>「まさか…メカキマイラ!」

「面倒な相手ね!」

誰かがどこかの世界から持ち込んだ合体生物、キマイラ。
身体は獅子、背中には山羊頭、尻尾は蛇となっていて高い知能を持ち、
人語を理解し魔法を使いこなす強敵だ。

それが機械化してしまったメカキマイラは、知能は下がったが
全身に搭載された武装を生物と見ればまき散らす厄介な存在になった。

いきなりの奇襲をカイザードとカリーナはなんとか避けたが、
この世界に来たばかりのアディームは反応しきれなかった。

>「お、っふう……ひひひゃりほれとは、ほのしぇはいもひひしいねえ」

「アディーム!……って、あなた生きてるの?」

レーザーを頭に受け、身体の各所に毒液をもらったにも関わらず
アディームの意識は残っている。しかも倒れることなく、それどころか歩き出した。

>「百発百中は射撃技能だけど、一発必中は外さないシュチュエーションを作り出すタクティス!
抜き打ちも射撃も下手だけど、ここなら外さないさ
てことで、もう痺れるのはごめんだから尻尾頂くよ〜」

アディームの身体が髪の毛に包まれたかと思うと、カリーナが瞬きする間に
メカキマイラの懐へと潜り込んでいる。

そしてこの世界の銃のサイズに当てはめても大きいと分かるごついリボルバーを取り出し、
メカキマイラの尻尾へと強烈な一発を撃ち込む。
機械化されたとはいえ装甲と呼べるほどの硬さを持たない皮膚はあっさり砕け、
尻尾は機械油をまき散らし無残にちぎれた。

「……凄いじゃない、アディーム!あなた死んでも生き返るのね!
 私も負けてられないわ!」

カリーナも今が踏み込む瞬間と思ったのか、メカキマイラの側面、
機械化され火炎放射をまき散らす山羊頭めがけて突進する。

「風よ、存分に荒れなさい!」

そう叫ぶと、カリーナの身体を風が包み込む。
ガントレットにはめ込まれた宝石を触媒に、カリーナが自分の身体に強化魔法をかけたのだ。
山羊頭から吐かれる火炎は突風に煽られてカリーナへと当たることなく、左右へ逸れていく。

「まずは――お前からッ!」

山羊頭にぶつかる寸前、カリーナはふわりと浮き上がったかと思うと
腰をくねらせ、風を纏った強烈なハイキックを山羊頭に叩きこんだ。
無数のかまいたちが表面と内部を削り取り、カリーナの脚がそれらを全て砕いていく。

無視できないダメージを続けて負わされたメカキマイラは、
まだ動く身体を引きずって逃げ始めた。今はまだ遅いが、加速がつけば三人では追いつけないだろう。

「カイザード!このままだとあいつが逃げちゃう!
 私銃とかそういうの持ってないの、追撃頼める?」