ジャヴァニは淡々と答える。

 「彼女が『古の魔法使いの復権』の実現性を疑う物で。
  故(ゆえ)『マザー』に、お越し頂いたのです」

 「成る程、成る程、そうであったか」

マトラは頷きながら、改めてササンカに向き直った。

 「では、御覧に入れよう。
  悪魔公爵の力、心行くまで篤と味わえ」

邪悪な笑みを浮かべた彼女は、再び強烈な威圧感を放ち、周囲を暗黒で包んで行く。
暗黒はササンカを押し潰す様に、圧力を強めながら濃く深くなって行く。
ササンカは暗黒の球体に閉じ込められたのだ。

 「如何かな?」

マトラの声は暗黒の中で反響し、ササンカの神経を蝕む。

 「わ、解った。
  確かに、恐ろしい力だ」

嫌な予感がしたササンカは、もう十分だと答えたが、マトラは彼女を解放しない。

 「いや、未だ解っておらぬ。
  解ろう筈が無い。
  こんな物は私の力の一分にも満たぬ。
  そなたには、遙かなる暗黒の旅に出て貰おう」

暗黒の球体は徐々に体積を小さくして行き、終にはササンカを消滅させた。