サティの発言に対して、1体が恐る恐る鋏を挙げた。

 「あの……。
  名前って?」

 「個体識別の為の名称です。
  名前が無いと呼ぶ時に不便でしょう?」

 「は、はぁ……。
  でも、勝手が分からないので、そちらで付けて貰えませんか?」

その蟹は仲間を見回して、異議が無い事を確認する。
誰も反対意見を述べる物は無く、サティが皆の名前を付ける事になった。

 「……では、貴方は鋏が大きいので『ビシズ』。
  貴方は脚が長いので『グレッグ』。
  貴方は右の鋏が大きいから『フィドラブ』。
  貴方は甲羅が青味掛かっているから『ブルシェ』。
  貴方は甲羅が真っ赤だから『レッシェ』。
  貴方は甲羅が大きいから『ラージェ』。
  えーと、未だ6つか……。
  貴方は小さいから『ミニマン』。
  貴方は目が大きいから『ステア』。
  貴方は……何と無く普通だから『ノーマ』。
  貴方で最後、『アンテ』!」

彼女は適当に名付けたので、不満が出る事を覚悟していたが、名前の意味まで考えない蟹達は、
全く気にしていなかった。

 「分かりました。
  私達の為に考えて下さった名前、有り難く使わせて頂きます」

そう畏まられては、サティの方が申し訳無い気持ちになる。