酷評してばかりなのではアレなので、たまには自分の文章も晒す。
ちなみに言うまでもなく今書いた、他人の作品のパクリだ。
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 町は雪で静まりかえっていた。
 まるで世界が終わったかのように人の気配はなく、自分一人が生き残ったみたいだった。
 嫌いじゃない。むしろ日常の煩雑さから逃れ、一人これからかまくらの中で生きて行くような、それは解放感とも言えるものだ。
 数メートルの間隔を保って、いかにも人間らしい秩序で街灯が立ち並んでいる。幾つかがチカチカと瞬いて、人間らしい秩序を乱していた。
 僕はふと気がついた。街灯の一つの下に人影があった。雪の張り付いた眼鏡のレンズを手袋で拭い、見直す。
 見覚えがあった。

 学校での僕と、今の僕では何が違うだろう。名前を覚えてもらえていない級友さえいるほど、目立たない生徒だ。目立つのは
好きではないし、これが性に合っているので気にしているつもりはないが、まるで世界に一人取り残された今の僕と教室の
僕は、さほど変わらないように思える。違うのは、今は周りに誰もいないということだけだった。
 しかし彼女は、教室での彼女とは違っていた。
 僕はいつも遠目に眺めているように彼女を眺めた。誰にでも優しく、いつも明るく笑っている彼女を、僕はいつも遠い
存在のように眺めるだけだった。彼女は住む世界の違う種族だった。僕がゴブリンの平民なら彼女はエルフの姫だった。
 しかし今、街灯の下にぽつんと立つ彼女は、何か僕に近いもののように見える。
 僕の身体は咄嗟に隠れようとしたが、どうしてもその顔を見たいという欲求が足を動かした。
 話しかけられたらどうしよう、何か話しかけないとまずいかな、などと頭の中で弱虫が騒いだが、僕の足は構わず歩き
続けた。近づいて行っても彼女は気づかなかった。何か考え事をしている風だった。誰とも関わっていない彼女を初めて見た
気がした。目を伏せて、考え事をしている、というよりは思い詰めているという言葉のほうが似合っていた。僕は思わず声を
掛けていた。
「○○さん」
 僕の声に驚いたように顔を上げると、たちまち彼女はいつもの明るい仮面を被って微笑んだ。