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「あーらら、まーた勝くんの勝ちか。
 これで、またしても『ゲェム』の連敗記録は続く――と。

「あんなフツーのガキに負けるなんて考えられない?
 やはり自動人形は旧式に過ぎない、Oの時代が来ている?
 ふ、ふふふふ……言うなァ。実際、君たちだって負け続きのクセに。

「それに、才賀勝がフツーの子どもだって?
 フツー、フツー、フツー、フツー……ねえ。
 だいたいさァ、そもそもの話として、その『フツー』ってのはなんなのさ。
 音信フツーってことかい?
 一方的にだけど僕は彼と連絡を取れるし、彼の姿をこうしてリアルタイムで眺められるじゃないか。
 それとも、なんだい? 文字通りに『通らない』ってことかい?

「…………この言葉遊びこそ、まさしく通らないな。

「ともかく――彼を普通のガキだと思っているのなら、それこそ君らに勝ち目はないよーん。

「勝くんは、僕の知識を持ってるんだから。
 自動人形やOの構造を知っているからこそ、分解するポイントも知っている。
 それに、頭だってメチャクチャいいんだぜえ。
 僕には及ばないと言っても、勝くんの持つ知識にはないはずの仕掛けだって弱点をズバッと見抜いちゃう。
 正二から受け継いだ『見浦流』も、自動人形殺しの日本刀『雷迅』と組み合わせることで真価を発揮している。
 アレに斬られちゃあ自動人形はおしまいだし、Oだって油断していられない。
 正二の血液――つまり生命の水を飲んでいるから、完全なしろがねほどじゃなくても身体能力や治癒力だって向上してるしね。
 さらに、彼が使っている三種のマリオネットは、この僕が僕自身のために残した代物だ。
 どれもかなりクセがあるけれど、その分だけ使いこなしたときのポテンシャルは図抜けている――そして彼は自在に操れるようになってきている。


「つまり――才賀勝は『普通の子ども』なんかじゃない」


「分かっている? はッ! ハハハハハッ!

「あー……笑わせるなよ。そういう不意打ちはズルだぜ。
 君たちは、断じて分かっていない。なーんにも理解していない。
 僕の言わんとしていることを、自動人形もOも揃ってこれっぽっちも読み取れていない。


「勝くんは『普通の子ども』ではないが、しかし――自分を『普通の子ども』と思っているのさ。


「よくよく考えてみろよ。
 僕と正二の記憶に、けた外れの頭脳、人形繰りに剣術、さらには六百億もの莫大な遺産。
 それだけたくさんのものを持っているのに、普通――それこそ普通は、だ。
 普通、自分をただのガキだと思えるか? 思えるはずがないんだよ。それこそ『普通』なら。