【スローライフ】南国の楽園バハラマルラTRPG [無断転載禁止]©2ch.net
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ここは南国、バハラ列島……
その中で最大の都市、バハラマルラから、物語は始まる。 名前: クロモ・ツィランガ
年齢:28
性別:男
身長:188
体重:119
スリーサイズ:
種族:人間と牛族のハーフ
職業:牛乳屋
性格:お人よし
能力:牛を飼っている
武器:牛刀
防具:バハラマ葦の服
所持品:バハラマ葦のお守り
容姿の特徴・風貌:恰幅の良い、牛人とのハーフ青年。目が線。
簡単なキャラ解説:人の良さそうなハーフの大男。
戦争が嫌いで基本的に牛乳を売ることで生活を稼いでいる。 遅れたが、牛乳屋のクロモでござんす。
ワシは牛乳を売ってるんでござんす。
バハラマルラへようこそ!
この島では来る者こばまず! 独り言もOK!
気軽に参加するでござんすよ!
戦争キライ! みんな仲良くね! ワシは島内の人間だが、島外の人間も歓迎でござんす。
誰でも良いってことでさぁ。治安も良い。
ここはバハラ列島のバハラ島、最大の街でバハラ連邦の政府があるバハラマルラだけど、
ワシがすんでるのはその中でも農業が盛んな田舎なんでさぁ。
こんな感じでジワリジワリと世界観もみんなで作ってくでござんす。
さ、牛乳いかが?
(担いだ牛乳の桶を下ろしながら)
ココの実1杯分で10マルラでさぁ。 名前: ティリスティル・ヴィルテール(ティル)
年齢:11
性別:男
身長:141cm
体重:44kg
種族:ドラゴニュート
職業:配達員
性格:天真爛漫
能力:火炎のブレス、翼による飛行
武器:鉤爪、龍の尻尾
防具:簡素な服、龍の鱗
所持品:真鍮のロケットペンダント
容姿の特徴・風貌:中性的で細身な少年、頭に二本の角、手足の形状がドラゴンに似る。
簡単なキャラ解説:天涯孤独で1人で暮らしている少年、手紙や物資の配達が仕事。
副業としてトレジャーハントの真似事をすることもある。 ゆーうびーん!郵便だよー!
【ばっさばっさと、仔竜の小さな翼が空に羽ばたく音がする】
【間もなく現れたその翼の持ち主は、変声期前の高く澄んだ声でそう呼びかけながらクロモの近くに着地した】
牛乳屋さん宛に一つの小包を預かってるよ!
はい、どうぞ!サインか判子を貰わないといけないみたいだからそれも宜しくね!
ふふん、今日はおじさん宛ので最後だから、しっかり丁寧に運んだよ!
【持っていた小包をクロモの方に渡して得意げに笑う】
【その小包に差出人は書かれていない、こんな贈り物をしてくる人物にクロモは覚えがあるだろうか】
おいらもう仕事終わりだし、牛乳1杯貰ってもいい?
お金は……う、今7マルラしか持ってない、けど……
た、足りない分働くからそんな感じで!どうかな!
おいら結構役に立つよ!力強いし!飛べるし!速いし! おぉ、ワシに郵便でござんすか、そりゃご苦労さん!
(ティルから小包を預かり、インクを指に付けて大きな爪の付いた指で押印をする)
おぉ!こりゃ驚いた! 隣のカラバン島のザンギからの郵便か。
あぁ、こいつぁね、ワシの弟で隣の島で農業ってのをやってましてね。
中身は… おぉ、こりゃ良い砂糖だ!
美味いアイスクリームが作れそうだね。
ほい、ドラゴニュートの郵便屋さん。ワシは粋ってのがモットーでさぁ、
7マルラしか持ってねぇ兄ちゃんから10も取ることはできねぇ。
さ、持ってきなってんだ。
(ティルにココの実の殻に入れた牛乳を手渡す)
ぁいよ! 夏ぐらいにゃ、美味いアイスクリームを用意しとくから、
郵便局の方でも適当に宣伝してくれりゃよござんす。
じゃあ、またいらっしゃい。
(そのまま牛の乳搾り作業に戻る) >>3 独り言もOK
引波から足を取られながらも、鳴砂に届くまでの数歩を前のめりに踏み出した。
船舶とは無縁の航海を終えて冷え切った全身を、砂浜へと仰向けに打ち捨てる。
真昼の日差しで灼かれた白砂に埋めた背が徐々に取り戻し始める、体温と血流。
視界に広がった圧倒的な青空の端を、鳥と思わしき影が横切って行く。
ゆっくりと鉄の車輪の転がる様な音が、遠くから微かに聞こえて来る。
――――まったく、似つかわしくない。
本来の透明度が失われている。
海岸を渡る潮風も、寄せては返す海水も。
そこに希釈された血の香りだけが、唯一の異質だった。
これでは、まるで神話で語られる楽園に放り込まれた流刑者の様だ。
ならば、神が願いを聞き届けたとでも言うのだろうか。
いつか、自身とは違う誰かが望んだ、己の魂の平穏を。
「ああ……まったく、似つかわしくない」
その輝きは、あまりに眩し過ぎた。
翳した右腕の影で陽光を遮り、擦れた声で呟く。
おそらく漂流者にとって、この世界は非分に穏やかで、不当に暖かい。 >>4 誰でも良い
名前:不明
年齢:推定20以上
性別:推定♂
身長:推定180以上
体重:推定70以上
種族:推定人間以上
職業:推定無職
性格:不明
能力:不明
武器:推定非武装
防具:推定非武装
所持品:底が喰い千切られたドラゴンレザー・ボンサック(内容物は全て喪失)
容姿の特徴・風貌:灰髪/灰瞳/褐色の肌
簡単なキャラ解説:記憶喪失 名前: アクア・エリス
年齢:年中無休の夏厨
性別:女性系
身長:そのシーンの雰囲気によって絵柄がデフォルメされるので可変
体重:同上
スリーサイズ: 同上
種族:半分人間
職業:青いジュース普及活動
性格:ノンストップ夏厨
能力:水鉄砲の達人。水鉄砲から水以外のものが色々出ても達人なので仕方がない。
武器:二丁水鉄砲
防具:頭にゴーグル、服装はタンキニにパーカー、足はサンダル
所持品:滑空するキックスクーター 青いジュースの入ったケース(消費するといつの間にか補充されている)
容姿の特徴・風貌:年中夏休み
簡単なキャラ解説:世界を支える神樹を防衛するために
週一ペースで現れる魔王や邪神と戦っていた気がしたが、気が付いたらここに飛ばされていた。
「ここは……どこだ? 我は……誰だ?」
記憶が随分と混乱している。
ボロボロになった名札を発見し、辛うじて読める文字から自らの名前を推定する。
「アク…………ス。……アクア・エリスというところか」
>10
砂浜で倒れている行き倒れを発見した。
――大変、熱中症だ!助けなければ! 本能的にそう思った。
「今行くぞ―――――――ッ!!」
地面から数十センチ浮いて走るキックスクーターを飛ばし駆けつけた……
「ぐぎゃっ!! ――な、んだと……!? 孔明の罠か……!」
駆けつけたつもりだったが勢い余って少し通り過ぎて木に激突し、木の幹に貼りついてずり落ちていく。
青い缶ジュースが辺りに散乱し、そのうちの一つが行き倒れの横に転がっていく。 マジでこのまま終わりなん?
せっかく人集まってたのに >>12 スイマー
(不意に生じた激突音の発信源に視線を送り、身を起こす)
(周辺の惨状(じょうきょう)を確認しながら、徐に歩み寄って)
随分と騒々しいな、ビーチ・モンキーが木登りにでも失敗したか。
(己の所有物の如く拾い上げた青い缶のタブを引き上げ、空いた手を差し伸べる)
人語を解する所を見ると、どうやら人間の様だが……立てるか?
お前が地域住民なのか観光者なのか判別しかねるが、
最寄りの市街地まで案内を依頼したい。
報酬は身体で支払おう。
【――― Slow Life.(新機軸の挨拶)
今後の投下ペースは可能な範囲で、そちらに合わせよう。
【最後に重要な部分を取り落としていたらしい。追補する。
前述の可能な範囲で、という文言は最善の努力を必ずしも意味しない。
よって"週一ペース"は確約出来ないが、少なくとも二週に一回程度は現れる心算だ】 名前:アボーヴ”アクロバッター”・コロンボ(通称:アクロバット親父)
年齢:推定40歳以上
性別:♂
身長:172
体重:63
種族:人間
職業:アクロバットリーダー
性格:アクロバティックでフレキシブルな性格
能力:アクロバット
武器:アクロバット(殆ど素手で戦うので使わない)
防具:上半身は裸で下半身は短パン
所持品:裸一貫
容姿の特徴・風貌:良い感じに鍛えられているが、島民には少ないタイプの毛深い感じ。
簡単なキャラ解説:「アクロバッター」という体操系の新興宗教の教祖である。
バハラ列島全土の布教を目標としており、バハラマルラに居を構える。 >>12 アクエリ >>16 漂流者
「アパパ!!」(この地域の挨拶)
アボーヴは、体操の最中に若い男女二名を発見した。
「あっりー! 何やっとぅんかねー?」
声を掛けてみるも、どうやら男の方が市街地の方に女を案内しているようだ。
アボーヴは跳躍すると、物凄い勢いで砂浜を蹴り、全身をバネにして二人の向かう方向に着地する。
10点。
「バハラマルラ行くかい? おいちゃんが案内するさ。名前教えて。
おいちゃんはアボーヴっていう名前さ。体操の……お兄さんみたいなもんだね。
”アクロバット親父”ってよく呼ばれてるね」
女が落とした飲み物を拾い集めて、とりあえずバハラマルラに向けて出発する。
【――― Good Job.(全世界共通の挨拶)
今後の投下ペースは不定期だが、基本的に皆さんに合わせよう。】 >16
>人語を解する所を見ると、どうやら人間の様だが……立てるか?
青いジュース片手に片手を差し伸べる青年(推定)。
なかなかのイケメン的構図である。
>お前が地域住民なのか観光者なのか判別しかねるが、
>最寄りの市街地まで案内を依頼したい。
「おう、任せとけ!」
自分も記憶喪失のくせに請け負ってしまった。大丈夫なのか!?
>報酬は身体で支払おう。
「身体で支払う……だと!? 」
世の中には自らの顔を千切って食べさせるヒーローなどというものも存在するが
まさかこのイケメン(推定)がそれをするというのか。
一般的に起こりそうな勘違いの更に斜め上か斜め下をゆく明後日の方向の想像を一瞬してからすぐに思い直す。
「ああ、働いて払うということだな。
それでは無事に街についたら青いジュース普及活動の手伝いをお願いしよう。
そのジュース、なかなか美味しいだろう。市街地は……多分こっちだ!」
こうしてどっちが案内している側か分からない状況になりつつカンで市街地を目指していると……
>19
>「あっりー! 何やっとぅんかねー?」
短パン一丁の原住民、もとい現地民が現れた。見事着地に成功したのを見て拍手する。
>「バハラマルラ行くかい? おいちゃんが案内するさ。名前教えて。
おいちゃんはアボーヴっていう名前さ。体操の……お兄さんみたいなもんだね。
”アクロバット親父”ってよく呼ばれてるね」
「アクロバットお兄さんか……。それは助かる! 二人とも記憶喪失で困っていたところなんだ。
我はおそらくアクア・エリス。略してアクエリって呼んでもいいぞ!
こっちは自分の名前すら思い出せないみたいだ。
これを是非飲んでみてくれ。お兄さんのようなスポーツマンには特におすすめだ」
アボーヴに青いジュースを渡す。
一定年齢以上の男性は等しくお兄さんと呼ぶのは良い子のお約束である。
こうして無事にバハラマルラに到着した3人。
ほどなくして、町民で賑わっている牛乳屋を発見した。
「どうやら我とこのイケメンは成行き的に今日からここの町民になるらしい。よろしく頼むぞ!
ここの牛乳屋は人気みたいだな」
そう言うと、空いている牛乳の販売スペースに青いジュースを勝手に並べはじめた。
【―――Active Slow Life.(青いジュースのキャッチコピーと合体させてみた)】 二週に一回しか来ないって言ってんだからそれまで進めとけよ
せっかく人手が揃ったのにアホみたいだぞ 人気店とは言うがアクア、結論を出すのは立入調査の後だ。
店主不在どころかクラークの一人すら配置されていない様だが。
実に不用心な店舗だ……いや、それだけ治安良好と解釈しておこう。
(息を吐く様に商品棚から取り上げたボトルのタブを親指で弾き飛ばし)
(息を吸う様に中身を飲み干して、空いたスペースに青い缶を陳列する)
この この"青いジュース"とやらの普及活動に協力するのは構わないが、スポンサーは?
椰子の実の皮殻を販売容器として利用する方式は使えそうだな、これも試してみよう。
(さらに店内を物色して不法入手したチーズを齧りながら、壁面の観光地図を眺めて)
時に、前金の受け取りが可能な仕事に心当たりは無いか、アクロバット。
そのような依頼を仲介ないし斡旋する業者や施設が有れば理想的だ。
可能な限り合法的に、この地域の通貨と食事と宿舎を確保したい。
――――当面の間、それらの全てを"此処"で賄うというのも選択肢の一つになるか。
【Acrobatic Slow Life.】 >人気店とは言うがアクア、結論を出すのは立入調査の後だ。
>店主不在どころかクラークの一人すら配置されていない様だが。
言われてみれば、客はたくさんいるが店主も店員もいない。
「漂流者」がさりげなく中身を飲み干した後の空き缶を陳列した気がするが多分気のせいだろう。
>時に、前金の受け取りが可能な仕事に心当たりは無いか、アクロバット。
アクロバットお兄さんは沈黙している。
いい仕事を斡旋してあげたいのは山々だが心当たりがなくて悶絶しているのかもしくは立ったまま寝てしまったのかもしれない。
そこで「漂流者」はもう一つの選択肢を提示する。
>――――当面の間、それらの全てを"此処"で賄うというのも選択肢の一つになるか。
「アクロバットお兄さんが沈黙してしまったことだしそれが現実的かもしれないな。
思うにこの店……店主が何らかの事情で長期不在なのだろう。
ここに住まわせてもらう代わりにその間店を維持管理しておくというのはどうだろう。
そうだな、維持と言わず発展させればもっといいかもしれない」
>椰子の実の皮殻を販売容器として利用する方式は使えそうだな、これも試してみよう。
「そのアイディア採用だ。早速森に椰子の実をはじめとして使えそうな素材を探しに行こう!」
店から出ようとしてはたと立ち止まって「漂流者」の方に振り返る。
「ところで……君の事は何と呼べばいい? 君の名は――ああ駄目だ、思い出せそうで思い出せない。
遠い昔にどこかで会ったことがないか? 例えば前世とか前前前世とか……。
――変な事を言ったな、忘れてくれ」
劇場の横を通ると、「君の名は」大ヒット上演中と書いてあった。最近流行りの演劇らしい。
なにはともあれ――森探索イベント、開始!?
【Previous Previous Previous life】 森林探索に備えて、店舗裏のストレージを物色する。
収納物の大部分が雑貨や日用品であり、有用な道具は限られた。
ロープと楔、ランタンと火口箱、毛布と保存食、背負い袋……水袋は不要だろう。
「観光地図の記載から判断すれば、 "エルフの森"と"遺跡の森"、この二つが最寄りの候補地になるか。
動植物や魔物の生態系は不明。無論、目指す所である椰子の群生地が存在するか否かすら不明だ」
漂流者にとって唯一の所持品である革製のボンサックは用を成さない。
椅子を一脚、分解してバックレストに元・ボンサックを被せ、ベルトを巻き付ける――
――粗製のレザー・シールドを使用する状況が生じない事を期待して、ハチェットと共に装備した。
「縮尺の正確性が疑わしい図面だ。森林の規模と深度は読み取れない。案内人を雇う手持ちも無い。
現地で博愛精神に満ちたレンジャーかフェアリーに遭遇する奇跡でも神に祈るべきだろう。
もっとも俺の知る限りに於いて、神とは論理的整合性が破綻した無能を意味する」
――――違和感があった。極めて漠然とした、それでいて確信的なまでの"不足感"だ。
「森林を踏破するに当たって、お前のサンダルは致命的だが……四の五の言っても仕方あるまい。
この救い様の無いパーティのストロングポイントを無理矢理にでも見出したい所ではあるが、
該当するのは、無意味かつ異常なまでに突出した熱中症対策のパラメーターだけだ」
未知の探索領域へと踏み出すに際して、準備不足は明白だ。
だが、客観的事実であるが故に、理性は冷静に状況を受け入れている。
よって、この奇妙な"不足感"は、恐怖や不安から生じるモノでは在り得なかった。
「行くぞアクア――――青い缶の貯蔵は充分か」
物理条件や精神状態とは本質的に異なる、"因子"とでも言うべき何かが未だ欠けていた。
漂流者は思考する。それはおそらく……自身の背負うべき何か、己が掲げるべき何かだ。 タンクトップ・ビキニ姿がパーカーの裾を翻して振り返って来る。
これまでよりも、やや等身が増している様に見えた。
―――まったく、作画の安定しない女だ。
『ところで……君の事は何と呼べばいい?』
「流浪の身が名を得た所で意味はあるまい……"ヴァグラント"とでも呼び捨てておけ」
『君の名は――ああ駄目だ、思い出せそうで思い出せない』
「思い出す……か。お前と俺は、ほぼ同時期に、同一地域に流れ着いた。
状況を鑑みれば、二人が既知の仲であった可能性は否定出来ない。
だが現時点では、それを積極的に肯定する材料(きおく)も無い」
両者の不明瞭な関係性こそが先程から感じている違和の正体であるならば、
この機会に多少の時間を割いてでも追求しておくべきだろう。
だが……違う。漂流者の直感は、それを否定する。
『遠い昔にどこかで会ったことがないか?』
「その仮定を受け入れるならば、最後に会った場所は――
――まず間違いなく"沈没間際の甲板上"になるだろうな」
『例えば前世とか前前前世とか……』
「やれやれだ、アクア。お前は飲料よりも宗教を商売にした方が余程向いている」
『――変な事を言ったな、忘れてくれ』
「……ああ、そうさせてもらおう。忘れるのは得意だ」 所有者に無許可で借り受けた観光地図を片手に、繁華街の喧騒に合流していく。
雑踏の中でも少なくない割合を占める観光客達と、そう見た目は変わらない筈だ。
「……脚が止まっているぞ、アクア」
しかしながら、その内面的な事情に於いて探索者達は異質だった。
"旅の思い出"と言う名の一時の娯楽を求めて散財に勤しむ観光者の遊行に対し、
自身の記憶すら覚束ない探索者が迫られているのは、経済社会への復帰を賭しての強行軍だ。
「そんな物欲しそうな瞳をしても無駄だ。
残念だろうが、この俺は何も持ち合わせてはいない。
その陳腐な演目に対して注げる様な安い好奇心も、入場料もだ」
不意に、天啓とも言うべき霊感が迸った。此処に到って漸く探索者は最後のピースの所在を知る。
未来あるいは運命と呼ばれるソレは本来、人間の身による干渉など受け付けない。
だが、今だけは手が届く。否。この瞬間ならば掴み取る事が出来る。
自身の背負うべき業、己が掲げるべき旗――――
「だが……そうだな、この探索から無事に生還して一山当てた暁には、
お前を観劇のペアシートにポップコーン付きで招待すると約束しよう」
――――死亡フラグだ。こうして形而上的な事前準備は滞りなく完了した。 【一過性の現象だと考えたいが、どうやら俺の送信内容は確率により一部が喰われるらしい。
連投規制に迫るレス数を投下する際には、致命傷になり得る。その様な予定は全く無いが。
つまり、二週間を超えて応答無き場合は……この現象のせいだろうな。ああ、間違いない】 > もっとも俺の知る限りに於いて、神とは論理的整合性が破綻した無能を意味する」
「いや違うな、神とは超常的能力を持つ者の総称でその点において有能だからこそ性質が悪い……
尤も論理的整合性皆無という点では禿げ上がるほど同意だ。
奴らは出来心で無上の幸運を授けることもあれば、気まぐれで絶望のどん底に突き落とすこともある……」
>「森林を踏破するに当たって、お前のサンダルは致命的だが……四の五の言っても仕方あるまい。
この救い様の無いパーティのストロングポイントを無理矢理にでも見出したい所ではあるが、
該当するのは、無意味かつ異常なまでに突出した熱中症対策のパラメーターだけだ」
「大丈夫だ心配ない、これ(滑空するキックスクーター)があるからな。
その気になれば二人乗りも出来るぞ。この世界の道路交通法上で出来るかは不明だが……」
>「流浪の身が名を得た所で意味はあるまい……"ヴァグラント"とでも呼び捨てておけ」
「ヴァグラント――我はそれを”地平線を渡る旅人”と訳そう。
実は聞かれるのを予期して考えていただろう? 今考えたにしては……いささか格好良すぎる響きだ」
>「その仮定を受け入れるならば、最後に会った場所は――
――まず間違いなく"沈没間際の甲板上"になるだろうな」
甲板――そう、船だ。それもかなり巨大な……
何かを思い出しかけたような気がしたのも束の間、脳内の光景は
甲板の先で組体操を敢行するバカップルの図に塗りつぶされてしまった。
もうかなり前に流行した船が沈むだけの話を延々と引き延ばした演劇の1シーンである。
>「やれやれだ、アクア。お前は飲料よりも宗教を商売にした方が余程向いている」
「そうかも……しれないな。
我はきっと人間であって人間ではないんだ。人で非ざるモノにとても親近感を感じる……
でも……世の中の人々も自分を純粋な人間だと思い込んでいるだけなのかもしれない。
ヴァグラント、キミはどうだ? 自分が人間だと断言できるか?」 >「……脚が止まっているぞ、アクア」
「ああ、済まない、名も無き精霊の声が聞こえた気がした」
名も無き精霊の声とは具体的には>24のことである。
ファンタジー世界の南の島という設定から考えても、精霊が満ち溢れていても不自然は無いだろう。
>「だが……そうだな、この探索から無事に生還して一山当てた暁には、
お前を観劇のペアシートにポップコーン付きで招待すると約束しよう」
何かがおかしい、という漠然とした感覚が確信へと変わる。
この世界に来たとき「この世界は南国のスローライフをテーマにしたお気楽コメディである」との啓示――
つまり確信的な直感を得たはずだ。しかし蓋を開けてみればどうだ。
彼らは今まさに経済社会への復帰を賭して過酷な探索に挑もうとしているのだ。
アクアはその提案は不吉な旗であることを認識しながら、敢えてそれを受けた。
「ああ、楽しみにしているよ。
……知っているか? 規則は破るためにある。そして、フラグはへし折るためにある――!」
フラグ回避ではなく、立てた上で敢えてへし折りに行く――。
無慈悲な神への、残酷な運命への反逆をここを宣言した。
暫く進むと、二又の分かれ道に出た。
【こちらエルフの森】【こちら遺跡の森】の看板がそれぞれの道に立っている。
アクアは心の赴くままに進んでいく。どっちに行ったかは……
【書き込み時間の末尾で判定 偶数…エルフの森 奇数…遺跡の森
ただし襟首をつかんで引き戻してもう一方に行くのもまた一興――
>30
なん…だと!? 実は我も一度その現象に遭遇したことがある。
“世界食ライの魔獣”が時の狭間に潜んでいるのかもしれないな――】 【>>32 アクア
> 偶数…エルフの森
こちらの森を探索者が選ぶと、入り口に『看板』が立っている。
森エルフ語の[読文判定(技能レベル+知力ボーナス)]を振ってくれ。目標値は10だ。
判定に成功すると、以下の様に書いてある事が辛うじて判読出来る……『この先、ノープラン』だ。
> 奇数…遺跡の森
こちらの森を探索者が選ぶと、入り口に『看板』が立っている。
遺跡文明語の[読文判定(技能レベル+知力ボーナス)]を振ってくれ。目標値は10だ。
判定に成功すると、以下の様に書いてある事が辛うじて判読出来る……『この先、見切り発車』だ。
>“世界食ライの魔獣”
ユカイな怪奇現象に関する統計から分析を行った結果、二つの仮説を得るに到った。
その内の一方を今から検証してみよう。タイピングの際に手を抜くと、該当箇所から先が"喰われる"。
この書き込みが正常に行われていた場合、他方の仮説と要因が重複している可能性も高い。来週、そちらを検証する】 (・∀・)ふるふる、オイラは悪いモラランだよ
【モラランは跳ねながらアクアに襲い掛かった!】
――――――――――――
種族:モララン
概要:体高28cm。体重4kg。体毛/茶色。
柔らかな毛皮に覆われた獣系モンスターで、手足を持たず、毬のように跳ねて移動する。
ジャンプ突進は人間が捻挫する程度の威力。
モラランは繁殖力が強く、世界中に無数の亜種がいる。 遺跡の森へと至る街道に人通りは少ない。
見通しの良い昼日中の石畳の上で、その茶毬は待ち構えていた。
何とも緊張感の無い佇まいだが、おそらくは魔物の一種だ―――臨戦態勢を取る。
『(・∀・)ふるふる、オイラは悪いモラランだよ』
地面から突き上げるチャージの進路を遮り、アクアとの間に身体を割り込ませた。
構えたレザーシールドで斜め上方に跳ね返した茶毬を追う形で、自身も跳躍。
空中での追撃の代わりに茶毬を鷲掴みにして、街道の石畳に叩き付ける。
「……名乗りが遅れたな。こちらは素行の悪い探索者だ」
絶妙な弾力でバウンドした茶毬を自身の着地と同時にキャッチすると、さらに衝き下した。
石畳から強く弾んで来る茶毬のエネルギーを柔らかく利用して、再び石畳に返す。
緩んだヨーヨーの様な間の抜けたリズムで、暫しの間、ドリブルを反復する。
「このような弱者を虐げるが如き所業は、実に心が痛むものだ――
――だが、俺の得意とする所でもある。お前はどうする、アクア?」
無意味なフロントチェンジを加えて茶毬を放り渡す。
当然、パスコースを塞ぐマークマンは見当たらない。
「止めを刺して、今夜の夕餉にするのもいいだろう―――鍋の用意ならば、ある」 カラカラ、と賽の投げられる音がどこかで聞こえた気がした。
「何々? この先見切り発車――」
……ダイスの振り主が無駄に高数値を出したのか、実は何故か遺跡文明語を習得していたのかは不明である。
『(・∀・)ふるふる、オイラは悪いモラランだよ』
毛におおわれた魔物が現れた。
見た目は可愛らしいが、往々にして序盤の魔物とはそういうものだ。
腰の高圧水流噴射機――すなわち水鉄砲に手を伸ばすが、ヴァグラントがより早く動いた。
常人離れした身体能力を発揮し、茶毬をバスケットボールと化すことに成功する。
『このような弱者を虐げるが如き所業は、実に心が痛むものだ――
――だが、俺の得意とする所でもある。お前はどうする、アクア?』
「好きこそものの上手なれ――一般的な傾向として人は嫌いな事は得意にはならないものだ。
ということは……前いた場所で好む好まざるに拘わらず得意にならざるを得ない状況にいたのかもしれないな」
特に妨害が入るはずもなく、投げ渡された毛毬をキャッチする。
毛毬の生殺与奪は、アクアの手にゆだねられた。
『止めを刺して、今夜の夕餉にするのもいいだろう―――鍋の用意ならば、ある』
モラランは仲間になりたそうな目でこちらを見つめている。
「邪気が……払われている? キミは一体……」
無論、モラランの改心が本当にヴァグラントによるものか、実はアクアによるものか
はたまたその他の不思議な力によるものかは分からないが
少なくともアクアはヴァグラントに“セカイに影響する力”のようなものを見出していた。
例えば、先ほどから他人の言葉の聞こえ方がどことなくオサレに聞こえるようになっている。
「ここでは0からスタートするしかない……つまり0からスタートできるんだ。
心が痛むことは――もうやめよう」
そう言ってアクアはモラランを肩に乗せた。
それすなわち――1ターンキルの雑魚敵から共有NPCへの昇格を意味しているのだった。
人気作品にはマスコットキャラは欠かせない。
しばらく進んでいくと、取って付けたように目の前に椰子の群生地が現れた。
アバウトな観光地図によると遺跡のあるはずのあたりらしいが……
「これは――罠かもしれない……!」 (・∀・)ふるふる、オイラは絵師や文筆家や冒険者をタダで働かせようとするけど悪いモラランじゃないよ
【モラランは改心して共有NPCになった!】 『邪気が……払われている? キミは一体……』
「こちらが聞きたい所だな。だが、これは"祓った"と言うより――」
――"喰った"と表現するべきであるような気がしてならない。
この場で探索者だけが感知していた、己の左腕に生じた極めて微細な反応。
ソレは炎に灼かれたかの如き痛覚に限りなく近く、同時に酩酊時の愉悦の様な感覚でもあった。
だが、探索者は左腕の視覚的な変化を確認して思考を止めた―――褐色の肌が僅かに赤黒く変色している。
「いや、考え過ぎだアクア。その茶毬は最初から無邪気なモノだった」
―――――ああ、おそらく日焼けだ。コレは。 『ここでは0からスタートするしかない……つまり0からスタートできるんだ』
「その様な茶毬如きに仕掛けるには過ぎた問答だが、俺とは異なる見解だ。
何事かの実行を開始した者は、少なくとも"正の値"を得ている。
そこには確かに、行為者の意志が存在しているからだ」
『心が痛むことは――もうやめよう』
「……ああ。その点には同意しよう。俺達は懐の痛みを癒やす必要がある」
アクアの肩に乗った不確定名称"茶毬"は、遠目にはファー・ティペットの様に思えなくもない。
そうであるのに、見るものに対して全く小洒落た印象を与え得ない原因は主に二つあった。
外見から一目で判別可能である、衿元の服飾に投資するだけの経済的余剰の欠如と、
南国の昼日中、殺人的な太陽光線の下で毛皮製品を身に纏う合理性の不在だ。
「一歩、踏み出しさえすればいい。それだけで[0]は[1]に変わる。そして――」
『(・∀・)ふるふる、オイラは絵師や文筆家や冒険者をタダで働かせようとするけど悪いモラランじゃないよ』
「――覚えておけ、我々の業界ではソレを"悪"と呼ぶ。
貴様は前方に踏み出す為の脚部すら持たない劣悪な生物(ナマモノ)だ。
精々、転がって着いて来るか、緊急時に於ける非常食のポジションが似合いの存在だ。
そうだな……現時点を以って、貴様を"シャトーブリアン"と名付けるとしよう。謹んで拝名するがいい」 群生する椰子の中で一際、探索者達の目を引く巨木があった。全高は目算で人の背丈の二十倍は越えているだろう。
所有者との間に貸借契約を締結する過程を省略して一時的に使用権を得た背負い袋の容量は限られている。
果実の収穫にあたっては、商品的付加価値のあるモノを選定する事が望ましい。狙うのならば、アレだ。
『これは――罠かもしれない……!』
「それでも構わん――――全力で状況を突破するまでだ」
探索者の灰瞳が射手の眼に変わった。
即座に標的たる堅果と彼我との相対距離の計測を開始。
瞬時に果実の正確な位置と推定される重量および萼部強度の分析を終えた。
「早速だがアクア、樹木登攀(きのぼり)の心得はあるか」
そう問いながら振り返った探索者だったが、アクアの目を見てはいなかった。
厳密には顔すら見ていない。その視線は不確定名称"茶毬"改めシャトーブリアンに注がれていた。
"標的"に何らかの適当な質量物を相当の速度で衝突させる事で順当に落下に至らしめる可能性は充分にあった。
「……スリーポイント・シュートもしくはコンバージョン・キックの心得でもいいが」 なまえを つけて ください
『――覚えておけ、我々の業界ではソレを"悪"と呼ぶ。
貴様は前方に踏み出す為の脚部すら持たない劣悪な生物(ナマモノ)だ。
精々、転がって着いて来るか、緊急時に於ける非常食のポジションが似合いの存在だ。
そうだな……現時点を以って、貴様を"シャトーブリアン"と名付けるとしよう。謹んで拝名するがいい』
ニア シャトーブリアン ピッ
ヴァグラントによって、モララン(種族名)はシャトーブリアン(固有名)というオサレ且つ食欲をそそる命名をされた。
何故食欲をそそるか分からない場合は目の前の箱もしくは手に持っている板で検索をしてみよう。
ヴァグラントは、目の前に現れた椰子の木に臆することなくアタックする。
『それでも構わん――――全力で状況を突破するまでだ』
『早速だがアクア、樹木登攀(きのぼり)の心得はあるか』
「残念ながら我はどうやら水属性のようだ――山のレジャーは管轄外らしい」
そう思う根拠は、僅かに残る記憶の断片と、海のレジャーのような服装が如実に物語っている。
振り返ったヴァグラントはアクアの首元……否、シャトーブリアンを見つめている。
『……スリーポイント・シュートもしくはコンバージョン・キックの心得でもいいが』
「思い出したぞ。我の特技は……高圧水流砲(みずでっぽう)……そうだ!」
シャトーブリアンは普段は球形でありながらファー・ティペットのようになる――
すなわち、柔軟性に富み自在に形を変えることができるのだ。
アクアは水鉄砲にシャトーブリアンを《装填》した。
「発射!」
物理的には有り得ないが、どういうわけか健在な姿のまま撃ちだされたそれは、"標的"に向かって一直線に飛んでいく。 (・∀・)ドドーン! ビューン! ゴチン! ドスン! ドスドスドスッ! ゴロゴロゴロ……ぷへっ。
【アクアの水鉄砲で発射されると、シャトーブリアンは樹上の実に命中して幾つもの実を叩き落とす】
【その後は殻がヒビ割れている実を探して近寄り、隙間に顔をつけて甘いジュースを啜り始めた】
【やがて、お腹と経験値がいっぱいになれば、モララン族特有の進化したそうな顔つきになる】
【ご主人様たちが指示や要求や脅迫や誘惑などを突きつければ、姿形も変わりそうだ】
――――――――――――
⇒キャンセル(進化を取り止める。そのままの君が一番だよ)
レッドモララン(体毛は桃色に近い赤で、通常種の三倍の素早さで動けるモララン)
ハードモララン(剛毛を持つ灰色のモララン、次の進化先の選択に鉱物モンスターも出現)
ファニーモララン(おまじない程度の魔法を使う白いモララン、通常種より少しだけ頭の回転が速い)
モラランフラワー(頭から黄色い花が生えた草色のモララン、次の進化先の選択に植物モンスターも現れる) 「この手法は使えるぞ、アクア。次回の収穫では大容量の背負い籠を用意しよう。
お前の水芸を有効利用して一稼ぎする方法は他にもありそうだ。
商品開発の企画会議と並行して検討を―――」
―――振り返ると茶毬に異変が起こっていた。
シャトーブリアンがルーレットの様に形態変化を繰り返している。
赤、灰、白、草、四種類の進化先に対応して新たな特性を獲得しようというモノらしい。
「何…だと…? これは突然変異……いや、"進化"の前兆と言うべきか。
ここで鉱物や植物の特性を得た場合は問題だな――――肉質が落ちる」
ルーレットのパターンから灰色、草色が消える。
原理は全く以って不明だが、ある程度の法則性は見えた。
こちらで進化の方向性を指定あるいは誘導が可能らしい。ならば……
「……赤色も除外だ。敏捷性の増強に伴って筋肉(すじにく)の比率までもが増加しかねない」
同様に赤色のパターンが消えた。
シャトーブリアンは最後に残った白色の進化形態で明滅する。
その間隔が徐々に遅延し、やがて停止した。選択された白の特性が無事に定着した様だ。
「今回は想定外の収穫が多い。アクアがスキルの一部を取り戻した意義も大きいだろう。
持ち帰る果実の選定作業を任せた。商品価値の低い損傷品などは除外だ。
除外品はシャトーブリアン、貴様の分け前だ。好きにしろ。
その間に俺は野営の準備を―――」
―――振り返ると白毬が不具合を起こしていた。
シャトーブリアンがスロットマシンの如き状態異常に見舞われている。
赤、灰、茶、草、四種類の進化ないし退化先に対応して特性を獲得または喪失しそうだ。
「振り出しに戻った…だと…?」
今回最大の収穫を一つ挙げるとするならば、それは斯かる教訓だろう。
愉快型毬状生物の食い意地を過小評価するべきでは無い。
こうして椰子の群生地に、夕暮れが訪れる。
【翌日以降の日程は全くのノープランだ。野営シーンの中で適当に決めよう。
森林採集ついでに噂に聞く"アボカの実"とやらが入手可能ならば、
シャトーブリアンの制御(きょうはく)に役立つかもしれない】 (・∀・)ところでキミら、ステータスオープン!って叫んだり、肉の両面焼きを得意げに披露しちゃったり系?
【体色を赤/灰/茶/草の四種類に瞬かせながら、変化中のシャトーブリアンは旅人たちに不可思議な質問をぶつける】 『振り出しに戻った…だと…?』
一度白になったかと思われたシャトーブリアンが再びスロットマシン状態になっている。
どうやら今の状態では性質が安定していないようだ。
持ち帰る果実の選定作業をしている間に野営の準備ができ、夕餉の時間が始まった。
そんな中、スロットマシン状態のシャトーブリアンが唐突に話しかけてきた。
『ところでキミら、ステータスオープン!って叫んだり、肉の両面焼きを得意げに披露しちゃったり系?』
「済まない、何のことだかよく分からないが……
先ず、竃の上に網か何かを置いてそこに人数分の肉を一旦置いて、程よく焼けたら裏にしてまた焼く。
こうすれば両方に均等に熱が加わるというわけだ」
何故か肉の焼き方を解説したいと言う抗いがたい衝動に駆られ、何者かに操られるように言葉が出てきた。
「ステータスオープン!」
これまた衝動に駆られて呪文のような言葉を発すると、空間にいくつかのウィンドウのような幻影が浮かび上がる。
この世界ではこれが普通なのだろうか。
神などのその世界を支配する上位存在が、世界を構成する情報へのアクセスを管理者以外にも許可していれば、有り得ない話ではない。
ウィンドウの中には、お役立ち情報のようなコーナーも存在した。
「何々……? "アボカの実"があればシャトーブリアンを制御できる……か。
探してみる価値はありそうだな」 (・∀・)ふるふる……アボカの実なんていらないよ!
【シャトーブリアンは裏切った! ジャンプ突進がアクアを襲う!】 『ステータスオープン!』
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃【○】window display mode > detection command > open target status [_][□][×]
┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫
┃【SPECIES】"moller-lang" Lv2
┃【ABILITY SCORE】[HP9/9][MP5/5][ATK:3][DEF:3][AGI:4][MAG:1]
┃【SKILL】<jump:Lv2><charge:Lv1>
┠───────────────────────────────────────┨
┃_ in operation by voice input _/ /___/ MaTEC for MBI Agents ver1.14 [▼]
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
「これは、情報端末の一種だな。
表示から推測する限り、MBIとやらの構成員のツールらしいが――
――そのような組織に心当たりは? 場合によっては、お前の出自の大きな手掛かりになる」
空間にポップアップした複数のウィンドウが、おそらくは"通信により取得した"情報を開示する。
詳細は不明だが、このシステムが高度な魔導技術の産物である事は確かだった。
どうやら想像以上に厄介な女と関わり合いになっていたらしい。
「アボカの実……モラランにとっては大型種が泡を吹いて昏倒する程の好物、か。
その記述にあるキラカン首長国とやらの特産品という可能性もある。
路銀を手に入れた暁には、南方を目指す選択肢が出来た」
『(・∀・)ふるふる……アボカの実なんていらないよ!』
「とりあえず貴様は体色を安定させろ。
アクアと戯れるのは構わないが、俺の食事は邪魔するな。
現状では確認しなければならない事項が多過ぎる……長い夜になりそうだ」
乾いた枝を手折り、鍋の下の焚火に焼べる。
必要以上に煮立ったココ・シチューの甘い香りの中で、
探索者は、隠し持ったビーフジャーキーの投入タイミングを見計らった。 (・∀・)そろそろモララン王国樹立のために旅立とう、愉快な下僕たちよ
【シャトーブリアンの全身を覆う柔らかな毛は、元の茶色へ戻った】
【どうやらヴァグラントが体色の安定を命じたことで、今回の進化はキャンセルされたようだ】 『これは、情報端末の一種だな。
表示から推測する限り、MBIとやらの構成員のツールらしいが――
――そのような組織に心当たりは? 場合によっては、お前の出自の大きな手掛かりになる』
「まてっく、MBI…連邦捜査局?……いや、違う。でも捜査局は合っている気がするぞ。
なんとかかんとかなんとかかんとか捜査局にいた気がする……・」
『アボカの実……モラランにとっては大型種が泡を吹いて昏倒する程の好物、か。
その記述にあるキラカン首長国とやらの特産品という可能性もある。
路銀を手に入れた暁には、南方を目指す選択肢が出来た』
『(・∀・)ふるふる……アボカの実なんていらないよ!』
アクアはジャンプ突進してきたシャトーブリアンをキャッチしつつ聞き返す。
「怒っているようだが……本当にその情報は正しいのだろうか」
『とりあえず貴様は体色を安定させろ。
アクアと戯れるのは構わないが、俺の食事は邪魔するな。
現状では確認しなければならない事項が多過ぎる……長い夜になりそうだ』
体色を安定させろとの指示を受け、シャトーブリアンの体色はいつの間にか茶色に戻っていた。
こうして夜は更けていく――
ちゃーらーらーらーらっらっらー♪
情報端末から鳴り響く爽やかなのか何なのか分からない目覚まし音と共に、朝は来た。
シャトーブリアンが出発を促す。
『そろそろモララン王国樹立のために旅立とう、愉快な下僕たちよ』
「そうだな、まずは街に戻って今回の戦利品を元に小銭稼ぎをしつつ次の行先を検討しようではないか」
街の方へ向かって歩きながら今後の計画について話す。
「この世界に来た時にはバハラマルラで平和な日常生活を送れという啓示をうけた気するが
それではすぐにマンネリ化……ではなくて商品の材料も尽きてしまう。
バハラ列島を舞台にした小紀行、ぐらいまで手を広げても許されるだろう。
この端末の情報によるとどうやら大トルメイダ島、キラカン国、イルマディラ国と色々あるようだな」 すっかり空になった鍋を洗い流す湧き水の冷たさが心地良い。
南国の朝、短い時間だけ降り注ぐ柔らかな陽光が、きらきらと反射している。
水仕事のために後ろ頭を結わえた銀糸のヴェールの様な長髪と、それを映して輝き揺れる水面に。
<<ちゃーらーらーらーらっらっらー♪>>
――――そろそろ、あの三人が目を覚ます頃だ。 『そろそろモララン王国樹立のために旅立とう、愉快な下僕たちよ』
「貴様が国王になろうという訳か、ならば―――問おう。我々は何を手にする為に征くのか。
新たな国民か、土地か、主権か。いずれにせよ、資本が無ければ調達も維持も不可能だ」
『そうだな、まずは街に戻って今回の戦利品を元に小銭稼ぎをしつつ次の行先を検討しようではないか』
「ああ……場合によっては、この国王を"今回の戦利品"として処分してしまっても構わないのだろう?」
『この世界に来た時にはバハラマルラで平和な日常生活を送れという啓示をうけた気するが
それではすぐにマンネリ化……ではなくて商品の材料も尽きてしまう。
バハラ列島を舞台にした小紀行、ぐらいまで手を広げても許されるだろう。
この端末の情報によるとどうやら大トルメイダ島、キラカン国、イルマディラ国と色々あるようだな』
「――――アクア、二度目は聞き逃さん。
以前にも、"この世界の道路交通法"と口走っていたな。
お前は、異世界の法治国家に存在する何らかの組織の捜査官だったのか?
お前に、列島内での活動範囲を広げる"許し"を与えている主体、"啓示"をもたらすのは何者だ」
探索者の言葉には一切の容赦も慈悲も無い。
……昨晩、前を歩く国王他一名は夕餉を終えると同時に就寝している。
斯かる"食ったら寝る"の自然定理、あるいは本能的要請に従って行動した彼らの傍らで一晩。
篝火を護り、森林の闇と対峙し、単身で三交代の見張りを完遂した探索者の寛容性と配慮は著しく低下していた。 (・∀・)求めるのは感謝。資本はやりがい。ここに慣れればどんなジョブも楽に感じるよ
【ヴァグラントの問いを聞いて、シャトーブリアンは得意げに名言を放った】 『ああ……場合によっては、この国王を"今回の戦利品"として処分してしまっても構わないのだろう?』
「しかしこの国王はしばしば名言を打ち立てるからな……
将来的に名言集を出版するなどのビジネスチャンスがあるかもしれない」
『――――アクア、二度目は聞き逃さん。
以前にも、"この世界の道路交通法"と口走っていたな。
お前は、異世界の法治国家に存在する何らかの組織の捜査官だったのか?
お前に、列島内での活動範囲を広げる"許し"を与えている主体、"啓示"をもたらすのは何者だ』
ヴァグラントがアクアの不可解な発言を追及する。その態度に容赦はないが、当然と言えば当然。
ヴァグラントにしてみれば、アクアが実は何者かから派遣された危険な人物である可能性も捨てきれないのだ。
「この情報端末から鑑みても……異世界の法治国家に存在する何等かの組織……に所属していた可能性は高いだろうな。
啓示をもたらすのは……我をこの世界に導いた何者か、あるいはこの世界を作り出した今は亡き神か……? うっ!?」
思考にブロックがかかったように頭痛に見舞われる。
そこでまたシャトーブリアンが名言を放った。
『求めるのは感謝。資本はやりがい。ここに慣れればどんなジョブも楽に感じるよ』
「求めるのは……感謝……。ありがとう、ヴァグラント」
アクアの絵柄はまた激しく作画揺れして少女漫画風になっていた。
単に一緒に来てくれてありがとうという意味なのか、はたまた知られざる3交代制の見張りの真実に気付いたのかは、定かではない。
「ペアシートの観劇、楽しみにしてるからな。まずは入場料を稼ごう」
街に戻って、早速椰子の実の加工をはじめるアクア。日常パートの始まりである。
はてさて、店主の留守を預かるという名目で勝手に占拠した牛乳屋は果たして発展するだろうか――!? 【散発的な襲撃に見舞われている。状況が終息するのは数日間後だ】 (・∀・)ふるふる……人とモラランはフレンズだよ
【どこかから漂う焼肉の煙を嗅ぎながら】 『この情報端末から鑑みても……異世界の法治国家に存在する何等かの組織……に所属していた可能性は高いだろうな。
啓示をもたらすのは……我をこの世界に導いた何者か、あるいはこの世界を作り出した今は亡き神か……? うっ!?』
「―――ああ、コレが噂に聞く"頭痛が痛い"と言う症状か。
"組織"による妨害電波の類から影響を受けている可能性もある。
だとすれば、そのMBIとやらは非人道的、反社会的暴力団体に違いない。
無理に思い出す必要は無いが……街に戻ったら、頭に金属箔でも巻いておけ」
『求めるのは感謝。資本はやりがい。ここに慣れればどんなジョブも楽に感じるよ』
「貴様が魔物だった事は僥倖だったな、シャトーブリアン。
何者かに対し"感謝を求めて"行動する人間が俺には理解出来ない。
国王の名言集を編纂する際には、二者の位置関係を逆に改変して収録しよう。
即ち―――"他者への感謝を資本とし、自身のやりがいを求める"国王像を捏造する。
その様な者が王の器に値するかは疑問だが、愚民の共感と売り上げ部数を得る為の編集だ」
『求めるのは……感謝……。ありがとう、ヴァグラント』
「勘違いはするな、アクア。お前が危険人物だと発覚した場合には、俺の手で即座に引導を渡す」
普段の能天気さが半減しているらしい頭に、軽く手を置いて撫でる。
頭痛の解消に有効な処置か定かではないが、気休め程度にはなるだろう。
少なくとも身長差が埋まる程の致命的な作画揺れを引き起こしてはいない様だ。
『ペアシートの観劇、楽しみにしてるからな。まずは入場料を稼ごう』
「その件に関しては、条件の変更を考慮して再検討する必要がある。
何しろ、劇場施設の入場制限に抵触しかねない生魔物(ナマモノ)が増えた」
『(・∀・)ふるふる……人とモラランはフレンズだよ』
「ならば示せ、貴様は何を得意とするフレンズなのか。
バハラパークの掟は、"己の力で生きる事"だ。
無駄飯食らいを飼い置く余裕など無い」 (・∀・)オイラは跳ねるのがとっても得意だよ
【シャトーブリアンは飛び跳ねてアピールを始めた】
【客寄せ/マッサージ/打楽器演奏/動物介在療法など】
【生魔物の跳躍には無限のポテンシャルがないこともないよ、と】 『その件に関しては、条件の変更を考慮して再検討する必要がある。
何しろ、劇場施設の入場制限に抵触しかねない生魔物(ナマモノ)が増えた』
「そうか、ペットを連れての入場はご遠慮下さいというやつか……」
『ふるふる……人とモラランはフレンズだよ』
『ならば示せ、貴様は何を得意とするフレンズなのか。
バハラパークの掟は、"己の力で生きる事"だ。
無駄飯食らいを飼い置く余裕など無い』
ペットからフレンズへの昇格をかけて、シャトーブリアンが自己PRを始める。
『オイラは跳ねるのがとっても得意だよ』
シャトーブリアンが飛び跳ねる様子を見たアクアは――
「よし! 当面は牛乳屋の看板生魔物(ナマモノ)として働いてもらおう」
こうしてシャトーブリアンの客寄せ効果もあってか、売上が順調に伸びてきたある日……
怪しげな売人が店にやってきた。
石芙蓉の茶を是非仕入れてくれないかとのこと。
参照:ttp://hayabusa6.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1479560761/13
「石芙蓉……? なんだそれは。美味しいのか?」
「とりあえず試飲をどうぞ」等と言われたアクアは何も考えずに飲もうとしている。
これはまずい。 姐さんだけでなく、大兄も試飲を如何です?
(褐色の毛並みと山猫の顔を持つ小柄な男は、陶器の白杯に赤い花弁をそっと沈めた)
(鉱物とも植物ともつかない石花は、湯を注がれると杯の中で踊り、水の赤みを増してゆく)
見ての通り、石芙蓉の茶は水色が琥珀のようでありましょう。
杯底に沈む紅の花も、流麗可憐な美しさで目を愉しませます。
杯を傾ければ、硬質な花弁がチリリンと澄んだ音を奏でます。
香りは甘く、味は桃源郷の神果、喫すれば魂も歓喜で震える。
まさに六絶と謳われる銘茶の中の銘茶。
(茶商はヴァグラントに茶杯を差し出す)
私の見た処、店はかなり御盛況の様子。
ですが、商売の流行廃りとは実に激しいものでして。
五月ほど前は客を集めていた牛乳店も、今では店主が夜逃げしたとか何とか……。
まして南国にありふれ、商売敵も多いココの実では、日々の小銭を稼ぐ以上の商売は出来ますまい。
となれば、ここは取り扱う商品を増やしてみるのが一番ではないかと。 (・∀・)バハラマルラはお茶や食料に関税をかけないよ
【シャトーブリアンは、どこかで聞き覚えたらしい豆知識を呟き、税金の存在をうかがわせる】 『(・∀・)オイラは跳ねるのがとっても得意だよ』
『よし! 当面は牛乳屋の看板生魔物(ナマモノ)として働いてもらおう』
「……ソレは本気で言っているのか?
連日の猛暑が続いたのは確かだが、ここまでとはな。
お前達の愉快な思考回路は一度、ソフトドリンクで冷却するべきだ」
二人が商売を甘く見ているのは明白だった。
マーケットは常に有機的に流動する。されど其処は温情を持たない場だ。
たかがマスコット・キャラクターのパフォーマンス如きで売り上げが向上するなど有り得ない。
「賭けてもいいだろう。仮に、その安直な試みが何らかの奇跡によって業績に貢献するのであれば――
――そうだな、シャトーブリアンの名を冠した焼肉牛乳喫茶として新装開店しても構わん。
もっとも、お前達が市場の残酷さを思い知る結果になる事は想像に難くないが」
…
……
『すごーい! おいしー!』
『このお店に来ると、心がぴょんぴょんするねー』
数日後、[Roast&Milk Cafe"Chateaubriand"]の手製看板と工具一式を携えて登店した探索者は、市場の残酷さを思い知る。
本日も満席となったテラスのオープンスペースでは、焼肉を貪り喰らう来客達が感情をぴょんぴょんさせている様だ。
一方、新設された"モラランふれあいコーナー"では、焼肉以前のナマモノが物理的にぴょんぴょんしていた。
―――何故こうなったのか。
決して分の悪い賭けでは無かった筈だが。
現に恐ろしきは生魔物の跳躍であった。
フレンズのジャンプで宇宙が危うい。 『姐さんだけでなく、大兄も試飲を如何です?』
「……俺は、風流を解する人間ではない」
店舗の大幅な改装に伴って設えられた簡素な応接室で、茶杯と相対する。
ラスードディクと名乗った茶商は、石芙蓉なる茶を売り込みに来たと言う。
「この施設も、従業員も、客層も同様だ。それでも構わないならば一杯、貰おう」
静かに湯が注ぎ入れられた。口に含む前からすでに、対峙した者を高揚させる紅葉の色彩が開花していく。
暫し待ち杯を近づける。立ち昇る香気は高貴なれども、それでいてこちらは心魂を安楽の境地へと誘う。
角度を変えてゆく。連れて石芙蓉は躍り、これを喫する時に限っては茶器と楽器の概念が曖昧となる。
そして――――微風と共に外から流れ込んで来る焼肉の煙と来客の喧騒が、それら全てを台無しにした。
「悪くない。視覚、味覚、嗅覚に訴え掛ける飲食物は数多い。
だが、聴覚をも同時に愉しませる発想は、現行の嗜好品に無いモノだ。
強いて問題点を挙げるとすれば、二つだ。先ず、コレは俗人にとって刺激が強過ぎる――」
――おそらくは、依存性もだ。総じて、この茶は人の身を滅ぼす類の嗜好品だと判断した。
注ぐ陶器を選べば、この独特な"鈴の音"によって一種の催眠導入効果も得られるだろう。
「問題点の二つ目は……」
『(・∀・)バハラマルラはお茶や食料に関税をかけないよ』
「……仕入れ値と言う事になる。
当店の主力商品"青エリアス・ココ"は安さが売りでな。
そのラインナップに『石芙蓉1%使用』の"青エリアス・フーロン"が加わるのか、
あるいは純粋な"フーロン・ティー"として提供可能か否かは―――そちらの言い値次第だ、ラスードディク」 一杯の茶を淹れられる一花が、100マルラ。
仕入れた石芙蓉を幾らで売り出すのかは、そちら様次第。
最初は安く売り、需要が高まれば値を上げる、というのが商いの常道でしょうか。
(商品の値を問われ、山猫の茶商は含み笑いを返す)
しかし……ふ、ふふっ……。
この茶の刺激が俗人にとって強過ぎると?
酒や阿片、哲学に宗教、刺激の強いものなど、この世には山とありましょう。
それら心身を濁らせるものに比して、石芙蓉は心を研ぎ澄ませ、魂を無窮の園で遊ばせます。
六絶の茶に粗悪な混ぜ物をして品質を劣化させるなど、地神の恩恵と茶匠の技芸に対する冒涜というもの。
(ラスードディクは黄色い瞳をアクアに向けた)
南の島の茅屋に住み、バハラ葦の衣服を着ていても、幸せな毎日を送るものはおります。
対して、莫大な財貨を持ち、豪奢な衣を纏い、宮殿で過ごそうと、徒に不幸を見つけて苦しむものもおります。
そういったものは、生まれつき魂が世界に馴染まず、それゆえこの世の快適さも毒と感じられ、苛まれ続けるのでしょう。
私は石芙蓉こそ、そのような魂を癒す神薬の霊茶と自負しておりますが……姐さんの所感は如何で? 『悪くない。視覚、味覚、嗅覚に訴え掛ける飲食物は数多い。
だが、聴覚をも同時に愉しませる発想は、現行の嗜好品に無いモノだ。
強いて問題点を挙げるとすれば、二つだ。先ず、コレは俗人にとって刺激が強過ぎる――』
「なんだろう、心がぴょんぴょんするぞ……! 今なら世界中の人とフレンズになれる気がする……!」
商談を進めるヴァグラントとラスードディクの背景には
心をぴょんぴょんさせつつ物理的にぴょんぴょんする二匹のナマモノがいた。
この二匹はある意味俗人ではないが、それでも石芙蓉の強すぎる刺激の犠牲になったようだ。
『そういったものは、生まれつき魂が世界に馴染まず、それゆえこの世の快適さも毒と感じられ、苛まれ続けるのでしょう。
私は石芙蓉こそ、そのような魂を癒す神薬の霊茶と自負しておりますが……姐さんの所感は如何で?』
「魂が世界になじまない者、除け者……
そのような者もこの茶を飲めば皆フレンズ! つまり除け者フレンズということだな!」
そう言って何故か満足げな顔をするアクア。自分の中では上手い事言ったつもりのようだ。
ところで>4の会話から推察するに、牛乳はココの実1杯分で10マルラ前後ということが伺える。
一杯100マルラは、かなりの高級茶と言えるだろう。
「ああ、このぴょんぴょんした気持ちを全世界の人に広めたい!
よーし、たくさん仕入れてまずは特別価格で仕入れ値と同額の100マルラで売るぞ!」
アクアはいつの間にかどこからか取り出した縄跳びを回しつつ
シャトーブリアンと向かい合っての二人跳びでぴょんぴょんしながら宣言した。 (・∀・)石芙蓉は合法! アボカより安全!
【シャトーブリアンも若干ラリッた目でぴょんぴょんする】 「来る者こばまず」「独り言もOK」「戦争キライ」
というキャラクターのセリフから、なな板移民以外がルールの含意を読み取れるのだろうか 【>>66 談話分析
『作家志望の来客とは珍しいな。
現在、当店では新商品のフーロン・ティーを薦めている。
魂が世界に馴染まない者も皆、この茶を喫すれば歓喜のうちに魂を癒され……
……上級職の"除け者フレンズ"とやらにクラスチェンジが可能らしい。どうだ、試してみるか?』
――――さて、その問いに回答する為には、大規模な移住が行われた経緯に触れる必要がある。
仮に此処が創作発表板でなければ、おそらく俺は冒頭の様な発話主体のレスを作成し、個別返答としていた。
しかし移民の大多数は、名無しによる投稿を所謂"ネタ振り"に変換しながら継続的に個別返答を行う能力を持たない。
主たる傾向として、彼らの興味は専ら特定数人の書き手のみが関わる連作小説への参加に差し向けられる。
それは創作物全般を幅広く受け入れている創作発表板に於いてこそ許容されるべき性質であったが、
本来の板が根幹として持つ流儀に逆行する傾向は、あまりにも長く続き、そして慣れ過ぎた。
スレッドに訪れる名無しに対してキャラクターとして語りかける努力をせず、対話技術を研鑽する姿勢も見られない。
名無しによる投稿は、連作小説中の"地の文"に取り入れ生かそうとする書き手が少数存在していた事を除けば、
スレッド内ないし外部に設けた避難所で、直接的な所謂【中の人】発言を以って処理するか黙殺された。
上記の如きスレッドの使用形態は"なりきり形式"の体を成しておらず、当該板の趣旨に反したモノらしい。
固定ハンドル占有または板違いであるとの運営判断が下され、我々の様な無法者は追放された。
創作発表板への移住後にも、新規スレッドを作成する際の注意事項を無視する者が居る。
"バハラマルラTRPG"の作成主も、その例外には成り得ず、早々に姿を消している。
不法行為が看過され得る環境に慣れた者の倫理観は、外部でも変わらない。
『キャラクターのセリフから、なな板移民以外がルールの含意を読み取れるのだろうか』
斯かる背景事情を踏まえた上で、その問いに改めて一個人として回答しよう。
無法者が提示したルールの含意を汲み上げ、従う必要性は薄い。
発話内容から意図を読み取る事も、おそらく難しい。
だが、この創造主が消えた楽園で……俺独りが取り残された後に現れた者も居る。
彼らは"その場の空気ないし行間を読み取る"能力を備えた者達だった。
その様な存在に恵まれた幸運が、今の俺を立たせている。
……もっとも、"倫理を欠いた無法者"としての俺を、ではあるが】 『なんだろう、心がぴょんぴょんするぞ……! 今なら世界中の人とフレンズになれる気がする……!』
『(・∀・)石芙蓉は合法! アボカより安全!』
「ああ―――お前達は見事に茶が極ま(キマ)っている様だな。
無論、合法である事が前提だ。だが、安全評価に関しては伏せて売り抜く。
国王に限ってはアボカの実とやらの方がより危険らしいが、判断材料として役に立たない」
『しかし……ふ、ふふっ……。
この茶の刺激が俗人にとって強過ぎると?』
「そうだ。さらに言えば……一杯100マルラは俗人にとって高額過ぎる」
『酒や阿片、哲学に宗教、刺激の強いものなど、この世には山とありましょう。
それら心身を濁らせるものに比して、石芙蓉は心を研ぎ澄ませ、魂を無窮の園で遊ばせます。
六絶の茶に粗悪な混ぜ物をして品質を劣化させるなど、地神の恩恵と茶匠の技芸に対する冒涜というもの』
「その中で対価として金銭を要求しないのは哲学だけだ。だが、俺は哲学者ではない。
冒涜という概念は、ある種の"信仰"の下でしか意味を成さない。無論、俺に信仰心など無い。
不純物と混合し濁らせる事が品質の劣化であるなら、品質の真髄を研ぎ澄ませる販売戦略ならばどうだ」 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています