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日本が異世界に転移した第1(66)章

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0865始末記
垢版 |
2018/06/10(日) 01:21:08.41ID:D1R0b0ja
北サハリン船籍貨物船『ナジェージダ・アリルーエワ』

貨物船『ナジェージダ・アリルーエワ 』は、大陸から高麗に鉱石を運ぶ仕事に携わっていた。
と、言うのは表向きの話で、北サハリン船籍に偽装したチャールズ・L ・ホワイト元米軍中佐が強奪した船だった。
船長のナルコフは元ロシアマフィアで密輸に携わり、主要な船員達も指名手配犯ばかりだ。
その中には訓練を受けた帝国軍残党まで混じっていた。

「高麗に密かに運んでたハーピーの卵の孵化が予想より早かったな。
騒動を起こして、国防警備隊に嗅ぎ付けられた。」
「どうしやす?
この船も臨検を受けたら一発でバレますぜ。
中佐の魔法で眠らせていたハーピーが目を覚まし始めてますし。」

最初のうちは卵を運んで、高麗本国に大量発生させて混乱を狙う気だったが、卵が見つからなくなり、ハーピーそのものを輸送する羽目になっていた。
ナルコフ達船員は、モンスター避けの護符を、チャールズ中佐から貰っているがハーピー達はコンテナに閉じ込めて使わないようにしていた。

「とにかく中佐からの連絡を待て。
幸いハーピーの群れが日本の群れを引き付けてくれるから、まだ時間はあるさ。」



東京
市ヶ谷
防衛省
統合司令部

統合司令部は陸海空3自衛隊の運用を常時、一元的に指揮する目的で創設された。
元々は転移時の混乱を乗り切るための統合任務部隊司令部を常設化したものだ。
この統合司令部による指揮のもと、日本国は帝国との戦争に勝利するになる。
構想自体は転移前からあり、研究もされていたが、転移前との最大の違いは外征部隊や海外領土の派遣部隊の指揮も任されていることになる。
役割の増大から市ヶ谷の防衛省の拡大が求められ、新庁舎に居を構えることになった。
その統合司令部は、高麗国によるハーピーの群れの駆除失敗と、その群れが日本本土に向けて南下しているとの報告に大あらわになっていた。

「陸自、西部方面隊に防衛出動を指示。
第13、14、15師団にも駐屯地に隊員を召集させろ。
海自の報告はどうした!!」

統合司令の哀川一等陸将の怒号に、海自の担当者が資料を手渡してくる。

「駆除任務の増援の為に珍島に向かっていた第4護衛隊が間もなく群れと会敵します。
また、五島列島には佐世保から第12護衛隊。
壱岐島にも佐世保から第4掃海隊が防衛ラインを敷いて、駆除にあたります。
念のために呉からも第二護衛隊を派遣しました。」

人クラスの大きさで、時速80キロでの飛翔が確認されハーピーには、ミサイルの有効性が信用できない。
機銃や艦砲程度なら掃海隊でも務まるとの判断の派遣だった。

「また、第4護衛隊並びに同行の『くにさき』には、西普連が同乗しており、群れを引き付ける任務に任せます。」
「おう、それなら・・・唐津市方向に引き付けてくれ。
陸自の久留米の第4高射連隊と小倉の4普連を展開させる。」
「間に合うでしょうか?」
「間に合わせるんだ。
念願の79式の実戦経験も積ませれるしな。」

79式自走高射機関砲は、日本が帝国との勝利後に完成させた新型対空車両だ。
北サハリンのツングースカを参考に90口径35mm対空機関砲KDAを4門設置されている。
従来の地対空ミサイル中隊とは別に、増員されて創設された第3中隊の配備された。
名称には西暦が意味をなさないこの世界では、皇歴が採用されている。
0878始末記
垢版 |
2018/06/10(日) 01:25:28.05ID:D1R0b0ja
「追い込んだら壱岐や五島列島の部隊も移動させて包囲し、殲滅させる。
また、包囲を待つまでなく殲滅できるならそれもよしだ。」
「空自の第6飛行隊のF−2六機が、ハーピーの群れの背後に回り込みました。
また観測の結果、ハーピーの数は2400に修正。」
「くそ、思ったより大いな。
高麗の連中はどこに目玉付けてたんだ。
ハーピーどもがどこから日本や高麗に飛来したのか、早急に調べる必要があるな。」

会敵の時刻が迫っていた。
0886始末記
垢版 |
2018/06/10(日) 01:27:26.68ID:D1R0b0ja
福岡県福岡市
博多駅

小倉から到着した新幹線から、小倉駐屯地に所属する第4普通科連隊の隊員が降車して駆け出していく。
普通科隊員達を誘導している地元の地方連絡本部の隊員が叫ぶ。

「走れ!!
ハーピーどもは待ってくれないぞ!!」

博多駅の新幹線改札を抜けて、地下鉄のホームに向かっていく。
地下鉄に乗り込み、満員電車もかくやという段階になったら順次発車していく。
緊急の地下鉄は途中で地上に出て、ノンストップで西唐津駅に向かう。
ここからは、民間のバスが徴用されて唐津市沿岸に配備される予定である。
緊急事態であり、唐津市並びに糸島市には戒厳令が施行されている。
住民は沿岸部の住民は避難を、その他の住民は屋内での待機が命じられる。
また、両市内への交通も制限された。
海上でも海上保安庁の巡視船の『まつうら』、『いなさ』が警戒にあたり、神集島や姫島住民の避難に作業に従事している。
第4普通科連隊連隊長の鶴見一佐は、唐津城に司令部をおくことにする。

「あれだよな。
城って階段長いからやだよなあ・・・」

山城の山頂まで伸びる石段にうんざりした声をあげる。
西唐津駅からは部隊の展開を優先させる為に連隊司令部の隊員は徒歩で唐津城に向かう羽目になっていた。

「いえ連隊長、本丸まで行く直通エレベーターがありますのでそれで・・・」

幕僚の一人が気まずそうに指を指している。

「・・・こういうのは風情がどうかと思うよな。
さて、展開をいそがせろ。
間もなく会敵予想時刻だ。」

自衛隊だけでなく、福岡県警第12機動隊は糸島市に、佐賀県警機動隊やパトカーに乗った警官達も唐津市に集結している。

「ここに到着する前に殲滅してくれればなあ・・・」




海上自衛隊
第4護衛隊

ひゅうが型護衛艦『いせ』

飛行甲板に西部普通科連隊の隊員や『いせ』の立入検査隊員達が小銃を構えて待ち構えている。
『くにさき』の甲板でも同様の動きを見せている。

「来るぞ!!」

先行している護衛艦の『あけぼの』、『さざなみ』、『ふゆつき』の艦砲の発射音が響く。
これにCIWSの発射音もだ。
海面にハーピーが次々と落下していく影が見える。
だがハーピーの群れは次々と分離し、護衛艦にまとわりついて接近する。
各艦の立入検査隊や同乗する西普連の小銃や銃架に設置されたM2重機関銃も火を吹いている。
そちらの銃弾は自由自在に飛ぶハーピーに対して、あまり効果は上げられていない。

「殲滅戦とは厄介だな。」
0903始末記
垢版 |
2018/06/10(日) 01:31:31.04ID:D1R0b0ja
ブリッジから双眼鏡で覗いていた艦長の窪塚一佐はため息を吐く。
人間大のモンスターが自由に飛行し、数百も同時に攻めてくると護衛艦でも対処が困難になってくる。
幸いハーピーの爪では、護衛艦の装甲に傷も付けれない。
ただひたすら鬱陶しいだけだ。

「艦を反転させ、唐津湾に誘導する。
弾薬が尽きるまではハーピーが追い付ける速度に留める。」

ただ『いせ』や『くにさき』の甲板には数百の男性隊員がその姿を見せている。
ハーピー達はその男達の姿や臭いに魅せられて押し寄せてくる。
『いせ』と『くにさき』のCIWSの発砲が始まり、甲板の隊員達もこれに加わる。
『くにさき』の場合、現地で使う予定だった車両を甲板に駐車しており、車内や銃架から発砲している隊員もいる。
こちらの銃弾の密度は、護衛艦の比では無く、ハーピー達が次々と海上に落下していく。
海上に落下したハーピー達は、『海上結界』の餌食となっているのか、息のある者も暴れ狂い浮かんで来なくなる。

「艦長、『あけぼの』から小銃弾が尽きたと連絡が。」

『いせ』や『くにさき』ならともかく、通常の護衛艦に分乗しただけの西普連の隊員は、持ち込み分以上の弾薬は持っていない。
海上で戦うなど想定しないからだ。
それでも現在の海上自衛隊の艦艇は乗員数分の拳銃は支給されている。
それを借り受けて抵抗は続いているが、それも時間の問題だろう。

「『さざなみ』から報告、近接を許したハーピーが歌のようなものを発し、それを聞いた隊員や乗員が放心状態で動かなくなる事態が発生!!」
「歌だと?」

『くにさき』や『いせ』では銃声が鳴りやまずに全く聞こえない。
それでも海面スレスレから急上昇して、接近してきたハーピーの一部が同様に歌を歌い、隊員が戦闘不能になる事態が相次いだ。
戦闘不能になった隊員や乗員は艦内に引きずり込んで保護する。
それでも装甲が薄い区画では、歌が聞こえてしまい艦内で放心状態となる者が続出した。

「全スピーカーで何でもいいから派手な音楽を最大音量で鳴らせ!!」

『いせ』の艦内に『軍艦マーチ』が鳴り響き、『くにさき』ではメタルバンドの派手な曲が流れ始める。
後続の『あけぼの』がアニソン、『ふゆつき』がアイドルソングを流している。
だが『さざなみ』は何も流さないどころか、速度が低下していた。
その『さざなみ』には無数のハーピーがまとわりつき、大合唱の形をなしている。

「『さざなみ』のブリッジ並びにCIC沈黙・・・
『ふゆつき』が救助に残ると。」
このままでは囮の役が果たせない。
焦燥に刈られるブリッジだが、爆音が彼等の士気を取り戻す。

「空自です!!
空自の第6飛行隊がハーピーに攻撃を開始しました。」

第6飛行隊のFー2戦闘機6機が、『さざなみ』の周囲のハーピーを機銃で掃射していく。

「当艦も速度を落とし、歌の壁を『さざなみ』に張る。

「神集島まで距離3000!!

ハーピー達が離れていきます。」

ハーピー達も羽を休める必要があるのか、艦隊から離れていきます姫島、鳥島、神集島、高島などに集まっていく。
0912始末記
垢版 |
2018/06/10(日) 01:35:28.70ID:D1R0b0ja
海上保安庁の巡視船『まつうら』か神集島、『いなさ』が姫島近海で警戒にあたっており、両船も無数のハーピーに発砲を開始している。
唐津湾にいた自衛官や警察官も各地で発砲している。

「九州本島に渡ろうとする奴を優先して叩け!!」


唐津市唐津城
第4普通科連隊臨時司令部

「沿岸部で散発的な駆除作業は行われましたが、概ね九州本島へのハーピーの到達は阻止できました。
駆除作業の際に歌を聴かされて行動不能になった隊員が48名。
占拠された鳥島、高島は避難が終了しており、第4並びに第12戦隊が唐津湾を塞ぐ形で展開。
但し、護衛艦『さざなみ』は乗員並びに同乗した西普連の隊員30名が放心状態で戦闘不能と判断されて市内の病院に搬送されました。
残ったハーピーは500足らずと想定されます。」

幕僚の木村三佐の報告に、連隊長の鶴見一佐は渋い顔をする。

「接近戦はやばいか。」
「王国大使館に問い合わせたところ、歌の効果範囲は概ね半径50メートル。
夜は歌わない傾向があるようです。」

鶴見一佐は考え込む顔をして夜襲を検討している。

「西普連に夜襲を要請しよう。
うちの隊員はまだ無理だ。」

新型の装備は与えられたが、現在の普通科隊員の練度では夜襲を任せるには不安があった。
自衛隊は転移後に失業対策と帝国との戦争、占領統治に合わせて増員を掛けていた。
実戦経験のあった隊員は必然的に昇進し、アウストラリス大陸に派遣された第16師団や第17師団や西方大陸アガリアレプト派遣され、旅団化された第1空挺旅団、富士教導旅団、第1特科旅団、第1高射旅団等に配属された。
本国の普通科隊員達の大半がその後に入隊したものだ。

「ここは我々の庭です。
レンジャーの資格保有者を集めて参加させましょう。」

連隊の面子は何者にも代えがたい。

「それにしても歌だと?
資料には無かったな。」

自衛隊は交戦したモンスターをライブラリー化し、日本の保有するファンタジーモンスターの知識を注釈として書き込んでいた。

「どうやらセイレーンの知識と混在化していたようです。
もともとセイレーンも古代ギリシャでは半人半鳥だったのですが、中世ヨーロッパでは、人魚のような半人半魚の怪物として記述されています。」
「ヨーロッパの連中も適当だな。
この世界ではセイレーンとハーピーは同種と考えるべきか。」

放心状態になったことにより転倒し、負傷した乗員も多い。
死者が出なかったのは奇跡だといえる。

「連隊からも夜襲が出来る者を中隊規模で選抜し・・・歌?
しまった!!」

それは鳥島や高島に集まったハーピー達の大合唱だった。
夜になる前にまわりの生物を眠らせて安全を保つためだ。
その歌は風になり、沿岸部で警戒にあたっていた隊員や夜襲の為に待機していた西普連・・・
そして、唐津城で監視に当たっていた隊員と司令部の幕僚達が次々と倒れていく。
鶴見一佐は咄嗟に手のひらで耳を塞ぐが、城内で無事だった隊員はほとんどいない。

「合唱か・・・、くそ、甘く見てた・・・」
0922始末記
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2018/06/10(日) 01:38:00.26ID:D1R0b0ja
東京
市ヶ谷
統合司令部

唐津の惨状の報告に、哀川陸将は頭を抱え込んでいた。

「それで・・・、損害は。」
「第4普通科連隊の隊員450名。
西部普通科連隊900名が戦闘不能に陥り、夜襲は中止になりました。
また、四名ほどの隊員が倒れた際の打ち所が悪かったり、海に転落するなどして殉職しました。
現在も放心状態の隊員の回収作業が行われています。
海保の巡視船も2隻とも行動不能と報告が来ています。」

ハーピーは夜になって動きを止めた。
本来ならここで夜襲を用いて叩いておきたかった。
神集島や姫島は島民こそ避難しているが集落もあり、民間資産の破壊を恐れた政府によって、空爆や艦砲による攻撃を禁じられたのが仇となった。

「放心状態の隊員の容態は?」
「王国大使館に問い合わせたところ、大陸の冒険者なら強い刺激を与えればすぐに目覚めたそうですが、我々のように半日も状態異常が続くことは無かったそうです。」

最近では当たり前のように受け入れられようになった『地球人は魔法に対する耐性が無い』という説がある。
哀川陸将も半信半疑に聞いていたが認めざるを得なかった。


「規模は小さくなったが、夜襲はまだ有効な手のはずだ。
いや、いまやらねば被害は拡大する。
残存の隊員に回収作業が一段落したら夜襲を強行させろ。」

大分や長崎からも部隊を呼びよせているが、4普連と違い準備万端の車両移動なので間に合いそうにない。
西普連と四普連の800名余りの隊員を両島に上陸させることが決定した。
但し、政府から追加された要望書からは手榴弾や摘弾の使用も制限が書き込まれていた。



佐賀県
唐津市鳥島

陸上自衛隊第4普通科連隊第3中隊の隊員が、手漕ぎのキス釣りボートを徴用して、この無人島に上陸する。
水谷三曹は三人掛かりで、ボートを海岸に引き上げる作業を行っていた。
徴用した品なので、なるべく無事に返却しなければならない。

「疲れた・・」

佐賀県ヨットハーバーから約一キロ程度の距離だが、4普連の隊員達は二人乗りや三人乗りのボートで海上を走破したのだ。
中には慣れないカヤックで島に渡った猛者もいる。
平時はボートやカヤックで渡る客も普通にいるそうだが、隊員達は寝不足と疲労で困憊していのが災いした。
ただでさえ昨日は、早朝に小倉から唐津に駆けつけ、昼間は唐津湾の避難誘導、警戒と散発的な駆除作業に駆り出された。
ようやく交代して休めると思ったら、ハーピーの歌声で放心状態となった隊員の回収作業にと叩き起こされた。
鍛えぬかれた隊員と装備は本当に重かった。
それも一段落する頃には日付が変わっていた。
そして、そのまま徴用した手漕ぎボートで海上一キロの距離を渡り切れと命令されたのだ。
文句の一つも言いたくなるだろう。
すでに鳥島にはヨットの心得がある隊員によって、操作されたヨットに乗船してきた隊員が警戒にあたっている。
小隊長の加山二尉が、こちらに静かにしろというハンドサインを送ってくることには多少ムカつく。
先行した隊員は80式小銃に着剣した銃剣やナイフ、個人購入した刀剣で、眠りについているハーピを一匹一匹、刺突して始末している。
89式小銃の後継80式小銃は、カービン型ライフルに変更したことにより銃身の短縮並びに軽量化を達成した。
また、想定する敵が人間だけでなく、モンスターが追加されたことによる3点バーストの廃止も盛り込まれている。
個人購入の刀剣は大陸では自由に購入、携帯できる。
0931始末記
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2018/06/10(日) 01:40:09.54ID:D1R0b0ja
しかし、『海洋結界』に囲まれた日本本国では緩和されたとはいえ、まだまだ厳しい条件の元でしか許されていない。
自衛隊や警察などの武官では購入が奨励されるどころか、制式装備として採用しようかとの動きまであるくらいだ。
その任務に刃物は最適な獲物だった。
ハーピーが眠っている間に可能な限り始末する。
大抵のハーピーは樹木に寄り添って寝ていた。
隊員達には疲労と寝不足、そして夜の闇があるのが幸だ。
モンスターとはいえ、人の顔をした生き物を殺すのだ。
そのことに想いを馳せる余裕も無く、躊躇いや罪悪感も見せずに機械的にハーピーを駆除してまわっていた。
もちろんハーピーが飛び立っても、対岸の79式自走高射機関砲が唐津神社、全農唐津石油工場、唐津ヨットハーバーの駐車場に一両ずつ陣取り待ち構えている。
高島にも島を囲うように、東の浜海水浴場、虹の松原に79式自走高射機関砲が置かれている。
鳥島も高島も79式自走高射機関砲の射程距離内だ。
鳥島は無人島なので、ロクに家屋も無く、地面に巣を作ろうとしていたハーピーの駆除は、思いのはか順調に進んでいった。



唐津市
高島

高島は宝くじ関連の島興しに成功した島で、唐津港と陸続きの大島から西に約1.5キロ程度の距離にある。
西部普通科連隊は本来なら夜明け前に各島に上陸して、圧倒的隊員数によって、ハーピーどもを殲滅する筈だった。
その為に海岸で船舶を徴用したり、港や海岸で船舶が着岸するのを待機させていたのが災いした。
ハーピーの歌の効果で半数以上の隊員が放心状態に陥るのは、とんだ失態であった。
唯一無事だった中隊長の窪塚一尉の指揮のもと、FRP製のカッター型短艇で隊員達がオールを使って島に上陸した。
島の北部は山になっており、民家はは南部の海岸沿いに集まっている。
ハーピー達は集落が避難が済んで無人となっていた集落の建物に巣を造りだしていた。
人口400人程度の集落があり、ハーピーはそれらの建物瓦屋根で眠りに付いている。
よって西部普通科連隊の猛者達は、いちいち梯子で屋根に登ってハーピーを仕留めないといけないという難事に遭遇していた。

「参ったな、梯子が足りないぞ。」

ボートに可能な限りの隊員を乗せる為に不必要だと思われた装備はあまり持ち込んでいない。
今なら一網打尽に出来るのだが、重火器の使用は禁じられ、小銃では狙いにくい場所だった。
家屋を破壊するのも避けたい事態だった。
何より銃声で起きられて、空に逃げられるのは避けたいところだ。
どのみち今の隊員には実戦で発砲したことがある者は少ない。
それは精鋭足る西普連ともいえど同様だった。
梯子を使わずに登ろうとして、物音で起きられて逃げられる事態が幾つか発生した。
ようやく梯子がまわってきて、よじ登る隊員は屋根の上でまだ起きていたハーピーと目が合ってしまった。

「 キェェェェェェェェェ〜〜 」

猿叫のような叫び声を上げられて隊員は硬直する。
周辺家屋にいたハーピー達は一斉に目を覚まして、目についた西普連の隊員に襲いかかる。
梯子を昇る途中だった隊員は、梯子を倒されて地面に落ちていく。
屋根でハーピーを刺突していた隊員も他のハーピーが飛来して体当たりを食らい屋根から叩き落とされる。
窪塚一尉はもはやここまでと発砲を許可した。

「飛び上がったハーピーに発砲を許可する。
負傷者は小学校に運べ!!」

真っ先に発砲を始めたのはやはり大陸帰りの隊員達だった。
許可さえ下りれば彼等に躊躇いは無い。
彼等に触発されて、初めての実戦を経験する隊員も射ち始める。
窪塚一尉も89式小銃を撃ちながら負傷して後送される隊員を援護する。
西部普通科連隊は第4普通科連隊と違って、転移後の新装備はあまり配備されてない。
しかし、使いなれた銃器の方に隊員は信頼を置いていた。
ハーピーの数は決して多くはない。
銃弾が使用できれば、西普連の敵ではなかった。
0944始末記
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2018/06/10(日) 01:43:08.88ID:D1R0b0ja
唐津城
第4普通科連隊臨時司令部

「鳥島の駆除が完了との報告がありました。」
「第4中隊が神集島にて、少数のハーピーを確認、交戦中!!」
「湾岸防衛の第5中隊も三ヶ所でハーピーを確認。
追跡の上、駆除します。」
「79AW、発砲開始!!」

壊滅した第1・2中隊から無事だった者を集めて再編した司令部はどうにか機能を回復した。
湾岸の防衛には久留米から呼び寄せた教育隊まで動員してカバーしている。
連隊長の鶴見一佐は予備の第6中隊も動員するか考えていた。

「高島の西普連はどうか?」
「負傷者を出しつつも順調とのことです。」

島からは銃声も聞こえる。

「刃物だけではやはり片付かんかったか。」

その銃声も少なくなってくる。
唐津における殲滅はうまくいきそうだった。

「姫島の方に福岡県警SAT一個小隊が、警備艇三隻で突入。
あちらはしょっぱなから、銃器を使用している模様です。」
「長年、暴力団相手にしる連中は違うな。
他のSATでもあそこまで思いきりはよくあるまい。」

福岡市や北九州市に配備されていた分隊を集めた部隊だ。
姫島は福岡県に属するのでかき集められた。
他の戦闘となった3島に比べれば姫島は遠隔にあるが、そのぶんハーピーの数も少ない。
県警警備艇『げんかい』、『ほうまん』、『こうとう』の3隻に分乗した。
エンジン音に気がついたハーピー達が殺到するが、船上から発砲しつつ排除しながら桟橋に停泊して上陸した。
各県警警備艇も自衛隊から供与された89式小銃を銃架に設置して発砲している。
その後は隠れ潜むハーピーの掃討にあたっている。

歌による放心や鉤爪による負傷者は増えたが、唐津・糸島におけるハーピーの掃討は概ね夜明けまでには完了した。
鳥目だったハーピーは夜間での行動範囲が狭かったせいもある。


だが夜明けと同時に平戸市から救援要請が届くことになる。




市ヶ谷
防衛省統合司令部

ようやく唐津、糸島のハーピー殲滅に成功したと思ったら今度は平戸からの救援要請である。
徹夜で事務処理や増援の調整を行っていた統合司令の哀川陸将は不機嫌な声を隠そうともせずに問いただす。

「どういうことだ?」
「はっ、平戸市田助町の港に夜明けとともに旧イラン船籍の大型貨物船が田助港の桟橋に激突するよに停船。
船内から大量のハーピーが田助港を襲撃し、多くの住民が被害にあっています。」

旧イラン船籍の船は独立の決まらないイラン人船長が大陸に放置して逃亡したものということが判明した。
何者かがわざわざ日本まで航行してきたようだが、そこは貨物船を制圧して調べてみないとわからない。
レス数が950を超えています。1000を超えると書き込みができなくなります。

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