事務所に顔を出したら、お手伝いの人が受話器を手にして困っていた。
「おはよう。いったいどうしたの?」
「おはようございます和久井さん。どうも間違い電話らしいんですけど海外の方らしくて話が通じないんです」
「英語なら貴方も出来ると思ったけど」
「私だって簡単な英語くらいならできますけど、どうも英語じゃないみたいなんです。というかヨーロッパ圏じゃないかも」
それは確かに難題かもしれない。ジェスチャで代わるように指示してとりえず受話器に向かって呼びかけてみる。
「hello?」
そうして聞こえてきた相手の言葉に耳を傾ける。幸運なことにその言語には聞き覚えがあった。確かにこの言語は普通の人にはわからないだろう。
記憶の中から言葉を掘り返してなんとか間違い電話である旨を伝えると
ようやく相手は納得したのか謝罪の言葉を言いながら電話を切ってくれた。
「凄いですね和久井さん」
「秘書なんてやってるといろんな言葉も覚えなきゃいけなくてね」
「ところで今のってどこの言葉なんですか?」
「ナメック語よ。久しぶりだから思い出すのに時間がかかったわ」