主電源に突き刺した超高熱ナイフを引き抜き、黒いギガスを蹴り倒す。
奇襲は成功したが、まだ黒いギガスは残っている。ある程度は鹵獲する必要はあるが、数は減らしておくべきだろう。
超高熱ナイフを右手に握り直し、ヒートヘイズの左手を平手にして構えた。

>「オラァ!!!」

と、そこで今回のミッションに参加してくれたギガス・パイロットの一人、タイム・スティール・ガンコンが
こちらを狙っていたのであろう敵機をまとめて撃破してくれた。

彼はディスカバリー社のギガス・パイロットだが、企業専属のわりには社外でギガスに乗ることもある。
腕も優秀で、彼のギガスは前線を文字通りこじ開ける弾幕の多さが魅力だ。

「助かったよタイム!弾薬費は依頼主持ちだ、景気よくやってくれ!」

相互通信で礼を伝えつつ、あのスクラップの男と話していたリーダーと思われるギガスへ突撃する。
コンテナはまだ移動していない。敵ギガス3体が扇状に展開してシールドを構え、サブマシンガンで援護射撃をしていた。
恐らく強力な射撃武器を持つタイムの方から一気に片づけてしまうつもりなのだろう。

>「おう、タナカ。そいつの攻撃を止めてくれ。
俺ァ今から新型兵器の実験をする。もう有給がキレそうなんだ。さっさと帰ってタバコ吸いてェ」

「分かった!合図をするから3,2,1で仕掛けるぞ!」

ヒートヘイズの左手に機体の廃熱を集中させ、左腕部にある多目的発射装置から射出された特殊燃焼剤を
敵リーダーのギガスへと散布する。

「……3」

散布された特殊燃焼剤は粘着性のある粉末で、自律機械群のセンサーや関節部へとこびりつき一時的に動きを抑える作用がある。
ギガス相手にもそれなりに有効な兵器であり、敵リーダーのギガスは一瞬動きを止め、姿勢をぐらつかせる。

「2……」

ヒートヘイズは脚部のスラスターを思い切り吹かし、集中させた廃熱で陽炎のごとく揺らめいて見える左手を平手に構えて突進した。

「1!今だ!」

狙いに気づいた敵ギガスたちはサブマシンガンの狙いをヒートヘイズに向けて斉射を始めたが時既に遅く、
ヒートヘイズは姿勢をぐらつかせた指揮官機へとすれ違いざま、左手を撫でるように擦り付ける。
それだけでこびりついた特殊燃焼剤が引火し、一瞬にして黒いギガスは真っ赤に炎上した。
炎上は黒いギガスの突貫を止めるには十分な威力を持ち、タイムが用意した新兵器の標的にはちょうどいいだろう。

(自律機械群には炎上はよく効くんだけど、ギガス相手には驚かすかセンサーを焼き切るぐらいしかできないからな…頼んだよ、タイム)

コンテナを守る黒いギガスたちの斉射を岩陰に隠れてやり過ごしつつ、タナカはタイムの援護を待った。

>>6

【まさかすぐに一人来てくださるとは思いませんでした!これからよろしくお願いします!】