ヤスモトと同行する探索者達の待つ会議室に、ジェミニは一番遅れて参上した。
ドアを無遠慮に開け放って、ポンチョの埃を払い落としながら入室する。

「お待たせー遅れてごめんねヤスモっさん」

探索者の中でも相当な古株であるヤスモトとは面識がある。
何度か任務を共にこなしたこともあり、ジェミニからすればそれなりに気心の知れた相手だ。
それ以上に、彼女は他人に対して必要以上に気安い。無遠慮とさえ言っても良い。
誰にでも同じように接するそのスタンスは、裏を返せば特別な相手を作らない意思表示でもあった。

「いやーまいったまいった!CSL(シェルター間秘匿鉄道)止まってんだもんこりゃ相当ヤバいことになってんね」

安全区域に点在するシェルター同士を繋ぐ鉄道が封鎖されていた為に、ジェミニは不要な遠回りを強いられることになった。
文句じみた言い訳とは裏腹に、彼女の口調は寛容だ。有事に対して、危機感や緊張を感じさせない。

「長旅の垢落とす間もなく出撃かぁ。いやここ来る前に除染シャワー浴びてんだけどね?
 ヤスモっさんはパーツ変えるだけで身体綺麗になりそうであたしゃ羨ましいよ」

ヤスモトの肩を不躾にバシバシ叩いたジェミニは、その流れで他の同行者達を一瞥する。

「今回は四人でチーム?あーゴンザレスのおっちゃんもいるじゃん。2年ぶりくらい?前にも増して太ったねえ。
 スーツみっちみちになってるじゃん。いい加減買い替えるか痩せたほうがいいんじゃないかなあ」

同行者リカルド・ゴンザレスの身体を上から下までぐるりと見回した後、視線はそのまま下方へ。
そこにはジェミニの半分ほどしか齢を重ねて居なさそうな少女の姿があった。

「……マジ?こんなちっちゃい子も呼ばれてんの?センターってそんな人材不足やばいの?
 てゆーかシスターが無人兵器に何するってのさ。連中に神の教えでも説くの?デウスエクスマキナ的なやつ?
 ヤスモっさん、これは明らか人選ミスでしょー……今回のヤマって相当ヤバい案件だって聞いたけど」

半端なことでは動じないジェミニも、このシスター姿の少女の存在には怪訝の目を隠せない。
センターは彼女に何をさせようとしているのか。そもそも足手まといになりやしないか。
猜疑の感情を一切取り繕うことなくジェミニは少女を睨めた。


【ヤスモトさん、マリーさん、リカルドさん、よろしくお願いします】
【私からも一個質問です。無人兵器と探索者のパワーバランスってどんな感じなんですか?
 小型、中型、大型がそれぞれ一般的な探索者何人分の戦闘力に匹敵するのか、みたいな感じで】