ですが、

「無駄ですよ」

私は全の竜に人差し指を突きつける。
瞬間、発動しつつあった魔法陣に、本来あるべきでない線が刻まれる。
そして……私達に向けて発動されるはずだった魔法の全てが、逆転した。
全属性の魔力の奔流が、全の竜の巨体に八つの風穴を穿つ。

「今の私なら……この世界の創造主の描く魔法であろうと、読み解き、書き換えられる」

……まぁ、本当は物量で攻め続けられたら流石の私も凌ぎ切れなくなるんでしょうけど。
わざわざ教えてやる義理もありません。黙っておきましょう。
それにしても……随分と痛ましい姿になったじゃありませんか。

「どうです、その傷。痛みますか?試しにその痛み、属性で言い表してみて下さいよ。
 ……出来ないのなら、おめでとうございます。
 あなたが求めてやまなかったものを、これから幾らでも思い知らせて……」

私は挑発的な笑みと共に、全の竜を睨み上げて……思わず紡ぎかけていた言葉を失った。
全の竜の胸に穿たれた四つの風穴。
その内の一つ。その奥に……何かが、見えた気がしたから。
あれは……くすんで、ひび割れた……宝玉?いえ、眼球……?

……全の竜は、すぐに傷を塞いでしまった。
ジャンソンさんに殴られた時の傷は、そのままにしていたのに。

「……皆さん、見ましたか?今の……」

見間違いだったかもしれない……。
アレが一体なんだったのかも分からない……。
でも……今、何かが見えたような……。