形成している『ドラゴンサイト』は一体のみ。
ですがそれでも、あまり長くは維持出来そうにありません。
まぁ無理をしている事に変わりはありませんからね。

「殺さなくてもよいのかね」

「あの女王様が素直にお喋りしてくれるとは限りませんからね。
 それにあなたは旧世界の優れた魔術師です。
 帝国に連れ帰れば皇帝陛下も喜ばれるでしょう」

「……そりゃお主ならそれくらい可能かもしれんが。
 新世界の魔術師にはモラルというものがないのか……?」

「冗談ですよ。本気にしないで下さい」

老魔術師の体を構築する魔力に、楔を打ち込むように封印を施す。
『フォーカス・マイディア』を解除して……少し、目眩がしますが、これくらいの反動は許容範囲です。

「……これでよし、と」

封印術が完了して、さてお次は……

「それでは、お手数ですが……あなたから女王様に、戦いをやめるよう改めて進言して下さい。
 全の属性を司る英雄である、あなたが敗れたんです。もうあなた達に勝ち目はないでしょう」

老魔術師は……答えない。

「……私は、私達は別に、この世界を滅ぼしたり、あなた達に報復がしたい訳ではありません。
 むしろ……何故、あの女王がこの世界を救おうとしていないのか。私にはそれが分からない」

やはり返事はない……妙ですね。
この期に及んで、無駄な抵抗をするような方ではないはずですが。

「……残念じゃが、儂はそんな大層な肩書は持っておらぬよ。
 全の属性の英雄は、儂ではない」

……なんですって?
じゃあ、一体誰がその相手を……。



【なんでこんな無謀なチャレンジしたんだろうって気持ちでいっぱいです】