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日本が異世界に転移した第1(66)章

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0903始末記
垢版 |
2018/06/10(日) 01:31:31.04ID:D1R0b0ja
ブリッジから双眼鏡で覗いていた艦長の窪塚一佐はため息を吐く。
人間大のモンスターが自由に飛行し、数百も同時に攻めてくると護衛艦でも対処が困難になってくる。
幸いハーピーの爪では、護衛艦の装甲に傷も付けれない。
ただひたすら鬱陶しいだけだ。

「艦を反転させ、唐津湾に誘導する。
弾薬が尽きるまではハーピーが追い付ける速度に留める。」

ただ『いせ』や『くにさき』の甲板には数百の男性隊員がその姿を見せている。
ハーピー達はその男達の姿や臭いに魅せられて押し寄せてくる。
『いせ』と『くにさき』のCIWSの発砲が始まり、甲板の隊員達もこれに加わる。
『くにさき』の場合、現地で使う予定だった車両を甲板に駐車しており、車内や銃架から発砲している隊員もいる。
こちらの銃弾の密度は、護衛艦の比では無く、ハーピー達が次々と海上に落下していく。
海上に落下したハーピー達は、『海上結界』の餌食となっているのか、息のある者も暴れ狂い浮かんで来なくなる。

「艦長、『あけぼの』から小銃弾が尽きたと連絡が。」

『いせ』や『くにさき』ならともかく、通常の護衛艦に分乗しただけの西普連の隊員は、持ち込み分以上の弾薬は持っていない。
海上で戦うなど想定しないからだ。
それでも現在の海上自衛隊の艦艇は乗員数分の拳銃は支給されている。
それを借り受けて抵抗は続いているが、それも時間の問題だろう。

「『さざなみ』から報告、近接を許したハーピーが歌のようなものを発し、それを聞いた隊員や乗員が放心状態で動かなくなる事態が発生!!」
「歌だと?」

『くにさき』や『いせ』では銃声が鳴りやまずに全く聞こえない。
それでも海面スレスレから急上昇して、接近してきたハーピーの一部が同様に歌を歌い、隊員が戦闘不能になる事態が相次いだ。
戦闘不能になった隊員や乗員は艦内に引きずり込んで保護する。
それでも装甲が薄い区画では、歌が聞こえてしまい艦内で放心状態となる者が続出した。

「全スピーカーで何でもいいから派手な音楽を最大音量で鳴らせ!!」

『いせ』の艦内に『軍艦マーチ』が鳴り響き、『くにさき』ではメタルバンドの派手な曲が流れ始める。
後続の『あけぼの』がアニソン、『ふゆつき』がアイドルソングを流している。
だが『さざなみ』は何も流さないどころか、速度が低下していた。
その『さざなみ』には無数のハーピーがまとわりつき、大合唱の形をなしている。

「『さざなみ』のブリッジ並びにCIC沈黙・・・
『ふゆつき』が救助に残ると。」
このままでは囮の役が果たせない。
焦燥に刈られるブリッジだが、爆音が彼等の士気を取り戻す。

「空自です!!
空自の第6飛行隊がハーピーに攻撃を開始しました。」

第6飛行隊のFー2戦闘機6機が、『さざなみ』の周囲のハーピーを機銃で掃射していく。

「当艦も速度を落とし、歌の壁を『さざなみ』に張る。

「神集島まで距離3000!!

ハーピー達が離れていきます。」

ハーピー達も羽を休める必要があるのか、艦隊から離れていきます姫島、鳥島、神集島、高島などに集まっていく。
0912始末記
垢版 |
2018/06/10(日) 01:35:28.70ID:D1R0b0ja
海上保安庁の巡視船『まつうら』か神集島、『いなさ』が姫島近海で警戒にあたっており、両船も無数のハーピーに発砲を開始している。
唐津湾にいた自衛官や警察官も各地で発砲している。

「九州本島に渡ろうとする奴を優先して叩け!!」


唐津市唐津城
第4普通科連隊臨時司令部

「沿岸部で散発的な駆除作業は行われましたが、概ね九州本島へのハーピーの到達は阻止できました。
駆除作業の際に歌を聴かされて行動不能になった隊員が48名。
占拠された鳥島、高島は避難が終了しており、第4並びに第12戦隊が唐津湾を塞ぐ形で展開。
但し、護衛艦『さざなみ』は乗員並びに同乗した西普連の隊員30名が放心状態で戦闘不能と判断されて市内の病院に搬送されました。
残ったハーピーは500足らずと想定されます。」

幕僚の木村三佐の報告に、連隊長の鶴見一佐は渋い顔をする。

「接近戦はやばいか。」
「王国大使館に問い合わせたところ、歌の効果範囲は概ね半径50メートル。
夜は歌わない傾向があるようです。」

鶴見一佐は考え込む顔をして夜襲を検討している。

「西普連に夜襲を要請しよう。
うちの隊員はまだ無理だ。」

新型の装備は与えられたが、現在の普通科隊員の練度では夜襲を任せるには不安があった。
自衛隊は転移後に失業対策と帝国との戦争、占領統治に合わせて増員を掛けていた。
実戦経験のあった隊員は必然的に昇進し、アウストラリス大陸に派遣された第16師団や第17師団や西方大陸アガリアレプト派遣され、旅団化された第1空挺旅団、富士教導旅団、第1特科旅団、第1高射旅団等に配属された。
本国の普通科隊員達の大半がその後に入隊したものだ。

「ここは我々の庭です。
レンジャーの資格保有者を集めて参加させましょう。」

連隊の面子は何者にも代えがたい。

「それにしても歌だと?
資料には無かったな。」

自衛隊は交戦したモンスターをライブラリー化し、日本の保有するファンタジーモンスターの知識を注釈として書き込んでいた。

「どうやらセイレーンの知識と混在化していたようです。
もともとセイレーンも古代ギリシャでは半人半鳥だったのですが、中世ヨーロッパでは、人魚のような半人半魚の怪物として記述されています。」
「ヨーロッパの連中も適当だな。
この世界ではセイレーンとハーピーは同種と考えるべきか。」

放心状態になったことにより転倒し、負傷した乗員も多い。
死者が出なかったのは奇跡だといえる。

「連隊からも夜襲が出来る者を中隊規模で選抜し・・・歌?
しまった!!」

それは鳥島や高島に集まったハーピー達の大合唱だった。
夜になる前にまわりの生物を眠らせて安全を保つためだ。
その歌は風になり、沿岸部で警戒にあたっていた隊員や夜襲の為に待機していた西普連・・・
そして、唐津城で監視に当たっていた隊員と司令部の幕僚達が次々と倒れていく。
鶴見一佐は咄嗟に手のひらで耳を塞ぐが、城内で無事だった隊員はほとんどいない。

「合唱か・・・、くそ、甘く見てた・・・」
0922始末記
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2018/06/10(日) 01:38:00.26ID:D1R0b0ja
東京
市ヶ谷
統合司令部

唐津の惨状の報告に、哀川陸将は頭を抱え込んでいた。

「それで・・・、損害は。」
「第4普通科連隊の隊員450名。
西部普通科連隊900名が戦闘不能に陥り、夜襲は中止になりました。
また、四名ほどの隊員が倒れた際の打ち所が悪かったり、海に転落するなどして殉職しました。
現在も放心状態の隊員の回収作業が行われています。
海保の巡視船も2隻とも行動不能と報告が来ています。」

ハーピーは夜になって動きを止めた。
本来ならここで夜襲を用いて叩いておきたかった。
神集島や姫島は島民こそ避難しているが集落もあり、民間資産の破壊を恐れた政府によって、空爆や艦砲による攻撃を禁じられたのが仇となった。

「放心状態の隊員の容態は?」
「王国大使館に問い合わせたところ、大陸の冒険者なら強い刺激を与えればすぐに目覚めたそうですが、我々のように半日も状態異常が続くことは無かったそうです。」

最近では当たり前のように受け入れられようになった『地球人は魔法に対する耐性が無い』という説がある。
哀川陸将も半信半疑に聞いていたが認めざるを得なかった。


「規模は小さくなったが、夜襲はまだ有効な手のはずだ。
いや、いまやらねば被害は拡大する。
残存の隊員に回収作業が一段落したら夜襲を強行させろ。」

大分や長崎からも部隊を呼びよせているが、4普連と違い準備万端の車両移動なので間に合いそうにない。
西普連と四普連の800名余りの隊員を両島に上陸させることが決定した。
但し、政府から追加された要望書からは手榴弾や摘弾の使用も制限が書き込まれていた。



佐賀県
唐津市鳥島

陸上自衛隊第4普通科連隊第3中隊の隊員が、手漕ぎのキス釣りボートを徴用して、この無人島に上陸する。
水谷三曹は三人掛かりで、ボートを海岸に引き上げる作業を行っていた。
徴用した品なので、なるべく無事に返却しなければならない。

「疲れた・・」

佐賀県ヨットハーバーから約一キロ程度の距離だが、4普連の隊員達は二人乗りや三人乗りのボートで海上を走破したのだ。
中には慣れないカヤックで島に渡った猛者もいる。
平時はボートやカヤックで渡る客も普通にいるそうだが、隊員達は寝不足と疲労で困憊していのが災いした。
ただでさえ昨日は、早朝に小倉から唐津に駆けつけ、昼間は唐津湾の避難誘導、警戒と散発的な駆除作業に駆り出された。
ようやく交代して休めると思ったら、ハーピーの歌声で放心状態となった隊員の回収作業にと叩き起こされた。
鍛えぬかれた隊員と装備は本当に重かった。
それも一段落する頃には日付が変わっていた。
そして、そのまま徴用した手漕ぎボートで海上一キロの距離を渡り切れと命令されたのだ。
文句の一つも言いたくなるだろう。
すでに鳥島にはヨットの心得がある隊員によって、操作されたヨットに乗船してきた隊員が警戒にあたっている。
小隊長の加山二尉が、こちらに静かにしろというハンドサインを送ってくることには多少ムカつく。
先行した隊員は80式小銃に着剣した銃剣やナイフ、個人購入した刀剣で、眠りについているハーピを一匹一匹、刺突して始末している。
89式小銃の後継80式小銃は、カービン型ライフルに変更したことにより銃身の短縮並びに軽量化を達成した。
また、想定する敵が人間だけでなく、モンスターが追加されたことによる3点バーストの廃止も盛り込まれている。
個人購入の刀剣は大陸では自由に購入、携帯できる。
0931始末記
垢版 |
2018/06/10(日) 01:40:09.54ID:D1R0b0ja
しかし、『海洋結界』に囲まれた日本本国では緩和されたとはいえ、まだまだ厳しい条件の元でしか許されていない。
自衛隊や警察などの武官では購入が奨励されるどころか、制式装備として採用しようかとの動きまであるくらいだ。
その任務に刃物は最適な獲物だった。
ハーピーが眠っている間に可能な限り始末する。
大抵のハーピーは樹木に寄り添って寝ていた。
隊員達には疲労と寝不足、そして夜の闇があるのが幸だ。
モンスターとはいえ、人の顔をした生き物を殺すのだ。
そのことに想いを馳せる余裕も無く、躊躇いや罪悪感も見せずに機械的にハーピーを駆除してまわっていた。
もちろんハーピーが飛び立っても、対岸の79式自走高射機関砲が唐津神社、全農唐津石油工場、唐津ヨットハーバーの駐車場に一両ずつ陣取り待ち構えている。
高島にも島を囲うように、東の浜海水浴場、虹の松原に79式自走高射機関砲が置かれている。
鳥島も高島も79式自走高射機関砲の射程距離内だ。
鳥島は無人島なので、ロクに家屋も無く、地面に巣を作ろうとしていたハーピーの駆除は、思いのはか順調に進んでいった。



唐津市
高島

高島は宝くじ関連の島興しに成功した島で、唐津港と陸続きの大島から西に約1.5キロ程度の距離にある。
西部普通科連隊は本来なら夜明け前に各島に上陸して、圧倒的隊員数によって、ハーピーどもを殲滅する筈だった。
その為に海岸で船舶を徴用したり、港や海岸で船舶が着岸するのを待機させていたのが災いした。
ハーピーの歌の効果で半数以上の隊員が放心状態に陥るのは、とんだ失態であった。
唯一無事だった中隊長の窪塚一尉の指揮のもと、FRP製のカッター型短艇で隊員達がオールを使って島に上陸した。
島の北部は山になっており、民家はは南部の海岸沿いに集まっている。
ハーピー達は集落が避難が済んで無人となっていた集落の建物に巣を造りだしていた。
人口400人程度の集落があり、ハーピーはそれらの建物瓦屋根で眠りに付いている。
よって西部普通科連隊の猛者達は、いちいち梯子で屋根に登ってハーピーを仕留めないといけないという難事に遭遇していた。

「参ったな、梯子が足りないぞ。」

ボートに可能な限りの隊員を乗せる為に不必要だと思われた装備はあまり持ち込んでいない。
今なら一網打尽に出来るのだが、重火器の使用は禁じられ、小銃では狙いにくい場所だった。
家屋を破壊するのも避けたい事態だった。
何より銃声で起きられて、空に逃げられるのは避けたいところだ。
どのみち今の隊員には実戦で発砲したことがある者は少ない。
それは精鋭足る西普連ともいえど同様だった。
梯子を使わずに登ろうとして、物音で起きられて逃げられる事態が幾つか発生した。
ようやく梯子がまわってきて、よじ登る隊員は屋根の上でまだ起きていたハーピーと目が合ってしまった。

「 キェェェェェェェェェ〜〜 」

猿叫のような叫び声を上げられて隊員は硬直する。
周辺家屋にいたハーピー達は一斉に目を覚まして、目についた西普連の隊員に襲いかかる。
梯子を昇る途中だった隊員は、梯子を倒されて地面に落ちていく。
屋根でハーピーを刺突していた隊員も他のハーピーが飛来して体当たりを食らい屋根から叩き落とされる。
窪塚一尉はもはやここまでと発砲を許可した。

「飛び上がったハーピーに発砲を許可する。
負傷者は小学校に運べ!!」

真っ先に発砲を始めたのはやはり大陸帰りの隊員達だった。
許可さえ下りれば彼等に躊躇いは無い。
彼等に触発されて、初めての実戦を経験する隊員も射ち始める。
窪塚一尉も89式小銃を撃ちながら負傷して後送される隊員を援護する。
西部普通科連隊は第4普通科連隊と違って、転移後の新装備はあまり配備されてない。
しかし、使いなれた銃器の方に隊員は信頼を置いていた。
ハーピーの数は決して多くはない。
銃弾が使用できれば、西普連の敵ではなかった。
0944始末記
垢版 |
2018/06/10(日) 01:43:08.88ID:D1R0b0ja
唐津城
第4普通科連隊臨時司令部

「鳥島の駆除が完了との報告がありました。」
「第4中隊が神集島にて、少数のハーピーを確認、交戦中!!」
「湾岸防衛の第5中隊も三ヶ所でハーピーを確認。
追跡の上、駆除します。」
「79AW、発砲開始!!」

壊滅した第1・2中隊から無事だった者を集めて再編した司令部はどうにか機能を回復した。
湾岸の防衛には久留米から呼び寄せた教育隊まで動員してカバーしている。
連隊長の鶴見一佐は予備の第6中隊も動員するか考えていた。

「高島の西普連はどうか?」
「負傷者を出しつつも順調とのことです。」

島からは銃声も聞こえる。

「刃物だけではやはり片付かんかったか。」

その銃声も少なくなってくる。
唐津における殲滅はうまくいきそうだった。

「姫島の方に福岡県警SAT一個小隊が、警備艇三隻で突入。
あちらはしょっぱなから、銃器を使用している模様です。」
「長年、暴力団相手にしる連中は違うな。
他のSATでもあそこまで思いきりはよくあるまい。」

福岡市や北九州市に配備されていた分隊を集めた部隊だ。
姫島は福岡県に属するのでかき集められた。
他の戦闘となった3島に比べれば姫島は遠隔にあるが、そのぶんハーピーの数も少ない。
県警警備艇『げんかい』、『ほうまん』、『こうとう』の3隻に分乗した。
エンジン音に気がついたハーピー達が殺到するが、船上から発砲しつつ排除しながら桟橋に停泊して上陸した。
各県警警備艇も自衛隊から供与された89式小銃を銃架に設置して発砲している。
その後は隠れ潜むハーピーの掃討にあたっている。

歌による放心や鉤爪による負傷者は増えたが、唐津・糸島におけるハーピーの掃討は概ね夜明けまでには完了した。
鳥目だったハーピーは夜間での行動範囲が狭かったせいもある。


だが夜明けと同時に平戸市から救援要請が届くことになる。




市ヶ谷
防衛省統合司令部

ようやく唐津、糸島のハーピー殲滅に成功したと思ったら今度は平戸からの救援要請である。
徹夜で事務処理や増援の調整を行っていた統合司令の哀川陸将は不機嫌な声を隠そうともせずに問いただす。

「どういうことだ?」
「はっ、平戸市田助町の港に夜明けとともに旧イラン船籍の大型貨物船が田助港の桟橋に激突するよに停船。
船内から大量のハーピーが田助港を襲撃し、多くの住民が被害にあっています。」

旧イラン船籍の船は独立の決まらないイラン人船長が大陸に放置して逃亡したものということが判明した。
何者かがわざわざ日本まで航行してきたようだが、そこは貨物船を制圧して調べてみないとわからない。
0956始末記
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2018/06/10(日) 01:47:04.60ID:D1R0b0ja
「現地の動きですが、鏡川駐在所の警官が発砲するも数匹倒すのが限界と、近くの中学校に住民を避難させながら増援を要請。
平戸警察署は全署員に出動を命じますが、70名程度の署員ではカバーしきれないとの報告が来ています。
また、平戸城並びに城下の高校に住民が避難しています。
平戸港の防衛は平戸海上保安署と巡視艇『かいとう』があたります。」

すでにハーピーの動きは平戸島全域に拡がる下手に避難するより、家屋の中で籠城した方が安全と思われた。

「長崎県警は近隣の警察署にも出動を命じました。
また、県警機動隊とSATも現地に向かっています。」

残念ながら県警主力の車両では三時間以上も掛かると見られ、即戦力としては期待できそうもなかった。
幕僚達の報告に、哀川陸将は自衛隊各部隊に命令を下す。

「佐世保の相浦駐屯地の部隊は動けるか?」
「駄目です。
現在は呂栄との合同演習の為に大陸にいます。」

他の長崎県内の陸自部隊は何れも遠く、疲弊した唐津から送り込んだ方が早いくらいだった。

「それでも事後処理には必要になる。
大村の21普連に向かわせろ。
第4施設大隊もだ。
佐世保の特別警備隊と護衛隊も向かわせろ。」

佐世保の特別警備隊は、呉にあった特別警備隊を元に転移後に創設された。
同様に横須賀、舞鶴、那覇にも創設され、規模は各々中隊規模の200名となっている。
もともとは転移により創設が見送られた水陸機動団の訓練が施された隊員達が中核になっている。

「佐世保の第4護衛隊は唐津に、第12護衛隊は五島列島にいます。
両護衛隊が平戸に向かってますが、佐世保に残った第8護衛隊は整備中ですのは第4ミサイル艇隊しかいません。
傭船契約を結んだ民間フェリー『かもづる』がいますので、特別警備隊の輸送を委託するのが妥当だと思います。」

『かもづる』は防衛省が傭船契約を結んだ高速民間フェリーである。
民間フェリーとしては破格の30ノットの船足を有し、定員500名、トラック120両、乗用車80両と、おおすみ型輸送艦を上回る車両輸送力がある。

「よし第4ミサイル艇隊に護衛させて、平戸港に向かわせろ。」



平戸市

鏡川駐在所の警察官佐藤巡査部長は、避難をさせていた住民とともに田助港の郵便局に立て籠っていた。
すでに拳銃の弾丸は尽きており、警棒でハーピーを殴り付けて奮戦している。

「お巡りさん、バリケードが限界だ。
他のお巡りさんはまだこれないのか?」

たまたま巡回中に自転車で港をまわっていた為に騒動に巻き込まれた。
突然桟橋に貨物船が激突したかと思うと、中から大量のハーピーが貨物船から現れたのだ。
港の漁船は朝早くから出払っており、男手はほとんどいなかった。
「駐在所の連中は小学校の方に防衛線を張ってるらしい。
署の連中はコンビニの所まで来たらしい。
せめてパトカーで来てればなあ・・・」

パトカーにはショットガンが積んであった。
双方から激しい銃声がしていたが今は途切れている。
平戸警察署には1200発の銃弾が保有している。
田舎の警察署でこれだから、全国の警察署に支給された弾丸の数は計り知れない。
銃器メーカーの高笑いが聞こえるようだった。
無線機ではそこまで話して貰えなかったが、それでもハーピーがここを襲い続けてるということは、それが途切れたということだろう。
0962始末記
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2018/06/10(日) 01:50:19.05ID:D1R0b0ja
郵便局の窓を塞いでた机が弾け飛び、ハーピーが侵入してこようとする。
立て籠っていた女子供が棒切れで殴り付けるが、その後ろにいたハーピーの歌により数人が放心状態となって侵入を許した。



平戸警察署

田助町の救出に向かわせた警官隊からは、銃弾の欠乏が報告されている。
署長の田所はさすがに連絡役として婦警達と署内に残っていた。
男性警官は総出で田助町の救出に向かっている。

「江迎警察署の警官隊が平戸大橋で避難する市民と襲撃してきたハーピーと交戦状態に入って阻まれています。」
「くそ、そっちもか」

平戸港でも海保の署員や巡視艇の発砲が聞こえる。
まだ、数はそんなに多くなく、消防団や青年団も斧や博物館の刀や槍を奮って町の各所で抵抗を続けている。

「まったく、いったい何匹いるんだあの化け物は!!」
0972始末記
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2018/06/10(日) 01:52:50.93ID:D1R0b0ja
北サハリン船籍貨物船『ナジェージダ・アリルーエワ』

ナルコフ船長は船を大陸に向けて、帰還の途に着いていた。
大陸の同志達が航行してきた貨物船は、大陸の海岸に座礁していたものを回収したものだった。
貨物船にもコンテナに大量のハーピーの卵が積載されていた。
『ナジェージダ・アリルーエワ』に積載されていた分も積載し、無人にしてから日本本土に向けて、自動操縦で解き放った。
ラジオからの情報では平戸市の港に激突したらしい。

「無人地帯ならもう少し繁殖の時間が稼げたんだかな。」

唐津市では自衛隊を手こずらせたようだが、対策も研究されただろう。
もともとはスタンピードで全滅した村で、冒険者が発見した大量の卵を奪い取ったのが始まりだった。
地道に高麗まで運ぶと勝手に増殖していた。
今回の2隻で追加した卵は900にも及び、田助港に突入させた時には半数近くが孵化していた。
このまま日本を脅かすよう土着してくれれば幸いと考えられていた。

「まあ、せいぜい日本を引っ掻き回してくれれば十分だよな。」

最後のコンテナにはお土産も置いてある。
そいつの奮戦に期待すこと大であった。



長崎県
平戸市田助港

轟音をあげながら海上自衛隊のミサイル艇『しらたか』が港内に侵入する。

「目標の貨物船を視認!!」

双眼鏡で確認する艇長の角田一尉は、ハーピーが溢れでてくる貨物船の甲板に積載されたコンテナや船内の扉から出てくるハーピーの姿を捉えていた。

「主砲はコンテナを狙え。
SSMは燃料タンクをだ。
この近距離で外したならおお恥だぞ。」

命令通りに主砲が旋回し、発砲を開始する。
まだ、船内には無数のハーピーが残っていると思われ、その発生源だけでも叩こうという作戦だ。

「SSM発射、準備完了!!」
「一番、二番、撃て!!」

発射された2発の90式艦対艦誘導弾が貨物船の横っ腹に命中する。
すでに『しらたか』の主砲の連射を浴びて、甲板を炎上させていた貨物船は内部からの爆発により三つに割れて沈み始めた。
廃棄直前に見える貨物船にはひとたまりもなかっただろう。
まだ卵だったり、生まれたてで飛ぶのもおぼつかない幼体。
幼体に餌を持ってきていた成体が炎と海水に飲み込まれて息絶えていく。
任務を終えた『しらたか』だが、港の各所を飛ぶ回るハーピーに備え付けの12.7mm単装機銃M2 2基が火を吹いた。

「露払いは済んだと後続船団に連絡!!」
0978始末記
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2018/06/10(日) 01:53:54.67ID:D1R0b0ja
防衛フェリー『かもづる』が、海自のミサイル艇『おおたか』に先導されて、田助港に入港してくる。
どの船舶も『歌』対策にスピーカーから大音量で、景気のよい音楽を流しながらの入港である。
ハーピー達がそれらの艦艇に殺到するが、船内各所から89式小銃を発砲する佐世保基地特別警備隊の隊員に打ち払われる。
『かもづる』の両脇には巡視船『あまみ』、『ちくご』が固め、多銃身機銃を唸らせている。
田助港の桟橋に停船した『かもづる』の船体右舷のサイドランプが展開し、特別警備隊の隊員が小銃を構えながら飛び出していく。
隊員達を目敏く見つけたハーピー達は彼等に襲いかかるが、互いの死角をカバーしあった特別警備隊隊員達に返り討ちにあう。
彼等が目指すのは港からも見える小さな建物。
この漁港で唯一のハーピー達が群がる郵便局だ。
ハーピー達を追い散らし、先頭切って突入した田口一等陸曹が見たのは警察官の制服を着た無惨な遺体であった。
最後まで抵抗したであろう手には警棒が握りしめられたままだった。
鉤爪で切り裂かれ、貪り食われたのが伺い知れる。
他にも数人の局員や老人や女性の遺体が発見された。
殉職した佐藤巡査部長に手を合わせていた田口一曹は、微かな物音や声がしたのを聞き逃さなかった。
郵便局のロッカーや金庫に押し込められていた子供達だ。

「生存者発見!!」

遺体に毛布を被せ、子供達には見せないように外に連れ出していく。

「お爺ちゃんは?
お巡りさんもいないよ・・・」

子供達の疑問を田口一曹は答えることが出来ない。
急かしながら『かもづる』から降ろされた73式中型トラックに乗せていく。
同時にすれ違っていく、73式中型トラックと軽装甲機動車、高機動車が一両ずつ、郵便局から一キロほど離れた小学校に向かう。
小学校には田助町の住民が避難しており、佐藤巡査部長の所属していた駐在所の警官達が自警団と総出で防衛に徹している。
特別警備隊一個小隊もいれば簡単に蹴散らせるはずだ。
郵便局を制圧した第1小隊は、そのまま港周辺で逃げ遅れた住民の救助やハーピーの掃討を命じられた。
その3分後には銃声が聞こえ始め、十分後には散発的にしか聞こえなくなった。

「第二小隊が小学校の救援に成功したそうだが・・・
駐在所の警官達は小学校の正門でバリケードを張って、玉砕したそうだ。
民間人に死者はいない。」

同僚の隊員から聞いた報告に田口一曹は、舌打ちを禁じ得なかった。
民間人は防火扉や頑丈な体育館の用具室等の内部に立て籠って難を逃れたらしかった。


平戸市
国道153号
供養川防衛線

一方、一時は田助町近郊まで進出した平戸警察署の警官隊は、防衛線を供養川バス停まで下げざるを得なかった。
パトカーによる大音量のサイレン音と惜しみ無くバラ蒔かれた銃弾により、殉職者こそいないが負傷者を多数出していた。
0990始末記
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2018/06/10(日) 01:56:52.79ID:D1R0b0ja
戦えない負傷者はパトカーの後部座席に放り込まれ、後退しながら残った銃弾を叩き込んでいく。
銃弾は少なく、前進することは出来ない。
しかし、警官達の士気は高い。
すでに無線機から田助港に自衛隊が上陸したことは伝わっている。
ここを凌げば攻勢に出れる。
パトカーの周辺では警棒や警戒杖による白兵戦に押し込まれている。
急降下するハーピーに、平戸では盛んな心形刀流の使い手で、剣道4段の生活安全課の警部が横合いから警棒で殴り付ける。
また、別の年配で身体が軽い総務課の警部補が鉤爪に肩を掴まれる。
防刃チョッキにより、鉤爪が肉体に刺さることは避けられた。
しかし、ハーピーは警部補をそのまま空中に連れ去ろうした。
パトカーの屋根からジャンプした防犯課の若い巡査がハーピーに飛び掛かり、諸ともに地面に落ちていく。
負傷者をパトカーに放り込んだ少年課の巡査部長は、低空飛行で突入してきたハーピーをパトカーの後部座席のドアパンチで弾き飛ばした後に、弾の切れた散弾銃で殴り付ける。
負傷して地面に倒れていた交通課の巡査長が助走を付けて飛び立とうとするハーピーの足に手錠を掛けて、転ばして柔道の寝技を掛けていく。
署員達の奮戦ぶりに、指揮を執っていた副署長は頭が下がる思いだった。
副署長も折れた警戒杖を捨てて、警棒に持ち変える。
しかし、空中から様子を伺っていたハーピー達が突然の銃声と共に次々と地面に落ちていった。

「援軍だ!!」

副署長は声を張り上げるが、サイレンの音で署員達には聞こえない。
それでもみるみる減っていくハーピーの様子に歓喜の声を張り上げている。
海上自衛隊佐世保基地特別警備隊第3小隊は、ハーピーを蹴散らしながら警官隊の救助を始めた。

「衛生班をまわしてくれ、負傷者多数!!」



佐世保基地特別警備隊の司令部小隊は、田助港に停泊していた防衛フェリー『かもづる』内部に置かれていた。

「不謹慎な話ですが、ハーピー達が人間に狙いを定めていたおかげで、森の中に隠れたり、その上空を迂回する行動を余り取っていません。
おかげで集中的に掃討が可能となりました。」
「それ公の場では言うなよ?
民間人にも死者が出てるんだから。」

佐世保基地特別警備隊隊長の金杉三佐は部下の発言嗜めながら机の上の地図に目を通す。

「第二小隊は小学校を拠点に大久保町北部の掃討にあたれ。
第3小隊は供養川防衛線を中心に大久保町南部が担当だ。
第4小隊は平戸港に向かわせろ。」

避難民は『かもづる』に運ばれてくる。
負傷者も多く、特別警備隊の衛生科の隊員だけでは足りない。
市内の医療関係者の安全を確保しつつ、動員する必要があった。

「長崎県警からです。
警備艇『ゆみはり』、『はやて』、『むらさめ』の三隻が県警SATを乗せて、間もなく平戸大橋を通過すると・・・」

こちらと足並みを揃えて欲しかったが貴重な戦力には違いない。
海保の巡視船にはハゲ島等の近隣の島の探索にあたってもらっている。

「平戸大橋も交戦中だったな。
そちらを任せよう。」
1000始末記
垢版 |
2018/06/10(日) 01:59:49.39ID:D1R0b0ja
平戸大橋防衛線

平戸大橋は同市の中心市街地がある平戸島と九州本土を繋ぐ全長 665mの橋である。
この大橋には避難民が放置した車両が大量に駐車されており、援軍に駆けつけた江迎警察署の警官隊の行く手を阻んでいた。
そして、逃げる避難民を追ってハーピーが飛来してくる。

「構え・・・、撃て!!」

放置された車両を盾に、警官達は一斉に拳銃と散弾銃を発砲する。。
弾倉が空になるまで撃つが、数匹のハーピーが落すのみだ。
空を飛ぶ敵に拳銃では効果が薄い。
なお数十匹のハーピーが、橋の上空と下から襲い掛かってくる。
橋の下部からの敵には対処が難しい。
しかし、佐世保から派遣された県警警備艇3隻が平戸大橋の下を通過する。
警備艇に分乗した県警SATが、橋の下を通過しながら一斉に小銃による射撃を敢行する。
県警SATは分隊規模の10人しかいないが、正確な射撃で半数以上のハーピーが海に落ちていく。
たまらず橋の上に逃げて姿を見せたハーピーは江迎署の警官隊の銃弾の餌食になる。

「このまま平戸港に向かう!!」
県警SAT隊長宮迫警部の指示に、『ゆみはり』艇長が聞き返す。

「大橋の化け物はいいのか?」
「後続の機動隊や陸自の部隊も直に来るから問題はない。」

宮迫警部は平戸港の陥落は心配してはいなかった。
平戸港の南部を占める岩の上町は、平戸警察署、平戸海上保安署、平戸消防署、平戸市役所という平戸市の主要機関が置かれている。
それぞれの署は散発的なハーピーの攻撃なら十分に対処出来る。
岩の上町の住民はそれらの署の南に位置する平戸城に避難している。
港の北側にはすでに自衛隊が戦闘を開始している。
港湾内では、海保の巡視船『かいどう』や平戸警察署の警備艇『ひらど』が睨みを効かせている。
平戸港の南側はちょっとした要塞の体をしていた。
平戸城の避難民を先に保護すべく、港湾入り口にある平戸図書館近郊の岸壁から県警SATが上陸した。
警備艇はそのまま平戸港の警備艇と合流するべく岸壁を離れていく。
県警SATは目に付くハーピーを銃撃し、図書館の裏側にある平戸城が鎮座する亀岡山を駆け上がる。
そこで宮迫警部は驚きのものを目にする。
鎧甲冑を着た30人ほどの男達が刀や槍を持って、ハーピーと戦っているのだ。

「お、兵隊さん・・・、いやお巡りさんか?
やっと来たか!!」

男達の大半は老人であった。

「その格好はどうしたんです?」
「平戸くんち祭りの武者行列のメンバー、平戸藩武将隊だよ。
武器は城内の展示品だが、街を守る為だ。
御先祖様達も誇りに思ってくれるさ。」

頼もしい話だと、宮迫警部は呆れてしまう。
平戸くんち祭りは、平戸城下の秋祭りである。
武者行列もあって、市民が甲冑を来てパレードに参加する。
半分は張りぼてだが、無いよりはマシと持ち出して戦いに参加していた。

「半分は本物なのか?」

銃声まで轟いている。
はじめは地元警察の銃や猟友会の猟銃の類いかと思ったが、よく見てみると火縄銃だった。
城内に展示してあった火縄銃を、使用可能にしてあるのだ。
城壁の鉄砲狭間から本当に発砲している光景は苦笑を禁じ得ない。
勿論、銃規制緩和で使用可能になった銃で法律には違反していない。
城下の高校からも有志の学生が弓矢や木刀を持ち込んで応戦している。
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