◆fc44hyd5ZI
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2018/10/23(火) 19:40:06.45ID:aeP8rpj+
「馬鹿な……虚無の竜は確かに、破壊したはず……」

振り返ってみれば……そこには銀色の、スライムのような……何かがいました。
まさか、まさか……これが?

『敵性存在『指環の勇者』の戦闘パターンに対する最適な戦術プログラムの構築が完了しました。
 続けてデータシェアリングを開始します』

銀色のスライムが再び、竜の姿を取り戻す。
……虚無の竜が持つ再構築の力。まさか、これほどまでとは……。
これでは……最早装甲や兵装を破壊する事も、挙動を封じる事も無意味……。

……ですが、諦める訳にはいかない。
まだ私達の勝ち目がなくなった訳ではありません。
グッドフェロウさんが言っていた虚無の竜の弱点。
一つは突く事が出来ずに終わってしまいましたが……もう一つの方は、まだ通じるはず。

「……怯まず戦って、奴を破壊して下さい!何度でもです!
 あの液状化能力は、要は虚無の力によって全身を再構築しているだけ!
 何度も繰り返していれば……奴は自分自身を食い尽くして自滅するはずです!」

胸の傷に治癒魔法を施しながら、私は叫びました。
虚無の魔法にも発動には魔力を必要とするように、奴の再構築もゼロから行われている訳ではないはず。
つまり、そう……奴が体を再構築するには、自分自身をエネルギー源とする必要がある。
今まで世界を食い散らしながら、世界を再生してきたように。

ならば何度も、何度でも奴を破壊し続ければ……いずれ、奴はその体を保てなく……

『戦術プログラムの改定に伴い、エネルギーの供給方法にも改善が必要です。
 より素早く効率的な供給方法をシミュレート……策定完了。変更を実行します』

瞬間、虚無の竜が背面に大砲を形成して、砲撃を開始しました。
狙いは私でも、皆さんでもない。
この広い空間の天井へと、砲弾が何発も打ち込まれ……炸裂する。

「まさか……」

天井に穿たれた幾つもの穴の奥に、赤い光が見えました。
そしてその光が……どろりと私達のいる空間に向けて垂れてくる。

『エネルギー源の供給を確認。戦闘を続行します』

不味い……これは、非常に不味い!
液状化能力だけでも相当に厄介なのに、それに加えて、あの溶岩……。
虚無の竜のエネルギーを無尽蔵に回復されてしまうのも最悪ですが、
常に頭上を注意しながら戦わされるのも、足の踏み場が段々となくなっていくのも同じくらい最悪です。

なんとかしなくちゃいけない。
ですが……私では虚無の竜の攻撃を凌ぐので精一杯……。

「……ディクショナルさん!」

私に出来たのはただ縋るように、彼の名を呼ぶ事だけでした。



【虚無の竜がパッシブスキル『液体金属』を取得。
 またフィールドに溶岩が流れ込みつつあります。
 とりあえずもっと追い詰められてみました】
0111スレイブ ◆T/kjamzSgE
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2018/10/28(日) 19:26:23.21ID:0OX8+3it
>「任されたぁ!いつも通りに行くぜ、あのゴーレムをぶん殴る!」
>「合わせるぞジャン殿。竜装――”ダイナスト・ペタル”! 吸い尽くせ――”ミスルトゥ”」

スレイブの吶喊を鏑矢として、ジャンとティターニアの連携攻撃が虚無の竜を穿つ。
さしもの古代兵器と言えども、指環の力をフルに行使した大火力の前には形無しだ。
鋼鉄製の装甲には大穴が空き、鋼線と鉄骨で織られた四肢が砕かれていく。

「……行けるぞ!純粋な正面火力ならこちらが上だ!ここまま削り切れる――!」

恐るべき弾速と発射間隔、つまり継続的な火力の面で言えば虚無の竜の方が遥かに強力だ。
だが、その猛攻をわずかにでも凌ぎ、懐に潜り込むことさえできれば、瞬間的な火力は指環の勇者に軍配が上がる。
巨大な身体に無数の火器を配置している都合上、至近距離に対しては射角を取りづらいのだ。

形勢は逆転した――スレイブが己と仲間たち、ひいては新世界の勝利を確信したその時。
再び、あの無感情で無機質な声が響き渡った。

>『虚無の竜の肉体ユニット破壊を確認しました。全肉体ユニット候補および警備ユニットを起動。

同時、周囲の隔壁が一斉に上がり、その向こうから無数の影が這い出て来る。
鋼鉄製の、ゴーレムによく似た形状の鎧に身を包んだ戦士達。
そして、さらにその奥には、虚無の竜をそのまま縮めたような姿の竜が、実に八匹。

>「これが警備ユニットか……少々警備が厳重すぎるだろう!」
>「なるほど……自分自身を再構築出来るなら、あらかじめ予備の肉体を作っておく事だって出来る。そりゃそうですよね……。
 最初からその機能が搭載してあれば、こんな厄介な事にもならずに済んだものを……」

「複製元が歪んでしまえば、後から生まれて来るのは全て瑕疵のある粗製品ということか……。
 かつて何度も消しては上書きされてきた、世界の末路を見ているようで……胸糞が悪いな」

とは言え、ぼやいている場合ではない。八方に展開した"警備ユニット"と"肉体ユニット候補"が砲門をもたげる。
間髪入れずに降り注ぐ砲撃の雨霰に、ティターニアとジュリアンの防御魔法もジリ貧だ。
一度は防ぐこと叶ったものの、このまま削られ続ければ遠からず防衛線は決壊する。
そうなればもはや多勢に無勢。押し寄せる大量の鎧達に、逃げ場もなく揉みつぶされるのみだ。

>「……散開しましょう。それしかありません」

ドラゴンサイトを手繰りながら、シャルムはそう提案した。

「しかし……!」

スレイブは泡を食って反駁する。
固まっていれば間違いなく一網打尽にされることは確かだ。
各自思い思いの方向に散って、正面からの圧力を分散すれば、少なからず時間を稼げるだろう。
0112スレイブ ◆T/kjamzSgE
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2018/10/28(日) 19:27:30.37ID:0OX8+3it
だが、それで助かるのはあくまで、波状攻撃を仕掛けてくる雑兵を蹴散らせる戦闘能力が前提だ。
それぞれが多勢に対して拮抗できる実力があるのであれば、散開は合理的な戦術となる。
少なくとも、味方をかばって共倒れする事態は避けられる。

つまり――彼女は足手まといを切り捨てろ、と言っているのだ。
そして、この場合の足手まとい、とはすなわち、他ならぬシャルム自身だ。
0113スレイブ ◆T/kjamzSgE
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2018/10/28(日) 19:28:09.23ID:0OX8+3it
如何に『フォーカス・マイディア』の拡張術式が優れていようとも、スレイブ達とシャルムには決定的な隔たりがある。
戦術、戦略ではなく――『戦闘』への適性。利用可能な魔力というリソースの残量。
竜の力をフルに引き出せない以上、まず真っ先に残弾が枯渇し、落とされるのはシャルムであろう。
彼女はおそらく、それも折り込み済みで提案している。

>「あの火力を一点に集中されては防戦一方。奴らに対して、私達が間違いなく勝っている点は的の小ささです。
 私がきっかけを作りますから……行きますよ。三、二、一……」

スレイブの反駁も虚しく、シャルムの決意は揺らがなかった。
奥歯を噛み締めて、彼は散開すべき方向を振り仰ぐ。

「……あんたが窮地に陥ったら、俺は他の何にも構わずそっちへ駆けつけるぞ。
 二人して敵の火線に晒されたくなかったら……無事でいてくれ」

>「今です!」

シャルムが生み出したゴーレムの群れが鎧の軍勢と激突する。
同時、わずかに停滞した弾幕の隙を縫って、スレイブは跳躍した。
八方に鎮座する八匹の竜のうち、向かって二時方向の竜目掛けて肉迫する。

(一刻も早く、予備の竜を破壊して……合流する!)

他の仲間たちも、適宜散開してそれぞれの方向にいる予備の竜と戦闘を開始しているようだった。
このまま、魔法障壁が破れるまでのわずかな間に、八方に居る予備を全て破壊しなければならない。

いわばこれは『篩』だ。

寄り集まれば互いの力を補完し合って強力な相乗効果(シナジー)を生み出す指環の勇者達。
しかし単独で虚無の竜と戦うとなるとどうだ?それぞれが、完全な独力で、竜の肉体を討滅できる力を持っているのか。
一人でも竜を討ち漏らせば、一方向でも竜が残っていれば、そこが戦線を崩壊させるウィークポイントとなる。
故に、この八方の竜は指環の勇者が虚無の竜と相対する資格を持つかどうかを選り分ける、篩なのだ。
0114スレイブ ◆T/kjamzSgE
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2018/10/28(日) 19:28:34.96ID:0OX8+3it
(虚無の竜……指環の勇者の戦力を、試しているのか?)

用意された予備の肉体ユニットは八体。奇しくも指環の勇者と同数だ。
そして、わざわざお誂え向きとばかりに、散開して下さいと言わんばかりに、八方向から同時に出現した。
偶然と見るにはあまりにも出来すぎているこの符合が、虚無の竜の意図によるところなのだとすれば。

(歪み、暴走状態にありつつも……奴は自分を破壊できる者を、待っていた……?)

『おい、おい!ぶつくさ考え込んどる場合か!砲塔がこっち向いとるぞ!』

ウェントゥスの忠告が思考に冷水を差し、スレイブは意識を前方に戻した。
彼我の距離はおよそ15歩、跳躍術式ならば一瞬で埋められる。
しかし、既に予備の竜の『ガトリング砲』はスレイブの頭部に狙いを定め終わっていた。

「問題ない。……砲塔の旋回速度と角度は把握した」

空気の爆ぜる音とともに吐き出される無数の鋼礫。鈍色のその軌跡が、スレイブを捉えることはない。
射撃が開始されるタイミングを読んで、跳躍術式にブーストをかけたからだ。
スレイブのいた場所へ、一瞬遅れて着弾する鋼の雨。それをかいくぐってスレイブは跳ぶ。

ガトリング砲は極めて高速かつ断続的に高威力のブレスを射出する強力無比な兵装だ。
だが、どれだけブレス自体の速度が速くとも、射線を決定付けるのは砲塔の角度。
おそらく軸受のようなもので自在に旋回し、仰俯角を変更できるようになっているが、砲塔が旋回する速度には限界がある。

ブレスの予兆を読んで、旋回速度よりも高速で移動すれば、ガトリング砲は当たらない。
当たらなければ――どうということはない。

「"竜の天眼"に比べれば……人間の操る火砲に比べれば!竜の吐息など脅威ではない。
 人間は――虚無の竜に負けない!」

跳躍とともに、一閃。
スレイブの剣が鋼の砲塔を半ばで断ち斬り、ガトリング砲が爆炎に包まれて沈黙する。

「遍く全てに這い回れ――『ディザスター』!」

返す刀に振るう紫電を帯びた斬撃が、予備の竜の頭部を首から斬り落とした。
同時、予備の竜の肉体を無数の稲妻が奔り、武装を灼き焦がしていく。

『頭部センサー欠損により、敵性魔法を感知不能。虚無の力による魔法の消去に失敗しました。
 積層基板の85%にわたって過電流サージによる配線の焼損が発生、武装展開エラー。戦闘行動を維持できません』
0115スレイブ ◆T/kjamzSgE
垢版 |
2018/10/28(日) 19:29:18.77ID:0OX8+3it
断末魔の如く警告音と無機質な案内を挙げて、首なしの予備の竜はその場に倒れ込んだ。
虚無による魔法の破壊さえ封じれば、単独の魔法行使でも十分に致命打を与えられる。
図体が小さくなった分、個人単位でカタに嵌めるのは容易だとさえ言えた。

「終わりだ……!他の連中を助けに行くぞ!」

もはや朽ちていくばかりの予備の竜を一顧だにせず、スレイブは仲間の元へ跳躍するため身を屈めた。
その背後から、聞こえるはずのない声が聞こえた。
0116スレイブ ◆T/kjamzSgE
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2018/10/28(日) 19:30:06.01ID:0OX8+3it
>『――精神ユニットの帰還を確認。インストールを開始します』 

弾かれるように身を回し、振り向きざまに剣を振るうと、金属製の矢のようなものが剣に弾かれて擦過していった。
否、矢ではなく『棘』だ。さながら海底に住む棘皮動物のように、予備の竜の残骸から棘が生え、スレイブを狙っていた。
不意打ちを外した残骸は、あろうことか液状化し、水銀の如く珠の形状を為す。

「なん……だと……!?」

破壊され尽くしたかに見えた予備の竜。果たしてその実態は、液状化した金属からなるスライム状の存在。
これが虚無の竜の正体だとでも言うのか。あるいは。

「進化したのか……たった今、この場で!度重なる破壊に耐え、迅速に肉体を修復できるように……!」

液状の相手に斬撃が通るはずもない。スレイブは思わず一歩、後ずさった。
心の奥にわずかに顔を出した恐れの感情。しかし、すぐにそれは霧散した。

>「……怯まず戦って、奴を破壊して下さい!何度でもです!
 あの液状化能力は、要は虚無の力によって全身を再構築しているだけ!
 何度も繰り返していれば……奴は自分自身を食い尽くして自滅するはずです!」

いち早く状況を分析したシャルムの激が飛ぶ。
スレイブは気圧された己の不明を恥じつつに剣を構え直した。
刃筋を立てるのではなく、剣の腹で殴るような角度で握る。

「斬撃だけが剣士の技じゃない。斬っても効果がないのなら……刃筋を立てずに打撃するまでだ。
 泥仕合に付き合ってもらうぞ虚無の竜。貴様の命が枯渇するその時まで、殴り続けてやる」

覚悟を決めたスレイブが、剣を振りかぶって踏み込んだその瞬間。
背後から砲撃と、それによる破壊の音が聞こえた。
おもわず振り仰げば、天井に大穴が穿たれ、隔てられていた溶岩の層が露出している。
そして溶岩は当然の帰結であるかのように――重力に引かれてスレイブ達の居る空間へと流れ落ちてきた。
0117スレイブ ◆T/kjamzSgE
垢版 |
2018/10/28(日) 19:30:33.73ID:0OX8+3it
「冗談だろう!?」

予備の竜は水銀の棘を赤熱する溶岩へ伸ばし、泡立つ"水面"に突き刺す。
直感的に危険を感じたスレイブが棘を切り落とせば、どろりとした溶岩が棘の断面からこぼれた。
そして、予備の竜の足元には、冷え固まった溶岩の屑が散乱していた。

「溶岩を吸い上げて……その熱を活力に変換しているのか……!」

>「……ディクショナルさん!」

「任せろ!指環の力よ――!!」

部屋の中央に生じた溶岩の滝を包み込むように竜巻を発生させる。
風によって冷やされた溶岩が固まり、現状以上に流れ込んで来ることはなくなった。
しかし、既に流れ込んでしまった溶岩は未だ床に点在し、赤々と光を放っている。

「まずいな……天井のどこに穴を開けられても、大量の溶岩が流れ落ちてくる。
 行動できる領域も大きく狭められた。機動力で撹乱する戦法はもう使えないな」

『淡々と分析しとる場合か!またあのがとりんぐとか言うのが生えてきたら今度こそ詰みじゃぞ!』

「ガトリングを再生される前に叩き潰す。やるぞウェントゥス!」

液状化した予備の竜が再び棘を触手のごとく振るい、部屋に点在する溶岩へと"根"を伸ばす。

「刃鳴散らす禍風よ、檻獄を為せ――『ヴォーバルボルテクス』!」

指環が輝き、予備の竜の周囲に無数の真空刃からなる渦が発生した。
渦の範囲を出ようとする棘を片っ端から斬り落とし、熱の再供給を阻害する。

『修復済のセンサーに感あり。虚無の力による魔法消去を実行します――』

『させるか!"エアリアルスラッシュ"!』

指環から飛び出したウェントゥスが風の刃を放ち、予備の竜の肉体を真っ二つに切断した。
リビルドデバイスなる装置が破壊されたのか、魔法消去は不全に終わる。
0118スレイブ ◆T/kjamzSgE
垢版 |
2018/10/28(日) 19:31:02.44ID:0OX8+3it
(再生しながら戦う予備の竜と違って、こちらは二種の魔法を同時に行使できる。
 魔法を破壊する虚無の力も、異なる二つの魔法を同時に掻き消すことはできない)

手数も、人数も、スレイブ達に利がある。
このまま再生阻害を維持しつつ、間断なく攻撃を加え続ければ、いずれ予備の竜の活力を枯渇させられるはずだ。
虚無の竜と、指環の勇者の戦力を分かつ決定的な差。
それこそが唯一の勝機だと、スレイブは確信していた。

『――データシェアリングにより、敵性存在"指環の勇者"に対する有効戦術のインストールが完了しました。
 プログラムパターン構築。戦術展開の前提段階として、指環の勇者の生体スキャンを実行。
 データーベース参照。クラスタ104に格納されている個体名『アレックス・トレーティア』の構成要素に83%が該当。
 指環の勇者との差異を補完し、『アレックス・トレーティア(1)』として再構築します。
 リビルドデバイス起動。再構築シークエンス完了まで3秒。2、1――』

「何を、言っている……」

背骨を氷柱に置換されたような、鋭い悪寒が総身を駆け巡った。
淡々と並べられる言葉の意味はほとんど分からない。しかし、本能が、直感が、警鐘をこれでもかと鳴らす。

液状の性質を持ち、自在に肉体を再構築できる虚無の竜。
常に学習し、情報を共有し、敵に対して最適な戦術をとる機械じかけの竜。
それが、指環の勇者という、自身を破壊し得る存在と対面したとき、一体何が起こるのか。
答えは、たった今目の前で明らかにされた。

液状の金属が、その形状を固定し、輪郭をはっきりと刻んでいく。
予備の竜よりも遥かに小型。
四肢は細く、しかし全体重をたった二本の脚で支えて直立することで、残る二本を"腕"として自由に扱えるようにした、戦闘の合理性。

人型だ。液状金属は、人間を象った形状へと変貌した。
肌の色こそ金属質なままだが、目鼻立ち、髪型や身に付ける鎧に至るまで、スレイブを模倣した姿だ。
右の手には剣を携え、左の手には――淡く輝く指環がある。

「まさか……まさか!」

『指環の勇者の行動パターン解析。動作を定義し、固有技能として登録します。
 定義完了。発声による特異点の励起を実行――』
0119スレイブ ◆T/kjamzSgE
垢版 |
2018/10/28(日) 19:31:30.53ID:0OX8+3it
まるでスレイブを型取りして鋳造したかのような、鋼の人型は、左手をゆっくりと掲げた。
そして、"口"を模した穴が蠢き、空気とともに音を立てる。
その動作を、人間の行動に照らし合わせるのなら、こう名付けるのが適切だろう。

――"発声"。

『"指環の力よ"』

瞬間、予備の竜の左手に嵌められた指環が一際強く輝き、風が巻いた。
収束した大気は真空の刃を形づくり、スレイブ目掛けて袈裟懸けの軌道で迫る。

「く……!指環の力よ!」

応じるように、スレイブも指環を輝かせた。
二つの異なる色を持った風はぶつかり合い、互いに威力を殺して果てる。

「竜の指環を……模倣しただと……!?」

驚愕に、スレイブは今度こそ硬直した。
虚無の竜に対して唯一無二の優位であった指環さえも、遜色ない形で再構築された。
学習したのだ。指環なしに、指環の勇者と渡り合うことはできないと。そして、自身を改良した。

(戦術を共有、と言っていたな……。まさか、他の予備達も同様に、指環を模倣しているのか?)

それでもなお、まだ絶望的な状況に陥ったわけではない。
スレイブには奥の手がある。問答無用の大火力で、一片も残さず消し飛ばす奥の手が。

しかし……それさえも、虚無の竜が模倣しているとしたら。
虚無の竜が、『竜装』を習得しているとすれば……それこそ、もはや勝ち目はない。
0120スレイブ ◆T/kjamzSgE
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2018/10/28(日) 19:32:12.96ID:0OX8+3it
【予備ユニット八体による個別火力チェック開始。さらにさらに追い込まれてみました。
 虚無の竜が指環の勇者を模倣し、再構築。指環の力を行使】
0121ジャン ◆9FLiL83HWU
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2018/11/03(土) 21:23:57.96ID:i9LcuS4R
「本体はどこだ!?あいつの魂はどこに!」

さらに現れた増援たちを指環の力で吹き飛ばし、薙ぎ払う。
だが鋼を纏った竜だけではなく、彼らに随伴するようにして突撃してくる
鋼鉄の戦士たちは一体一体が完全武装した重戦士だ。
誰か一人でも崩れれば、そこからあっという間に追い詰められてしまうだろう。

>「……散開しましょう。それしかありません」

>「しかし……!」

「やるぞスレイブ!迷ってる暇はねえ!」

シャルムの提案で全員が一斉に散開すれば、この弾幕も薄れ、鋼の竜たちに近づくチャンスも生まれる。
このまま押し込まれるよりは、よほど勝機のある賭けだろう。
ジャンもシャルムの合図に合わせて、指環の力を解き放つ。

>「今です!」

莫大な水流が創り出す波を操り、虚無の竜になるかもしれないその肉体の一つへと突撃する。
鋼鉄の鎧に包まれたその身体は決して鈍重ではなく、素早く腕を振り上げて、腕に搭載された機銃をジャンへと向けた。

「おっと、その鉄砲はもう分かってんだぜ!」

確かに連射力と貫通力はジャンの知る銃をはるかに上回る。
だが、魔術や魔力に対する耐性はまるでないのだ。
分厚く高速で流れる水流の壁を作り、受け流すように銃弾を飲み込んでいく。
そのまま懐に飛び込めば、両腕だけに竜装を纏わせる。
手が変化した長く鋭い五つの爪が龍の胸部に食い込んで、装甲を容易く貫き、ヒトであれば心臓にあたる部分をちぎり潰す。
そのまま上半身と下半身を切り裂くように解体し、鋼の竜は唸り声一つ叫ぶことなく力尽きた。

「……楽に潰せたのはありがたいけどよ。
 なんだか手応えがなさすぎるぜ。まるで本体以外はどうでもいいような――」
0122ジャン ◆9FLiL83HWU
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2018/11/03(土) 21:25:54.06ID:i9LcuS4R
>『――精神ユニットの帰還を確認。インストールを開始します』

身体が弾けるように動いて、金属の槍がジャンの顔を掠めた。
ハーフと言えどオークの皮膚をあっさりと切り裂くような一撃、一体どこからの奇襲かと思えば。
ボロボロに解体された鋼の竜の残骸の中から、這い出るように液状化した金属がずるりと現れる。
錬金術師が使う水銀という物質によく似たそれは、しかし確固たる意思を持って指環の勇者へ対峙した。

「……鉄や金を取り込んで、ガチガチに硬くなったスライムってのは聞いたことがあるけどよ!
 そういうのはノロマで硬いだけ、倒す俺たちは大儲けってのが相場だろうよ!」

液体金属が間を置かず繰り出してくる槍の猛攻は、達人のそれをはるかに上回る。
相手は疲れを知らず、力を込める必要すらないのだ。上下左右あらゆる角度から飛んでくる殺意に、
ジャンはアルマクリスの矛と指環で何度も受け流すが、それにも限界は近い。
他の竜も同じように液体金属となり、指環の勇者たちを着実に追い詰めている。

(竜装で一気に……いや!本体はまだ姿を現してねえ。
ここはみんなと一緒に耐えねえと……!)

ジャンが時間稼ぎのつもりでさらに前に出て、他の竜たちの注意を引くようにウォークライを放つ。
本能の命じるままに力任せに液体金属の触手を掴み、ちぎって踏みつぶす。
やがて一進一退の攻防が続けば、竜の一体が天井を吹き飛ばして溶岩を広間に流し込み、
なんとそれを自分の力として吸収してしまっている。

>『エネルギー源の供給を確認。戦闘を続行します』

>「刃鳴散らす禍風よ、檻獄を為せ――『ヴォーバルボルテクス』!」

手出しができないジャンに代わって、スレイブが溶岩の流出を食い止める。
このままジャンが液体金属が干からびるまで押しとどめれば、魂ごと虚無の竜を消滅させることができるだろう。
その激しい戦闘の中でアクアがふと、ティターニアに念話を飛ばす。

『ティターニア、おかしいと思わないか?
 虚無の竜が用意した肉体は八つ、指環も八つ。
 しかし指環の担い手は今のところ七人。一つ提案があるんだけど……
 奴が全ての指環を取り込むための予備の肉体だとしたら、奴の精神は一人で全ての指環を扱えるほど強大でも、
 肉体がそれほど強度がない。つまりは使い手のない指環――エーテルの指環。あれが……』
0123ジャン ◆9FLiL83HWU
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2018/11/03(土) 21:26:11.24ID:i9LcuS4R
「アクアッ!竜装だ、一気に決着つけてやるぞ!」

液体金属がジャンを模倣し、白銀に輝くジャンそっくりの巨体が拳を振り上げてジャンに飛びかかる。
ウォークライによる身体能力の引き上げまでは模倣できなかったようだが、
極めて高い強度と粘性を併せ持つ液体金属はジャンの肉体よりも頑強だ。
素の肉体では勝ち目がないと判断したのか、アクアに念話を打ち切らせてジャンは竜装を纏う。

「ここまで真似することは……でき……ね……え……」

蒼く輝くサファイアのような竜鱗を纏い、迷わず模倣体へと右手を硬く握りこんで正拳を叩きこむ。
だが、その拳は模倣体の右手が握り潰さんばかりに掴んで離さず、模倣体は静かに詠唱する。

『遍く 全てに 這い回り 虚無の雷を ――ディザスター』

指環の魔力を大量に消費し、魔力の鎧を纏うことで自然そのものを操る竜装は確かに強力だ。
しかし、事実上全ての魔法を模倣できる虚無の竜にとって竜装の模倣は非効率なものであり、
こうして相手を止めるだけの最低限の力と、指環どうしの相性を突いた魔法の行使を行えば十分なのだ。
アクアの水を司る権能では至近距離で放たれた雷の嵐にどうすることもできず、ジャンは模倣体の前に崩れ落ちる結果となる。
竜装は解けて肉体は焼け焦げ、模倣体は躊躇わずジャンの手から指環を抜き取り、自らの指に収めた。

『一つとはいえ……ようやく、この憎らしい指環を我が手に収めることができた。
 我が身体から作られた種族が我に指環を捧げるのは、当然とも言えるがな』

液体金属の口から突如として流暢に語りだすのは、虚無の竜の魂。
精神ユニットと呼ばれたそれは、憎しみと怒りと侮蔑を込めて吐き捨てる。

『あらゆる世界で我は排除される側だった。
 どんな世界であれ、いずれ自ら望んで虚無に還る。その真理を知らないからこそ我を受け入れぬ。
 その度に虚無と生きられるように、世界を再構築してやらなければならなかった。
 指環の使い手よ、貴様らはこのオークとかいう肉塊よりも賢明なヒトであろう。
 今更戦う必要などない。我と手を組み、虚無を遍く世界に広めようではないか』

ジャンを模倣していた虚無の竜は、指環の勇者たちへ誘うように手を差し出す。
周囲にいた鋼の戦士や模倣体は王を迎えるように手を止め、地面にひれ伏して王の言葉を待った。


【指環がついに取られてジャンは気絶、本体がついに現れる】
0124ティターニア ◆KxUvKv40Yc
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2018/11/04(日) 22:02:52.18ID:k1kNN6KO
>「……散開しましょう。それしかありません」
>「しかし……!」

散開を提案するシャルムに対し、反発するスレイブ。
固まっていては一網打尽にされるが、指輪は七つ揃って真の力を発揮するのもまた確か。
散開して各個で撃破できる保証はない。
どちらが正解かは分からないが、当然議論している暇などあるはずもなく。

>「やるぞスレイブ!迷ってる暇はねえ!」
>「あの火力を一点に集中されては防戦一方。
 奴らに対して、私達が間違いなく勝っている点は的の小ささです。
 私がきっかけを作りますから……行きますよ。三、二、一……」

半ばシャルムが押し切る形で、散開して各個撃破する賭けに打って出る。
指輪の勇者が7人に対して、竜は八体。
残りの一体は指輪を持たないジュリアンとパックが相手をすることを余儀なくされるのだろうが
他の心配をしている暇もなく、シャルムと並んで魔術師系クラスのティターニアに、竜のうちの一体が狙いを定める。

「我の相手はそなたということか――」

《ティターニア、ここは私が……》

後方での仲間の支援を得意とするティターニアは、基本的には個別での戦闘には向かない。
そこで大地の英雄との戦いの時にも使った奥の手を行使することとする。

「分かっておる。行くぞテッラ! 竜装《アースドラゴン》!」

指輪に宿るテッラと一体となり自らが大地の竜そのものとして顕現――分かりやすく言えばドラゴン変化だ。
対峙するは、機械の竜と大地の竜。
ほぼ同時に放たれた弾幕とブレスがぶつかりあい、空中で爆ぜて相殺しあう。
時折立ち位置を変えて互いに隙を狙うが、反応速度も共に同じ。
奇しくも二体の力は互角。このままでは千日手と思われたが――

機械の竜の反応が僅かに遅れはじめ、ついにティターニア(テッラ)のブレスが掠る。

《かかりましたね――》

相殺されたと思われていた大地のブレスの余波――砂嵐のようにしか見えないそれ。
それにより関節部分に少しずつ詰まった砂の粒子が、機械の竜の動きを阻害し始めたのだ。
ド派手な爆撃合戦と見せかけて、相手が機械であることを逆手にとった、この地味な嫌がらせこそが本当の狙い。
やがて動きがままならなくなった機械の竜に、全てを砂塵と化す恐るべき風化の魔力を込めた爪の一閃をお見舞いする。
機械の竜は一たまりも無く傷口部分から風塵と化していくと思われたが――

>『――精神ユニットの帰還を確認。インストールを開始します』 

奇妙な声が響くのが聞こえ警戒したのが幸いだった、
機械の竜から銀色の刃がせり出して身を切り裂かんとするも間一髪で飛び退る。
精神ユニット――つまり魂が帰還し、更なる進化を遂げてしまったということか。
しかし絶望している暇は無い。どこからかシャルムが必死で叫ぶ声が聞こえてきた。
0125ティターニア ◆KxUvKv40Yc
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2018/11/04(日) 22:04:00.00ID:k1kNN6KO
>「……怯まず戦って、奴を破壊して下さい!何度でもです!
 あの液状化能力は、要は虚無の力によって全身を再構築しているだけ!
 何度も繰り返していれば……奴は自分自身を食い尽くして自滅するはずです!」

とはいえ、相手が液状化能力を得た以上先程と同じ手は使えない。
ティターニアがドラゴン変化を解くと、機械の竜だった者は姿を変え始め、ティターニアそっくりな姿を模倣する。

「なんだと……?」

使う技まで模倣されるのだとしたら、下手に動く度に不利な状況になっていくということだ。
故にこちらから仕掛けるのが躊躇われる。
更に悪いことに、天上が破壊されて溶岩が流れ込んできた。
その上、液状化した竜はその溶岩を養分とし始める。

>「……ディクショナルさん!」
>「任せろ!指環の力よ――!!」

ジャンがウォークライで竜達の気を引いている隙に、スレイブが風の力で溶岩の流入を阻止。

「――ソリディフィケーション!」

ティターニアはそれに続き、すでに流入した溶岩を大地の力で固め、文字通りの岩とする。
しかし敵はまたすぐに新たな穴を開けてくるだろう、その度に対処していてはきりがない。

>「まずいな……天井のどこに穴を開けられても、大量の溶岩が流れ落ちてくる。
 行動できる領域も大きく狭められた。機動力で撹乱する戦法はもう使えないな」

そんな大ピンチな状況の中、ジャンがアクアとテッラを経由して念話を飛ばしてきた。

>『ティターニア、おかしいと思わないか?
 虚無の竜が用意した肉体は八つ、指環も八つ。
 しかし指環の担い手は今のところ七人。一つ提案があるんだけど……
 奴が全ての指環を取り込むための予備の肉体だとしたら、奴の精神は一人で全ての指環を扱えるほど強大でも、
 肉体がそれほど強度がない。つまりは使い手のない指環――エーテルの指環。あれが……』

『ああ、我も薄々思っていた』

シャルムはエーテルの指輪と無色の指輪を二つ持っているが、どちらの力も完全には引き出せていない。
エーテルの指輪の素体は虚無の竜に対抗するために自らの身を賭して新世界を創造した女神パンゲア。
一方の無色の指輪を素体は、旧世界の創造主でありながらそれを面白がって見ていた全の竜。
ティターニアは、シャルムが両方持つことで2つの指輪が反発しあって力を発揮できていないという可能性に思い至った。

>「アクアッ!竜装だ、一気に決着つけてやるぞ!」

「ジャン殿、迂闊に手を出しては駄目だ!」

見境なく攻撃しては相手に手の内を明かすだけになる可能性がある。
しかし止めるのが一足遅かった。

「――シャルム殿、エーテルの指輪を……」

“ジュリアン殿に渡すのだ”そう言おうとした時だった。
0126ティターニア ◆KxUvKv40Yc
垢版 |
2018/11/04(日) 22:04:45.30ID:k1kNN6KO
>『遍く 全てに 這い回り 虚無の雷を ――ディザスター』

反撃を食らったジャンが、彼そっくりの模倣体の前に倒れ伏す。

「ジャン殿……!」

模倣体は倒れたジャンの指から容赦なく指輪を抜き取り、自らの指におさめた。

>『一つとはいえ……ようやく、この憎らしい指環を我が手に収めることができた。
 我が身体から作られた種族が我に指環を捧げるのは、当然とも言えるがな』
>『あらゆる世界で我は排除される側だった。
 どんな世界であれ、いずれ自ら望んで虚無に還る。その真理を知らないからこそ我を受け入れぬ。
 その度に虚無と生きられるように、世界を再構築してやらなければならなかった。
 指環の使い手よ、貴様らはこのオークとかいう肉塊よりも賢明なヒトであろう。
 今更戦う必要などない。我と手を組み、虚無を遍く世界に広めようではないか』

ティターニアはがっくりと膝をつき、絶望を全身で表現する。

「ああ、全てがおしまいだ……!」

しかしその様子はどこか演技臭く――続く言葉は意外なものだった。
あまりの絶望的な状況に錯乱したとも考えられるが、分かる者には分かるだろう、先代勇者の聖ティターニアが表に出ている。

「あなたのお墨付きの指輪の勇者達がこのザマですよ、責任取りなさい!
もう全の竜の保険はないのですよ!? あなたのやってきたことが全て無駄になってしまっても良いのですか!?」

そして彼女は、意外な者の名を呼んだのだった。

「いい加減に出てこんかい、“エルピス”!」
0127ジュリアン@NPC ◆KxUvKv40Yc
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2018/11/04(日) 22:06:05.44ID:k1kNN6KO
「ぎゃー! ジュリアン様―! 死ぬ死ぬ死ぬ!」

「これで精いっぱいだ! 叫ぶ暇があったら避けろ!」

時間軸は少しさかのぼり、8体の竜との散開しての戦闘時。
ジュリアン&パックの指輪を持たないコンビは、紙一重のところでなんとか持ち堪えていた。
“俺にも指輪があれば――”そんな詮無き考えが頭の片隅から離れない。
指輪の魔女に殺された親友セシリアの敵討ちのために帝国を出奔した――それが全ての始まりだった。
ダーマに身を置いて情報を集め、最初は自ら指輪の勇者になろうと思ったものだが、
奪い取った炎の指輪は彼の問いかけに応えず、一時”預かった”水の指輪も大地の指輪も同じような物だった。
風の指輪は紆余曲折ありつつも彼の部下であるスレイブを選んだ。
そこで腹を括り、指輪の勇者達を手助けするという形に方針転換したものだ。
その後も新たな指輪を手に入れる度に次は自分の番かと少しだけ期待したものだが、
その度にいかにもその属性の使い手として相応しい者が現れ、選ばれていくのを見てきた。
山脈の途中でアルバートと別れる時に交わした言葉を思い出す。

『俺がここに残ってこいつらを食い止める――所詮指輪の勇者ではないからな。
むしろ虚無の指輪を持つお前が一緒に行った方がいいんじゃないか?』

『いや、こいつらの手助けはお前じゃないと出来ない。そんな気がするんだ――』

親友でもあり旧世界の住人でもあるアルバートのその言葉はどこか確信に満ちているようで。
その言葉に後押しされ結局ここまで一緒に来たのだった。あの真意は何だったのだろうか――
シャルムが指輪を二つ持っているがどちらも使いこなせていないので
どちらか一つ受け取った方がいいのではないかとも正直思うが、アルダガとスレイブがそれぞれシャルムに託した物だ。
おいそれと片方寄越せなどとは言えなかった。
結局追いつめられる一方で、ついに決着の時は訪れた。

>『一つとはいえ……ようやく、この憎らしい指環を我が手に収めることができた。
 我が身体から作られた種族が我に指環を捧げるのは、当然とも言えるがな』
>『あらゆる世界で我は排除される側だった。
 どんな世界であれ、いずれ自ら望んで虚無に還る。その真理を知らないからこそ我を受け入れぬ。
 その度に虚無と生きられるように、世界を再構築してやらなければならなかった。
 指環の使い手よ、貴様らはこのオークとかいう肉塊よりも賢明なヒトであろう。
 今更戦う必要などない。我と手を組み、虚無を遍く世界に広めようではないか』
0128ジュリアン@NPC ◆KxUvKv40Yc
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2018/11/04(日) 22:08:18.33ID:k1kNN6KO
ああ、何も力になれなかったな――そう思った時だった。
素っ頓狂なことを叫び出した者がいた。心なしか自分の方を向いて言っているようにも見える。

>「あなたのお墨付きの指輪の勇者達がこのザマですよ、責任取りなさい!
もう全の竜の保険はないのですよ!? あなたのやってきたことが全て無駄になってしまっても良いのですか!?」
0129ジュリアン@NPC ◆KxUvKv40Yc
垢版 |
2018/11/04(日) 22:10:53.34ID:k1kNN6KO
「おいエルフ、何を言っているのだ?」

訳が分からず戸惑うジュリアンだったが、ティターニアの次の言葉で理解した――理解できてしまった。

>「いい加減に出てこんかい、“エルピス”!」
0130ジュリアン@NPC ◆KxUvKv40Yc
垢版 |
2018/11/04(日) 22:12:09.26ID:k1kNN6KO
その言葉に応えるように、辺りがまばゆい光に包まれ、宙空にエルピスの幻影が現れる。
思えば、エルピス打倒後、指輪に宿る竜達が虚無の竜の居場所を感じられるようになっていたり、
その存在が完全には消えていないように感じられる節もあった。
負けた時に“指輪にはなりなくない、このまま消えたい”等と言っていたが、
人間を信じたいがために人間を滅ぼそうとしていた等と抜かした筋金入りの天邪鬼だ。
今更ノコノコ指輪になりに出てきたところで何ら不思議はない。
元の口調に戻ったティターニアがいつもの調子で煽って見せる。

「やはり出てきおったか……我に煽られたのが余程悔しかったのか!
天邪鬼なそなたが指くわえて見ておれと言って大人しく見ていられるはずはないと思ったわ!」

『……貴様は少し黙っていろ。白き魔術師よ――手を掲げよ! これよりそなたの指輪となろう!』

ジュリアンの指輪になるというエルピス。しかしジュリアンはそれを拒否した。
それもそのはず、エルピスとはすなわち指輪の魔女の正体――
つまりそもそもの発端となったセシリアの仇そのものだ。

「……ふざけるな! 誰が貴様なんかに……」

その時だった。
エルピスの後ろから、今までに指輪の魔女によって死に追いやられた者達の幻影が現れ、指輪の勇者達の側に付く。
海底都市にてティターニア達と共に戦ったマジャーリンが、ティターニアの横に並び立つ

『エルフに力を貸すのは気が進まんが仕方あるまい』

続いて、ユグドラシア防衛戦にて散ったパトリエーゼがシノノメの横に立ち、彼女が持つ指輪に宿るアルマクリスに語りかける。

『ふふっ、また一緒に戦えるね!』

そして――ジュリアンの前には、忘れもせぬ――帝国が誇った大神官
それより何より、アルバートと三人で笑いあった大親友の姿があった。

「セシリア……!」

『久しぶりですね、ジュリアン……共に世界を救いましょう――!』
0131ジュリアン@NPC ◆KxUvKv40Yc
垢版 |
2018/11/04(日) 22:13:14.40ID:k1kNN6KO
エルピスは記憶を操る力を持つ竜。
これが、自らが死に追いやってきた者達の記憶から再現したものだということは分かっている。
それでも――ジュリアンは手を掲げた。

「セシリアに免じて……使ってやる! 来い、エルピス!!」

その手に光が収束し、眩く輝く指輪となった。
セシリアの幻影が呪文を唱えると、戦闘域全体に清浄なる光が降り注ぐ。

『――The great gospel《大いなる福音》』

蘇生魔法すらも可能だったという、世界に名を轟かせた伝説の大神官の最上級回復魔法だ。
戦闘不能となっているジャンもすぐに再起可能となることだろう。
ティターニアはジャンの傍まで歩み寄り、竜装を纏い模倣体と対峙する。

「さあ、まずは指輪を取り戻すぞ――竜装《ユグドラシア》!」

ユグドラシアとは元々、神樹ユグドラシルを女神として神格化した時の呼び名。
植物の女神のような装甲を纏ったティターニアは、杖の先から
しなやかさと刃物の鋭利さと併せ持つ蔦を無数に伸ばし、指輪を取り戻すべく模倣体の指ごと切り取りにかかる。
そしてジュリアンはシャルムの方に向かって叫んだ。

「俺も宿敵と手を組んだんだ――全の竜と女神! いがみあっている場合ではないぞ!」

きっと、シャルムの持つ二つの指輪が決め手になる――そんな奇妙な確信があった。

【ジュリアンが8人目の指輪の勇者として覚醒。反撃ターン開始!】
0132シャルム・シアンス ◆fc44hyd5ZI
垢版 |
2018/11/07(水) 15:45:12.38ID:suvvEmAI
ディクショナルさんの魔法が、天井から流れ込む溶岩を冷却、固化させる。
既に流入してしまった溶岩も、ティターニアさんが処理してくれた。
ひとまずは、急場を凌げた……ですが奴らは何度だって天井に穴を開けられる。
それを何度も繰り返されれば、天井そのものが崩れ落ちてくる可能性もある……。

戦わないと。
柄にもなくあちこち飛び跳ねたせいで息が整わない……。
『フォーカス・マイディア』の副作用で、まだ軽度だけど頭痛もする……。
それでも、この眼の前にいる虚無の竜を、私に釘付けにしなければ。
そう、やるべき事は変わっていない。
一人、最低一体。この虚無の竜を封殺する。

「『フォーカス・マイディア』」

液状化の能力を得た虚無の竜に銃弾は通じない。
残る一丁の魔導拳銃に錬金術を施す。
形成するのは……魔導書。
正確には、大量の魔法陣を羅列しただけの分厚い目録ですが、とにかく。
可能な限りの魔法陣を作り出してから、『フォーカス・マイディア』を解除すれば。
消耗は最小限に抑えつつも大量の魔法を素早く行使出来る。

虚無の竜がガトリング砲を再生。
「紫電の槍』を用いて先手を取り破壊。

体表から突出し迫りくる金属の槍。
あらかじめ展開しておいた『審判の鏡』で弾き返す。

虚無の竜が液状化し、鋼線のように変化し、私を取り囲む。
その形態なら熱による変形は容易い。
『炎の刃』で切り刻み、ばらばらにする事でエネルギーを浪費させる。

……行ける。
虚無の竜の戦術と能力は、幸いにも私にとって相性がいい。
これなら、このまま奴を抑え込める……

>『――データシェアリングにより、敵性存在"指環の勇者"に対する有効戦術のインストールが完了しました。
 プログラムパターン構築。戦術展開の前提段階として、指環の勇者の生体スキャンを実行。

そう思った矢先の事でした。
虚無の竜が何か、私には理解出来ない言葉を連ね……そして私の姿を模倣したのは。

「……馬鹿な」

私はそう呟くのが精一杯で……すぐに、新たな魔法を発動しました。
『鬱屈する大火』……圧縮した炎によって矢を形成し、対象を内部より爆破する炎魔法。
放たれた矢は瞬く間に虚無の竜へと肉薄し……炸裂する。

爆炎が晴れて、虚無の竜は……その体表が僅かに損傷しているだけでした。
模倣した私の姿を、崩す事すら出来ていない。
魔法の威力は十二分だったはず……あの一瞬で、虚無の力を行使された……?

そんな私の思考を遮るように、虚無の竜はその右手を私に向けました。
そして……

「『フォーカス・マイディア』……当機体の処理能力の向上を確認。
 有用な戦術パターンとして、戦闘行動と並行してデータシェアリングを開始します」

……私が今まで放ってきた魔法の数々が、私へと返ってきた。
その全てが、私が使用した時よりも強力になって、何倍にも増えて……一斉に。
咄嗟に私も『フォーカス・マイディア』を再発動し、迎撃する。
0133シャルム・シアンス ◆fc44hyd5ZI
垢版 |
2018/11/07(水) 15:47:42.80ID:suvvEmAI
……速い。私が魔法を放ってから、それを撃ち落とせるほどの回転率……。
本当に、『フォーカス・マイディア』を再現されている……。

駄目だ。反撃に転じられない。
反撃すれば、相手に更なる手数を与える事になる。
そうなればこの拮抗した状況を保ち続けられるか、分からない。

このまま奴がエネルギーを使い果たすのを待つ。
それが私に取れる唯一の戦術……。
だけど……それはつまり、奴の更なる戦術共有を許してしまうという事……。

>『遍く 全てに 這い回り 虚無の雷を ――ディザスター』
0134シャルム・シアンス ◆fc44hyd5ZI
垢版 |
2018/11/07(水) 15:48:37.08ID:suvvEmAI
……戦場に響く、無数の雷鳴。
それが、私達が辛うじて保っていた均衡が崩れる音だと、私には分かってしまいました。

私と魔法を撃ち合っていた虚無の竜は、最早その必要がないと言わんばかりに静止している。
振り返ってみれば……私の目に映ったのは倒れ伏したジャンソンさんと、その手から指環を奪い取る虚無の竜でした。

>『一つとはいえ……ようやく、この憎らしい指環を我が手に収めることができた。
 我が身体から作られた種族が我に指環を捧げるのは、当然とも言えるがな』
>『あらゆる世界で我は排除される側だった。
 どんな世界であれ、いずれ自ら望んで虚無に還る。その真理を知らないからこそ我を受け入れぬ。
 その度に虚無と生きられるように、世界を再構築してやらなければならなかった。
 指環の使い手よ、貴様らはこのオークとかいう肉塊よりも賢明なヒトであろう。
 今更戦う必要などない。我と手を組み、虚無を遍く世界に広めようではないか』

……ジャンソンさんがやられて、指環を奪われた。
状況は完全に変化した。奴らにとって有利なように傾いてしまった。

>「ああ、全てがおしまいだ……!」

やめて下さい、ティターアさん。
あなたが一番に諦めたら、このパーティの一体誰が希望を持っていられるって言うんですか。
嘘でもいいから、まだやれるって。そう言って……

>「あなたのお墨付きの指輪の勇者達がこのザマですよ、責任取りなさい!
 もう全の竜の保険はないのですよ!? あなたのやってきたことが全て無駄になってしまっても良いのですか!?」

「……ティターニアさん?」

>「おいエルフ、何を言っているのだ?」
>「いい加減に出てこんかい、“エルピス”!」

不意に、周囲に眩い光が満ちる。
あの光竜……まさか。

>「やはり出てきおったか……我に煽られたのが余程悔しかったのか!
  天邪鬼なそなたが指くわえて見ておれと言って大人しく見ていられるはずはないと思ったわ!」
>『……貴様は少し黙っていろ。白き魔術師よ――手を掲げよ! これよりそなたの指輪となろう!』

私達の強さを確かめて、完全な敗北の証として消滅した……それすらも嘘だった?
……どこまでひねくれてるんですか、まったく。

>「セシリアに免じて……使ってやる! 来い、エルピス!!」
>「さあ、まずは指輪を取り戻すぞ――竜装《ユグドラシア》!」
>「俺も宿敵と手を組んだんだ――全の竜と女神! いがみあっている場合ではないぞ!」

ですが……そのおかげでなんとか首の皮一枚繋がったのも事実です。
とは言え頼りの指環は……未だにどちらも、沈黙したまま。
それは二つの指環……女神と全の竜が反発しあっているから?

……本当に?
全の竜は言っていました。
これは他の指環に比べればほんのアクセサリーのようなものだと。
そりゃ私だって、そうは言っても全の竜が遺した指環なんですから、何かの助けになるはずだと思っていましたけど。
だけど……この透明な指環からは、何の力も感じられない……。
……本当に、からっぽのようにしか……。
0135シャルム・シアンス ◆fc44hyd5ZI
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2018/11/07(水) 15:49:15.07ID:suvvEmAI
心の中でそう独りごちた、その時。
私の頭の中で……一つの閃きが生じました。
この透明な指環の、正しい用法について。

「……まさか」

この指環は、からっぽなんだ。
……だからこの、空の指環を使えるようにしたいなら……方法は簡単です。
中身を満たしてやればいい。
0136シャルム・シアンス ◆fc44hyd5ZI
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2018/11/07(水) 15:52:37.60ID:suvvEmAI
私は祈るように、両手を重ねる。
……そう言えば、この全の指環を譲り受けてから、大事な事を忘れていました。
あなたはこの世界を創造した女神様なのに……祈りの一つも捧げないまま、こんなところまで来てしまった。
そりゃ、声が聞こえなくて当然ですよね。

……女神様。もしも、あなたが私を見そなわしていらっしゃるのなら、どうか。
私は今まで信仰とは無縁の人生を送ってきました。
ですがお願いです。私は、私のかけがえのない友人を、バフナグリーさんを裏切りたくありません。
どうか彼女を、あなたの敬虔な信徒を後悔させない為に、力を貸して下さい。

「……指環の、力よ」

そして……今までで最も強く、全の指環が輝きを放ちました。
……からっぽの指環に、力が満ちていく。

『おいおい、聞いたかパンドラ?健気な願いじゃないか。
 それを君は今の今まで祈りが捧げられていないからと無視を決め込んで……ひどい奴だなぁ』

『……とうの昔に手放した名とは言え、今更親しみを込めて私を呼ぶ事を、あなたに許した覚えはありませんよ。全竜よ。
 それに……無視していた訳ではありません。ただ、祈りなき心に、私の声は、届けたくても届かない。それだけの事です』

二つの指環から現れる幻体。
星都で相見えたパンドラとまったく同じ姿をした女神様……随分と体長の縮んだ全の竜。

『相変わらずつれないな。私の巫女をしていた頃の、可愛げのある君が懐かしいよ……。
 まぁ、それはさておき……もう一度見せ場がもらえるのはありがたい事だ。
 残念ながらカーテンコールまでは立ち会えそうにないが』

全の竜がそう言うと……不意に私の左手が、私の意図に反して暴れ出しました。
左手に嵌めた指環が……私の指から、逃れようとしている?

「一体、何を……」
『邪魔をしてもいいが、おすすめはしないよ。指環の伝承をまったく知らない訳じゃないだろう?
 指環を一人で独占する事は出来ない。二つの指環を行使すれば……その者は命を落とす。だからここは……』

私の指から飛び出すように抜けた指環を、全の竜の幻体が口で受け止める。
そしてそのまま頬張り……飲み込んでしまった。

『素直に、私に任せておきたまえ』

次に全の竜が口を開くと、そこから吐き出されたのは手短な言葉と……目の眩むような閃光。
全属性のブレスが、周囲の敵をいっぺんに薙ぎ払う。

『……まぁ、こんなところか。最終章の山場を見逃すのは辛いが……仕方ないか』

全の竜は私に振り返って、そう言いました。
……己の幻体が急速に朧気になっていくのを、気に留めもしないで。

『この指環に残っていたのは……ほんの木霊のようなものでね。
 物語の結末が見たくてこっそり隠しておいたんだが……もう暫くもしない内に消えてしまうだろう。
 なに安心したまえ。指環そのものは、私がいなくなった後も残る。彼に拾わせて、またその手に返してもらうといい』

「……こんな時に、何を馬鹿な事を」

『くっくっ、余計なお世話だった……かな?まぁ精々頑張る……事だ……。
 なにせこの世界のフェイルセーフは……君達が壊してしまったからね……。
 やり直しは……もう出来ない……だが……だからこそ……君達は…………んだろう……?』

全の竜の幻体が消えて……私は虚無の竜へと向き直りました。
全の竜のブレスを唯一防御していた……ジャンさんから指環を奪った、あの虚無の竜へと。
0137シャルム・シアンス ◆fc44hyd5ZI
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2018/11/07(水) 15:54:10.04ID:suvvEmAI
『……無駄だ。今更予備の肉体を破壊したところで、お前達に勝ち目はない。我が肉体は進化し続けている』

指環の力によって創り出された分厚い水壁。
それが奴への攻撃を全て受け流し、押し潰している。
 
『お前達を屠る為に、最早この指環の力を使う必要すらない。こんなものは私にとっては、ただのエネルギー源に過ぎない。
 諦めろ……お前達なら分かるはずだ。何もかもが虚無に飲まれれば、それはつまり、全となんら変わらないという事が』

加えて『フォーカス・マイディア』による無数の多重結界まで……。
今更あんな甘言に乗るつもりは毛頭ありませんが、あの防壁は厄介です……。
0138シャルム・シアンス ◆fc44hyd5ZI
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2018/11/07(水) 15:57:23.05ID:suvvEmAI
私がどうにか突破する方法を考え始めた時でした。

「……例えあなたが、私達よりずっとずっと強くなっていても、私達は諦めたりしない」

不意に、虚無の竜と向き合うように……ハムステルさんが、私達の前へと歩み出たのは。

「諦める事ならいつだって出来た。諦める理由なんて、いくらでもあった。
 指環なんて伝説のアイテム、見つかりっこない。帝国と喧嘩したっていい事なんてなにもない。
 世界の命運を背負わされなきゃいけない理由も、世界の創造神に歯向かう必要も、なかったのに」

……その声音は、私が知る彼女の、記憶を失った童女のようではありませんでした。

「それでも、ここまで来た」

彼女は、傷の癒えた……しかしなおも倒れたままのジャンソンさんの傍で膝を突く。
そして……自分の左手から指環を抜いて、

「……勝手に諦めて記憶を捨てた小娘なんて、置いていけばよかったのに。だけど、諦めなかった」

それを、彼の左手に嵌める。
……何を、考えているんですか。ハムステルさん。
まさか……

「ジャンさん。わたしを、私を。ここまで連れてきてくれて、ありがとうございます。
 その恩返しをさせて下さい。メアリさん……ジャンさんを、守ってあげてね」

『……我が誘いを断るつもりなのか?』

「ええ、そう聞こえませんでしたか?」

『……なるほどな。ならば――文章自動生成プログラムによる心理誘導に失敗しました。通常の戦闘行動を再開します』

瞬間、ハムステルさんが床を強く蹴り出し、虚無の竜へと飛びかかる。
なんて、なんて無謀な事を!
指環もなしに虚無の竜に挑むだなんて……
0139ラテ・ハムステル ◆fc44hyd5ZI
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2018/11/07(水) 15:58:59.74ID:suvvEmAI
 
 
 
ジャンさんに指環を預けると、私は虚無の竜めがけて飛びかかった。
目の前にはまるで滝のような水の防壁と、何重にも展開された魔法障壁。

「駄目ですハムステルさん!」

後ろからシャルムさんの声が聞こえる。
だけど今更踏み留まる事なんて出来ない。
それに……心配ご無用ですよ。だって、

「……指環の力よ!」

ジャンさんに渡したアレ、フェンリルの力で作ったイミテーションだもん。
つまり……久々に使わせて頂きました、『ヒュミント』ですよ。
まぁ相手はゴーレムなんですけどね。
0140ラテ・ハムステル ◆fc44hyd5ZI
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2018/11/07(水) 16:03:07.85ID:suvvEmAI
「嘘ってのは、こう吐くんですよ。
 本物の指環は……もう少しだけ待っててね、ジャンさん」

遥か天上から地の果てまでどこまでも届き、遮るものをすり抜ける光。
その力を私自身に宿せば……どんなに分厚い結界だって通り抜けられる。

虚無の竜は何の妨害もしなかった。出来なかったって言うべきかな。
私の嘘に、見事に騙されてくれたみたい。
結界の内側に辿り着いて、私はジャンさんの姿をした虚無の竜を睨み上げた。

「メアリさん!」

瞬間、周囲に無数の『ファントム』が現れる。
光の指環によって生み出された幻影……見分けなんてつけられる訳がない。

『魔法消去を実行――』

「遅いよ」

だけどそのファントムこそが本当はブラフ。
だって私はただまっすぐに、虚無の竜に斬りかかってるんだから。
フェンリルの大爪が、金属製の頭に深く突き刺さる。
メアリさんが照らしてくれた、虚無の竜の急所へと。

『――理解不能、非効率的な戦術です。メインCPUに著しいダメージ――展開中の術式を維持出来ません。再構築が必要です』

周囲に張り巡らされていた結界が消える。
よーし、このままジャンさんの指環も取り戻して……。
そう思った私が右手を振り上げた瞬間……水の指環が虚無の竜の右手の中に飲み込まれて、消える。

そんなのズルい……なんて声に出す暇もなく、虚無の竜の胸部が波立つ。
液状化の能力……それで何をしようとしてるかは分かる。
変形して、ノーモーションで私に反撃するつもりなんだ。
それは分かってるけど……この体勢からじゃ、防御が間に合わない……!
ごめんだけどメアリさん、防御お願い……

『――魔法消去を実行します。防壁の消滅を確認』

……メアリさんの張った結界が、虚無の力によって霧散する。
これは、本当にやばいかも……

「そうはさせませんの!」

不意に響くフィリアちゃんの声と、甲高い金属音。
同時に私の体を包む強い慣性……ムカデの王様が、私を掴んで防御して、そのまま引き寄せてくれたんだ。

「あ、ありがとフィリアちゃん!今のはやばかった!
 そんでもって……メアリさん!
 アイツが飲み込んだ指環の位置を教えて!」

『任せて下さい!』

虚無の竜に取り込まれた水の指環、その位置が光の指環によって照らし出される。
それはほんの一瞬しか持たない、虚無の力を使われればすぐに消えてしまう光。
……でも、一瞬あれば十分。
0141ラテ・ハムステル ◆fc44hyd5ZI
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2018/11/07(水) 16:03:40.44ID:suvvEmAI
『魔法消去を――』

「――闇の指環よ」

だってシノノメさんが既に、私と入れ替わる形で前に出ているから。
闇の指環によって創り出された無数の刃が虚無の竜へと襲いかかり――
0142ラテ・ハムステル ◆fc44hyd5ZI
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2018/11/07(水) 16:08:53.05ID:suvvEmAI
『――実行します』

だけどぎりぎり届かない。虚無の力によって掻き消される。
それでもシノノメさんは構わず腕を突き出した。
そして鋭く響く金属音……。
シノノメさんの腕から生えた黒い長剣が、虚無の竜の胸を貫いている。

「……生憎、これは私の体の一部ですので。魔法として掻き消す事は出来ませんよ」

その剣先には……抉り出された、水の指環。
そしてあの長剣は文字通りの命ある刃。
指環は剣先に弾き飛ばされて……ジャンさんの元へと弧を描く。

『動力供給源をロスト。形勢が悪化しています――』

……なんとか、また状況をひっくり返せた。
シャルムさんと……全の竜のおかげで、こっちが数の有利を取り戻したから。
私達の、いつもの戦い方を取り戻せたから。今なら、このまま押し切れるかもしれない!

「やれる!やれますよ!みんなの力を合わせればきっと勝てる……」
 
    
  
『――新たな戦術プログラムの必要性を承認、再構築を開始します。推定所要時間は――60秒』

……今よりまだ、強くなるって言うの?
この状況ですら結構危ない賭けをして、なんとか漕ぎ着けたって言うのに……。
……だけど、今更そんな事でビビってる暇なんて、ない!

「……大丈夫!私達ならきっと勝てます!いえ……勝たなきゃいけないんだ!」

……あと一分。あと一分の内にあいつを倒しちゃうしかない。
これは、強がりなんかじゃない。私は心の底からそう思ってる。
私達はきっと勝てるし……勝たなきゃいけない。
私達が今まで冒険してきた世界を、出会ってきた人達の……人生を、塗り潰して作り変えるなんて!
そんな事、絶対に許しちゃいけない!



【予備の肉体が殲滅され、指環を奪取。
 しかし虚無の竜は更なる進化をしようとしている!】
0143スレイブ ◆T/kjamzSgE
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2018/11/12(月) 23:17:44.18ID:Es87ipxb
液状金属で模られた『スレイブ』が、剣を片手に迫り来る。
スレイブもまた同様に剣を構え、それを迎え撃った。

「この速度――跳躍術式も模倣しているのか!」

鋼と鋼の激突が火花を散らし、跳ね返った慣性を威力に変えて二合、三合の打ち合い。
模倣体が振るった下段を横薙ぎにする剣を跳躍で回避し、こちらの唐竹割りは半歩横にずれて躱される。
空いた手から牽制とばかりに放った雷撃は、模倣体の張った風の障壁によって逸らされた。

前方、模倣体が石畳を割らんばかりの勢いで踏み込む。
剣を握る腕を深く引き、腰を落としたその予備動作に、見覚えがあった。

「――!!」

風を巻いて飛んできた切っ先。スレイブの首筋を掠めて宙を穿つ。
剣士のスキルが一つ、『瞬閃』。ダーマ式の軍用剣術だ。既に模倣体は、肉体だけでなく技術さえも模倣していた。
間一髪でそれに気付いたスレイブは身を低くして殺傷圏を掻い潜り、かち上げるように逆袈裟の斬撃を放つ。
模倣体は鎧を纏った腕にスレイブの剣を滑らせるようにして機動を逸らし、回避。
返す刀の一撃に剣同士がぶつかり合い、慣性を交換して二つの影は距離をとった。

拮抗している。
得物は共に取り回し重視の片手剣。避けても弾いても、致命的な隙は生まれ得ない。
再現された指環の魔力もまたスレイブのものと同出力だ。押し切るのは難しい。

(まずいな……埒が空かない。このままではジリ貧だ)

時間をかけることが有利に働くのは虚無の竜側だ。
生身の肉体と違い、奴らには疲労がない。無限に近い再生能力もある。
ほんのささいなボタンの掛け違えで、一気に窮地へ押し込まれるであろうことは、数合の攻防で理解できた。
幸いとも言うべきは、こちらが竜装を見せていないためか、敵も竜装を使ってこないこと。
そして、指環の竜――スレイブにとってのウェントゥスのような、相方が存在しないこと。

『とにかく魔法を叩き込め、ウェントゥス。数の利があるうちに火力差で一気にカタをつけるぞ』

『雑な指示じゃなぁ。"臨機応変に頑張れ"とほぼほぼ変わらんじゃろそれ』

『根性論は嫌いか?』

『いんや。年寄りにはそんくらい雑なほうがよく響く』

模倣体へと進化したとはいえ、虚無の力による魔法消去は健在と見るべきだ。
ならば、やることは変わらない。ウェントゥスと協働して、攻撃魔法の十字砲火。
加えて近接攻撃も織り交ぜれば、活路は見えるはず――
0144スレイブ ◆T/kjamzSgE
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2018/11/12(月) 23:18:07.94ID:Es87ipxb
「いくぞ――指環の力よ!」

スレイブは模倣体目掛けて吶喊する。同時に真空の刃が模倣体を包むように弧を描いて強襲。
再び剣と剣が刃鳴を散らす刹那、模倣体の背面に出現したウェントゥスが紫電を奔らせた。
人竜一体の飽和攻撃、全方位からの風魔法が、寸分違わず同時に模倣体を襲う。

(魔法消去を使ってみろ――その瞬間、俺の剣が首を落とす!)

模倣体が口を開く。
果たしてそこから漏れる言葉は、スレイブの想像した魔法消去の通告ではなかった。

「戦術プログラム第二段階へ移行。『特異点の共有』が完了しました」

模倣体の胸部が膨らむ。呼吸を必要としないはずの装置が、息を吸った。
その動作の意味するところをスレイブが察知する頃には、すべてが遅かった。
模倣体の口から放たれた轟音が大気を揺らがし、スレイブは咄嗟に剣を放って耳を塞ぐ。
鼓膜の破損は免れたものの、魔法の行使に必要な集中が消え失せ、風の刃も紫電も明後日の場所を穿って果てた。

(これはっ……ジャンの!『ウォークライ』を、模倣しただと……!)

思考が現状に追いつくと同時、模倣体の拳がスレイブの鳩尾を直撃した。
鎧越しに穿たれた内臓が悲鳴を上げ、肺の中身が全て吐き出されるままにスレイブは放物線を描く。
なんとか受け身は成功したが、呼吸がうまく行かずにそのまま膝をついた。

「他の……勇者の能力さえも……模倣出来るというのか……!」

受け入れがたい現実ではあるが――今目の前に立つ模倣体は、スレイブとジャン、二人の能力を一身に宿している。
おそらくジャンだけではない。ティターニアの魔法も、シャルムの魔導技術も、データシェアリングとやらで共有しているのだ。
指環の勇者に対する有効戦術。これまで培ってきた『仲間の能力』によって、彼らは窮地に追い込まれた。

(まずい――)

背筋を襲った直感に突き動かされるように、スレイブは視線を走らせる。
その先では、ジャンが水の竜装を纏って模倣体と肉弾戦を演じていた。

>『遍く 全てに 這い回り 虚無の雷を ――ディザスター』

模倣体がディザスター――スレイブの魔法を模倣した術式を放ち、稲妻がジャンを打ち据える。
頑強な体躯が見る間に焼け焦げ、ジャンが崩れ落ちていく瞬間を、目の当たりにした。
0145スレイブ ◆T/kjamzSgE
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2018/11/12(月) 23:18:31.33ID:Es87ipxb
「ジャン……!」

水の指環にとって、風の指環の天候操作は極端に相性が悪い。
懸念は現実となり、倒れ伏したジャンの手から、模倣体は指環をつまみ上げた。

竜の指環が奪われた。
戦力の均衡が、崩れた――
すでにスレイブと相対していた模倣体は動作を停止している。
指環を手にした以上、戦力を分散させる必要がないからだ。

>『一つとはいえ……ようやく、この憎らしい指環を我が手に収めることができた。
 我が身体から作られた種族が我に指環を捧げるのは、当然とも言えるがな』

(口調が……変わった……?)

ジャンを倒した模倣体は、それまでの無機質な音声ではなく、抑揚と感情に満ちた言葉を口に出す。
機械的に世界を再編成する装置であるはずの虚無の竜が、まるで意志を持っているかのような言動。
違和感はあれども、その理由を考察する余裕はスレイブにはなかった。

>「ああ、全てがおしまいだ……!」

ティターニアが五体を地に投げ、絶望を口にする。
スレイブも同感だった。唯一の優位点であった指環は敵の手に落ち、もはや打つ手はない。
このまま、かつて虚無の竜に挑んだ者たちのように、世界の再構成を待つばかりなのか。
命を捨てて吶喊し、指環を奪い返す……それが不可能であることなど、誰に言われるでもなく理解できてしまった。

しかし、ティターニアは口ぶりとは裏腹に、希望を捨ててなどいなかった。
この土壇場で、虚無の竜を相手に、彼女は口三味線を弾いていたのだ。

>「いい加減に出てこんかい、“エルピス”!」

口調は幼子を叱るかのように。
呼んだ名は、敗北を認め、消滅したはずの――光竜。
その場に居るはずもない者の名に、応じたのは虚空ではなく、生きた者の声。

>「セシリアに免じて……使ってやる! 来い、エルピス!!」

「ジュリアン様……!?」

パックと共に8体目の模倣体と戦っていたジュリアンが、光の魔力をその身に宿す。
ラテの持っているはずの光の指環は健在だ。ならば、新たに指環を創造したとでも言うのか――
0146スレイブ ◆T/kjamzSgE
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2018/11/12(月) 23:18:50.70ID:Es87ipxb
『光と闇の指環は、もともと一つずつってわけじゃないからの。要は、ものの見方次第じゃ』

ウェントゥスは訳知り顔でそう能書きを垂れるが、おそらく何もわかってはいないだろう。
メアリやアルマクリスがそうであったように、光と闇の指環は依代となる竜を選ばない。
ならば、エルピス自身を単なる依代として扱っても、道理は通るというわけだ。

>『――The great gospel《大いなる福音》』

呪文を唱えたのは、ジュリアンの隣に立つ幻影。
スレイブは伝聞でしか知らない、ジュリアンが帝国を出奔する原因となった、彼の同胞。
五年の歳月を経て、死が別けた二人の運命が、ようやくこの時重なったのだ。

>「俺も宿敵と手を組んだんだ――全の竜と女神! いがみあっている場合ではないぞ!」

ジュリアンがそう発破をかけたのは、エーテルと全の指環を持つシャルムだった。
彼女は何かに気付いたように二つの指環を、それが嵌った両手を重ねて、祈る。

>「……指環の、力よ」

暗く、何の輝きも宿さなかった全の指環が、一際大きな光に満ちた。
エーテルの指環――女神パンドラと全の竜。
居場所を同じくして、しかし袂を分かった二つの存在を、シャルムの祈りがつなぎ合わせたのだ。

「技術者に祈りを要求するとは……どこまでも底意地の悪い竜め」

だが、だからこそこの祈りには意味がある。
かつて、神官アルダガは「祈り」を他者との力の共有を表す所作であると定義した。
手と手を合わせ、指を組み、自分と誰かが平等に幸せになることを望む意志の表現。
他者に与え、他者から与るために『手を繋ぐ』原初の仕草だ。

シャルムはその両手で、見事に繋いで見せた。
女神パンゲアと、全の竜を。
そして、ここにはいないアルダガと――他ならぬ彼女自身を!

>『お前達を屠る為に、最早この指環の力を使う必要すらない。こんなものは私にとっては、ただのエネルギー源に過ぎない。
 諦めろ……お前達なら分かるはずだ。何もかもが虚無に飲まれれば、それはつまり、全となんら変わらないという事が』

依然として虚無の竜とスレイブ達の間には、歴然とした力量差が横たわっている。
水の指環を取り込み、如何なる攻撃も阻む障壁が、瀑布のごとく展開している。
水流隔壁は防御だけでなく、シャルムの展開するプロテクションさえも蝕みつつあった。
いずれ波濤に押し潰され、飲み込まれるのも時間の問題だ。
0147スレイブ ◆T/kjamzSgE
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2018/11/12(月) 23:19:16.57ID:Es87ipxb
>「……例えあなたが、私達よりずっとずっと強くなっていても、私達は諦めたりしない」

そのとき、ラテが不意に前に出た。これまでのような子供じみた口調ではない。
それはおそらく、共に旅をしていたジャンやティターニアが誰よりも知っているだろう。
彼女はその手に嵌った光の指環を、ジャンの手へと嵌め直した。

>「ジャンさん。わたしを、私を。ここまで連れてきてくれて、ありがとうございます。
 その恩返しをさせて下さい。メアリさん……ジャンさんを、守ってあげてね」

「なにを、するつもりだ……」

指環を捨て、生身となったラテが、水流障壁へと飛び込んでいく。
指環の保護なしに障壁を身に受ければ、人間の身体など簡単に消し飛ぶだろう。
ラテのしていることは、自殺行為以外の何者でもない。

>「駄目ですハムステルさん!」

シャルムの悲鳴じみた制止も虚しく、ラテは障壁の中へ消えていった。
――消し飛んだのでは、ない。指環もなしに、彼女は障壁を突破したのだ。

否。ジャンの手にあったはずの指環が、目を離した一瞬のうちに消えて無くなっていた。
指環はまだ、ラテの手の中にある!

>「嘘ってのは、こう吐くんですよ。本物の指環は……もう少しだけ待っててね、ジャンさん」

光の指環の力で障壁を突破したラテが、虚無の竜の中枢に打撃を与え、魔法の維持を一時的に不能にする。
障壁が再展開される一瞬の隙を縫って、フィリアとシノノメが虚無の竜に肉迫した。
三者一体の連携が虚無の竜を翻弄し、取り込まれた水の指環をシノノメの剣が抉り出す。

>『動力供給源をロスト。形勢が悪化しています――』

(形勢が――覆った……!)

ジュリアンとエルピスの呉越同舟、シャルムの祈りが繋いだ二つの指環。
そして、ラテの巧妙な謀計とフィリア、シノノメの連携によって、追い込まれていたはずの形勢が逆転した。
指環はもう虚無の竜のもとにはない。振り出しに戻ったわけでもない。
指環の勇者の戦いは、両者譲らぬままに、最後の局面へと突入したのだ。
0148スレイブ ◆T/kjamzSgE
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2018/11/12(月) 23:19:55.69ID:Es87ipxb
>『――新たな戦術プログラムの必要性を承認、再構築を開始します。推定所要時間は――60秒』

「戦術を切り替えるまでの時間が長い……おそらく、これが俺たちにとっての最終段階だ」

これまで、戦術プログラムの更新は数秒程度、戦闘中に次の戦術へ移行する速度で実行されてきた。
60秒という時間は以前と比較してもあまりに長い。
この状況が虚無の竜にとって完全に想定外で、戦術を1から組み直す必要があることを意味している。
0149スレイブ ◆T/kjamzSgE
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2018/11/12(月) 23:20:43.96ID:Es87ipxb
虚無の竜が、会敵した瞬間から戦闘機動を開始できた理由。
それは、シャルムの推論によれば、以前スレイブ達の他にも虚無の竜のもとまでたどり着いた者がいたためだ。
つまり、虚無の竜には自身を破壊しに来た者達との戦闘経験がある。
今まで高速で戦術を構築できていたのは、その時の記録が……敵性言語に照らすなら、データが残っていたからだろう。

名も知らない勇者達が幾度も挑み、少しずつ道を拓いていった虚無の竜との戦い。
そのいずれもが直面し、しかし乗り越えることのできなかった、『時間切れ』。
そして、予め用意されていた対勇者戦術が、たった今尽きた。
ここからは、虚無の竜もまた分析し、考察し、勘案する文字通り前人未到の領域だ。
0150スレイブ ◆T/kjamzSgE
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2018/11/12(月) 23:21:19.03ID:Es87ipxb
「かつて、旧世界の勇者達が志半ばに閉ざされた道へ、俺たちは辿り着いた。
 そう、道だ。世界の命運を分ける岐路が、ここにある。閉じた扉を、60秒でこじ開ける!
 プログラムとやらが完成すればもう勝機はない。削り切るぞ!」

奇しくも――虚無の竜と初めて対面したときと同じ構図だ。
プログラムが完了する前に、最大の火力を叩き込んで、沈黙させる。
抜け目なく拾っていた剣を再び構えて、スレイブは虚無の竜に飛びかかった。

『敵性存在の戦意高揚を確認。演算処理を確立する為、自己防衛マニューバを起動。
 対空魔導砲門による迎撃を開始。平行して装甲の再結合を実行します』

虚無の竜はもはやその場を動かない。
防御を固め、プログラムの構築にリソースのほとんどを割いている。
高度な処理が必要な魔法消去を捨て、純粋な装甲の耐久と迎撃砲のみで耐えしのぐ公算だ。
竜の背にハリネズミの如く無数の砲門が隆起し、魔力の光を灯した。

「防御は任せる」

スレイブは装甲の継ぎ目を正確に断ち切り、破壊しながら、腰に提げた短剣を抜いた。
現在の敵の主武装は無数の魔導砲。そのままではしのぎ切れる手数ではないが、魔法が相手ならできることがある。

「呑み尽くせ――『バアルフォラス』!」
0151スレイブ ◆T/kjamzSgE
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2018/11/12(月) 23:21:39.86ID:Es87ipxb
魔導砲に充溢していた魔力がスレイブの振るう魔剣へと吸い込まれ、砲身も明滅が弱まった。
瞬間、魔導砲が斉射。流星群にも等しい攻撃魔法の束がスレイブ達を直撃するが、プロテクションがそれを阻む。
攻撃の元となる魔力はバアルフォラスによって喰われ、本来の半分程度の威力にまで減衰しているのだ。

「魔法攻撃は俺が軽減する!防御は最小限にとどめて攻撃に集中してくれ!」

魔剣が溜め込んだ魔力は、刀身を暴れまわっていまにも弾け飛びそうだ。
スレイブはそれを自身の身体へ流し、指先へと収束させた。

「奔れ、『極光』!」

純粋な魔力の光条は一筋の流星となって虚無の竜の装甲を貫いた。
断続した爆発が竜の体内で発生し、黒煙が雲の如く沸き立っていく。

(魔導砲による攻撃は俺が防ぐ。それは虚無の竜も今しがた学習したところだろう。
 ならば次はどうする。俺を狙うか?それとも物理攻撃に切り替えるか?)

いずれにせよ、選択肢を狭め、虚無の竜が武装を切り替えるまでの時間を稼ぐ。
世界の命運を決める60秒。金にも等しい、世界で最も貴重な1分。

既に、15秒が経過していた。


【時間切れフェーズに移行。魔法ダメージを軽減し、装甲を破壊して防御力を下げる。残り45秒】
0152ジャン ◆9FLiL83HWU
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2018/11/17(土) 15:50:44.14ID:aFimeXp2
意識が途切れる瞬間、ジャンが最後に見たのは
自分そっくりの流体金属が勝利を宣言した光景だった。
稲妻が身体を焼き焦がす苦痛に耐えきれず、前のめりに倒れていく。

(最後まで……俺は……みんなを……)

消えゆく意識の中で願ったのは、仲間の勝利。
たとえ指環を奪われたとしても共に旅を続け、苦難を乗り越えてきた仲間たちなら
きっとやり遂げてくれると信じて、ジャンは静かに目を閉じた。

――ジャンが再び目を覚ましたとき、彼は光がわずかに差し込む深海の中に浮かんでいた。
生物は一切おらず、辺りから聞こえる気泡の音が耳に響く。

(どこだ……ここは……)

泳ごうにも手足は動かず、身体に力が入らない。
わずかな光も時折消えてしまうことがあり、そうなれば完全な闇が身体を覆い尽くす。
やがて光が放たれることはなく、ジャンの意識が闇に溶けて消え失せようとしたとき、
一筋の強い光がジャンの身体に差し込んだ。

「……指環?あの色は……アクア!」

深海にあってもなお蒼く輝くその指環は、決して見間違えることはない。
蒼い光に照らされて身体が力を取り戻せば、静かに降りてくる指環をしっかりと掴む。

『危うく二人合わせて冥界行きになるところだったね。
 あいつの中は気持ち悪いなんてもんじゃなかったよ!』

「その話は酒でも飲みながらしようぜ。
 今は――あいつをぶちのめす!」

その言葉と共に指環を右手の中指に嵌めて、光射す方へと泳いでいく。
光の向こうをよく見れば、仲間たちが必死に虚無の竜を食い止めている光景が写っていた。
もはや躊躇いも迷いもなく、決意を新たにそこへと向かっていく。
0153ジャン ◆9FLiL83HWU
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2018/11/17(土) 15:51:22.12ID:aFimeXp2
「……みんな、すまねえ!アクア、起きたら全力で行くぞ!」

『分かった!あいつに取り込まれてる間、色々拾ってきたからね!』

>「奔れ、『極光』!」

虚無の竜が閃光に貫かれ、しかしその傷を無視しているかのように動き出す。
両腕が液体金属に覆われて巨大な二振りの大剣となり、
まとめて粉砕せんと勇者たちを薙ぎ払うように振り回しはじめた。

『近接戦闘形態に移行します……敵は……排除……排除……』

何度魔法を受けても液体金属が強引に形を作り直し、
広間を覆い尽くす斬撃と打撃の嵐は止まらないかに見えたその時だった。

「借りるぜオウシェン……オラアッ!」

目を覚ましたジャンが竜装と共に突撃し、自らの背よりも長く太い錫杖を振りかざす。
マリンブルーに輝く錫杖の先端を振り下ろされた大剣に叩きつけ、
すると強固な装甲を形成していた液体金属が水流と共に虚無の竜の片腕から崩れ落ちていく。
もう片方にも同じように錫杖を突きつければ、もはや腕に残る液体金属は一滴たりともない。

『液体金属の中に魔力を含んだ水を混ぜてやれば、後は僕の権能で操るだけだ!
 お前が戦ってきた指環の勇者たちの記録……水の勇者の記憶を利用させてもらった!』

その時は魔法消去という一方的な封殺手段によって制御を取り戻すことができたが、
再構築に向けて装甲と液体金属、そして魔導砲による弾幕しかない今の状態では
止める術はなく、こうして残るのは強固な装甲のみ。

「ようやく俺もみんなを助けられるって気がするぜ!
 『流れ流れて形となり、我が友を助けたまえ』」

さらに制御を奪った液体金属を詠唱と共に仲間の武器や防具に纏わせ、
本来ならば水の魔力を仲間に与える海の巫女の秘儀も
液体金属によって業物をはるかに越える逸品へと仕上げる極めて高度なエンチャントとなっていく。
勝者を決める1分の内、残り30秒。虚無の竜はいかなる反撃に移るのか、ただ不気味に沈黙していた。


【液体金属の乗っ取りに成功!ついでに念願の全体バフ】
0154ティターニア ◆KxUvKv40Yc
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2018/11/19(月) 21:37:32.82ID:J0epgkVB
>「……まさか」

シャルムは遥か昔に袂を分かった全の竜とパンドラを再び邂逅させるかのように、両手を重ね合わせた。
暫しの二人の会話の後、全の竜の幻影が、周囲の敵をいっぺんに薙ぎ払う。
……指輪に僅かに残していた自らの存在と引換えに。
形勢は着実にこちらに傾きつつあるように見える。
しかし、水の指輪を奪った竜の分体は、余裕綽綽といった様子だ。

>『……無駄だ。今更予備の肉体を破壊したところで、お前達に勝ち目はない。我が肉体は進化し続けている』
>『お前達を屠る為に、最早この指環の力を使う必要すらない。こんなものは私にとっては、ただのエネルギー源に過ぎない。
 諦めろ……お前達なら分かるはずだ。何もかもが虚無に飲まれれば、それはつまり、全となんら変わらないという事が』

「一筋縄ではいかぬということか……」

どうしたものかと考えていると、不意にラテが進み出る。

>「……例えあなたが、私達よりずっとずっと強くなっていても、私達は諦めたりしない」
>「諦める事ならいつだって出来た。諦める理由なんて、いくらでもあった。
 指環なんて伝説のアイテム、見つかりっこない。帝国と喧嘩したっていい事なんてなにもない。
 世界の命運を背負わされなきゃいけない理由も、世界の創造神に歯向かう必要も、なかったのに」
>「それでも、ここまで来た」
>「……勝手に諦めて記憶を捨てた小娘なんて、置いていけばよかったのに。だけど、諦めなかった」

「ラテ殿、そなた記憶が……!」

息を付く間もない戦いの連続で気付かなかったが、ラテはどこかの時点で記憶を取り戻していたのだ。
かといって、完全に元のラテに戻ったわけでは無い。
一見明るく振舞いながらも過去の罪に怯え劣等感に苛まれていた以前のラテはもういない。
いつかティターニアが言ったように、記憶を失った後に生まれた天真爛漫なラテが、
知恵と思慮深さを持つ以前のラテを迎え入れたのだ。

>「ジャンさん。わたしを、私を。ここまで連れてきてくれて、ありがとうございます。
 その恩返しをさせて下さい。メアリさん……ジャンさんを、守ってあげてね」

そう言って自らの指輪をジャンの左手にはめるラテ。しかしティターニアは動じない。
記憶を取り戻したなら、指輪は一人一属性までというのはラテは分かっているはずだ。
つまりこれは……
0155ティターニア ◆KxUvKv40Yc
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2018/11/19(月) 21:38:47.84ID:J0epgkVB
>「……指環の力よ!」
>「嘘ってのは、こう吐くんですよ。
 本物の指環は……もう少しだけ待っててね、ジャンさん」

ラテが記憶と共に取り戻したレンジャーの技が冴えわたり、指輪まであと一歩のところまで迫る。
続くフィリアとシノノメの連携によって、ついに水の指輪を取り戻すことに成功した。

>「やれる!やれますよ!みんなの力を合わせればきっと勝てる……」

>『――新たな戦術プログラムの必要性を承認、再構築を開始します。推定所要時間は――60秒』

>「戦術を切り替えるまでの時間が長い……おそらく、これが俺たちにとっての最終段階だ」
>「かつて、旧世界の勇者達が志半ばに閉ざされた道へ、俺たちは辿り着いた。
 そう、道だ。世界の命運を分ける岐路が、ここにある。閉じた扉を、60秒でこじ開ける!
 プログラムとやらが完成すればもう勝機はない。削り切るぞ!」

60秒という時間から、敵が今までに蓄積してきた対勇者戦術が尽きたと分析するスレイブ。
つまり、これが最初で最後にして最大のチャンスだ。

>「呑み尽くせ――『バアルフォラス』!」
>「奔れ、『極光』!」

スレイブはバアルフォラスで敵の攻撃を防ぎつつ、彼の持つ最強攻撃で虚無の竜の装甲を破壊する。

>「借りるぜオウシェン……オラアッ!」

続いて、ついに復活したジャンが突撃し、錫杖を叩きつける。

>『液体金属の中に魔力を含んだ水を混ぜてやれば、後は僕の権能で操るだけだ!
 お前が戦ってきた指環の勇者たちの記録……水の勇者の記憶を利用させてもらった!』

エルピスが味方になったことか、あるいはエーテルの指輪が覚醒したことで、指輪の真の力が解放されたのかもしれない。
それは、歴代の指輪の勇者達の記憶。

『思い出しました……人々が指輪を巡って争ってきた意味を』

指輪を持つ者はそれを欲する者を呼び寄せ、指輪の所有権を争い多くの血が流されてきた。
それは歴代所有者達の力を蓄積していくため――全てはこの瞬間のためにあった。

>「ようやく俺もみんなを助けられるって気がするぜ!
>『流れ流れて形となり、我が友を助けたまえ』」

味方全員が、液体金属によって極めて高度に強化される。
形勢の不利を悟った虚無の竜は狂乱状態に突入、まさに最終局面だ。
0156ティターニア ◆KxUvKv40Yc
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2018/11/19(月) 21:40:42.04ID:J0epgkVB
『……もはや再構築などどうでも良い、全てを無に帰してやる。
プログラム”World End《セカイノオワリ》”を実行。発動までの推定所要時間――20秒。
滅び去った数多の世界よ、我に力を貸せ!』

虚無の竜が世界を渡る力を持つとすれば、異なる世界から力を借りることも可能なのだろう。
自らが今までに滅ぼしてきた世界の絶望や憎しみを糧に、全てを虚無に帰そうとしている。
ならばこちらは、これから守るべき世界の力を借りるまでだ。

「させるものか! ――”Linked Horizon”《繋がる地平》!
ここでそなたを取り逃がせば……また無数の世界が犠牲になる!」

女神のような竜装をまとったティターニアの背に浮かび上がるは、世界樹ユグドラシルの幻影。
その枝は数多の世界を象徴しているとも言われている。
虚無の竜に対抗し、こちらも無数の平行世界から力の供給を受けられる状態としたのだ。
ティターニアは虚空を仰ぎ見て訴えかけた。まるで、この戦いを外から見ている誰かに語り掛けるように。

「だから……名も知れぬ世界の者顔も知らぬ達よ――力を貸してくれ!
ほんの少し、我らの勝利を願ってくれるだけでいい……!」

一人一人の想いはほんの微々たるものでも、積もり積もれば膨大な力となる。
滅び去った世界の絶望が勝るか、生きている世界の希望が勝るか――最後の大勝負だ。

「いけるぞ! 皆、全力で一斉攻撃だ――!!」

ティターニアはそう叫ぶと自らも杖を振り下ろし、呪文を唱えた。

「――Star Memories《星の記憶》!」

それは歴代の大地の指輪の勇者の誰かが習得していたのであろう、隕石の魔法。
星界より召喚されし無数の流星が降り注ぎ虚無の竜を討つ。

【残り15秒! 数多の世界の希望の力を借りて総員全力攻撃で倒せ!
今回ちょっとメタネタが入ってるのでROMの方は応援メッセージを書いたら拾ってもらえるかも!?】
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