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陽子と初めて出会ったのが大学の入学式の日である四月一日。それから一ヶ月ほど経って付き合い始めたのだが、遡ること、今から数えておよそ半年前の一月二十五日まで私には別の彼女がいた。陽子は人生で二人目の彼女である。
高校生の時から2年弱付き合っていたみゆきという子である。
「わたし裕二君のこと、すごく理解しているし愛してもいるよ。だけどね、最近思うの。裕二君はわたしの唯一人の存在なのかなって」みゆきがこう切り出すまでに時間が掛かった。
その日は会った時から何か様子が変だと感じてはいた。彼女は普段、髪を縛っていることが多い。しかし、その日は、髪の毛をおろしていた。後から考えると、彼女は禊をしにきたようなのではないかと思えた。
あの日は、高校三年の最終学期の登校日であった。空は薄雲っていて世界がまるで眉間に皺をよせているかのような天候だった。
確かに愛している(愛していた、が正解か)。but〜しかし、あなたは私の唯一の存在であるか、わからない。
「別れたいってこと?」彼女のボカしたような言い方に私は少し腹を立てて言った。
「ごめんね。女の子はね、限られた時間の中で生きてるの。だからわかって欲しい」とみゆきは相変わらずはっきりとは云わずに、重要なことは察して欲しい、という感じで狡く話を引き延ばしていた。
「好きな人ができた?」
「うーん、気になる人はいる……だけど、その人が本物かどうかわからない」
彼女の云わんとしていることは何となくわかったが、私は納得いかなかった。
「別の人と付き合いたいなら、何で俺と付き合ったの?」私は皮肉にならい皮肉を、いくぶん子供っぽい言い方で言葉にした。
恋愛にも段階があって、始まりと終わりだけではない。紆余曲折ありながら、私たちは、ようやく結びつきを感じられるところまできていた。