日本が異世界に転移した第1(84)章
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>>779
杉村は絶句する。
ケンタウルス達は交渉の最中もトルイの町を攻撃する兵を派遣していたことを暴露したからだ。
ケンタウルスの将ウォルロックの陣
大族長の末子ウォルロックはケンタウルスの兵士二千を率いて、トルイの町まで60キロの地点で陣取っていた。
ウォルロックは先ほど届けられた、シルベールに派遣された長老達からの書状を読んでほそく笑む。
「皆の衆、大族長からの命令が下った。これより日本と連合して、トルイの町を攻め滅ぼす。今晩には戦端を開けるだろう。日本も明日には合流出来るようだが・・・町には兵は僅かしか残っていない。金も女も獲り放題だ!!日本の連中にはビタ一文渡すな!!」
ウォルロックの檄に兵士達は喚声を挙げて喜び応える。
同種族の集落を滅ぼすのに何の躊躇いも感じられない。
「トルイ族長はやりすぎたのだ。我等の足元を脅かし、自治伯随一の裕福な財産と町を創り上げた。それらを今宵、我等に献上してもらう。全軍、進撃せよ!!」
大陸東部新京特別区
日本国大陸総督府
「舐められたものだな。」
秋月総督の呆れたような口調とは別に、総督府官僚、自衛隊将官、国鉄総裁、鉄道公安本部本部長のお歴々の顔が怒りに満ちている。
電話で武力討伐の決定を杉村に伝えたらこの始末である。
「青木君、現在の陸上自衛隊にトルイの町を連中より早く攻撃する手段は無いのだね?」
「残念ながら・・・夜明け前なら、第17普通科連隊戦闘団で運用させている列車砲が使えるのですが。」
第16師団団長青木陸将の言葉に秋月は渋い顔をする。
すっかり何でも屋と化している第17普通科連隊戦闘団は、2A65「ムスタ-B」 152mm榴弾砲を装甲列車に備え付けて、列車砲として運用している。
現在は王都ソフィアから全速で現地に向かっているが、自治伯軍の攻撃にはどうやっても間に合わない。
「ならば空自だな。本国の許可は取り付けてある。松本空将、F−2を爆装させて出動を命じる。そうだな訓練飛行で北サハリンのTu−95がこっちに来てたな。大陸にいる間の指揮権は総督府にある。彼等にも出動命令を出そう。」
戦略爆撃機Tu−95は恒例の『東京急行』の為にサハリンの基地に待機していたところを転移に巻き込まれた機体だ。
今回は北サハリンへの訓練と大陸での同胞への物資を持ってきただけなので、爆弾は二発しか持ってきてなかった。
FAB-1500とFAB-500である。
航空自衛隊
新京基地
新京国際空港に併設されたこの基地には、再編成された航空自衛隊第九航空団に所属するF−2戦闘機25機が配備されていた。
そのうちの2機が滑走路を飛び立つ。
『ウルティマ1よりウルティマ2へ、ベア5が飛び立った。引き離さないように気を付けろ』
『ウルティマ2了解、ベア5をエスコートします。』
傍受される可能性も無いから、平文で交信が常態化している。
そして両機の後背から巨大な戦略爆撃機が後を着いてくる。
音速を越えれるF−2から観れば鈍足だが、マッハ0,8で追ってくる。
ウルティマ2に水先案内人を任せ、ウルティマ1は先行して現地に向かう。
帰りは新香港の航空基地に着陸するので、戦闘行動半径は無視してよい距離だ。
爆弾投下後は軽くなるのだから尚更だ。
戦闘機の燃料補給は二時間が鉄則だが、一時間余りでトルイの町の近郊まで辿り着いていた。
『ウルティマ1より、ソフィアSOC。すでに戦闘が始まってるぞ。』
王都ソフィアの基地に配備されたソフィア管制隊に報告し指示を仰ぐ。 杉村は絶句する。
ケンタウルス達は交渉の最中もトルイの町を攻撃する兵を派遣していたことを暴露したからだ。
ケンタウルスの将ウォルロックの陣
大族長の末子ウォルロックはケンタウルスの兵士二千を率いて、トルイの町まで60キロの地点で陣取っていた。
ウォルロックは先ほど届けられた、シルベールに派遣された長老達からの書状を読んでほそく笑む。
「皆の衆、大族長からの命令が下った。
これより日本と連合して、トルイの町を攻め滅ぼす。
今晩には戦端を開けるだろう。
日本も明日には合流出来るようだが・・・町には兵は僅かしか残っていない。
金も女も獲り放題だ!!
日本の連中にはビタ一文渡すな!!」
ウォルロックの檄に兵士達は喚声を挙げて喜び応える。
同種族の集落を滅ぼすのに何の躊躇いも感じられない。
「トルイ族長はやりすぎたのだ。
我等の足元を脅かし、自治伯随一の裕福な財産と町を創り上げた。
それらを今宵、我等に献上してもらう。
全軍、進撃せよ!!」
大陸東部新京特別区
日本国大陸総督府
「舐められたものだな。」
秋月総督の呆れたような口調とは別に、総督府官僚、自衛隊将官、国鉄総裁、鉄道公安本部本部長のお歴々の顔が怒りに満ちている。
電話で武力討伐の決定を杉村に伝えたらこの始末である。
「青木君、現在の陸上自衛隊にトルイの町を連中より早く攻撃する手段は無いのだね?」
「残念ながら・・・夜明け前なら、第17普通科連隊戦闘団で運用させている列車砲が使えるのですが。」
第16師団団長青木陸将の言葉に秋月は渋い顔をする。
すっかり何でも屋と化している第17普通科連隊戦闘団は、2A65「ムスタ-B」 152mm榴弾砲を装甲列車に備え付けて、列車砲として運用している。
現在は王都ソフィアから全速で現地に向かっているが、自治伯軍の攻撃にはどうやっても間に合わない。
「ならば空自だな。
本国の許可は取り付けてある。
松本空将、F−2を爆装させて出動を命じる。
そうだな訓練飛行で北サハリンのTu−95がこっちに来てたな。
大陸にいる間の指揮権は総督府にある。
彼等にも出動命令を出そう。」
戦略爆撃機Tu−95は恒例の『東京急行』の為にサハリンの基地に待機していたところを転移に巻き込まれた機体だ。
今回は北サハリンへの訓練と大陸での同胞への物資を持ってきただけなので、爆弾は二発しか持ってきてなかった。
FAB-1500とFAB-500である。
航空自衛隊
新京基地
新京国際空港に併設されたこの基地には、再編成された航空自衛隊第九航空団に所属するF−2戦闘機25機が配備されていた。
そのうちの2機が滑走路を飛び立つ。
『ウルティマ1よりウルティマ2へ、ベア5が飛び立った。
引き離さないように気を付けろ』 『ウルティマ2了解、ベア5をエスコートします。』
傍受される可能性も無いから、平文で交信が常態化している。
そして両機の後背から巨大な戦略爆撃機が後を着いてくる。
音速を越えれるF−2から観れば鈍足だが、マッハ0,8で追ってくる。
ウルティマ2に水先案内人を任せ、ウルティマ1は先行して現地に向かう。
帰りは新香港の航空基地に着陸するので、戦闘行動半径は無視してよい距離だ。
爆弾投下後は軽くなるのだから尚更だ。
戦闘機の燃料補給は二時間が鉄則だが、一時間余りでトルイの町の近郊まで辿り着いていた。
『ウルティマ1より、ソフィアSOC。
すでに戦闘が始まってるぞ。』
王都ソフィアの基地に配備されたソフィア管制隊に報告し指示を仰ぐ。
ウォルロック率いる兵団は、トルイの町の城壁に火矢を放って攻撃を仕掛けていた。
トルイの町はトルイ族長が対同族を意識していたのか城壁と水掘りに囲まれてケンタウルスお得意の弓矢による攻撃が有効に活かせない造りになっている。
だが50頭の守備隊と町から徴用した義勇兵100頭、人族などの奴隷兵450人程度は二千頭ものウォルロック軍を捌くのは限界だった。
そこに爆音を響かせて、F−2戦闘機が低空から侵入してくる。
ウォルロックの兵団に見せ付けるかのように城壁を飛び越えて、Mk82 500lb 通常爆弾を1基、大手門の裏側に投下する。
投下された爆弾の爆発は大手門を崩壊させ、水掘を渡る為の石橋も崩落させていた。
「やりやがったな日本軍!!」
ウォルロックの兵団の主力も大半が爆風に煽られ、或いは単に驚いて地面に転がったり、地に伏していたりという有り様だった。
大手門から侵入出来なくなれば、既に支隊に攻撃させていた他の門に兵力を振り直さなければならない。
文句の一つも言いたいところだが、主戦場だった大手門を守っていた守備隊主力を一撃で壊滅させたのだから何も言えない。
だいたい当の日本の飛行機械は遥か彼方まで飛び去っている。
敵の主力は片付けたのに何故か攻略には時間が掛かる事態となっている。
「まあ、被害は減ったからよしとするか。」
ウォルロックは気を取り直して攻撃の続行と部隊の陣形を組み直す指示を出す。
ようやく日付が変わり、一刻ほどの時間を掛け、攻城の為の陣形を組み直した。
だが今度は先ほどを上回る轟音が戦場に鳴り響く。
「今度は何だ?」
ウォルロックが闇夜に観たもの
先程の飛行機械の何倍もの大きさを誇る大型機だった。
『ベア5より、ソフィアSOC。領主の館らしき大きな建物を確認。
FAB-1500を投下した。』
機長の通信の直後に地表での爆発を視認した。
全長100メートル程もあった屋敷が跡形も無く吹き飛んでいる。
ケンタウルス達が好む藁が町の至る所に置かれていたせいか、町の各所に飛び火して大火災となっている。
「この町はもうダメだな。
『ベア5より、ソフィアSOC。
これより新香港に帰投する。』
早く帰って、ママのボルシチが食べたい・・・」
ウルティマ2も東門、西門を橋ごと破壊して帰投の態勢に入っている。
あまりにも巨大な炎の柱と爆風と爆音に敵も味方も戦いの手を止めて身を守っている。
吹き飛ばされた建物の破片も敵味方関係なく降り注いで犠牲者を増やしている。
「・・・嫌がらせか・・・」
「若、危険です、お退り下さい!!」 側近達に押し留められ、本陣を後退させる。
爆音に驚愕、或いは恐怖して棒立ちとなり動けなくなった兵達が続出している。
逃げ出す者が皆無だったのは称賛に値しよう。
たが、せっかくの組み直した城攻めの陣形が崩れ、無駄になってしまった。
残った南門は逃げてきた住民まで抵抗に加わっている。
反対に味方は町から見える炎に怯えと略奪出来なそうな事態に士気が下がっている。
死にもの狂いとなった敵に被害が大きくなりだしていた。
翌朝、自衛隊の偵察隊員が使者としてバイクで、ウォルロックの陣に訪れる。
並みいる将兵達は憔悴しきった顔をしていた。
「なんと、そちらはもう攻撃の範囲内で歩兵達も一時間の距離に配置済みと・・・
せっかくだが大手門、東西門と橋はそちらの攻撃で使えない。
南門突破して既に市街の半分を制圧した。
出番は無いと思うのだが?」
「ご心配には及びません。
我々は崩壊した大手門側から進攻させて頂きます。」
装甲列車に固定された2A65「ムスタ-B」 152mm榴弾砲の砲弾が大手門と繋がっている城壁に直撃し崩壊させていく。
その距離は20キロ。
その距離を列車降ろされた普通科隊員達は、やはり列車からクレーンで降ろされた装輪装甲車であるBTR-60PBやBTR-70の二両に21名の隊員が乗り込み先発する。
トルイの町の水掘は日本の城の掘と違ってさほど深くもない。
BTR-60PBやBTR-70の二両は水掘に入ってウォータージェットで航行し、対岸に隊員を上陸させて戻っていく。
徒歩でこちらに向かっている隊員を迎えに行ったのだ。
隊員達は見張りを撃ち倒し、城壁の穴を確保して侵入していく。
トルイの町の北側は大半が焼き付くされ、空爆による死体が点在している。
主戦場は町の中央の領主の館を抜かれて、こちら側に迫ってきている。
「当初の予定通りだ。
人間は解放し、ケンタウルスは撃ち殺せ。」
「味方のケンタウルスもいる筈ですが?」
「戦場で流れ矢はよくあることだ。
なるべく気を付けろよ?
見分けが付けばだがな。」
後背から自衛隊による攻撃が始まり、守備隊の防衛ラインは突き崩されていく。
隊長が拡声器で呼び掛ける。
「人族なら我々に降れ。
諸君の自由と生命だけは保証する。」
降伏しても殺されるか、奴隷に戻るかしかなかった人間達が手近のケンタウルスを殺害してこちらに駆け寄ってくる。
督戦しようと弓矢を構えるケンタウルスは隊員達に射殺される。
戦いはトルイの町のケンタウルスが男女問わず最後の一頭の抵抗が終わるまで続いた。
自治伯軍は約二百名近い死者とそれに倍する負傷者を出していた。
自衛隊側には人的損害は皆無である。
負傷や気絶などで生き残ったケンタウルスは奴隷に堕ちることになる。
人間の奴隷達は自衛隊が確保した。
渋るウォルロック達に略奪の権利を主張して自治伯領から装甲列車に乗せて脱出させのだ。
ケンタウルス自治伯爵領最大の都市トルイは僅か2日の攻防で消滅したのだった。
大陸中央部
王都ソフィア
国務省
『よさこい3号』襲撃事件から7日目、代官就任の手続きと挨拶、さらには一連の事件の事情聴取を終えた斉藤とヒルダは、国務省の玄関先で乗り付けた軽装甲機動車に気がついた。
運転席からは浅井二等陸尉が手招きしていた。 「駅まで送ろう、姫様は後ろな。」
荷物を積み込みソフィア中央駅まで車を走らせる。
本来は馬車が通る道なので、まばらに人が歩いてたりするのであまりスピードは出せない。
「お仲間は先にアンフォニーに?」
「はい、途中のジェノアで自衛隊さんから、奴隷・・・おっと、難民を引き取らないといけないですからね。」
トルイの町で保護した三百名の奴隷は、総督府がトルイの町を攻撃したことの正統性を得る為の道具であった。
同時多発テロに対する関係者の逮捕に向かったら、たまたまケンタウルス自治伯の『内戦』に遭遇したので救助並びに解放したというのがマスコミ対策の名目である。
この時点では空爆の情報は関係者にしか知られていない。
ろくに日本の民間人が存在しない南部地域からの情報伝達は遅いし、自治伯領自体が奴隷と商人以外の人族には閉鎖的だ。
商人達も馬車での移動を数ヶ月単位で行うので、日本の民間人が多い東部地域に伝わるまで数ヶ月は掛かるだろう。
北サハリンは軍事情報をいちいち民間に公開しないし、民間人もあまり気にしてないのはお国柄だろう。
ヒルダと斉藤には空爆の情報を教えてある。
その必要があったからだ。
「総督府の杉村外務局長が感謝してたぜ?
だがよかったのか、難民を三百人も引き取って貰って?
こっちももてあましてたのは確かなんだが・・・」
後部座席からヒルダが身を乗り出して話に加わってくる。
「問題ありませんわ。
新香港の出資で作られるハイライン港、ハイラインからアンフォニーまでの街道の整備、サークルの相澤が提案していたアンフォニーとハイラインの治水事業、南北線の線路敷設事業。
アンフォニーでの学校の建設なんてのもありますわね。
人手が足りないくらいでしたもの。
彼等には代金分働いてもらいますわ。
費用は新香港持ちですけど、人夫として購入した名目ですから。」
斉藤も苦笑しながら
「建前は大事ですからね。
総督府から新香港が渋らないように力添え頼みます?
国営放送と大陸通信社に難民が解放されて、自由を謳歌しながら労働に励む姿や難民の子弟が元気に学校で勉学に励む姿のドキュメンタリー番組を作らせる協力をするのですから」
「上と色々企んでるんだな。
で、新香港は何を得るんだ?」
「トルイの町改め、ウォルロックの町とその周辺地域の交易の独占権といったところかしら?
まあ、そのへんは父と兄に任せておけばいいですわ。
問題は残った既得権益の商人なのですが・・・」
「エリクソン氏は行方不明だ。
懸賞金付きで指名手配にして、残った財産は王国が没収してるよ。」
意外に八方丸く治まったとヒルダと斉藤もホッとしている。
「さて、アンフォニーまで着いていく筈だったんだが一連のゴタゴタの後始末でここでお別れだ。」
車はソフィア中央駅のロータリーに着いていた。
「道中楽しかったですわ。」
「機会があればまたお逢いしましょう。」
「今度こそ無事着いてくれよ?
いずれ遊びに行くの楽しみにしてるからな。」
改札の向こうに二人が消えるまで、浅井は見送っていたのだった。列車が出発し、二人は今後のことを話し出す。 「さあ、夢にまで見た内政チートでウハウハ生活の始まりよ。
我等の野望の第一歩、最初に何から始めるのかしら新任代官殿は?」
「まずは領民に入浴と歯磨きの習慣化の義務付けですね。」
「地味ねぇ・・・」
「いや、これが結構大事なんですよ、例えば・・・」
王都ソフィア近郊
瑞X林地帯
「ハッハハ、モウカクシテタアジトニフミコマレタゾ。
アレハオウトノキシダンダナ。」
間一髪潜伏していたアジトから連れ出されたエリクソンは、汗もダラダラに垂らして一息つく。
アジト周辺には松明が移動してるのが見える。
まだ、捜索は続いているようだ。
白馬の馬の騎士アウグストスは脇に抱えたエリクソンを地面に投げ下ろす。
「か、閣下の御尽力で助かりましたが・・・これからどうする気で?」
「ココデオワカレダナ。
ドウセホカニモアジトヤザイサンヲノコシテルンダロ?
ワレハヤツラトオナジブキ、タタカイカタヲスルレンチュウトタタカエテ、オオムネツヨサヲマナンダ。
ソロソロカエルトキカモシレンナ。」
遠くを見るアウグストスにエリクソンは服の汚れを落としながら疑問を口にする。
「失礼ながら閣下のお姿では、船に乗るのも困難だと思うのですが・・・私ももうお力になれませんし、ケンタウルス達も最早あてには出来ないでしょう。」
「マアイザトナレバオヨイデカエルサ、ハッハハ。
イキテイレバマタアオウ!!」
白馬の馬の騎士はそう言って愛妻の背に乗って、颯爽と駆けていった。
独り残されたエリクソンはアウグストスの姿が見えなくなると北に向かって旅立つ。
「まずは新しい戸籍を手に入れないとな。」
大陸東部
新京特別区
大陸総督府
「まさか、八方丸く治まったなんて考えてるんじゃないだろうな?とんでも無い、本国が激怒してるぞ。」
秋月総督の言葉に自衛隊、官僚、公社の幹部たちが恐縮している。
特に交渉で翻弄された杉村外務局長は頭を垂れている。
秘書官の秋山が被害を報告する。
「『よさこい3号』の事件の調査、修理と線路の補修、点検、死亡した乗務員の後任人事。
最大で4日はスケジュールに遅延が出ます。
その間に本国で出るであろう餓死者や自殺者の増加。
損害は大きいです。」
「本国マスコミは我々の食糧調達の不備を非難している。
貴族達からもう少し締め上げてもいいんじゃないかとか、民主化に対する試みが全く行われていないとかな。」
総督の言葉に大陸各地で年貢を徴収し、本国に輸送する部門の局長が不満をぶちまける。 「馬鹿な・・・確かに検知の完遂は東部地域だけで他は自己申告。
本国に送れる食糧が不足しているのは間違いない。
だが現状の人手不足で、貴族達の締め上げはギリギリの線で行っている。
これ以上は、ストライキと反乱を招くぞ。」
今年になってようやく南部地域に手をつけれるようなったのだ。
未舗装の街道による移動と輸送の困難。
散発的に現れるモンスターや帝国残党に対する自衛隊の護衛部隊の編成。
同時に大陸に移民した日本人へのインフラの建設。
問題は山積みなのだ。
王国政府と民政を調整する局長も声をあらげる。
「民主化とか話にならん。
大陸の教育レベルがそれに追い付いてない。
第一、我々がそれをやらないといけない理由はなんだ?
コストばかり掛かって将来の商売敵でも作るのか?
人材も資源も無限じゃないのだ。
時間だって足りない・・・本国では今でも・・・」
最初は項垂れてた官僚達の目が血走っている。
秋月総督は本国から伝えられた決定事項を伝える。
「マスコミが世論を煽るのはいつものことだが、世論に圧されて大陸への強硬策を取られてはたまらない。
だから政府も我々と大陸に強硬策を取るフリをすることが決定された。」
全員が座席から立ち上がった第16師団師団長青木一也陸将に注目する。
「静岡県御殿場市の板妻駐屯地の第34普通科連隊を基幹とする第34普通科連隊戦闘団が大陸に派遣、駐屯することになる。
その家族も含めて約八千名を受け入れる。」
妙に人数が多いのは転移後に食糧配給で優遇を受ける自衛隊隊員の既婚率が高いのと、それを頼って両家の親との同居が多いからである。
秋月総督は多少不安そうに質問する。
「本国の部隊がファンタジーな大陸に馴染んで戦力化するのには少し時間が掛かるかな?」
「いえ、34普連は本国で最もファンタジーとの戦闘経験が豊富な部隊です。」
青木陸将の答えに王都から来ていた第17普通科連隊戦闘団団長碓井一等陸佐が横槍を入れる。
「ああ、陸将・・・あれはファンタジーとは少し違うと思うぜ・・・」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています