X



トップページ創作発表
565コメント719KB
ロスト・スペラー 18
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
0001創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/02/08(木) 18:42:15.87ID:S22fm2qA
夢も希望もないファンタジー

過去スレ

https://mao.5ch.net/test/read.cgi/mitemite/1505903970/
http://mao.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1493114981/
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1480151547/
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1466594246/
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1455282046/
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1442487250/
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1430563030/
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1418203508/
http://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1404902987/
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1392030633/
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1377336123/
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1361442140/
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1347875540/
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1334387344/
http://engawa.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1318585674/
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1303809625/
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1290782611/
0142創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/08(木) 18:37:52.38ID:uEKm6JKM
彼の反応を意地悪く感じたコバルトゥスは、大袈裟に驚き、失望して見せた。

 「なぁんで、そんなに吝嗇なんスかぁ!?」

 「だって、カシエさんと勝負してんだろう?」

飽くまで公平性を欠く真似は出来ないと主張するラビゾーに、コバルトゥスは問う。

 「じゃ、カシエが居なかったら良いんスか?」

 「えぇ……?
  そりゃ、多少は融通を利かせてやっても良いと思うが」

自分が嫌われている訳では無のだと悟り、コバルトゥスは安心しつつも、強請(ねだ)りは止めない。

 「でも、洞窟の時間が狂ってる事と、カシエとの勝負は無関係っしょ?」

 「何が有利に働くか判らんからなぁ……。
  それに只では面白くない」

只では無理と聞いた彼は、嫌らしくラビゾーに囁く。

 「そんじゃ、俺が財宝を手に入れたら、先輩にも分けて上げますよ」

 「駄目だ。
  僕はカシエさんと先に契約した。
  商売は信用だ。
  彼女を裏切る事は出来ない」

 「ハァ、相変わらず真面目腐って」

押しには弱い癖に、一度決めたら中々譲らないのが、このラビゾーと言う男。
コバルトゥスは呆れて彼を茶化すのだった。
0143創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/09(金) 18:33:17.27ID:CsKxXkON
それからコバルトゥスはラビゾーから少し離れて、再び回復に努めた。
両目を瞑って心を静かに保ち、深呼吸を繰り返して、全身の強張りを解く。
人里離れた山の中、水と風の音、そして鳥の鳴き声しか聞こえる物は無い……。
否、ラビゾーがバックパックを漁る音がする。
その後に聞こえる咀嚼音。
ラビゾーは何か固い物を齧っている。
水筒から茶を飲む音もする。
コバルトゥスは嫌でも空腹を意識して、目を瞑った儘、ラビゾーに話し掛けた。

 「……先輩」

 「どうした?」

 「何、食ってるんスか?」

 「パワー・プレニッシュメント(※)。
  一般的には略してパワプレと言うな。
  携行食だよ」

 「何で食ってるんスか?」

 「何でも何も、僕が買った物だし」

 「商品じゃないんスか?」

 「商品は商品だが、自分で買ったんだから良いじゃないか……。
  自分で金を払って、自分で受け取っても仕方が無いし。
  未だ未だ数には余裕がある、無くなりはしないよ」

コバルトゥスは自分が腹を空かせているのに、その横で他人が物を食べているのが、
気に食わなかった。


※:ヘルス・ヒーラー(健康食品会社)の商品名。
  『Power Plenishments』。
0144創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/09(金) 18:36:00.75ID:CsKxXkON
不機嫌なコバルトゥスに、「欲しければ買えば良い」とラビゾーは言わない。

 「……あぁ悪かった」

大人しく詫びて、食べ掛けの携行食を片付ける。
空腹の者を前に当て付ける様に食事をするのは、購買意欲を唆(そそ)る行為だ。
その目的は果たしたのかと、コバルトゥスは独り深読みして不快な気分になった。
空腹は人から温厚さと冷静さを奪うのだ。
ラビゾーは計算高い人間では無いと、彼は後になって悟る。
雑念は集中力を乱し、魔法の効果を薄れさせる。
これでは行けないと、彼は反省した。
魔法で体力を十分に回復させれば、少しは空腹が紛れるだろうと思い直し、再び集中力を高める。
太陽は明るく、風は穏やかだ。
雄大な自然に自身を溶け込ませれば、些事に煩う心も洗われる。

 (食い物位、この洞窟の探索が終われば分けて貰えるだろう)

コバルトゥスは妙な希望的観測に目覚め、苛立ちを収めた。
0150創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/09(金) 19:29:50.72ID:CsKxXkON
カシエが洞窟に入ってから約2針半後、彼女は洞窟から出て来る。
彼女の体の所々には浅い傷が見られ、表情は悩まし気だった。
そんな様子のカシエを目にするや、コバルトゥスは彼女に駆け寄って、真剣な声で尋ねる。

 「どうしたんだ、カシエ!
  その傷は!?」

 「……私と同じ姿をした物が居たの」

 「同じ姿?!」

 「6階層目の通路で、私を鏡に映した様な……。
  背格好も装備も全く同じ、私の分身みたいな……」

 「カシエ、君は探索を止めた方が良い」

コバルトゥスは本心からカシエを心配していた。
しかし、彼女は頷かない。

 「それは嫌。
  私だって冒険者、この程度は覚悟してる。
  心配しないで。
  何と無く、終わりが近い気がするの」

カシエは気丈に振る舞い、優しくコバルトゥスを押し返した。
そして弱々しい足取りでラビゾーに歩み寄り、財宝を見せる。
コバルトゥスは暫し立ち呆けていたが、やがて気を取り直し、洞窟に入った。
0154創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/10(土) 16:04:06.37ID:ojfKa+x8
コバルトゥスは真っ直ぐ地下5階を目指した。
これまでと同様に、化け物や仕掛けが復活していたりはしないし、罠の配置も変わっていない。
地下4階の隠し扉も、普通に開く様になっていた。
地下5階の不快感には相変わらず慣れないが、見知った道なら通り抜けるのも早い。
この階層の最初の分岐に差し掛かった彼は、今度は右折してみる事にした。
罠は見付からず、敵にも出会(くわ)さない儘、暫く歩いていると、突き当たりが見える。
道は左側に続いていた。
右側は土の壁。

 (これは、もしかして?)

前に通った道と繋がっているのではと、コバルトゥスは直感する。
それが正しいか確かめる為に、彼は左折して真っ直ぐ進んでみる事にした。


耐久力:10
魔力:15
0155創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/10(土) 16:07:02.37ID:ojfKa+x8
コバルトゥスが分岐路を右折して暫く歩くと、通路が右に折れている場所に出る。

 (これが前回通った道。
  ここに少し沈む地面がある……っと!
  あった、あった)

予想を裏切られなかったので、コバルトゥスは少し満足した。
その儘道形に進むと、真っ直ぐと右に曲がる分岐路がある。
地面には1本の燐寸が置かれている。

 (やっぱり同じ道じゃないか……っとォ!?)

彼が燐寸に近付くと、僅かに地面が沈み込む感覚がある。

 (油断していた……。
  しかし、変だな。
  何で、あっちから来た時は作動しなかった?
  踏み忘れる訳は無いのに)

自分の記憶力に自信を持っているコバルトゥスは、踏み忘れでは無いと断定して、
右に続く道を見詰めた。

 (左回りで何も無かったって事は、右回りに行けば何かあるのか?)

罠かも知れないと思いつつ、彼は直感に従う。
地面に置いた燐寸は水分を吸収して湿気っていたので、回収しなかった。
0156創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/10(土) 16:12:16.56ID:ojfKa+x8
分岐路を右折して真っ直ぐ進んだ彼は、通路が右折している場所に出る。

 (この先に行くと、元に戻る。
  それだけで何も起こらなかったら、馬鹿みたいだなぁ)

無駄に時間だけ食うのは避けたい物だと、コバルトゥスは思った。
そして、曲がり角を曲がろうとした時……、

 「おっと」

3箇所目の沈む地面を踏む。
その直後、前方で地響きがした。
何かが動いている。
驚いて罠かと身構えるコバルトゥスだったが、何も起こらない儘、地響きは収まった。
10極に満たない間の事。
コバルトゥスは何が起こったのか確かめる為に前進する。
暫し後、突き当たりと左右に分かれる道が見えるが、交差点の地面にはには大穴が開いている。

 (何だ、こりゃぁ?
  階段?)

恐る恐る穴に近付いて中を覗き込むと、更に下層へと続く階段の様だった。
ここが見知らぬ場所では無い証拠に、地面には湿気た燐寸が置かれている。
コバルトゥスは全てを理解した。

 (沈む地面は、この階段を出現させる為の仕掛けだったのか!
  正しい道順で踏んで行かないと、下の階に行けない様になっているんだな)

面倒な仕掛けだと思いつつ、これで先に進めると、彼は安堵する。
0157創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/10(土) 16:14:57.06ID:ojfKa+x8
階段を下りるか、この階層の未だ探索が終わっていない場所に行くか、選択して下さい。
0158創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/10(土) 17:11:51.61ID:ojfKa+x8
大変申し訳ありません
>>154の次には以下の文章が入ります。


予想通り、左折した先には突き当たりがあり、道が左右に分かれていた。

 (ここで右側に行くと石の怪物が居て、左側は元に戻る筈だ)

コバルトゥスは本当に同じ道だと言う確証を得る為に、足が少し沈む地面を慎重に探した。

 (この辺りに……。
  あれ?
  無いぞ?)

所が、どこにも無いので彼は混乱する。

 (どうなってんだ?
  違う道に出たとか?
  いや、急な上りや下りは無かったし、魔力場の変化も……)

未知の魔法的な仕掛けが多いとは言え、違う場所に飛ばされて、全く気付かないと言う事があるか、
コバルトゥスは思案した。
そして暫く考え、ある事を思い付く。

 (……そうだ!)

コバルトゥスは、その場に燐寸を1本置いて、来た道を引き返した。
そして、最初の分岐路に戻ると、そこにも燐寸を1本置く。

 (これで同じ道を通ったのか判るぞ!)

我ながら妙案を閃いた物だと自賛しつつ、彼は分岐路を右折して、右回りに戻って来れるか、
確かめようとした。


これを挟んで>>155>>156に続きます
0160創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/11(日) 17:21:33.49ID:TPEv4S8n
コバルトゥスは慎重に階段を下りた。
もし地下5階よりも不快感が強くなったら、どうしようかと彼は悩む。
カシエが言うには「終わりが近い」らしいが、それは彼女の個人的な感想であり、正しい保証は無い。
本当に終わりが近いのであれば、好ましい事ではあるが……。

 (いや、好いとは限らないな?
  カシエが先行してる現状、先に最深部に到達される可能性もある)

悶々とした気持ちで歩いている内に、階段は終わり、コバルトゥスは地下6階に出る。
これまでと変わらない土と岩の通路が、3つある。
不快感は地下5階と殆ど変わらず、少なくとも急激に強くなったと言う事は無い。
3つの通路は、コバルトゥスから見て右、左、正面に配置されている。
後ろは階段だ。
どの道を進もうかと、コバルトゥスは足を止めて考えた。


耐久力:9
魔力:14
0163創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/12(月) 18:01:28.70ID:nuiy2jjc
何と無く、左に進んでみようとコバルトゥスは決めた。
彼はカシエの言う、「自分と同じ姿の物」を想起して警戒する。
それは一体、どんな物なのだろうか?
コバルトゥスの前にも、カシエの姿で現れるのか、それともコバルトゥスの姿に変身するのか?
強さは如何程だろうか?
身体能力も同程度になるのだろうか、それとも姿を似せるだけで全く違うのか?
カシエは幻覚を見せられたのではないか?
あれこれと可能性を考えるコバルトゥスだったが、彼の行く先は行き止まりだった。

【行動表参照】
0164創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/12(月) 18:20:01.47ID:nuiy2jjc
【失敗】

直ぐには引き返さず、何か無いかと目を凝らすコバルトゥス。
しかし、特に気になる物は見当たらない。

 (罠も敵も無しか……。
  唯の行き止まり?)

本当に何も無いのかと、彼は精霊の力を借りて、改めて何か無いか探知する。

【再判定】
0165創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/12(月) 18:50:05.27ID:nuiy2jjc
【成功】

精霊は行き止まりの右隅に、周囲の土や岩石とは異質な物があると示している。
コバルトゥスは徐に近付いて、正体を確認した。

 (あぁ、土と似た色で判らなかった。
  見付かり難い様に、偽装したんだろうか?
  それとも時間の経過で自然に同化してしまったのか)

それは地下3階にあった物と同じ様な、石板だった。

 (罠じゃないよな?
  どっちにしても、触ってみるしか無いが)

押そうか引こうか迷ったコバルトゥスは、取り敢えず引いてみる事にする。

 (何か起きても、直ぐ逃げられる様に……)

彼は慎重に石板に指を掛けて引っ張った。

【力判定】
0166創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/12(月) 19:03:56.91ID:nuiy2jjc
【成功】

恐る恐る、少しずつ引き出してみようと思ったコバルトゥスだが、石板は地下3階の物より重い。
覚悟を決めて一息に引き出すしか無いと、彼は腰を溜め、全身の力で石板を引いた。

 「フンッ!!」

石板は数節だけ引き出されて、そこで止まる。
同時に、同じ階層の遙か遠くで、地響きの様な音がする。
一方で周辺の精霊に変化は無く、危険が迫っている感じは無い。

 (どこが動いた?)

だが、どこかで何かが変わったのは事実である。

 (他の所を調べてみるしか無さそうだな)

コバルトゥスは来た道を引き返し、分岐路に戻った。
右は階段、左と正面は未探索の通路。
さて、どうしようかと彼は思案する。


耐久力:8
魔力:12
0169創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/13(火) 18:48:57.38ID:EXwoslMF
コバルトゥスは直進する事にした。
カシエの言う「自分の姿をした何か」は、未だ現れない。
この先に居るのかも知れないと、彼は警戒する。
暫く歩いた所、突き当たりに出会す。
又も行き止まりかとコバルトゥスは思ったが、今度は左側に道が続いている様子。
彼は慎重に角を曲がって、先に進んだ。


耐久力:7
魔力:11

【行動表参照】
0170創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/13(火) 18:55:19.91ID:EXwoslMF
【通常判定】

角を曲がると、真っ直ぐの道が続く。
コバルトゥスは前方を警戒して歩くが、何も現れる気配は無い。

 (嫌に静かだな。
  そう言えば、仕掛けばかりで、暫く罠を見ていない)

そんな事を思いながら、彼は前進を続ける。
不快な圧力には相変わらず慣れないが、これだけならば然程重大な脅威にはならない。

【洞察力判定】
0171創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/13(火) 19:08:43.64ID:EXwoslMF
【失敗】

そう慢心したのが不味かったのか、コバルトゥスは罠を発動させてしまった。
左側の壁が一斉に倒れて来る!

 「わわっ、嘘だろ!?」

壁が倒れる範囲は広く、どんなに素早く移動しても回避は出来そうにない。
これは腕力で押さえるしか無いと、コバルトゥスは覚悟を決めた。

 「うおおおおおおお!!」

両手を突き出して、倒れ込む壁を受け止める。

【力判定】
0172創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/13(火) 19:13:40.91ID:EXwoslMF
【失敗】

しかし、壁は彼の腕力で受け止めるには重過ぎた。
勢いに負けて、簡単に押し潰されそうになる。

 「つ、潰されて堪るかぁああっ!!」

コバルトゥスは精霊石の力を引き出した。
不可視の力が、彼と共に倒れて来る壁を支える。

【再判定】
0173創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/13(火) 19:28:49.75ID:EXwoslMF
【失敗】

それでも無駄だった。
精霊の力を借りるのが、遅かったのかも知れない。
……どう仕様も無かったのだ。
これまでの罠とは違い、壁が一斉に倒れて来るのは大掛かり過ぎて、想定外も想定外。
コバルトゥスは岩壁の下敷きになってしまった。

 (くっ、苦しい……)

こんな所では誰も助けに来ない。
彼に圧し掛かる岩壁は、益々重たくなって行く様。
死んで堪るかと、コバルトゥスは精神を集中させ、魔法剣を使う。
短剣を抜き、岩壁に押し当て、四角に切り抜く。
岩壁はコバルトゥスが居た部分を残して、地面に倒れた。

 「えいっ!」

コバルトゥスは切り抜いた岩壁の一部を捨て、両脚を伸ばす。

 「フー」

大きな溜め息を吐いた彼は、倒れた岩壁を乗り越えて、先に進んだ。


耐久力:2
魔力:7

【行動表参照】
0174創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/13(火) 19:37:35.15ID:EXwoslMF
【通常判定】

罠を越えた先は、行き止まりだった。
右も左も岩壁で、どうやっても進めそうに無い。
目の前には錆付いた宝箱が置いてある。

 (宝箱か……。
  絶対怪しい)

彼は警戒したが、「宝箱」を開けない選択は無かった。

 (でも、俺は冒険者だ。
  お宝を目前に撤退は出来ない)

先ずは罠が無いか、そして、どうやって開けるのか調べる。


耐久力:1
魔力:6

【洞察力判定】
0175創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/13(火) 19:51:07.80ID:EXwoslMF
【成功】

魔法資質も用いて念入りに観察した所、特に仕掛けの様な物は無いが、鍵が掛かっていると判明。
錆付いているので、上手く開けられるかは判らないが、コバルトゥスは取り敢えず開錠を試みた。
冒険者であるコバルトゥスは、鍵開け道具を持っている。

 (こんな時の為の鍵開け技術だ)

自分の技術を発揮出来る機会が訪れた事を、彼は少し嬉しく思った。

【機敏さ判定】
0176創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/13(火) 19:56:18.80ID:EXwoslMF
【失敗】

所が、錆が原因なのか、中々鍵は開かない。

 (……いやいや、そんな馬鹿な)

これは自分の腕が悪いのでは無く、頑固に錆付いている所為だと、コバルトゥスは誰にするで無く、
言い訳した。
彼は大きく深呼吸をして、心を落ち着ける。

 (そろそろ疲れて来たし、早々と魔法で開けてしまおう)

コバルトゥスは鍵開け道具を片付け、精霊石を握り締めて、宝箱の鍵に触れた。

【再判定】
0177創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/14(水) 18:34:13.83ID:oUia8D05
【自動成功】

彼は空いた手で、燐寸を取り出す。
燐寸に含まれる燃素に気素を過剰に反応させ、それに水を加えると苛性の液体が出来る。
その化学反応を土と風と水の精霊魔法で行うのだ。
これによって錆を落とすのである。
錆を落としたら、精霊の手で直接鍵を解除する。
鍵開け技術も何も無いが、そんな事は気にしないコバルトゥスだった。
それよりも箱の中身への興味が勝る。

 (こんな所に、態々こんな物が置かれてるんだ。
  それなりの物じゃなきゃ困るぜ)

彼は期待を持って、宝箱の蓋に手を掛けた。

【財宝判定】
0178創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/14(水) 18:44:57.90ID:oUia8D05
箱の中にあった物は、錆びた金属の食器だった。
赤錆びた皿が1枚と、匙が2本。

 (どう見ても瓦落多〔ガラクタ〕じゃないか!
  いや、物凄い掘り出し物の可能性もあるのか?
  それにしたって、こんなに錆びてたら……)

余り高く売れそうにないので、コバルトゥスは落胆する。
彼は一つ息を吐くと、来た道を引き返した。
何時までも落ち込んでは居られない。
心身共に疲労しており、精霊石の力も尽きたので、早く戻らなければならないのだ。
精霊の守り無しに、不快な圧力に長く堪え続ける自信は無い。


耐久力:0
魔力:0

【耐久力と魔力が尽きたので帰還】
0179創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/14(水) 19:02:23.82ID:oUia8D05
地上に戻ったコバルトゥスに、ラビゾーが声を掛けて来る。

 「戻ったか、コバギ。
  どうだった?」

コバルトゥスは彼に応える前に、カシエに目を遣る。
彼女は直立して両目を閉じ、小声で何事か呟いていた。
精霊が反応している事から、彼女は何等かの魔法を使っているのだろうと推測する。
邪魔をしては行けないと、コバルトゥスは彼女には触れず、ラビゾーに尋ねた。

 「カシエは何してるんスか?」

 「回復魔法を使ってるんだ。
  体力の回復と、傷の治療を同時に行っている。
  直に終わると思うよ」

 「そうッスか」

カシエが見ていない今の内だと、コバルトゥスは洞窟の中で見付けた食器を、ラビゾーに見せる。

 「所で、先輩……こんなん見付けたんスけど」

ラビゾーは受け取らずに眉を顰めた。

 「いや、見付けたって、お前」

こんな塵みたいな物を渡されても困るだろうなとコバルトゥスも思ったが、それでも依頼する。

 「とにかく鑑定して下さい。
  宝箱に入ってたんッスよ、何かある筈です」

 「宝箱?」

ラビゾーは低く唸りながら、気が進まない様子で、皿と匙を手に取った。
0180創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/14(水) 19:48:40.12ID:oUia8D05
ラビゾーが難しい顔で鑑定している間に、カシエは回復を終えてコバルトゥスに声を掛ける。

 「あら、バル?
  帰ってたの?」

どうやら魔法に集中していたので、コバルトゥスの帰還に気付かなかった様。
彼女は真っ直ぐコバルトゥスを見詰めて尋ねる。

 「ねぇ、どの辺りまで行けた?」

近付いて来るカシエに、自分が持ち帰った身窄らしい道具を見られまいと、コバルトゥスは自ら、
彼女に歩み寄った。

 「地下6階まで。
  未だ君が言ってた様な奴には出会してないけど――」

コバルトゥスの答を聞き流し、カシエは彼の服を軽く叩(はた)く。

 「服が汚れてるよ。
  土埃が付いてる。
  転んだ?」

 「いや、そんな、止してくれよ」

世話を焼こうとする彼女に、コバルトゥスは羞恥を覚えて押し返した。
そして、自分で服の汚れを叩き落とし、綺麗になった事を示す。

 「もう良いだろう?」

 「ええ、そうね。
  御免なさい」

コバルトゥスが迷惑そうな顔をすると、カシエは小さく笑って、洞窟に向かった。
0181創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/14(水) 20:20:35.90ID:oUia8D05
やれやれと溜め息を吐いてコバルトゥスが振り向くと、ラビゾーが嫌らしい笑みを浮かべていた。

 「何笑ってんスか」

コバルトゥスが不機嫌な声で言うと、ラビゾーは弁解する。

 「微笑ましいと思ってな」

どうも調子が狂って行けないと、コバルトゥスは頭を掻いて、話題を切り替えた。

 「それで、鑑定した結果は?」

ラビゾーは困った顔で言った。

 「皿も匙も極普通の鉄の食器だ。
  少し『不銹<ステインレス>』鋼の性質がある。
  何時の時代の物か判らないから、何とも言えないが……。
  そう高値では売れないと思う」

 「ステンレス?」

 「沈色し難いと言う意味だ。
  復興期辺り、錆び難い鉄の食器と言う事で、保管されていたんじゃないだろうか?
  そうじゃなければ鉄屑だよ。
  これ自体に大した値段は付けられない。
  錆びてるし、錆を取ったとしても……」

コバルトゥスは詳しい説明よりも、値段が知りたい。

 「幾ら位になりそうッスか?
  幾らで買ってくれます?」

率直な問に、ラビゾーは少し考え込む。

 「100、いや、200、150……。
  ウーム、200が限度だ」
0182創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/14(水) 20:30:01.23ID:oUia8D05
コバルトゥスは大きな溜め息を吐いた。

 「そんな物(もん)ッスか……」

我が身に置き換えても、こんな塵屑に金を払う価値は無いと思うので、鑑定価格に文句は付けない。

 「ああ、期待に応えられなくて悪かったな。
  売るのか?」

 「はい、買い取って下さい。
  こんなん持ってても仕様も無いッス」

鉄屑に用は無いと、彼は言い値で売り飛ばし、ラビゾーから200MGを受け取る。
これで所持金は300MG。
ラビゾーはコバルトゥスに問い掛けた。

 「大した物は買えないかも知れないが、何か買うか?」

コバルトゥスは暫し思案した。
0185創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/15(木) 20:35:33.63ID:P1rSNWcm
彼は長らく考えて結論を出す。

 「それじゃ、魔力探査機を下さい」

 「お前の魔法資質なら必要無い物だと思うが……。
  欲しいと言うなら、売らない訳には行くまい」

ラビゾーはL字形の針金の様な物を2本、コバルトゥスに渡す。
受け取ったコバルトゥスは、効果を疑った。

 「本当に、こんな物で?」

 「知らん。
  ここで試してみたら、どうだ?」

ラビゾーの提案に、コバルトゥスは半信半疑――否、殆ど疑いしか持たずに乗った。
何も感じ取れない鉄屑だったら、返品しようと思っての事。

 「使い方は、先ず拳を握って、人差し指を前に突き出す。
  そして、棒の短い方を三本の指で軽く握り、長い方を人差し指の上に乗せる感じで持つ。
  もう片方の手も同じ様にして……」

魔力探査機を持ったコバルトゥスは、こんなので何が判るのかと呆れ返った。
しかし、疑う心に逆らう様に、棒が勝手に動き始める。

 「おおっ!?
  動きましたよ、先輩!」

彼の手に握られた魔力探査機は、揃って洞窟の中を指した。

 「こ、これ、どう言う事ッスか!?」
0186創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/15(木) 20:38:16.42ID:P1rSNWcm
驚愕して興奮気味に尋ねるコバルトゥスに、ラビゾーは困惑する。

 「え、分からん……。
  僕は真面に使った事無いし……」

 「洞窟の中の魔法的な何かに反応してるんスかね?」

 「そうかも知れないなぁ」

 「これは使えそうッスね。
  両手が塞がるのが難点ッスけど。
  精霊を宿したら、もっと面白い物になるかな?」

コバルトゥスは甚く魔力探査機を気に入って、次の洞窟探索に心を弾ませた。
その為に彼は嬉々(いそいそ)と回復に専念する。
浮き立つ心は精神の集中を乱すが、精霊魔法使いのコバルトゥスは、それを問題にしない。
喜びや希望、期待の心を、理想的な魔法の発動環境を妨げる物とは捉えない所が、
精霊魔法と共通魔法との大きな違いの一である。
前向きな希望の心は精霊を活発にさせ、コバルトゥスの回復を早める。

 (共通魔法使いも面白そうな物を作るじゃないか)

彼は内心で共通魔法使いへの評価を少し上げた。
0187創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/15(木) 20:39:10.90ID:P1rSNWcm
数点と経たずに完全に回復したコバルトゥスは、今度は精霊石に力を取り戻させる。
その間、黙って動かずにいるのは暇なので、彼はラビゾーに話し掛けた。

 「やー、良い買い物をさせて貰いましたよ!」

 「良かったな」

魔力探査機の効果を余り信じていなかったラビゾーは、複雑な表情で答える。
そんな事は気にせず、コバルトゥスは彼に尋ねた。

 「他にも、面白そうな物は無いんスか?」

 「……どうだろうなぁ?
  それは偶々お前と相性が良かったんだと思う。
  普通の人にとっては、詰まらない物だよ」

ラビゾーの言う通り、実際に共通魔法使いで魔力探査機を頼りにしている者は殆ど居ない。
専門家は高性能で本格的な魔導機を使う。
こうした簡素な造りの物は、素人や暇人が遊び感覚で使う程度だ。

 「共通魔法使いってのは、物の価値が判らないと言うか、勿体無い事をしてるッスねぇ」

利いた風な口を叩くコバルトゥスに、ラビゾーは穏やかに反論する。

 「もっと性能の良い物があるからな。
  こんなのは玩具みたいな物だよ。
  でも、お前にとっては、そっちの方が合うのかも知れないな」
0188創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/15(木) 20:39:57.25ID:P1rSNWcm
皮肉を言われたのかと思い、コバルトゥスは少し表情を曇らせる。

 「おれには玩具が似合いだってんスか?」

ラビゾーは慌てて弁解した。

 「嫌味ではなく……。
  共通魔法技術の粋を集めた、高性能で精密な『一級品』よりも、そうじゃない単純な……、
  簡素と言うか、素朴な物の方が、精霊にとっては具合が良いんだろうって事だよ」

コバルトゥスは納得して頷く。

 「ああ、それはあるかも知れないッス。
  どうも魔導機ってのは味気無いっつーか、色気が無いっつーか、詰まらないんスよね。
  凄い働きをするんだろうなってのは解るんスけど」

精霊魔法使いには精霊魔法使いの、共通魔法使いには共通魔法使いの価値観があるのだ。
ラビゾーはコバルトゥスに言う。

 「良さそうな物があったら、教えるよ……と言っても、そう頻繁に顔を合わせる訳じゃないから、
  何時になるか、憶えているかも怪しいがな」

 「ハハ、期待はしませんよ」

 「何にしても、只では上げられないぞ?」

 「はいはい、俺も余り高い物は買えませんよ?」

こうして異なる価値観を持つ者と普通に話し合える事を、コバルトゥスは嬉しく思っていた。
0189創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/16(金) 18:37:17.90ID:k3Fqfgip
少しの間を置いて、彼は素直に自らの心情を告白する。

 「……俺、先輩に会えて良かったと思います」

急に真面目な話をされたラビゾーは、面食らって訝る。

 「どうした?
  何で今、そんな話を?」

 「何でって、何と無く、そう思ったんで。
  よく考えたら、今まで言った事無かったかなって」

 「そんな改まって言わなくても」

コバルトゥスは基本的には自分の感情に素直な人間だ。
感謝の気持ちを伝えたいと思ったら、口に出す事を躊躇わない。

 「先輩は、どう思ってんスか?
  俺の事」

 「ええぇ……」

気味悪がり眉を顰めるラビゾーを、コバルトゥスは真っ直ぐ見詰める。

 「正直に言って下さい。
  どうなんスか?」

 「どうって……」

 「何か、こう、あるっしょ?
  良い人だとか、一緒に居て楽しいとか」

ラビゾーは苦笑いするばかりで、何も答えない。
0190創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/16(金) 18:39:48.26ID:k3Fqfgip
コバルトゥスはラビゾーの表情から、内心を読み取った。

 「急に聞かれても困るって感じッスか?
  でも、先輩は顔に出易いから、何考えてるか大体解りますよ。
  言いたい事はあるけど、言い難い事なんスね?」

ラビゾーは難しい顔をして何度も考え込み、迷っている様子だったが、やがて言う。

 「お前の事は、仕様が無い奴だと思っている。
  初対面から馴れ馴れしかったし、軽い男だと思っていた。
  人間的には苦手で、余り良い印象では無かったな」

 「今は?」

 「今は――……。
  今も余り変わってはいない。
  でも、何度も行動を共にして、幾らか親しくなって来たとは思っている。
  性格とか、色々な事が解って来て、少なくとも苦手では無くなった」

 「フム、それで?」

 「友達、友人……と言うよりは、弟分かな。
  魔法の実力は、お前の方が上だから、そんな言われ方は気に入らないかも知れないが」

 「いや、ンな事ァ無いッスよ」

 「僕も先輩、先輩と頼られて悪い気はしない。
  余り頼られても困るが……。
  今の関係が丁度良いと思う」

 「へー」

 「実は『先輩』と呼ばれると、何と無く学生時代を思い出して、複雑な気持ちになる」

 「学生時代?」

適当に相槌を打てば、勝手に詳しく語ってくれるので、コバルトゥスは面白半分で話を促した。
0191創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/16(金) 18:49:48.32ID:k3Fqfgip
ラビゾーは学生時代の思い出を語る。

 「解るとは思うが、僕は魔法資質が低かったんで、学校では結構苦労したんだ。
  後輩にも甘く見られてたし、嘗めた口を利く奴も居たよ。
  全員が全員、そうって訳じゃなかったし、嫌われてるって訳でもなかったんだけどな。
  寧ろ、慕われて……いや、侮られていたが故の『狎れ』とも言えるか……。
  適当に持ち上げておけば、扱い易いってな」

彼の経験した心労を思い、コバルトゥスは慰めを言った。

 「俺は違いますよ」

 「……そう、だな」

ラビゾーは小さく頷き、溜め息を吐いた。

 「暗い話になった。
  話を戻そう。
  お前をどう思うかだったな、コバギ。
  ……昔の事は扨措き、今、お前の事を悪くは思っていない。
  今まで通りの関係を続けたいと思っている」

 「ええ、俺も」

コバルトゥスは同意して、手を差し伸べた。
親愛の握手だと遅れて理解したラビゾーは、彼の手を取る。

 「これからも宜しく頼む」

 「俺の方こそ。
  ……所で、初対面の俺って、そんなに印象悪かったッスか?」

 「……ハハ」

質問を苦笑いで濁すラビゾーに、コバルトゥスは若干の不満を持ちつつも、ここで深く追及して、
好い雰囲気で終わりそうだった話を拗らせても詰まらないと、水に流した。
0192創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/16(金) 19:44:28.04ID:k3Fqfgip
そんな話をしている内に、カシエが地上に戻る。
彼女は面白くなさそうな顔で、洞窟から出て来た。
コバルトゥスはカシエに近寄り、声を掛ける。

 「カシエ、どうだった?
  その様子だと余り捗々しくなかったみたいだけど」

 「解ってるなら聞かないで」

カシエは倦んざりした様子で応えた。
未だ先を越されていないだろう事を読み取り、無自覚に嬉しそうな振る舞いをしてしまったのかと、
コバルトゥスは反省する。

 「あぁ、御免、御免」

機嫌の悪い女性に執拗く付き纏うのは逆効果と知っている彼は、浅りと話を打ち切って、
ラビゾーに断りを入れた。

 「それじゃ、先輩!
  俺、探索に行って来ます!」

 「応、行ってらっしゃい!
  気を付けてなー!」

コバルトゥスは魔力探査機を手に持って、意気揚々と洞窟に向かう。
0196創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/17(土) 18:10:40.90ID:utv6pB0O
洞窟に入ったコバルトゥスは、真っ直ぐ下の階層へと向かった。
不思議な事に、魔力探査機は常に彼の行く先を示している。

 (……これは?
  もしかして、「地下への階段」を指し示しているのか?)

魔力探査機は地下の強力な魔力場に誘導されているのだろうかと、コバルトゥスは考えた。
彼は何の障害も無く、魔力探査機に導かれる儘、地下5階まで下りる。
地下5階の仕掛けは、どうなっている事かとコバルトゥスは心配したが、最初の角を曲がって、
真っ直ぐ進むと、分岐路に階段があった。

 (ここでも仕掛けは元に戻らないのか……。
  カシエは俺より先に地下6階に行ってた筈だよな?
  洞窟が人間を識別して、仕掛けを元に戻したり、解除済みに変えたりしている?
  そんな事が有り得るのか?
  それよりは進まなかった分岐に別の道があると考える方が、現実的なんだが……)

とにかく謎の多い洞窟だと、コバルトゥスは溜め息を吐いた。
目の前の階段を下り、地下6階に出た彼は、分岐路で立ち止まる。
魔力探査機は正面を指し示している。

 (仕掛けは元に戻らない……なら、真っ直ぐ進むべきだな)

この先に地下への階段があると、コバルトゥスは確信した。
他の道は既に調べた後なので、無ければ困る。
0197創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/17(土) 18:12:31.87ID:utv6pB0O
正面の道を真っ直ぐ進むと、魔力探査機が左方向に少し曲がり始めた。
その儘歩いていると、突き当たりが見え、その左側に道が続いている事が判る。

 (地下4階みたいに、実は壁が通れるって事は無いみたいだな)

コバルトゥスは道形に進んだ。


耐久力:10
魔力:15
0198創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/17(土) 18:13:50.12ID:utv6pB0O
左折すると暫く真っ直ぐの道が続いている。

 (どうやら、この洞窟は殆ど真っ直ぐの道と直角の曲がり角で構成されてるみたいだな。
  洞窟全体の魔法的な作用と関係してるんだろうか?)

そんな事を考えながら、コバルトゥスが道を歩いていると、又も魔力探査機に反応がある。
今度は少しずつ右側に曲がり始めている。

 (道が右折しているのか?)

彼の予想通り、少し歩いた先には突き当たりがあり、通路は直角に右折していた。

 (もっと早くから、魔力探査機を買ってたら、探索が楽だったのかな)

今更思っても詮無い事だと思いつつ、コバルトゥスは道形に進み続ける。


耐久力:9
魔力:14
0199創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/17(土) 18:14:37.97ID:utv6pB0O
それから少し歩くと、又も通路が右折していた。

 (何度も曲がり道を通らされるのは、遠回りさせられてるみたいで嫌なんだよなぁ……)

内心で文句を垂れながら、コバルトゥスは角を曲がろうとする。

 (ムッ!?
  何だ、この気配は……)

しかし、その直前で足を止めた。
曲がり角から異様な気配を感じるのだ。
それは実体のある物では無いらしく、容貌が掴めない。

【行動表参照】
0200創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/17(土) 18:53:28.89ID:utv6pB0O
【有利判定】

コバルトゥスはカシエの言っていた、「自分と同じ姿の物」を思い出していた。

 (『あれ』が、この先に居るのか?
  ……だったら、先手必勝だ)

彼は魔力探査機を仕舞い、代わりに両手に短剣を握り締め、タイミングを計った。

 (向こうから動き出す気配は無い。
  ……1、2、3!)

勢い良く角から飛び出し、相手を視認すると同時に短剣を振り抜く。
その筈だったが、コバルトゥスは手を止めてしまった。
止めざるを得なかった。
通路の先には黒い靄が立ち込めていた。
どこを攻撃して良いのか判らない。
当て推量で、靄を両断するべく短剣を振るったが、靄には効果が無かった。

【機敏さ判定】
0201創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/17(土) 19:01:21.63ID:utv6pB0O
【敵の先制】

彼の目の前で、靄は徐々に人の形を取る。
その輪郭はコバルトゥスに似ていた。

 (実体化するのを待つしか無いのか?
  それでも……俺が勝つ!)

彼は強く念じ、人型の靄を睨む。
次第に濃くなる靄を見て、彼は再び短剣を構えた。
魔法剣は距離を選ばない。
到底刃が届かない位置からでも、斬撃を当てられる。
負ける道理は無い。
そう思った瞬間、影が揺らいだ。

【戦闘能力判定】
0202創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/17(土) 19:09:11.11ID:utv6pB0O
【回避成功】

コバルトゥスは直感的に危険を察知し、瞬時に身を低くした。
鋭い裂空音で、屈んだ頭上の空気が裂けたのが判る。
下手をすれば、首が飛んでいた。
靄は既に実体化している。
それは何から何まで、「今のコバルトゥス」に酷似している。

 (魔法剣まで使えるってか!)

コバルトゥスは恐怖を感じたが、それより先に手を動かしていた。
回避と同時の反撃である。

 (避けるなよ!)

彼は強く念じ、短剣を振り抜く。

【戦闘能力判定】
0203創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/17(土) 19:25:22.68ID:utv6pB0O
【成功】

瞬間、靄で出来たコバルトゥスの首が飛んだ。
自分の姿をした物を自分で殺すと言う奇妙な感覚に、コバルトゥスは複雑な表情をする。
靄で出来たコバルトゥスは、その場に倒れて動かなくなった。

 (復活しないよな?)

コバルトゥスは警戒を解かず、短剣を構えて暫し様子を窺う。
靄で出来たコバルトゥスの死体は、徐々に黒い靄に戻り、掻き消えて行った。

 (……終わったか)

その跡には、小さく光る物が落ちている。
何だろうと思い、コバルトゥスは片方の短剣を鞘に納めて、近付いて見た。

【財宝判定】
0204創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/17(土) 19:32:05.53ID:utv6pB0O
拾い上げてみると、それは銀色の金属の塊だった。
中身は詰まっている様で、確りとした重さがある。
前にカシエが持ち帰った物と似ている。

 (あれも魔法生命体だったのか?
  これが核?)

気味の悪さを感じながらも、コバルトゥスは持って行く事にした。
その場に置いて行くのも気持ちが悪い。
もし復活しそうでも、これを真っ二つにしてしまえば、阻止出来ると考えた。


耐久力:8
魔力:13
0205創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/18(日) 17:04:23.56ID:8GEjLmA5
変身する靄の化け物が居た先にも、未だ道は真っ直ぐ続いている。
コバルトゥスは金属塊を、襷掛けしたバッグの片方に納め、前進する事にした。
もう片方の短剣も鞘に納め、魔力探査機を持つ。
魔力探査機は前方を指している。
この儘進んで良い様だ。
暫く歩くと、行き止まりに突き当たる。
床には地下に続く階段がある。

 (この下か……)

魔力探査機は階段を指し続けている。
コバルトゥスは慎重に階段を下りた。


耐久力:7
魔力:12
0206創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/18(日) 17:06:39.20ID:8GEjLmA5
地下7階は4身平方の小部屋になっていた。
正面には強固な石の扉が見える。
コバルトゥスは罠を警戒しながら、扉に触れた。

 (……精霊の力を通さないみたいだな。
  魔法剣では斬れないか)

どこかに扉を開く仕掛けが無いかと辺りを見回すと、扉に文字が刻まれている事に気付く。

 (……『合言葉を記せ』。
  『頭は北で、足は南』。
  『宝には目も呉れず、脇目も振らず、仕掛けを解き、真っ直ぐ我が元へ』。
  『創造主が待つ』……)

意味深な事が書かれているが、最後だけが読み取れない。

 (『Tuesdi』……誤字かな?
  それとも、どこかの言語の音写?)

コバルトゥスは暫し考える。
0207創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/18(日) 17:08:28.15ID:8GEjLmA5
ここからは洞窟の探索では無く、謎解きが主目的になります。
合言葉が判った人は、それを書き込んで下さい。
どの時点でも構いません。
0208創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/19(月) 18:09:56.01ID:tLlyXN1S
彼は考え事をしながら、この小部屋の中を調べて回った。
しかし、他に仕掛けは無いし、罠らしい物も無い。
魔力探査機は扉を指し示し続けている。
ここに長居しても仕方が無いと認めたコバルトゥスは、一旦引き返す事にした。
その時、彼は礑(はた)と気付く。

 (そう言えば、圧力が無くなっている?)

恐らくは地下7階には、不快な圧力を働かせる仕掛けが無いのだろうと、コバルトゥスは予想した。
彼は階段を上ったが、その最中にも不快感を催す事が無い。
それは地下6階に出ても同じだった。

 (……圧力が消えた。
  地下7階に到達したら、解除される仕組みだったのか?)

地下6階に何か変化は無いかと、歩き回ってみたが、特に何も無い。

 (無駄足だったか……。
  とにかく一旦地上に戻ろう)

地下5階でも圧力は消えている。
地下4階の僅かな違和感さえも。

 (何も無くなったのは良いんだが、逆に怖いなぁ……)

空寒い物を感じながら、コバルトゥスは地上を目指した。
0209創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/19(月) 18:14:26.06ID:tLlyXN1S
洞窟から出た彼は、ラビゾーの隣で座り込んでいるカシエに話し掛ける。

 「カシエ」

 「どうしたの、バル?」

カシエの機嫌は直っている様だ。
彼女はコバルトゥスを心配して、怪訝な顔をしている。

 「俺は地下7階まで行った。
  そこは小さな小部屋になってて、他には何も無かった。
  多分最下層なんだと思う」

コバルトゥスの発言に、カシエは少し落胆した。

 「あーあ、到頭(とうとう)先を越されちゃったかぁ……。
  でも、『思う』って、どう言う事?」

 「地下7階には扉があって――」

 「待った!」

カシエの疑問に素直に答えようとしたコバルトゥスだが、当の彼女に止められる。
どうした事かと訝るコバルトゥスに、カシエは言った。

 「未だ扉は開けてないんだよね?」

 「ああ」

 「それじゃあ、先に扉を開けた方が勝ちな訳だ」

彼女は爽やかに笑う。
0210創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/19(月) 18:15:30.98ID:tLlyXN1S
コバルトゥスは吃驚して、愛想笑いも忘れた。

 「えっ」

 「フフフ、取り敢えず私も地下7階に行ってみるね。
  もしかしたら、扉の先には未だ下があるのかも知れない」

 「ああ、無いとは言い切れないが――」

話が終わらない内に、カシエは立ち上がった。
彼女は今直ぐにでも、洞窟に向かいたい気持ちの様だ。
彼女の旺盛な冒険心に、コバルトゥスは呆れて、協力の要請を諦める。

 「気を付けて、カシエ」

 「有り難う、バル!」

カシエは勇んで洞窟の中へと入って行った。
0211創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/19(月) 18:15:57.27ID:tLlyXN1S
彼女を見送ったコバルトゥスは、ラビゾーに声を掛ける。

 「先輩、こんな物を手に入れたんスけど」

そして、バッグに仕舞った金属の塊を取り出した。

 「鑑定して下さい」

ラビゾーは金属の塊を受け取り、真面真面と見詰める。

 「これは多分、カシエさんが持って帰った物と一緒だな。
  洞窟の中の化け物が落としたのか?」

彼の問いに、コバルトゥスは頷いた。

 「はい、俺の姿を真似る、黒い靄みたいな奴が」

ラビゾーは相槌を打って応える。

 「どうやら洞窟の中の化け物は全部、宝石や金属を核とする魔法生命体みたいだな。
  この金属の塊の中にも、魔法陣が組み込まれているんだろう」

 「で、お幾らなんスか?」

 「500MGだ」

ラビゾーは大き目の硬貨を一枚、コバルトゥスに渡した。
値段はカシエが持って帰った物を買い取った時と同じなので、コバルトゥスは文句を言わない。
彼は輝く500MG硬貨を見詰めて、思案する。

 (さて、何を買おうか……。
  謎解きの手助けになる物が良いな)
0213創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/19(月) 20:18:15.74ID:lzQNOd0q
謎解きは難しい……
『頭は北で、足は南』は、この姿勢で扉の文字を見ろという事かな?
扉が北側にあるのなら『Tuesdi』は上下反転して見えて『!psan⊥』のような形になるはず
Tがtreasureの略なら、宝には目も呉れないので⊥を除いて『!psan』?
でも、これだと最初の!が意味不明か……うーん

とりあえず、方位磁針を購入
0214創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/20(火) 19:52:59.50ID:6B0prdO7
コバルトゥスは両腕を胸の前で組み、低く唸る。

 (扉には『北』と『南』ってあったから、方位が関係してるんだろうな)

彼は決断して、ラビゾーに500MG硬貨を渡した。

 「先輩、方位磁針を下さい」

それを聞いたラビゾーは、呆れた笑みを浮かべる。

 「未だ、あの事を気にしていたのか?」

 「あの事?」

何の事か解らず、コバルトゥスは眉を顰めた。
見当違いな事を言ってしまったと、ラビゾーは気不味そうに苦笑いする。

 「……違うのか?
  ほら、時間の流れが狂うとか何とか」

 「ああ、その事ッスか……。
  それより、今は地下の扉を開きたいんスよ。
  何か謎々みたいな事が書いてありまして」

 「方位磁針があれば、その謎を解けるのか?」

 「多分、何等かの『取っ掛かり<シャンセ>』は掴めるんじゃないかと」

コバルトゥスと話ながら、ラビゾーはバックパックから方位磁針を取り出した。
そして、200MGの釣銭と共に、コバルトゥスに渡す。

 「はい」
0215創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/20(火) 19:54:23.61ID:6B0prdO7
 「どうも」

コバルトゥスは小さく礼をして、方位磁針と釣銭を受け取った。
彼は先ず、方位磁針が正しいか確かめる。

 「先輩、今何時ッスか?」

 「あー、南西の時だな」

懐中時計を取り出して答えるラビゾー。
コバルトゥスは方位磁針に目を遣る。

 (磁針は正しい方角を指している。
  この洞窟は西北西に向いてるな)

体力も精霊力も然程消耗していなかったので、コバルトゥスは早速洞窟に入ってみる事にした。

 「それじゃ先輩、一寸行って来ます」

 「カシエさんの帰りを待たなくて良いのか?」

 「交互に探索しなきゃ行けないとか、そんな取り決めはしてませんよ」

疑問を口にするラビゾーに、コバルトゥスは正論で返す。
これまでは完全回復に時間が掛かっていただけで、カシエの帰還を待つ義務は無いのだ。
それにコバルトゥスには、カシエと同時に洞窟に入って、確かめたい事もあった。
0216創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/20(火) 19:55:18.18ID:6B0prdO7
コバルトゥスは洞窟に入り、地下1階に出た。
最初の通路は西側に伸びている。
そして、右折すると北、もう一度右折すると、東を向く。

 (想定通りだな)

少し歩くと北と東に分岐する道があり、東に直進すると、通路が左折して北に向かう。
その先に地下2階へ下りる階段がある。
地下2階に出ると、直ぐに分岐路だ。
片方は南に、片方は西に続いている。
地下3階に下りる階段に続くのは、西の道だ。
西に進むと左折して南に向かう。
その先は右折して西を向く。
更に先も右折して、今度は北を向く。

 (……変な所は無いな)

コバルトゥスは地下3階に下りた。
最初の通路は東に伸びている。
暫く進むと分岐路があり、東に直進すれば、階段に通じる道を開く仕掛けがある。
右折して南に向かえば、隠された地下への階段がある。
隠し階段の前には分岐路があり、東と西に進める。
0217創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/21(水) 17:18:09.65ID:FNKAd+1m
隠し階段を下りれば、地下4階だ。
ここに来る度に感じていた僅かな圧迫感は、やはり無くなっている。
地下4階には先ず、3つに分かれた道があり、それぞれ西と北と東に伸びている。
北に進むと、突き当たりで道が左右に分かれるが、壁には隠し扉がある。
この仕掛けは既に解明して解除済みだ。

 (魔法の取っ手が消えている……)

隠し扉を開く魔法の取っ手は消えており、扉は開けっ放しになっている。

 (出る時は気にしなかったけど……。
  開かないし、閉まらない。
  重い石の壁の様になっている。
  ……魔法的な効果が完全に消失したのか)

コバルトゥスは北に進み、地下5階への階段を下りた。
0218創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/21(水) 17:19:40.72ID:FNKAd+1m
彼は圧迫感の消えた地下5階に出る。
最初の通路は西を向いている。
そこから北に向かうと、北と東に道が分かれている。
分岐点には階段があり、地下6階に続いている。
コバルトゥスが階段に近付くと、下からカシエが上がって来る所だった。

 「あら、バル?
  どうしたの?」

 「どうもしてないよ。
  普通に、探索に入っただけさ」

 「そう……。
  貴方の言う通り、地下7階には扉があった。
  『合言葉』が判らないと明かないみたい。
  それと、洞窟の中の圧迫感が消えてる」

 「ああ、そうだね。
  理由は判らないけど。
  丸で役目を終えたみたいだ」

カシエとコバルトゥスは、自分達が同じ体験をしている事を確かめ合った。
カシエは彼に尋ねる。

 「バル、貴方は『合言葉』が何か判った?」

 「いや、未だ。
  今、調べてる所だよ」

 「調べてる――って事は、心当たりでもあるの?」

 「無いけど……。
  とにかく色々考えて、やってみないと」
0219創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/21(水) 17:21:18.79ID:FNKAd+1m
コバルトゥスの答に、カシエは大きく頷いた。

 「そうだよね。
  私も負けてられない。
  それじゃ、私は一旦上に戻るから」

 「あ……」

コバルトゥスは協力しないかと呼び掛けたかったが、彼女は早々と立ち去ってしまった。

 (『先輩冒険者』なんだから、彼女とは確り白黒付けるべきなのかなぁ……。
  カシエの方は、それを望んでるみたいだけど)

小さく溜め息を漏らした彼は、この階層を改めて見回す。
分岐路を北に進めば、右折して東を向く。
西に進めば、左折して北を向く。
2つの道は繋がっていて、その交差点には東に向かう道がある。
その先は右折して南を向き、更に先では人型の石の化け物が待ち構えていた。

 (そう言えば、あの化け物は倒してなかったけど、未だ居るのか?)

気にはなる物の、確認は帰りで良いかと思い直し、コバルトゥスは先に地下6階に下りてみる。
0220創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/21(水) 17:24:06.94ID:FNKAd+1m
地下6階に出ると、道が左右と正面の3方向に分かれている。
正面の道は南、左の道は東、右の道は西だ。
東の道には仕掛けがあった。
西の道は左折して南を向き、宝箱に辿り着く。
正面の道を進むと、左折して東を向き、少し進むと今度は右折して南を向く。
更に少し進むと又右折して西を向く。
コバルトゥスは今、地下7階に下りる階段の前に立っている。

 (さて、寄り道せずに真っ直ぐ、ここまで来た訳だが……。
  何か変わった所はあったかな?)
0221創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/22(木) 18:18:30.58ID:R7YAwjgx
どうだったかと彼は考えながら、地下7階に下りる。

 (合言葉……。
  やっぱり気になるのは最後の文字列だよなぁ)

地下7階の小部屋では、方位磁針は固く閉ざされた扉の方を向いている。
扉に描かれた『Tuesdi』をコバルトゥスは見詰めた。

 (この文字列……。
  何かに似てないか?
  文字と考えるから行けないのか?)

コバルトゥスは『Tuesdi』に類似した物を思い出そうとしたが、中々思い出せない。

 (T、u、e、s、d、i……?
  6つの文字が表す物とは一体……。
  最後に『.』が打ってあるけど、これは終止符だよな?)

実際には目にした物ではないのかも知れない。

 (『頭は北』、『足は南』……。
  地図に書くと、北は上で南は下になる訳だけど、だから何だって話だよな……。
  『宝には目も呉れず、脇目も振らず、仕掛けを解き、真っ直ぐ我が元へ』……。
  寄り道はしていないし、仕掛けは既に解いてあるぞ?)

彼は暫し立ち止まって、閃きを待った。
0222創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/23(金) 18:03:25.17ID:3CdoGfdl
しかし、これと言って思い付く事は無い。

 (仕方無い、戻るか……)

コバルトゥスは地下5階まで引き返した。

 (一寸、行ってない道に寄ってみるかな。
  あの石の化け物が、未だ居るのか気になるし)

彼は階段から北に向かい、突き当りまで進む。
右折する曲がり角に来た所で、彼は周辺を調べた。

 (……地面が沈む感じは無いな。
  もう階段が現れた後だから、2度作動させる必要は無いって事か)

隠し階段を出現させる仕掛けが、再び作動する事は無い様である。
コバルトゥスは道形に、東へと進んだ。
分岐路を通り過ぎ、突き当たりまで東に進むと、通路は右に折れる。
その先には、石の化け物が待ち構えている筈だった。
しかし、角を曲がっても気配を感じない。

 (奇怪しいな?
  どこかに移動した?)

人より大きな岩石の塊に、気付かない訳は無い。
どこかを彷徨(うろつ)いているのであれば、直ぐに判る。
0223創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/23(金) 18:04:17.19ID:3CdoGfdl
コバルトゥスは不安に思いつつも、道を真っ直ぐ進んだ。
暫く歩くと行き止まりに着く。

 (ここには何も無いのか?)

所謂『外れ』の道なのかと、コバルトゥスは疑った。
だが、そうでは無い可能性も彼は考えた。

 (石の化け物が消えてるって事は、ここに有った何かも消えてしまったのかも知れない)

地下7階に進んだ事で、洞窟内の仕掛けは全て停止した。
それと同時に、化け物や財宝も消えてしまった……と言う事が、無いとは限らない。

 (その通りだったとして、だから何だって話だよなぁ……。
  今となっては、どう仕様も無い。
  碌な財宝が無かったし、他に宝があったとしても、惜しむ様な物じゃなかったのかも知れない)

コバルトゥスは自分を慰め、来た道を戻る。
地下4階に出た彼は、ここでも通っていない道に寄ってみた。
開きっ放しの隠し扉を出て右折すると、西に進む道だ。
その先は右折して北に向かう。
北に少し歩くと、何も無い行き止まりだった。
道を戻り、今度は東に直進すると、その先は左折して、又北に向かう。
北に少し歩くと、ここも何も無い行き止まり。

 (本当に何も無いのか……?
  カシエにも話を聞いてみないと)

コバルトゥスは疑問を抱きつつ、今度は3階に上がる階段前の道を右折する。
0224創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/23(金) 18:05:41.67ID:3CdoGfdl
右折して西に少し進むと、行き止まりだと判る。
引き返して、今度は東に真っ直ぐ進むと、こちらも行き止まり。
どちらにも何も無かった。

 (……これは何かあったけど、無くなったと考えた方が良いのか?)

コバルトゥスは首を傾げ、頭を悩ませながら、地下3階に上がる。
地下3階に上がって直ぐの分岐路を、彼は右折した。
方位磁針では、通路は東向きとなっている。
少し歩くと、通路が左折して北を向く。
ここは何も無い行き止まりだ。
引き返して、西に真っ直ぐ進むと、突き当たりがあり、右折して北を向く。
ここも何も無い行き止まりだ。

 (全部が全部外れって可能性も無くは無いのか……?)

彼は首を捻りながら、地下2階に戻ろうとした。
その前に、この階層の仕掛けには何か変化が無いかと、寄ってみる事にした。
仕掛けの前まで来たコバルトゥスは、石板を叩いたり、引いたりしてみる。
しかし、本の僅かも動かない。

 (もう仕掛けは動かない……。
  予想通りだ。
  意外でも何でも無い。
  これも『成果』と言って良いのか……)

コバルトゥスは2階への階段を上る。
0225創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/23(金) 18:07:11.58ID:3CdoGfdl
2階に上がったコバルトゥスは、1階への階段前の分岐路まで戻り、南に進んでみた。
暫く真っ直ぐの道が続き、その先は行き止まりになっている。
南の壁の隙間から、少しだけ明かりが漏れている。
壁を隔てた向こうは、外の様だ。

 (弱いけど隙間風が吹いてる。
  暗い洞窟の中で、ここだけ少し明るい。
  気分が落ち着く)

しかし、特に何かある訳ではない。
ここも何も無い行き止まりだ。
コバルトゥスは溜め息を吐いて、地下1階に上がる。
そして、最後に残った最初の分岐を、北に進んだ。
少し歩くと、通路は左折して西に向かう。
その先は案の定、何も無い行き止まり。

 (やれやれ、無駄足だったか)

全ての寄り道が無駄足と判り、コバルトゥスは肩を落として、地上に戻った。
0226創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/23(金) 18:07:36.04ID:3CdoGfdl
洞窟から出たコバルトゥスに、カシエが話し掛けて来る。

 「バル、謎は解けた?」

 「いいや、カシエは?」

コバルトゥスが尋ね返すと、彼女は得意気に笑う。

 「察しは付いてるの」

 「本当に?」

 「本当、本当」

カシエは相当自信がある様子だ。

 「私、洞窟の中を迷わない様に、確りマッピングして来たんだ」

一体彼女は何を掴んだんだのか?
コバルトゥスは訝り、両腕を胸の前で組む。
0229創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/24(土) 15:57:05.48ID:7q90MNM+
カシエの発言から彼は閃いた。

 (あぁ、そう言う事か!)

感動を押し殺して、コバルトゥスはカシエを誘う。

 「それじゃ、一緒に行って確かめてみようか」

カシエは意地悪く笑った。

 「取り分は8:2で良いよね?」

 「君の予想が合ってるとは限らないだろう?
  俺も今、判ったんだ」

強がるコバルトゥスを彼女は疑う。

 「本当かなぁ?」

 「本当、本当。
  道々説明しようか?」

 「それじゃ、御高説賜るとしましょうか」

カシエは微笑んで、洞窟に向かう。
コバルトゥスも彼女と並んで歩いた。
0230創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/24(土) 16:01:09.52ID:7q90MNM+
洞窟に入って直ぐ、カシエはコバルトゥスを気遣う。

 「バル、確認しておきたいんだけど……。
  貴方は今、洞窟から出て来たばかりなのに、休憩しなくて大丈夫なの?」

カシエの持つ『提燈<ランタン>』の明かりが、洞窟を照らす。
コバルトゥスは彼女に身を寄せて答えた。

 「大丈夫、そんなに消耗してない」

それは嘘だが、今はカシエと行動を共にしているので、精霊魔法で明かりを灯さなくて良い。
その分の精霊力で体力の回復を行える。
コバルトゥスは軽度の暗所恐怖症なので、明かりを大きくしなければ安心出来ないが、
傍に人が居れば不安は軽減される。
しかし、黙っているのも気不味いので、コバルトゥスはカシエに合言葉の解説を始めた。

 「あの文字は階段までの道程を表していたんだ。
  『頭は北、足は南』とは、上下の事。
  地下1階は西、北、東、東、北と進んで、『d』の様になる。
  『宝には目も呉れず』だから、寄り道はしない」

 「そうそう」

2人は地下2階に下りる。

 「ここは西、南、西、北で、『u』の様になる」

 「うん」

コバルトゥスの解説に、カシエは頷くだけ。
丸で子供の自慢話を聞き流す母親の様だが、コバルトゥスは気にしなかった。
とにかく暗い場所で沈黙が続く事に、彼は耐えられないのだ。
0231創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/24(土) 16:02:49.69ID:7q90MNM+
地下3階は次の階層に進むだけなら、東、南と進めば良いが、「仕掛けを解く」必要がある。
よって、順路は東、東、そして西に戻って南となる。
出来上がるのは『T』。
同様に上の階層から順に並べて行くと、d、u、T、i、e、sとなる。
「Tuesdi」の並べ替えだ。
カシエも理解しているので、解説には時間を要さない。
直ぐに話題が途切れるので、コバルトゥスは別の話も始めた。

 「所でカシエ、今までの探索で、『外れ』の道には行ったかな?」

 「『外れ』って、地下に続く階段じゃない道の事?
  それとも化け物が待ち構えていた道の事かしら?」

 「いや、何も無かった道とか無かった?
  何にも無くて、唯の行き止まりだった道」

 「私が行った道の先には、大体何かしらあったけど?
  化け物だったり、宝箱だったり」

カシエの返事を聞いて、コバルトゥスは思案する。

 「宝箱って開けたら消える?」

 「そんな訳無いじゃない」

彼は先の探索では、空の宝箱も見付けられなかった。

 (倒してもいない化け物が消えてたみたいに、宝箱も消えてしまったのか)

考え込むコバルトゥスを気にして、カシエが尋ねる。

 「どうしたの、バル?」

 「いや、何でも無い。
  どうでも良い事さ」

取り逃した財宝があるかも知れないと彼は思ったが、それをカシエに教えても仕方の無い事だと、
切り捨てた。
過ぎた時間は戻らないのだ。
0232創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/24(土) 16:05:36.78ID:7q90MNM+
コバルトゥスには、もう1つ気になる事がある。

 「カシエ。
  この洞窟で、どんな化け物に遭った?」

 「私が見たのは、アメーバみたいなのと、蝙蝠みたいなのと、私の姿をしたの」

カシエの答を聞いて、コバルトゥスは頷く。

 「俺もアメーバみたいなのと、俺の姿を真似る奴は相手にした。
  ……って事は、俺も君も同じ奴と戦った訳だ。
  そして、一度倒したら二度は遭遇しなかった」

 「2体居たんじゃないの?」

 「そうじゃないと思うぜ。
  2体と言えば、2体なのかも知れないけど、2体だけじゃないって言うか……。
  例えば、地下3階と4階と5階と6階の仕掛け。
  あれ、カシエは全部解いて、先に進んだんだろう?」

 「ええ」

何か引っ掛かる所でもあるのだろうかと、カシエは少し考えて、礑と気付いた。

 「あっ、バルも解いたんだ!
  そうじゃないと、合言葉は解らない筈だもんね」

 「一度解いた仕掛けは、元に戻らなかった」

 「そうだね」

 「でも、カシエも俺も同じ仕掛けを解いた」

 「……どうなってるの?」

 「『創造主』に会えば解るんじゃないかな」

どうなっているか等、コバルトゥスにも解らない。
唯言えるのは、力の強い魔法使いが、この洞窟を作ったと言う事位だ。
0233創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/25(日) 15:35:30.03ID:5Eme44Ip
地下7階に着いた2人は、扉の前に立つ。

 「カシエ、合言葉が解ったのは良いけど、『記す』って何をすれば良いと思う?」

コバルトゥスの問い掛けに、カシエは唇に指を当てて考える。

 「扉に刻まれている『Tuesdi』を、どうにかすれば良いんじゃないかしら?」

 「例えば、こんな風に?」

カシエの返答を聞いたコバルトゥスは、『duTies』の順に、『Tuesdi』に触れてみた。
そうすると、触れた文字が青白く発光する。

 「……前に調べた時は、こんな事は起こらなかったんだが」

紛れ当たりを防ぐ為に、『正答』を認識していなければ、反応しない仕組みだったのかも知れない。
コバルトゥスは一寸吃驚したが、最後に『.』に触れる。
瞬間、地響きと共に重々しく扉が左右に開く。
僅かに開いた扉の隙間からは、眩い光が溢れる。
何が出て来るのかとコバルトゥスとカシエは身構え、扉から少し離れた。

 「よくぞ辿り着いた。
  知恵と勇気を持つ者よ」

完全に扉が開くと、中から青白く発光する霊体が姿を現した。
0234創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/25(日) 15:38:49.37ID:5Eme44Ip
コバルトゥスは霊体が取る初老の男性の姿に、見覚えがある。

 「あ、あんたは地図をくれた……」

それは彼に洞窟の場所を記した地図を渡した、浮浪者に似ていた。
コバルトゥスの言葉に、霊体は反応する。

 「君は私に会ったのか?
  成る程、それで我が元に辿り着いた訳だな」

霊体はカシエにも目を向けると、2人に名乗った。

 「私は『迷宮侯<フューア・シンキス>』。
  偉大なる『迷宮公<デュース・シンキス>』の分身にして、探求心の探究者。
  そして、この洞窟を創った物だ」

コバルトゥスは兼ねてからの疑問を、迷宮侯に打付ける。

 「洞窟の仕掛けも、化け物も、お宝も、全部あんたが用意したのか?」

 「その通りだ。
  小(ささ)やかな物だがね。
  簡単過ぎたかな?」

迷宮侯の問い掛けに、コバルトゥスは半笑いで答えた。

 「暇潰しにはなったさ」

 「それは結構」

褒め言葉と受け取るには手厳しい表現だが、迷宮侯は満足気に頷く。
全ては彼が仕組んだ事なのだ。
0235創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/25(日) 15:59:53.42ID:5Eme44Ip
コバルトゥスは更に問うた。

 「何の為に、そんな事を?」

迷宮侯は淀み無く答える。

 「我が主、迷宮公の為だ。
  迷宮公は自ら迷宮に入り、自身をその中に封じられた。
  長き時の果てに、迷宮は誰も迷宮公に到達出来ない程に深まった。
  今となっては迷宮公だけが、迷宮公の迷宮に挑み続けている」

彼の発言内容は、コバルトゥスには理解し難かった。
迷宮公とやらが迷宮に入って、その迷宮に迷宮公自身が挑んでいると言う。
それと迷宮侯が、この洞窟を作った事が、どう繋がるのか?

 「訳が分からん……。
  迷宮公を迷宮から救いたいのか?」

 「救うと言うのは正しくないが、大凡の理解は、それで良い。
  私は迷宮を創る事で、迷宮公の心を知ろうとしている」

心を救うには、先ず迷宮公と対面しなくてはならないと思うのだがと、コバルトゥスは不思議がる。
何を差し置いても、迷宮公と会わない事には始まらないのではと。
コバルトゥスの隣で、カシエも理解に苦しんで、難しい顔をしている。
0236創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/25(日) 16:01:47.65ID:5Eme44Ip
2人の態度を気にする様子も無く、迷宮侯は告げた。

 「ここまで来てくれた君達には、褒美を与えよう。
  何でも望みを言ってみ給え。
  勿論、限界はあるが」

真っ先にカシエが問う。

 「どの位までの事なら、叶えて貰えますか?」

 「不老不死は無理でも、風邪を引かない位には出来る。
  大富豪は無理でも、一寸した財産を与える位は出来る。
  その程度だ」

迷宮侯の答を聞いた彼女は、即座に願った。

 「じゃあ、風邪を引かない様にして下さい」

 「では、これを……」

迷宮侯はカシエの願いを叶えようとする。

 「待ったっ!!」

それにコバルトゥスが待ったを掛けた。

 「彼女の願いを叶えたら、俺の願いは?
  どうなるんだ?」

迷宮侯は鷹揚に笑う。
 
 「心配せずとも、君の願いも叶えるよ」

 「お、おう、それなら良いけど……」

自分の願いも聞いて貰えると分かって、コバルトゥスは大人しく口を閉ざした。
0237創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/25(日) 16:02:23.82ID:5Eme44Ip
迷宮侯はカシエに向き直って、彼女に向けて、宙に浮く発光体を差し出した。

 「受け取ると良い」

カシエは困惑しつつも、発光体を両手で包む様に受け取る。
それは彼女の手の中で徐々に実体化して、綺麗な『首飾り<ペンダント>』になった。

 「これを身に着けていれば、病魔に悩まされる事は無くなる」

 「有り難う御座います」

カシエは丁寧に礼を言って、早速首飾りを身に着けた。

 「但し、過信しない様に。
  身を守ろうと言う心構えが無ければ、どんな方法も無意味だ」

 「はい」

迷宮侯の忠告をカシエは素直に受け止める。
コバルトゥスは小声で彼女に尋ねた。

 「そんなんで良いのかい、カシエ?」

 「健康は何物にも代え難い財産だと思うけど……」

余り病気にならないコバルトゥスには、カシエの願いが無欲な物に思えてならない。
変わった願い事をする物だと、彼は溜め息を吐いた。

 「さて、君は何を願う?」

迷宮侯はコバルトゥスの方を向いて、話し掛ける。
0238創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/26(月) 19:41:25.56ID:xUHLIiqI
コバルトゥスは暫し思案して、こう答えた。

 「一生、金に困らない様にしてくれるか?」

強欲な願いに、迷宮侯は少し困った様子で言う。

 「私は共通魔法使いが使う通貨の偽造は出来ないが……」

唯一大陸の共通通貨である「MG」は、魔導師会が管理している。
当然、偽造対策が厳重に施されており、容易に真似られる物では無い。

 「解ってるよ。
  何も偽造しなくたって、金になる物をくれりゃ良いんだ」

コバルトゥスの要求に、迷宮侯は忠告をした。

 「しかし、一生困らないとなると、一寸した財産では済まない。
  高価な金属や宝石類を大量に売り捌くと怪しまれる。
  MGを管理している魔導師会は、当然それ等の流通も監視している。
  疑わしければ産地や製造方法を調査される」

 「嫌に、その辺の事情に詳しいんだな。
  出来ないってのか」

コバルトゥスは眉を顰め、頼りにならない奴だと呆れる。
だが、迷宮侯には妙案がある様で、自信に満ちた表情で言った。

 「君には、これを上げよう」
0239創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/26(月) 19:44:35.74ID:xUHLIiqI
迷宮侯が徐に両手を合わせると、その間に青白い光が生じる。
それは次第に大きくなって、直径2手程の光球になった。
迷宮侯は光球を両手で包む様に持ち、コバルトゥスに差し出す。

 「受け取るが良い」

何を貰えるのだろうと、コバルトゥスは不安と期待の混じった感情で、光球に触れた。
それは彼の手の中で、徐々に実体化して行く。
その正体は小さな壷だった。

 「陶器?
  これが高く売れるのか?」

陶芸品の価値が解らないコバルトゥスは、これが値打ち物が判別出来ない。
迷宮侯は小さく笑う。

 「これは魔法の壷だ。
  中に土を入れて蓋をし、一日寝かせておけば、金属や宝石が出来る。
  金や白金と言った高価な物では無いが」

 「銀や銅なら出来るってか?」

 「銀や銅が出来る訳では無いが、そんな所だ」

金や白金が貰えるなら、そちらの方が良いのではと、コバルトゥスは考えた。
この壷を貰っておいても、損は無い事は確かだが……。
0240創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/26(月) 19:46:21.30ID:xUHLIiqI
丸で商品を売り込む営業員の様に、迷宮侯は利点を挙げる。

 「水晶、琥珀、翡翠、瑪瑙。
  石や土を変換して、そう言った物が出来上がる。
  仕上がり具合に依るが、買い叩かれても壷一杯で3000MGは下るまい。
  一度に大金を得られる訳では無いが、故に一度に失う事も無い」

 「……分かったよ、有り難く頂いとこう」

コバルトゥスは納得して、壷を収めた。
その様子を見届けた迷宮侯は、2人に告げる。

 「さて、私は最後に、この洞窟を片付ねばならない。
  早く脱出して離れた方が良い。
  君達が冒険を続けるならば、どこか別の場所で会う事もあろう。
  然(さ)らば」

迷宮侯の霊体は見る見る弱まり、消失した。
扉の向こうは、何も無い狭い空間だった。
コバルトゥスは呆然としているカシエに話し掛ける。

 「早く出よう、カシエ」

 「ええ」

頷いた彼女の手を引いて、コバルトゥスは駆け足で洞窟から出た。
0241創る名無しに見る名無し
垢版 |
2018/03/27(火) 18:38:04.30ID:dxXxsy8R
洞窟の主である迷宮侯が消えた為か、洞窟の中には精霊が戻っている。
コバルトゥスは洞窟の全貌を容易に把握出来る様になっていた。
洞窟から飛び出した2人は、ラビゾーに呼び掛ける。

 「先輩!」

 「ワーロックさん!」

彼は驚いた顔で、2人を見た。

 「どうした、そんなに慌てて?
  何か不味い事でも起きたか」

 「とにかく、ここから離れますよ!」

コバルトゥスはカシエから離れ、ワーロックの腕を掴むと、強引に引っ張って、共に崖から飛び降りる。

 「えぇっ!?
  おっ、わ、な、何を!?!?」

カシエも2人に続いて、飛び降りた。
コバルトゥスとカシエは、それぞれ魔法を使って、断崖から離れた場所に着地する。
重い荷物を背負っていたラビゾーも、尻餅を搗きながらも無事に着地した。

 「痛たたたっ、どうしたってんだよ、コバギ……」

準備も心構えも無い儘に、訳も解らず飛び降りさせられたラビゾーは、不満気に抗議する。
■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています

ニューススポーツなんでも実況