コバルトゥスは少しの間、黙っていたが、やがて思い付いて言った。

 「あっ!
  じゃあ、先輩、付けって事で」

 「誰が信用するか!
  お前、今まで一度も僕が貸した金を返した事が無いだろう!」

良い考えだと思っていたのに、即ラビゾーに否定されて、コバルトゥスは面食らう。

 「えっ、借金なんかしましたっけ?」

 「何度もしているぞ。
  小額だから直ぐに返すと言いながらな!」

自分に都合の悪い事は直ぐ忘れられる、実に都合の好い記憶力を持っているコバルトゥスは、
借金の事を悉(すっか)り忘れていた。
悄気るコバルトゥスを慰める様に、ラビゾーは言う。

 「紙と筆なら貸せるぞ」

 「えっ、要らないッスよ」

 「洞窟を探索するなら、地形とか記憶する必要があるだろう?」

 「俺、記憶力は良い方なんで」

 「じゃあ、借金の事も憶えてるよな?」

 「いや、それは全然……」

「こいつ何なんだ」とラビゾーは憤然とした表情で口を閉ざした。