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オリジナルキャラ・バトルロワイアル2nd Part2
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0300許さざるもの ◆Z2CJJz2v/o
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2012/12/31(月) 19:14:09.39ID:Vgkx3m1O
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「12人、ねぇ」

放送を聞いた御木魚師は表には出さないものの、内心で焦りを感じていた。

既に12人の死者が出ているということは、当然殺した人間もそれだけいるという事である。
三分の一が死んで生き残りは早くも三分の二。
一人一殺してその全員が生き残っているとしたら、最悪の場合この島にいる二人に一人は殺人鬼になる計算だ。

そして御木は最悪を想定する。
それが生き残るコツだ。

御木は小悪党だが殺人という一線だけは超えちゃいない。
彼に騙された挙句、破滅して自殺した人間はいるのだろうが、それはノーカウントだ。

日本は治法国家である。ヤクザといえどそう簡単に人を殺せるわけではない。
そういうことが平然と出来るネジのイカれた野郎はすぐに御用になるのが常だ。

だがこの場は治外法権だ。
開始直後にホイホイと人を殺す奴が3人もいることといい、もしかしたら猪目だけじゃなく”そういう人間”を集めているのかもしれない。
もちろん言葉さえ通じれば猪目だろうと口八丁で乗り切る自信はあるが。そもそも言葉すら通じない相手ではそれも不可能だ。

この場は思った以上にヤバイ。
これまで危険人物に出会わなかったのが奇跡の様なものだ。
真奈美で楽しむ予定だったが、身の安全が第一である。彼は何よりも我が身が可愛い。
開始直後から行動を共にしている連中が殺人を犯している可能性はないだろうが、これから合う連中には最大限警戒が必要になるだろう。
その辺の人間性の見極めは真奈美やエジソンじゃ無理だ。
その見極めは御木が行うべきだろう、彼女らのためではなく、あくまでも己ために。

だが、御木は失念していた。
あまりにも近すぎて見逃していた。
と言うより、動ける存在として認識していなかったため見落としていた。
既に一人、異物が侵入していることを。
素性のしれない人間が、本当にすぐ近くにいることを。

ゴキン、と鈍い音が響いた。

「…………うわぁあぁあああぁぁあぁぁ!!!!!」

少し遅れて聞こえる、耳を劈くような悲鳴。
何事かと真奈美が声の方向を振り返れば、目に入ったのは悲鳴を上げながら脱兎のように駆け出すエジソンの後ろ姿。
そして、首が180度捩じれた、御木魚師の姿だった。
0301許さざるもの ◆Z2CJJz2v/o
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2012/12/31(月) 19:15:26.95ID:Vgkx3m1O
「13人目ね、これで」

薄い笑みを張り付かせたような声。
御木の体がゆっくりと倒れ、捩じれた頭から防弾ヘルメットがカランと落ちた。
入れ替わるのように、御木の背からスカートを翻して少女が降り立つ。

「貴様は…………」

真奈美目が驚愕に見開かれる。
あれほど酷かった顔の傷が、この短時間で完全ではないもののある程度見れるレベルまで回復している。

そして幾分か傷の引いたその顔には覚えがあった。
直接的な知り合いではなく、調査資料の中でだ。
それは前代未聞の大量殺傷事件を巻き起こした張本人。

「――――藍葉水萌!」
「あら、私って有名人」

名前を言い当てられた水萌は動じるでもなく、嗤いながら御木の体から排出されたスキルカードを回収する。

情報を聞き逃さぬようじっとしていたが、意識自体は放送のタイミングで覚醒していた。
あの老人、板垣退助からうけたダメージで頸椎を損傷してなかったのは幸いだった。
裂傷はふさがった。まだ見た目上は傷跡は残っているだろうが傷口がふさがっているなら十分だ。
赤黒い風船のように膨らんでいた顔の腫れは、顔の造詣が見て取れるレベルにまで引いている。
完全に砕かれ外れた顎骨も繋がっている。言葉を話すだけなら支障はないだろう。
鼻骨の粉砕骨折はまだチクチクと痛むが、呼吸はできる。戦闘には影響はなさそうだ。

いずれをとってもこの短時間で成せる次元の回復ではない。

「スキルってのも意外と使えるわね」

最強を自負する勇者のまさかの敗北。
油断していたというのも確かにある。
だが、それを差し引いてもあの老人は強い。身を持ってそれを実感した。

当然のごとく借りは返す。そうでなくとも殺すが。
そのためにはレベルアップが必要だ。
だが、彼女のレベルはカンストしている。これ以上の成長は見込めない
ならば、装備を整えるしかない。この場合はスキルも含む。

「という訳で頂戴、あなたのスキル」

ペロリと赤い舌をだしながら踏み込んできた水萌に対して、真奈美はH&KMP5を構える。
0302許さざるもの ◆Z2CJJz2v/o
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2012/12/31(月) 19:16:59.01ID:Vgkx3m1O
「動くな!」

相手は大量殺人犯である。
容赦する道理はないし、容赦すればこちらがやられる。
何より殺人者は許せない。
相手の動きによっては、すぐさま引き金を引く覚悟を決める。

「うふふふ。おバカさん。そんなものが当たると思って?」

だが、銃口を突きつけられながらも水萌は余裕を崩さない。
不敵な笑みのまま水萌はさらに一歩、真奈美へと踏み出した。

「ッ!!」

その動きに、真奈美は反射的に引き金を引いた。
フルオートマチックで降り注ぐ9oパラベラム。逃げ場などない弾丸の雨。
だが、命を奪う事への躊躇いからか、足元を狙っていたのが災いした。

水萌は上に向かって跳んだ。
完成された勇者である彼女は、単純に身体能力が常人とは桁違いである。
見惚れるほど美しい伸身宙返りで弾幕の遥か上に弧を描くと、そのまま身を捻り真奈美の背後に着地した。
真奈美もその動きに対応すべく、振り返りながら残弾を撃ち尽くしたサブマシンガンの装填を行おうとするが。
それよりも速く手首を強かに弾かれ予備カートリッジを地面に落とした。
そのまま後ろ手に関節を固められ、真奈美は動きを封じられる。
少しでも腕をひねれば関節が破壊されるという体制のまま、水萌は真奈美の耳元に語りかける。

「スキルは使わないの?
 戦闘用のスキルじゃないのかしら?
 それともまだスキルを取り込んでない?
 まあ、どっちでもいいわ。殺してしまえばわかることだし」

水萌の腕に力が籠められ、ミシリと真奈美の骨が軋みを上げた。
関節が破壊されるその直前。
唐突に水萌は真奈美の拘束を放棄して、大きく後ろに飛びのいた。
同時に響く短い銃声。それが水萌を狙った第三者の存在を知らせいた。

「いい所だったのに、邪魔するのはだぁれ?」

水萌が銃声の先に視線を向ける。真奈美も水萌を警戒しながらも同じく視線を送った。
その視線の先に表れたのは小型拳銃を片手に構えた、青と白のドレスに身を包んだ少女だった。

「――――チッ」

現れた少女は舌を打つと、弾切れしたのか手にしていた小型拳銃を乱暴に放り投げた。

その少女の目を見た、真奈美の背に戦慄が走る。
フリルの付いた可愛らしい衣装に見合わない、その瞳は深淵の闇のよう。
深い絶望と殺意が入り混じった色だ。
0303許さざるもの ◆Z2CJJz2v/o
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2012/12/31(月) 19:18:34.02ID:Vgkx3m1O
「―――――魔法使い」

そう口を開いたのは水萌だった。
そして相手を見下すように水萌はくすくすと嗤う。

「魔法使い如きが、勇者に勝てるとおもってるのぉ?」

挑発的な水萌の言葉に対する少女の返答は端的だった。

「――煩い。人殺しは、死ね」

言って。双剣を生み出し、水萌に向かって対峙する。
だがそれを静止する声が響く。

「待て! 待つんだ。
 助けてもらったことには感謝する。だが危険だ。
 相手は凶悪犯だ。この場は警察官である私が例えこの身がどうなろうとも抑えてみせる。
 だから、君は下がってるんだ。
 それに、どんな理由があろうとも君が彼女を殺そうというのなら私は、」
「―――――煩い」

静止を求める声は、怨嗟のような声に遮られる。

「煩い。煩い。煩い煩い煩い! 煩い!
 あなたは逃げた仲間でも追ってれば?
 邪魔するなら――――殺すわよ」

その気迫に思わず真奈美は押し黙る。

彼女にとっては、もはや何もかもが煩わしい。
目の前で殺人を犯した水萌は決して許せないが。
先ほどの銃撃が制圧ではなく殺すつもりで撃ったものだったなら、真奈美も殺している。

安田智美は――魔法少女は正義の味方ではない。
自らの目的を達するために力と契約した己の味方だ。

殺人者は許さない。

それは奇しくも真奈美と同じ信念ではあるのだが、その本質はまるで違う。
真奈美のそれは殺人という行為を恨み、行為者を逮捕するという形での許さないだが。

智美のそれは、目的のためなら、殺人者を殺して自らが殺人者になることは厭わないし。
そのためならば、無関係の人間を殺しても構わないと思う程度には矛盾している。

先ほど真奈美を救った銃撃もそうだ。
真奈美に当たっても構わないつもりで撃ったし。
そもそも彼女を救うつもりで撃ったのではない。

「ねぇ、その剣ってスキルで出したの? それともあなたの元々の力なのかしら?」

智美は答えない。
ただ殺意をギラつかせ双剣を構える。
そのつれない態度に水萌は肩をすくめる。

「そう。答えないならそれでもいいわ。私の経験値(かて)になりなさい、魔法使い」
「煩い。殺してやる。殺人鬼」
0304許さざるもの ◆Z2CJJz2v/o
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2012/12/31(月) 19:19:52.79ID:Vgkx3m1O
【御木魚師 死亡】

【一日目・朝 E-2】
【安田智美】
【状態】健康
【装備】双剣
【スキル】『ブレインイーター』『ある魔法少女の魔法能力(めぐる)』
【所持品】基本支給品、空のカード(残り9枚)、不明支給品1〜3(さくら)
【思考】
基本:人殺しは許さない
1.目の前の女を排除する
※双剣はめぐるの魔法少女としての能力で生成された物です

【藍葉水萌】
【状態】顔面にダメージ(大)再生中
【装備】なし
【スキル】『自己再生』
【所持品】基本支給品、手榴弾×4 特殊手錠『パブリックエネミー』
【思考】
基本:板垣に報復。そのために装備とスキルを集める
1.経験値稼ぎ
※特殊手錠
一見ワイヤーのついたごく普通の手錠。何か特殊な仕掛けがあるらしい。

【真琴真奈美】
【状態】健康
【装備】H&KMP5(0/30)
【スキル】不明スキルカード
【所持品】基本支給品
【思考】
1.エジソンを追う or 目の前の争いを止める
2.オーヴァーが居る…?

【一日目・朝 D-3】
【トーマス・A・エジソン】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】不明スキルカード
【所持品】基本支給品、不明支給品1〜2
【思考】
1.この場から逃げる


投下終了

>>296
小学生とは思えない露出っぷり
まったくけしからんですな、片嶌は死ぬといいよ

それでは皆様良いお年を
0305創る名無しに見る名無し
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2012/12/31(月) 22:30:26.29ID:sWz47tkq
投下乙です!


ゴキィィィィィ!!!!!ああ…合掌…


そして智美…あー…まあそうなるわなあ。
さくら死んでボロボロなところにめぐるだから…ここからどうなっていくか??

んでみなもちゃんはやっとスコア1か。意外と遅いな。
0308 ◆IjfUSUNsIR9f
垢版 |
2013/01/03(木) 22:44:25.33ID:cgbU0Wf+
先ほどの腑抜けた叫び声の後、追われる側であった逆井運河と追う側であった田崎紀夫は、一旦その関係を忘れるかのように沈黙を作り上げた。

二人の眼前に広がる筋骨隆々の、毛深い男の体。
だがしかし、その屈強な肉体は赤く染まっていた。
だがそれが彼の筋肉に艶々とした輝きを与えていて、逆に気色が悪い。
次にツン、とした鉄の匂い。
…いや、鉄ではない。鉄というのにはあまりにも刺激臭だ。

そして何よりも。
目の前の肉体には、あるべきはずの首が無かったのだから、彼は殺されたのだろう、それは一目で分かる。

―――死体だ―――


その言葉が二人の脳内を駆け巡った。
紀夫はビビった。いきなり本日二度目の死体が自分の下敷きになっていたのだから。
運河もビビった。怪我人は今までの不幸故に見たものの死体はあまり見慣れなかった(寧ろ初見)のだから。
故にその妙な恐怖が、彼らに沈黙を与えたのだ。
彼らに与えられた沈黙は恐怖とともに、冷静を与えた。
追う追われるの関係を忘れさせる程の、また不思議な冷静さ。
いやそれは唖然に近いのか。

「…マジっすか…こんなん…マジっすか…」
0309 ◆IjfUSUNsIR9f
垢版 |
2013/01/03(木) 22:46:19.59ID:cgbU0Wf+
そんななんとも言えぬ沈黙を破る第一声は田崎紀夫からだった。
死体から起き上がるように後退りしながらの言葉だった。

紀夫は、既に死体を見ている。
怖い物見たさのように、おそるおそる。
それは世間一般からしても残虐極まりない死体。
美しかっただろう少女を、青ざめさせ、穢れさせるような死体。

だが、違う。今眼前の死体は違うのだ。
『無惨に殺す』事だけを考えた死体。
首は切り落とされ、うつ伏せの死体の心臓と思われる部分には穴が貫いている。

近年の外国のB級スナッフビデオ(殺人を装った映画。ここではスプラッタ系を除く)でも、ここまで単純かつ残酷な殺し方はしないだろう。

それに、加えるとしたらこの死体の筋肉である。

紀夫はまずこの死体が生前手練れであると把握した。
柔道で三段(三段というと各地域の審査会で昇段試験を受けてよっぽどが無い限りは取れるが)の紀夫。
そのタチ故に一柔道選手としてある程度の大会に出場してきた。
そんな中ひょんとした拍子に全国大会3位になったりはした。
組み合わせの運の強さもあるものの、彼の実力は3段とはいえ筋金入りだ。
故に、これでもかと鍛えられた肉体は見てきた。

相撲取りの一見脂肪に見える紀夫の肉体。
知る方は多いだろうが、あれはほとんどが筋肉である。紀夫の体は寧ろ相撲取りに近い。

いや、相撲取りと比べると明らかに脂肪の比率は多いが。
…ともかく彼の体は受け身を取れるように、しっかりとした体幹を持つ為に、技の衝撃に耐えれるように仕上がっている。

だけれど、眼前の男は違う。
0310 ◆IjfUSUNsIR9f
垢版 |
2013/01/03(木) 22:47:31.05ID:cgbU0Wf+
紀夫のように無駄な脂肪は無く、全身がまるでお手本のように出来上がっている。

しかし違うのだ。彼の体はボディービルダーのように見せるようではない、まさに獣のような肉体。
ここまでするのに、かなりの労力が必須だろう。それは絶え間ない努力で手に入れた、即ち『闘う為の肉体』である。
その『闘う為の肉体』が。
こうして眼前で惨くうつ伏せになっているのを見ると紀夫は危惧する。


―――ここまでの人間を、殺せる程の人間がいる―――?


一度は冷静になったものの、改めて恐怖を覚える。
何故、何故自分が呼ばれるのかと。

さて。
そんな紀夫を差し置いて逆井運河は考えていた。
いち早くこの状況から逃げる事を。
だが、どうする?
目の前の太った男は怯えているようだ。
ここで素早く逃げ出せば目の前の男は理解出来ずに着いていけず、逃走可能かもしれない。

だがもし、男が察知したら?

…次は逃げ切れまい。先ほどの逃走で、この太った男の体力は外見に似つかず自分よりも高い。
また長期戦となれば間違いなくまた捕まってしまうだろう。
ああ、それは面倒くさい。
方針は決まった。すぐにこの男が着いてこないように立ち去り、素早く逃げる。

運河は徐々に、徐々に尻餅をついた状態から太った男から離れていく。気づかれないうちに、慎重に、慎重に。

(今だっ)

そう思い飛び上がるように立ち上がった瞬間。

『―――やぁやぁ、久しぶりだね。僕だよ』

脳内に、軽快な声が響き始めた。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
0311創る名無しに見る名無し
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2013/01/03(木) 22:50:15.26ID:cgbU0Wf+
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「…案外早いモノね」

いきなり私の脳内に話しかけてきた声。正直、よくぞまあヌケヌケと喋れるもんだ。
さっき武器を見た時は『気があう』とふざけつつ言ったが前言撤回。こいつはとんだ精神の持ち主だ。実験対象に仲良く話しかけてくるなんて。
私なら出来るか?いや出来ない。はい反語。
まあただこんな意味不明な、下手すれば100%キチ○イに思われる人殺し大会を開催する時点でこいつには躊躇は無いんだろう。
妙に腹が立つが、ここで立てて何になる。
そうある程度の区切りをつけて、放送に耳を傾けた。

んで。始まる声。


禁止エリアだとかは大切だが今の状況下でディパックから用紙か何かを取り出してメモするのは容易ではない。
仕方なしに、頭の片隅にでも置いておくのだけれど。

次に呼ばれた、死亡者一覧。
いや、フツー死んだ人呼びます?って率直に感じたけど、前述の通り相手には常識が無さそうなアンポンタンなのだから、諦めながらまたこれも耳を傾けた。

…ただ生憎私の知り合いは劉以外に呼ばれる事は無かったから、一切私には関係はないし、気が狂うなんて事は無かったのだけれど…てか全員で12人?

いやいやいや。

皆ハリキリすぎでしょ?『よーし、お父さんRPG-7撃っちゃうぞー』とか言ってんの?バカなの?
治外法権ってレベルじゃないでしょこれ。
まー、案外乗り気なのはやっぱりいるもんだなあ、と再確認したところで。
0312創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/01/03(木) 22:51:13.98ID:cgbU0Wf+
(オーヴァーを越える殺人狂でもいんのここには?)

溜め息。今ディパックから確定名簿を取り出して読もうとしたが、この状況下だ。まあいい。

「…もうこれ詰みでしょ」
私は足下を見る。うん。凍ってる。
さっきの『状況』はこの事。私、現在冷凍中。
頑張って砕こうとはしてみたけれど、これがまた妙に固い固い。【エターナルフォースブリザード】だなんて仰々しい名前らしく、フツーの氷とは作りが違うのか?気になるけど、今の私にはどうしようもない。
それに、このままだと非常にマズイ事になる。
凍傷だ。
今はまだ、多分大丈夫だろうが私がこのままだと間違いなく足に凍傷が起きる。
今はまだ軽いからいいかもしれないけどこれが続いたら?使い物にはならないだろう。だから、なんとしてでも、早く氷をなんとかしないと。

(…まあ…私にゃどうしようも出来ないんだけれどねー)

あー、クソッタレ。やっぱりこうなったら誰かに助けを求めるしかないのか。
出来れば、出来れば運河以外。あいつが来ると私は死ぬ。間違いなく死ぬ。

「周りに誰か居ないかなーっと」

足を固定されてるから視野は狭いが、私は辺りをなるべく見ようと首だけで努力。
結構位置が高いから、360度とはいえないがそのぶん奥行きでカバー。
目を凝らす。さながら獲物を狙う、鳥のよう。
いや、違う。高いとこから降りれなくなった助けを求める子猫のよう。
暗殺者の名折れ、だとか言われるかもしれないが別に構うもんか。

…………あ、居た。二人。ピザと痩せてる?うーん。顔はこっからじゃ分からない。
気づくかなあ。まあ気づくだろうなあ。こんな電波塔、現代アートでもないもんなあ。
これがゲームに乗ってたら私の人生はDEAD END。さて、どうなるか。
…気づいてくれますように。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
0313 ◆IjfUSUNsIR9f
垢版 |
2013/01/03(木) 22:53:12.09ID:cgbU0Wf+
『それでは、さようなら』

…いやいやいや、これどういう事なんすか?
ファンちゃんが死んだ?あのファンちゃんが?
数時間前は、あんなに楽しそうに話していた女の子が?
それにファンちゃん含めて12人…いやいや。あり得ねーっすよこんなん。死にすぎでしょ。ヤベーッスよ。
えっ?まさか俺こん中で生き残らせる気っすか?
ムリムリムリムリ。逆に俺みたいな奴がよく生きれたぞって。
…うわ。こ、怖い。
な、なんすかこの怖さ。今日で二人死体見たけど…改めて確認っすよ。
いつ死ぬかが分からないって。それが誰であろうと不思議じゃないって。
…でも。怖いのを押さえて。
ファンちゃんが死ぬ前にした約束、果たさなくちゃ。
…さっき追ってた男は!?
…ん?妙に距離がある?まさか、逃げようと?
逃がす訳にはもういかないっすけど…何か!何か無いか…
あ。ディパック。
そういえば、なにか支給されてるかなんとか、そんな話…

(スキルカード…)

さっき、ファンちゃんが言っていた。
これには不思議な力があるって。ファンちゃん、言ってくれなかったんすけど。
…そうと決まれば。こいつを信じるしかない。
目の前の男は加速寸前。こいつとおいかけっこする訳には。
ディパックを漁る。地図、パン、弓矢…
色々あるのだけれど、俺に必要なのは、カードっす。
…あった!テレフォンカードくらいの大きさ。
これさえあれば、あいつを―――でもどうすれば?
…とりあえず口に出してみるっす。

「え、こ、骨そ…そう?骨葬の儀式!」
0314 ◆IjfUSUNsIR9f
垢版 |
2013/01/03(木) 22:56:21.80ID:cgbU0Wf+
そう言った瞬間、地面からボコっと音がしたんす。
それは、水面から顔を出すように、一、二、三、四、五。
でも、でもそれは皆白くて、ヒビが入ってて。
さながら、骸骨…。
すると骸骨は、突然カタカタとその顎を動かし始めた。

「え何wwwやっと俺らの番www遅くねwwwもう一回放送なったよwww?」
「まあ大丈夫だろwww私らつえーしwww」
「ですよねーwww」
「さーて、ぼくらのマスターは……ピザwwwオワタwww永遠ちゃんみたいな美少女がええのにwww」
「おまwwwその名前禁止wwwwwwやべえwww笑えるwww」

…えっ?なんすかこれ。
妙に腹立つんすけど。この骸骨どもがスキル?
と、すると頭の中に急速に入ってくる情報。

(なんでも言うことを聞いて戦ってくれる、かあ)

と、なると。この骸骨は俺の手足って事すか。走るの苦手な俺からしたら、ありがたいっすね…。
まあ、信頼は薄いけど任せてみる価値はあるのかな?
0315代理
垢版 |
2013/01/03(木) 23:14:31.68ID:lSvJNTcL
「あの痩せた男を追ってほしいんすけど…」
『えっwwwやだwww』
『でもやだって言ったら俺たちあの人から消されるけど』
『ネタにマジレスwww百に承知なのにwww』
『骨だけに骨が折れるぜってか?やかましいわwwwwww』
『お前ら黙れwww言われた通りに従うぞwww…おいピザ!』
「お、俺っすか…?」
『止めるだけでいいんだよな?』
「し、進路を塞いでくれれば…」
『うはwwwwww楽勝www任せとけwwwwww』

そう笑いながら五体の骸骨は男に向かっていくっす。
男は既に走ろうとしていて。俺ならまたさっきみたいになるんだろうけど、骸骨たちは尋常じゃない速度で男の進行方向に走り込み、そして―――
『はい通せんぼwwwwww』

五体はあっという間に男を取り囲むようにして進路を防いでしまったんす。
うわ、骨たちすごい。

『これでいいwwwwww?』
「あ、ありがとうっす…」
『俺ら次の命令来るまで全裸待機w』
『元から全裸じゃねーかwwwwww』
『うwwwるwwwせwwwえwww』

…ともかく、これで逃げれなくなったのは確かっす。
0316代理
垢版 |
2013/01/03(木) 23:15:17.97ID:lSvJNTcL
こうなったら、逃がす訳にはいかない。

「さ…さっきの死体はやっぱあんたがやったんすか!?」

男が骸骨に狼狽えながら振り向いた。
完全に慌ててるっすね。しめた。

「お、俺細かい事分かんないっすけど…やっぱ、やっぱやったんならすぐにやめた方がいいっすよ!」
「……おい」
「もし、もしやめないなら俺が…」
「おい…俺はやってない」
「嘘だっ!」

…嘘だ。
必死すぎるっすよ、あきらかにそんなん。
目が泳いでる。
俺、わかるっすよ、嘘だって。こいつが黒だって。
猪目さんだって今危ないかもしれない。
ファンちゃんみたいな人は、もう出したくないっす。約束したから。始めてにひとしい、女の子との約束だから。

「…正直に言うっすよ…やったんだって…」
「あのなあ、落ち着いてくれないか。頼むから」
「やったに違いないっすよ!!!」

そうっすよ。
今、目の前の男が殺し合いに乗ってるんだろう。
こんなに短時間で人が死んでる状況で、眼前に死体があった人物が人殺しじゃない?
だったら?どうすればいいんすかね。
……ああ。分かった!
俺がここで、一先ずこいつ倒せばいいんすよね。

「…ファンちゃんが…ファンちゃんが死んだのだって…あの女の子が死んだんだって…あの男の人が死んだのだって…」

皆、皆。人殺しが悪いんだ。
ファンちゃんも、人殺しに殺された。
こいつだって、きっと。

「俺、柔道三段なんスよ。まあたかが三段いうけど、柔道って人を気絶くらいは出来るんスよね」

体を足を大股に。
腰をしっかりと据えて。
無いけど、黒帯を締めるモーション。

「田崎紀夫三段、新雪館所属。行くっす」

柔道に誇りは無いけれど。
俺に出来る事を、やらなくちゃいけないんすよね。
約束を果たす為にも。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
0317代理
垢版 |
2013/01/03(木) 23:16:26.62ID:lSvJNTcL
(おいおい、嘘だろ…)

面倒くさい事になった…。
目の前の太った男の雰囲気が変わった。
さっきまでの陽気なのは一変。今は目が鋭い。目つきだけで人を殺せるような。
そして、この体型。
腰を落とし、ジリジリと寄ってきている。間接技か?まあ、いずれにせよ厄介だ。
…だから逃げたいのに。俺の後ろには骸骨達がニヤニヤ(骸骨に表情あるのがおかしいけど)待ち構えている。
さっきの速度を見るに、もう逃げれないだろう。

「最悪だ…」

俺は何処まで運がないんだ。
改めて実感。誤解から、こんな目にあうなんて。

「もうやだ」

俺はそう呟いた。
目の前にはデブ。後ろには骸骨。
さあ、どうすりゃいいんだこんなの。
0318代理
垢版 |
2013/01/03(木) 23:17:35.49ID:lSvJNTcL
【一日目・早朝/C-5 劉厳の死体の近く】

【逆井運河】
【状態】健康、疲労
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、スキルカード『二分の一』、不明支給品1〜2
【思考】
1.死体だし、追っかけられるし、また死体だし、骸骨だしもう死にたい…。

【田崎紀夫】
【状態】健康、疲労
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、スキルカード『骨葬の儀式』、弓矢(?/?)
【思考】
1.ファンちゃんの為に頑張ってみる


【一日目・早朝/C-5電波塔のてっぺん】
【イリアム・ツェーン】
【状態】健康、足首から先が凍り付いて電波塔とドッキング、動けない
【装備】M36レディ・スミス
【スキル】エターナルフォースブリザード
【所持品】基本支給品×2、不明支給品0〜1、首輪×1
【思考】
1.やってましましたなぁ。ほぼ詰んだわー。助けてー。
2.参加させられてるであろう逆井運河を探す
3.首輪を解析できる技術者を探す
4.正午に教会でフィクションたちと落ち合う
5.あの二人は気づくかな?
※参加者候補の名前は記憶しています
※電波塔が凍り付いています
0319>>312修正
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2013/01/03(木) 23:19:23.30ID:lSvJNTcL
(オーヴァーを越える殺人狂でもいんのここには?)

溜め息。今ディパックから確定名簿を取り出して読もうとしたが、この状況下だ。まあいい。

「…もうこれ詰みでしょ」
私は足下を見る。うん。凍ってる。
さっきの『状況』はこの事。私、現在冷凍中。
頑張って砕こうとはしてみたけれど、これがまた妙に固い固い。【エターナルフォースブリザード】だなんて仰々しい名前らしく、フツーの氷とは作りが違うのか?気になるけど、今の私にはどうしようもない。
それに、このままだと非常にマズイ事になる。
凍傷だ。
今はまだ、多分大丈夫だろうが私がこのままだと間違いなく足に凍傷が起きる。
今はまだ軽いからいいかもしれないけどこれが続いたら?使い物にはならないだろう。だから、なんとしてでも、早く氷をなんとかしないと。

(…まあ…私にゃどうしようも出来ないんだけれどねー)

あー、クソッタレ。やっぱりこうなったら誰かに助けを求めるしかないのか。
今だけ。
今だけでいいから、出来れば、出来れば運河以外。あいつが来ると私は死ぬ。間違いなく死ぬ。

「周りに誰か居ないかなーっと」

足を固定されてるから視野は狭いが、私は辺りをなるべく見ようと首だけで努力。
結構位置が高いから、360度とはいえないがそのぶん奥行きでカバー。
目を凝らす。さながら獲物を狙う、鳥のよう。
いや、違う。高いとこから降りれなくなった助けを求める子猫のよう。
暗殺者の名折れ、だとか言われるかもしれないが別に構うもんか。

…………あ、居た。二人。ピザと痩せてる?うーん。顔はこっからじゃ分からない。
気づくかなあ。まあ気づくだろうなあ。こんな電波塔、現代アートでもないもんなあ。
これがゲームに乗ってたら私の人生はDEAD END。さて、どうなるか。
…気づいてくれますように。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
0320創る名無しに見る名無し
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2013/01/04(金) 01:46:46.80ID:N4R3cNjJ
投下乙です

田崎くんが思った以上に動けるデブだった
そして骨どものノリが軽ぃよwww

イリアムはマジどうすんだろ
0321創る名無しに見る名無し
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2013/01/04(金) 02:27:42.33ID:0OuWI23S
投下乙
そういえば紀夫は柔道やってたんだ、すっかり忘れてたw
運河はさっさと諦めて楽になるべしそうするべし

あと、イリアムは暗殺者じゃなくて元エージェントですよ
0322 ◆IjfUSUNsIR9f
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2013/01/04(金) 15:57:40.25ID:WyLxdtK5
(オーヴァーを越える殺人狂でもいんのここには?)

溜め息。今ディパックから確定名簿を取り出して読もうとしたが、この状況下だ。まあいい。

「…もうこれ詰みでしょ」
私は足下を見る。うん。凍ってる。
さっきの『状況』はこの事。私、現在冷凍中。
頑張って砕こうとはしてみたけれど、これがまた妙に固い固い。【エターナルフォースブリザード】だなんて仰々しい名前らしく、フツーの氷とは作りが違うのか?気になるけど、今の私にはどうしようもない。
それに、このままだと非常にマズイ事になる。
凍傷だ。
今はまだ、多分大丈夫だろうが私がこのままだと間違いなく足に凍傷が起きる。
今はまだ軽いからいいかもしれないけどこれが続いたら?使い物にはならないだろう。だから、なんとしてでも、早く氷をなんとかしないと。

(…まあ…私にゃどうしようも出来ないんだけれどねー)

あー、クソッタレ。やっぱりこうなったら誰かに助けを求めるしかないのか。
出来れば、出来れば運河以外。あいつが来ると私は死ぬ。間違いなく死ぬ。

「周りに誰か居ないかなーっと」

足を固定されてるから視野は狭いが、私は辺りをなるべく見ようと首だけで努力。
結構位置が高いから、360度とはいえないがそのぶん奥行きでカバー。
目を凝らす。さながら獲物を狙う、鳥のよう。
いや、違う。高いとこから降りれなくなった助けを求める子猫のよう。
失業中とはいえ一応エージェントだ。
その名折れ、だとか言われて笑われるかもしれないが別に構うもんか。

…………あ、居た。二人。ピザと痩せてる?うーん。顔はこっからじゃ分からない。
気づくかなあ。まあ気づくだろうなあ。こんな電波塔、現代アートでもないもんなあ。
これがゲームに乗ってたら私の人生はDEAD END。さて、どうなるか。
…気づいてくれますように。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
0323 ◆IjfUSUNsIR9f
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2013/01/04(金) 16:05:09.81ID:WyLxdtK5
すんません…>>312の再々修正です…
>>321氏のご指摘、感謝します!暗殺者多いから気をつけないと…

したらばに書きましたが、タイトルは『Do you struggle against trouble?』でお願いします。


ここからチラ裏ですが、毒吐きで近々ロワ語りで当ロワが選ばれたらしいですね。
日程は1月6日…。
0325創る名無しに見る名無し
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2013/01/06(日) 00:37:57.87ID:VtiRmavZ
つ、遂にみなもにも絵が…いつもホントに乙です!
みなもかわいい…顔だけならやはり美少女か…


しかしpixivの方も含めるとこりゃ全キャラ書かれるぞきっと(チラッ
0326創る名無しに見る名無し
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2013/01/07(月) 12:10:32.80ID:ZI5mTNrm
この前のロワ語りは乙でした
まさかあんなに話が進むなんてw
ちょっと嬉しかったり。
0327創る名無しに見る名無し
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2013/01/07(月) 18:05:36.49ID:q3UREXuq
ロワ語りおもしろかったなw
そういや本編と参加者候補一覧眺めてて思ったけど
ロワ前、逆井運河に人探しの依頼したのは王凰だったりするのかな、中国人だし
そうなると運河が探してたのは篠田君になるな
0329オクティル国物語 ◆BUgCrmZ/Lk
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2013/01/10(木) 22:49:45.94ID:NrXrW1Rn
フランツ・O・ブリュデリッヒは流れる放送に耳を傾けていた。
彼の傍らには砂金の様な黄金の髪を朝日に輝せた美しき姫君がいる。
この場におけるフランツの主君。フランドール・オクティルである。
彼女は死者を悼み、黙祷を捧げている。
フランツもそれに倣い、静かに死者に向けて黙祷を捧げた。

放送によって知らされたのは、早くも1/3が死亡するという尋常ならざる事実であった。
人気のない山中に放り出されたというのはあるいは幸運だったのか。
否。犠牲者を出さないという主の掲げる理想からいえば、山中を抜けるのに時間を費やしたのは不運であるといえるだろう。

だが、その大量の死者よりも、気がかりなのは生者。
放送と共に配布された名簿に羅列された幾つかの名前である。
それらはフランツに僅かながらの動揺をもたらせた。

○カイン・シュタイン...

友であるカインがこの場にいるという事実は驚くべきことではあるのだが、これに関しては心配はしていない。
いや、まったく心配でないといえば流石に嘘になるが、同じ騎士という立場である以上、無用な気遣いはむしろ侮辱にあたるだろう。
それに、心配などせずとも、彼が自分などよりうまく立ち回るであろうことは想像に難くない。

○藍葉水萌...
○篠田勇...

それよりも目を引いたのは異世界より現れ消えた勇者の名であった。
救世の勇者と破壊の勇者。
両名の名がしっかりと記されている。

救世の勇者はしばらく我が国に滞在していたもが、主にやり取りを行っていたのは王や騎士団長を務める父であり。
一介の騎士でしかないフランツが直接会話を交わしたのは数える程度の事である。
父の勧めで一度だけ手合せしたこともあるが、向こうがこちらの事を覚えているかは微妙なところである。

破壊の勇者に関しては直接の面識はない。
だが、悪名ともいえる噂は嫌というほど耳に入ったし、近隣諸国からの御触れや人相書きで特徴は把握している。
その破壊の勇者が愛用していた大剣が支給されたのは縁といえば縁だろう。

漆黒を纏う大剣。
鋼よりも固く、それでいてゴムの様なしなやかを誇る特殊な鉱物から生み出された業物で、それに比例して重量も凄まじい。
フランツの様な大男には見合う大剣であろうが、これを女人の細腕で振るうというのだから恐ろしい話である。

だが、フランツに最も衝撃を与えた名はこれらではない。

相互理解のためにフランツが語った友との昔話。
それに対してフランドールが返し語った話もまた、友の話だった。

○加山圓...
○葉桜加奈子...

そして、この名は、まさしく先ほど語られた友の名であった。

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0330オクティル国物語 ◆BUgCrmZ/Lk
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2013/01/10(木) 22:55:40.13ID:NrXrW1Rn
―――オクティル王国。


周囲を高い山々に囲まれてた山岳国であり、その恵まれた地形から他国からの侵略の危機にさらされることもなく長らく平和を維持してきた。
鉱山から取れる鉱物の輸出が盛んであり、特に金の産出国としては有名で、主な財源として大いに国を潤わせていた。
その潤沢な財源をもって小国ながら、近隣諸国に高い影響力を持っている国だった。

だがある日、王が病に倒れたことからその平穏は崩れ始めた。

次期王位はフランドールの兄である第一王子が継ぐことがほぼ決定事項だった。
王子は才覚にあふれ、高い決断力を持ち、敵対者に容赦しない非情さを持つ、とかく優秀な男だった。
彼の即位に表立って不満を申し立てる者などいるはずもなく、王位継承は憂いのない問題だった。

だが、事件は起きた。
大使として訪れた異国の地で、王子がテロに巻き込まれ死亡したのだ。

第一王位継承者の急死。
その一報はまさしく青天の霹靂であり。
王が病に伏せたことよりも強く王国全体を揺るがせた。

死亡した王子の他に男児はおらず、王の直系たる遺児は女児であるフランドール一人。
王の余命はいくばくもなく、フランドールの婚儀の相手を見繕う余裕もない。
なれば、第二王位継承権を持つフランドールが女王として即位するのが順当かと思われた。

だが、これに異議申し立てたのが、現王の弟、フランドールの叔父にあたる副王である。
歴史あるオクティル王家の歴史で女が王位を継いだ事例はなく、フランドールの即位は好ましくない。
ならば、王の実弟であり直系である己が継ぐのが妥当であると。これが叔父の主張である。
もちろん、将来フランドールが婚姻を遂げ、子をなし、男児が生まれた場合には快くその席を譲ると付け加えて。

この異議申し立てに反論したのが大臣である。
現王と年の違わぬ叔父が即位したとして、同じく病で倒れられては二の舞である。
何より、第二王位継承権を持つ王女が即位するのが正統である。と真っ向から反発。

この争いを発端として、平和だったオクティル国は骨肉の後継者争いへと向かっていった。

王位を狙う叔父はもとより、王女を支持する大臣も、その実、政に無知な姫君を祭り上げ、傀儡として政権を握ろうとする目論見である。
更には叔父を囲う派閥の中には、密かに王女を亡き者にしようと企む過激な思考を持つ者までいる始末であった。
身の安全に関しては、大臣が送り込んだ護衛が守護しているものの、それも体のいい監視役である。
優しかった父は病に倒れ、頼りになる兄もこの世にはいない。
どちらの勢力が派閥争いに勝つか、どのような結果にるか、ただ天命を待つばかり。
渦中の姫君の置かれた状況は針のむしろだった。

そんな彼女の身を案じる者たちも確かにいた。
使用人を中心とした勢力。王女派である。
しかしながら、王女派は姫を慕う使用人を中心とした派閥であり、支援者も少なく発言力も皆無に等しい。
直接的に命を狙う過激派はもとより、王女の自由を許さず常に監視下に置こうという大臣の動きにも、表立った対応は不可能であった。
0331オクティル国物語 ◆BUgCrmZ/Lk
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2013/01/10(木) 23:00:31.89ID:NrXrW1Rn
だがフランドール・オクティルという女は、そんな状況を甘んじて受けるような、何も動かず運命を受け入れるだけのような、そんな潔い女ではなかった。

国内の状況に関わらず外交は必要である。
小国であるオクティル王国は、むしろ国内が荒れているからこそ、それの弱みを見せぬよう外交に手を抜くわけにはいかない。
故に、国の顔役として兄の代役を務めるべく国外へと向かうフランドールの動きは両勢力にも止めようがない事だった。
もちろん、護衛という名の厳しい監視は付いていたが。動きを起こすには、まずこの監視を抜け出す事が必要であった。
そして公務を終え、帰国する飛行機の中で、彼女は監視の意表を突く方法で監視網からの脱出に成功する。

フランドール・オクティルが加山圓と葉桜加奈子の二人と出会ったのはその時の話である。

目撃者は出さないつもりだったが、落下点にいたのだからどうしようもない。
戸惑う二人を何とか誤魔化して、その場を後にした。それが出会いだった。

フランドールは、まずは事前に取り決めていた通りに女王派に連絡を取り、更に父と懇意にしていた諸国へと状況を伝える文を送った。
監視の目を逃れた今なら大臣に握りつぶされる事無い。
だがこちらの連絡を受け、向こうからの何かしらの動きがあるのを待つ間、どこかに身を潜める必要がある。
当然行く宛てはない。
逞しくも、彼女が人生初の野宿を決意したところで、朝に出会った少年、加山圓にまた出会った。

明らかに怪しい、事情も明かせない状況にあるそんな彼女を、圓は自身の住まう武家屋敷に招いてくれた。
慣れぬ暮らしに戸惑うこともあったが、加奈子もたびたび顔をだして、何かと身の回りのことを気にかけてくれた。
立場を隠していたので当然と言えば当然だが、王女ではなく一人の少女として扱われるのは新鮮な経験だった。

日本での生活は一ヶ月ほど続いた。
相手の出方を窺うため、あえて注目を浴びる行動をとったこともあった。
遂には、彼女の命を狙う刺客が送られ、その生命を彼らに守られたこともあった。
愛する祖国の行く末を左右する一ヶ月だったが、振り返れば充実した日々であったと思える。
誰も味方のいないあの状況で、あれほどまで親身になってくれた二人には感謝の言葉もない。
二人ともフランドールにとって得難い友となっていた。

だが、そんな生活の終りは唐突に訪れる。

死んだはずの王子が祖国に帰国したのだ。

そこからは電光石火の早業だった。
王子はあっという間に宮中をまとめあげると、今回の件に関する不穏な動きを材料に、副王と大臣と言った危険分子を追放した。

そして事件の片を付け終え、王子はフランドールを迎えに来日する。
自らの即位に当たって不穏分子を炙り出し、一掃するための策だったのだと、彼女に向かって事情を説明した。
そんな兄を、最後に圓が一発殴って、この件は終わりを向かえた。

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0332オクティル国物語 ◆BUgCrmZ/Lk
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2013/01/10(木) 23:02:30.85ID:NrXrW1Rn
「フランドール様」

気遣うような声がかかる。
黙祷を続けていたフランドールは瞼を開き、長身のフランツを見上げた。
主の心痛を慮る、臣の気遣いを理解しながら、あくまで何事も無いように彼女は振る舞う。

「フランツ様。既に多くの犠牲者が出ています。
 山道も抜け、日も昇りました。これ以上の犠牲を出さぬよう道を急ぎましょう」

救える命を一つでも掬い取る。そのスタンスに変わりはない。
例え友がいるとわかったとしても、私情に走り彼らの探索を優先するわけにもいかない。
平等であることが統治者の努めである。

「心得ております。我が主よ」

主がそういう態度であるのならば、フランツとしてもこれ以上進言すべきことはない。
恭しく頭を垂れると、フランツは先陣を切る。
ようやく平地に降り立った騎士と姫は、全ての悲劇を止めるべく本格的に行動を開始した。

【一日目・朝/C-2 平地】
【フランドール・オクティル】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品1〜2
【思考】
1.すべての悲劇を止める
2.ヨグスにしかるべき裁きを与える

【フランツ・O・ブリュデリッヒ】
【状態】健康
【装備】勇者の剣・黒
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード
【思考】
1.フランドールに忠誠を誓い、その理想を叶える
0335創る名無しに見る名無し
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2013/01/11(金) 02:44:18.60ID:1AD/w6PK
投下乙
断片的だった姫様と二人の関係がよくわかる話だった
そして何気に加山△

相関図もGJ
0336創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/01/14(月) 04:05:40.26ID:wVsQCxLs
水萌と勇が異世界人で魔王やフランツや加山など殆どが同じ世界の住人だったのか
確かにそのほうが辻褄が合うな、永遠ちゃんマジボッチwというわけでもないのか
0337創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/01/14(月) 04:12:59.26ID:wVsQCxLs
あ、でも水萌ちゃんて確か昔全国指名手配されてて資料を真奈美さんが持ってたような…
異世界から来たといってるけど実は日本から瞬間移動してきただけだったりして
0344スリラー ◆BUgCrmZ/Lk
垢版 |
2013/01/17(木) 01:12:58.13ID:SFgp0HRH
「確認しておくけど、こっちの言ってることはわかるんだよね?」

猪目道司は自分の殺した少女に話しかける。
その声に反応して少女の形をしたなにかはグルリと首を傾けた。

「ほら、ゾンビ映画とかだとゾンビって理性なくなって『あーあー』言ってるイメージじゃない?
 お嬢ちゃんの場合はどうなのかなぁって」

忠実に従うゾンビという実に都合のいい手駒を得たものの、それがどの程度使えるのか把握しておかないと話にならない。
知能がなければ最悪、手駒どころか邪魔になる可能性すらある。

「とりあえず、しゃべれるのかな? だったらおじさん返事してほしいんだけどなぁ」
「――――ええ、言語は正確に理解できます」
「ぉお」

返答がきたこととその声色に驚く。
返ってきた声は元となった少女の声色ではあるのだが、どこか無機質で無感情だ。
機械的、というより昆虫的。それまでの少女らしさは感じられない。

「じゃあ、いくつか聞いておきたいんだけど。
 君は、そのぉ、覚えているのかな。自分がどんな状態なのかとかさ」
「殺害された金山純子の肉体とスキルカード『ものまね』をベースとして、スキル『ネクロマンサー』の力でゾンビとして蘇らせた、といったところでしょうか?」

探るような問いかけに淀みなく答える。
質疑応答くらいならば問題ないどころか、認識は正確すぎるくらいに正確だ。
殺された事すら認識しているのか。

「なるほどなるほど。そこまで覚えているんだね。
 ちなみに誰に殺されたのかとかも覚えているのかい?」

少しの間。
相変わらずの平坦な声で少女は答える。

「私が殺された事を恨んでいるのかもしれないと考えているのでしたら、ご心配には及びません。
 殺されたのは金山純子という個人であり、同じ肉体を有しているというだけで私とは別物です。
 私はあくまで主人(マスター)に従う従者(サーヴァント)ですから、反逆はあり得ません」

マスターと来た。言動には元の人格の影響が見える。
意図を察せる知能もある。最低限の状況判断はできそうだ。
そしてその言葉を信じるならば後ろから刺される心配はなさそうではある。
0346スリラー ◆BUgCrmZ/Lk
垢版 |
2013/01/17(木) 01:14:34.95ID:SFgp0HRH
「記憶とかってどうなってるんだい?
 その子の記憶を君は覚えてたりするのかい?」
「いえ、肉体は共有していますが、脳から情報を引き出すことはできません。
 あくまで私はスキルカードですから、私の見聞きしたことしか把握出来ません」
「じゃあその子を演じることはできない?」

その言葉に少女は切り替えるように目を閉じる。

「ふん。なめるんじゃないわよ。そのくらい余裕よ!」
「ほぅ、こりゃすごいね」

さすが『ものまね』のスキルを基にしたというだけあって、その再現度はたいしたものだ。
世辞抜きで、感心する。
多少の差異はあるのだろうが、おそらく親兄弟でもなければ見分けは付かないレベルだろう。
少なくとも昨日今日出会っただけの関係では違和感も感じないだろう。

「じゃあお嬢ちゃんはそのまま紀夫くんを追ってもらえるかな」
「いいけど、あんたはどうするの?」
「おいちゃんは、別の用事を思い出したんでそっちに行くよ。
 用事が終わったらすぐに追いつくつもりだけど、紀夫くんに関しては――――もう殺せそうなら殺しちゃっていいよ」

手駒は手に入った。
肉壁にしかならないデブなんて今となっては邪魔なだけだ。

それにコレはゾンビのスペックテストも兼ねている。
精神面は分かった、では肉体面は?
よくあるゾンビ映画のようにリミッターがハズレたりするのだろうか。
例えそうじゃなく失敗したとしても、猪目とファンガールもどきの関係性を知るものがいない以上、猪目の悪意が露見することはない。
ファンガールがゾンビになって猪目がそれを操っているなど、まともな発想では想像もつくまい。
露見する可能性としては、ファンガールもどきがゲロった場合くらいのものだが、これまでのやり取りからその心配はなさそうだと判断する。

「わかった。やってみる」

その指示になんの躊躇いもなく応じる少女。
人格をまねていてもその本質はあくまで猪目に従うスキルカードである。

「ああそうそう」

別れ際、思い出したように猪目が言う。

「ところで、お嬢ちゃんの事はなんて呼べばいいのかな?
 純子、ちゃんだっけ? それともファンガール? 『ものまね』ちゃんの方がいいかな?」

■■■■■■■■■■■■■■■■■
0347スリラー ◆BUgCrmZ/Lk
垢版 |
2013/01/17(木) 01:17:10.59ID:SFgp0HRH
「お、あったあった」

猪目が探しもの、それは聖澤めぐるの死体である。

スキル『ネクロマンサー』。
ゾンビを生み出すこのスキルに。必要となるのは肉体となる綺麗な死体と、人格となるスキルカード。
殺害方法も絞殺であるため死体は外傷もなくきれいなモノだ。
まだ死後5時間程度のため死斑も血管外へ出ていない。
更に、都合のいいことにスキルカードを1枚余らせている。
というより、この少女から奪い取ったものなのだから、ある種この少女を動かすには御あつらえ向きだろう。

「返すよ、お嬢ちゃん」

そう言って、スキルカードを少女の死体の上に落とす。
もともと使い道がなさそうなスキルだったし、惜しくもない。

【給仕募集】

このカードをベースにしてこの少女を甦らせる。
指定した相手を忠実な執事・メイドにするだけの能力。
殺し合いに役の立たない能力を支給するとは何の酔狂かと思ったが、こういう酔狂に使うのならば悪くない。

「ちちんぷいぷい、あぶらかたぶらっと」

適当な呪文を唱えると、ビクンと、二度と動くはずのない少女の体が震えた。
赤い唇は青く染まり、元より白い肌はさらに白く。不気味なまでに白い。
可憐な顔はそのままにただ不気味さだけが張り付いている。

ムクリと立ち上がった少女は、両腕でスカートの裾を摘まんで、やうやうしく首を垂れた。

「おはようございます、ご主人様」

【一日目・朝/C-6 林】
【猪目道司】
【状態】健康
【装備】S&W M10(5/6)
【スキル】『未来予知』 『ネクロマンサー』(浸食率0%)
【所持品】基本支給品、不明支給品2〜4 、予備弾薬(48/48)
【思考】
1.生き残って自由になる。
2.メイドゾンビと共に、先行したゾンビを追う。

※以下、【ネクロマンサー】によって生み出されたゾンビ
【メイドちゃん(聖澤めぐる)】
【状態】ゾンビ、外的損傷無し
【装備】なし
【スキル】『給仕募集』
【所持品】基本支給品
【思考】
基本.【ネクロマンサー】所持者に従う。

【一日目・朝/C-5 平原】
【ファンガール・M・J】
【状態】ゾンビ、外的損傷無し
【装備】果物ナイフ
【スキル】『ものまね』
【所持品】基本支給品
【思考】
基本.【ネクロマンサー】所持者に従う。
1.紀夫の元に向かって殺せそうなら殺す
0348スリラー ◆BUgCrmZ/Lk
垢版 |
2013/01/17(木) 01:20:24.52ID:SFgp0HRH
短いけど投下終了

ゾンビが思考して喋れるのは、復活近いのでちょっとどうかと思いましたが、意見あればどうぞどうぞ
0350創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/01/17(木) 21:15:56.94ID:MBVu5KXk
投下乙!!
やったね智美、めぐるちゃん生きてるよ!
ゾンビだけど、まあしょうがないですよね(マジキチスマイル
んで、そのゾンビだけど、
俺が思うオリロワ2ndの基本原則は
・勢いとノリ
・ロリとロリコン
・誰これ構わず容赦なく死ぬ
で成り立ってるから大丈夫大丈夫。
0353創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/02/03(日) 09:07:14.66ID:BQYMSk2/
うーむ、前のロワ語りの時は滅茶苦茶話したんだがなあw
そんときだしつくして振る話題がねえええ
0356エゴイズム ◆BUgCrmZ/Lk
垢版 |
2013/02/05(火) 00:49:38.26ID:tDylYwcf
恐るべき殺人鬼の襲撃を辛くも退けたものの、その結果、加山圓は精神的にも肉体的にも疲労困憊となっていた。
そのため、ひとまず身を休めようとしていたのだが、休憩するにしても辺りは見る限り血と肉片のまき散らされた地獄絵図である。
流石にこの場に居続ける気にはなれないし、何よりイロハにこんな光景を見せ続けるわけにもいかないので已む追えずその場を離れ、深い森を後にした。

『やぁやぁ、久しぶりだね。ボクだよ』

そして場を移し、ようやく休息が取れると思った矢先の出来事だった。
どこから流れているのかすら不鮮明でありながら、だが確かに聞こえる声。
聞き覚えのあるその声が、この場に連れてこられる直前に聞いた声と同一のものであると気づくのにさして時間は必要なかった。
ふと時計を見れば、時刻は6時丁度。
脳内に直接響くかのように聞こえる、これが事前に告げられていた『放送』なのだろう。

いったいどんな内容が告げられるのか。
警戒心を強めながらも、聞き漏らさぬよう耳を傾ける。

まず放送によってもたらされた情報は『禁止エリア』についてだった。
何でも侵入しただけで死亡するエリアが追加されるという、どうにも聞き流せない情報である。
忘れぬよう慌てて荷を漁りメモを取りだしその内容を書き記してゆく。
告知された禁止エリアは『B-2』『D-4』『E-8』の三つ。
今いるエリアは地図で言うところの『E-7』エリアであるため、禁止エリアに指定された『E-8』エリアに近い。
誤って踏み込むことはないだろうが、注意は必要だろう。

『さて、それではお待ちかね、参加者の告知をしよう。
 と言っても、既に参加者名簿を各自の荷物の中に転送しいるので、各自で確認してくれ。
 荷物ごと無くしてしまったモノは、近くのモノに見せてもらうといい』

言われて荷物を確認してみれば、何時の間に紛れ込んだのか、参加者名簿と思しきものが確かにあった。
先ほどメモを取り出した時にはなかったものがある。底知れぬヨグスの力に、うすら寒いものを感じながらも、名簿を開きその内容に目を通す。
ずらりと並ぶ36の名。
日本人だけではなく外人のような名前もあり、多国籍にわたり多種多様である。

「って、姫さんまでいんのかよ……!?」

その中で、もっとも脅かされたのはとある事件で知り合った某国の王女の名である。
それだけではない。他にも、幼馴染にクラスメート、学校の先輩や近所の知り合いまでいる。
イロハの様な例外はあれど、北で激戦を繰り広げていた奴らや、先ほどであった男の様な殺し合いに則した化物が参加者の殆どであるのだと思っていただけに、知った名がいくつも連なっているというのは完全に予想外の事だった。
どんな基準で人選をしているのか。全くの謎である。

『確認したかい?
 それではそれを踏まえた上で、この6時間で脱落した死者を発表する』

天からの声に思考が引き戻される。
死者の発表。
その言葉に、全身が総毛立つような感覚を覚える。
それはつまり。
この名簿に載っている者は。
日常を共に過ごした同級生も。
子供のころから知る幼馴染も。
共にあれほどの事件を潜り抜けた姫様も。
全て今から死者として呼ばれる可能性があるという事。
そんな、こちらの気持ちを無視して、死亡者の名が淡々と告げられていった。
0358エゴイズム ◆BUgCrmZ/Lk
垢版 |
2013/02/05(火) 00:51:46.61ID:tDylYwcf
「――――――――」

思わず、無意識のうちに地面に拳を打っていた。
告げられた名は12。
呼ばれた中には、知った名がいくつかあった。
言いようのない無力感。
この殺意と悪意を持った化け物たちが跋扈するこの場で、自分が何ができたとも思えない。
それでも何かできなかったのか、そう思ってしまう。

打ち付けた拳にジワリとの痛みが感じられてきたころ、ハッとしてすぐ近くで佇むイロハを見る。
自分のことばかりでイロハを気にかけるのを忘れていた。
この少女も、自分と同じように知り合いが巻き込まれ命を落としているかもしれないというのに。
己の気のまわらなさに心底呆れながらも、イロハに向かって問いかける。

「…………イロハちゃん、大丈夫?」

何を問われたのか分からないといった風に、イロハは小首をかしげる。
放送の内容を理解できていないのか、それとも本当に思うところはないのか。その表情にこれといった変化はない。
言葉を話せないこともあり、この少女に関しては分からない事の方が多い。
イロハが名簿を確認した様子もなかったようなので、この場に知り合いがいるのかどうかすらわからない。

「この中にイロハちゃんの知ってる人っているかな?」

自分の名簿を開いてイロハに向かって問いかける。
その問いに、イロハはしばらく名簿を眺めてからふるふると首を横に振った。

名簿に知ってる名がないということは、この場に知り合いはいない、ということだろうか?
だが、先ほどの男は明らかにイロハを知ってる風だった。
どういう関係かまではわからないので、むこうが一方的に知ってただけという可能性もあるが。逆ならともかくそれは少し考えづらい。

「イロハちゃん、さっきのあの男ってイロハちゃんの知り合いなの?」

なので直接疑問を投げかけてみた所、この質問にイロハは肯定の意を示すように頷く。

「……えっと、どういう関係?」

思わず漏れたこちらの質問に、イロハは少し悩むような素振りを見せた後、小さな手足を動かし身振り手振りで応じてくれた。
なにやら答えを伝えようとするその様は大変可愛らしいとは思うのだが、答えとしては要領を得ない。
雰囲気的に険悪な関係ではなさそうである。
あの殺意の塊のような男と交友的な関係だというのも想像できないが。とりあえず知り合いなのは間違いないようだ。

なら、この名簿に名前がないのはどういう事だろうか?
この名簿に載っていない、あるいはジョーカー的な存在なのか。
もしくは、考えられるのはイロハの知る名と、ここに乗っている名が異なっている可能性か。
この名簿には魔王とかフィクションとか明らかに本名じゃない。偽名か異名みたいな名前も載っている(というか魔王ってのは北で戦ってた魔王っぽい奴だろこれ)。
奴もそうなのかもしれないし、他にも、そうであるというだけで認識できないイロハの知り合いがいるのかもしれない。

なんにせよ、いると分かった以上(あの男は例外としても)お互いの知り合いとの合流を目指したかったのだが。
イロハの知り合いを探すというのはいるかどうかも分からない以上、ひとまず保留にせざる負えない。
0359エゴイズム ◆BUgCrmZ/Lk
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2013/02/05(火) 00:52:41.12ID:tDylYwcf
「…………となると、まずは加奈子と姫さんあたりか」

他にも知り合いは何人かいるみたいだが、探す宛てをつけるなら、まずはこの二人にしたい。
まぁ二人とも俺なんかよりもよっぽど逞しい女ではあるのだが、なんだかんだで女一人を放置しておくのは気が気でない。

探すにあたって性格上、あの二人が大人しくしているとも思えないので、おそらく人の集まる場所に向かっている可能性が高い。
ならば市街方向に戻るべきだろうか。
だが、その場合、北部で激戦を繰り広げていた奴らに出会う可能性や、先ほど立ち去ったあの男とまたかち合う可能性もある。
先ほどの戦いで生き残れたのは殆ど運だ。
また戦いになれば、今度こそ生き残る自信はない。

とはいえ、市街地を避けて移動するにしても、すぐ東の『E-8』エリアは禁止エリアに指定されているため移動は不可能。
北の発電所方向も死体の破片が撒き散らかされているため、できれば避けたい。
そして市街方向も除外するなら南しかないが、離れの小島が一つあるだけである。
そんな所に探し人がいる可能性は低いだろう。

西か南か。
西は彼女たちがいる可能性は高いが、リスクも高い。
南は彼女たちがいる可能性は低いが、リスクも低い。
どちらにするか、リスクと目的の両天秤だ。

自分だけじゃなくイロハのリスクも背負っているとなると迂闊な選択はできない。
だがそれでも、

「イロハちゃん。ここに俺の知り合いがいるみたいなんだ。
 だから少し危険かもしれないけど、人が集まりそうな市街方面に戻りたいんだけど、いいかな?」

こちらの言葉に何の疑いもなくイロハは頷く。
その様に、チクリと罪悪感の様なものを感じる。

自分の知ってる人間が自分の知らないところで死ぬなんてことは耐え難い。
これはそんな己のエゴだ。
この罪悪感は、そんなものにこの少女を突き合わせることに大してのものなのか。
いや、それだけではない。
疑うことを知らない無垢なこの少女に、応じると分かっていながら問いかけたことにだ。

己のエゴに巻き込んだ代償ではないが、この少女を守る。
その決意をより一層固めながらも、休息もそこそこに市街地に向かって動き始めた。

【一日目・朝/E-7 森】
【加山圓】
【状態】疲労、全身に細かな切り傷、過剰感覚による少々の気持ち悪さ
【装備】小太刀
【スキル】『五感強化』
【所持品】基本支給品
【思考】
基本:徹底的に抗う
1.加奈子とフランドールを探す
2.イロハを守る

【イロハ】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品×1〜2
【思考】
1.マドカに付いていく
0360エゴイズム ◆BUgCrmZ/Lk
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2013/02/05(火) 00:53:13.18ID:tDylYwcf
短い繋ぎだけど投下終了

自己リレーばっかになってるけど、もっとみんな作品書いてもいいのよ?
0361 ◆IjfUSUNsIR9f
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2013/02/05(火) 22:26:34.81ID:nxDMZUtO
乙です。加山君マジ主人公!ロリコンじゃ無理やったんや!


あ、板垣を予約しときます。
0362 ◆IjfUSUNsIR9f
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2013/02/13(水) 18:55:49.78ID:99M8tr8q
あー…ダメだ、ろくに進んでない
とりあえずは一旦破棄しときます…
0364その手の温もりを ◆Z2CJJz2v/o
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2013/02/20(水) 23:38:33.31ID:eLRt9WCl
椎名祢音は真剣な面持ちで放送に耳を傾けていた。
そして放送を聞き終え、静かに息を呑み天を仰いだ。

「……………よかった」

ひとまず最悪の事態だけは避けれたことに安堵の息を漏らす。
少女の望みは一つだけ。
それは己の勝利でも、己の生存でもない。
ただ一人、片嶌俊介を生きて元の場所に還すこと。
ただそれだけだ。

そう、ただそれだけのために、他の人間の生命を全て捧げる。
その覚悟を、決めている。
放送で同じ名字が二つ―――この手で殺した姉妹と思しき名が―――流れた時には、チクリと胸が傷んだけれど耐え切れないほどじゃない。
辛くて苦しいけれど、耐えられないほどじゃない。

幸いにと言うべきか、名簿を確認した限り、この場に片嶌の他に、祢音の知っている名はなかった。
誰であろうと殺す覚悟はできていたつもりだったが、それでも、知り合いがいないに越したことはないだろう。

それよりも気にすべき事は別にあった。
この六時間で十二人も死んだ。
そのうち彼女が殺したのはたったの二人だけ。
つまり、十名以上が他にいる殺人者によって殺されたということだ。

そんな奴らがこの狭い孤島に蠢いている。
もし、このまま同じペースで進んで行ったら、十二時間後には全員死ぬ。
このままでは守りたかったあの人も危ない。

「ダメだダメだダメだ」

そんなのは駄目だ。
それだけは、絶対に。

事態は火急を要する。
故に、休息を取るというプランは破棄せざるおえない。
一刻も早く残り二十二名を殺さなくてはならなかった。

だが、それには足りなさ過ぎる。
武器が。
時間が。
体力が。
彼女には何もかもが足りない。

休息を取らずに体力を回復させる方法はある。
先ほど得たスキル『エネルギードレイン』である。
これさえあれば数を減らせて武器を奪えて、更には体力も奪い取れる。
まさしく一石三鳥である。

故に、危険人物は排さねばならない。
危険でない人物も、全て奪って、殺さなければならない。

「…………はっ」

そんな思考に、自傷するように息を零す。
まさしく外道の所業。正義の味方とは程遠い。
今さら。
今さら何を思うのか。
何の罪もない人間を一方的に殺した時点で、今さら、そんな資格はもう。
0365その手の温もりを ◆Z2CJJz2v/o
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2013/02/20(水) 23:41:30.79ID:eLRt9WCl
「ッ…………!?」

深く沈みかけた思考を、祢音は慌てて打ち切る。
人の気配が近づいてきているのを感じたのだ。
誰か来る。
殺すべき誰かが。

視線の先、まず祢音の目についたのは天をつくような大男だった。
その表情はどこか険しく、強面であることも相まって人を寄せ付けぬ雰囲気を感じさせる。
そして、その動きには見る限り隙がない。おそらく訓練を受けた軍人か何かだろう。
その傍らに守られるように佇むのは、美しい女性だった。
女である祢音ですら一瞬状況を忘れて見蕩れてしまうほどの美貌。
さながら美女と野獣。
不釣り合いであり、不釣り合いであるからこそ釣り合いが取れている、そんな二人だった。
そのうち一人、美女の方が祢音に向かって語りかけた。

「初めまして、私はフランドール・オクティルと申します。こちらはフランツ。
 私たちに戦う意思はありません。どうか警戒なさらず私の話をお聞き願えませんでしょうか?」

透き通るような凛とした声。
見る者の警戒心を溶かすような柔らかな笑み。
まるで、お伽噺のお姫様みたいだ、祢音は思わずそんな事を考えてしまった。
こんな状況でもなければ素敵な出会いになったのかもしれない。

けど殺す。
殺さなければならない。
問答無用で襲いかかるか。
それとも、善意を利用して懐に潜り込むか。
祢音の頭の中では目の前の二人をどう殺すか、それしか考えられていない。

屈強な大男が相手でも、万全の状態で変身が出来れば負ける気はしない
だが、体力の尽きた今の状態では変身は不可能である。
この状態で小さなナイフ一本で二人を相手にするのもかなり厳しい。
となると残る武器は『エネルギードレイン』だけ。

だが『エネルギードレイン』の効果範囲は手のひらのみと非常に狭く、複数を相手にするには向いてない。
何より、まだ一度も使用していないため、どの程度の効果が見込めるのかが不明だ。
油断させて懐に潜り込んだところを狙うにしても、それで狙えるのは一人が限度。
ならば、一人をエネルギードレインで吸い殺し、奪い取ったエネルギーでもう一人を変身して殺す、これがベストだ。

そんな殺害への算段を巡らす祢音の思考を知る由もなく。
無言を話を聞く意思があると捉えたのか、フランドールは言葉を次いだ。

「まずは、貴女のお名前を聴かせていただいても宜しいでしょうか?」
「……椎名、祢音です」

このまま無言で押し通すのは不自然と考え、ひとまず祢音は名乗りを返す。
殺すことは決定済みだ。
時間をかけるつもりもない。

「……それで、なんですか、お話って?」
「私達はこの状況を打開すべく、ともに力を合わせ立ち向かう意志を持つ者を探しています」
「立ち向かうって……何か具体的な手段があるんですか?」
「今はありません。
 ですが、諦めず共に力を合わせ必ず希望は生まれると信じています」

その答えに、僅かながらに落胆する。
現実の見えていない、ただの理想主義者の意見だ。
0366その手の温もりを ◆Z2CJJz2v/o
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2013/02/20(水) 23:44:19.43ID:eLRt9WCl
彼女の望みは片嶌の生存である。
それが果たされるのであれば、その手を取ることもあっただろう。
だが、ただの希望論でしかない可能性に賭ける事なんてできない。
手をつないで共に歩む。そんな道はもう、選ぶことは許されない。

「貴女も同じ意志を持つ者であるのならば、どうか私の手を取り、そのお力をお貸しいただけませんでしょうか?」

言って、手を差し出すフランドール。
子供である祢音に対しても、保護や同情ではなく、あくまで対等な協力関係として話しかけている。
きっと、いい人なのだろう。
だが、対等には見ているが、こんな子供が殺し合いなどに応じるはずがないとタカをくくっているのも事実である。
出来れば大男の方を不意打ちで仕留めたかったが、向こうから手を差し出したというのなら、是非もない。

「――――ええ、貴女の力、頂きますッ!!」

差し出された手を、祢音はガッチリと両手で握り締める。
その瞬間、フランドールが膝からガクリと崩れ落ちた。

「!?」

両腕から流れこむ生命のエネルギー。
全身が満たされてゆく言いようのない感覚が祢音の全身を奔る。
それは命を直接喰らっているようであり、ある種、性行為にも似た恍惚を感じさせる。

「ッ!?」

だが瞬間、身の危険を感じた祢音は咄嗟に両腕を放しその場から飛びのいた。
その目の前を黒い残像が横切った。

それはフランツの放った斬撃だった。
予想以上に早い反応。そして思った以上に容赦がない。
一瞬でも飛びのくのが遅れていたら、彼女の両手は手首から断ち切られていただろう。
フランツはすぐさま、倒れこんだフランドールと飛び退いた祢音との間に身を割りこませ、盾のように立ち塞がる。

「フランドール様!?」
「…………大丈夫です。心配は、いりません。
 それよりも…………」

フランドールの顔は青ざめ息苦しそうにしているが生きている。
ドレインのスピードは祢音の予測を下回るほどではなかったが、全て吸い尽くすには離れるのが早すぎた。
絶命に至るほどのエネルギーは奪いきれなかった。

だが、それなりに回復はできた。
完全とはいかないが、部分的な変身ならば十分可能だ。

祢音を見つめる二人の目が驚愕に見開かれた。
見る見るうちに、幼く可憐だった少女の姿が、醜い化物の姿へと変貌していったのだ。

小学生特有の柔らかで張りのある肌が、ひび割れた石のように硬質化してゆく。
腕の爪は鋭く、肉など容易く切り裂く刃のようだ。
その脚の密度と弾力はタイヤのゴムを思わせる強靭さと靭やかさを兼ね備えていた。
そしてその背には、人間には存在しない部位、石の翼が生まれ羽ばたく。

全身変身ではなく、体力の消耗を抑えた四肢と翼の限定変体。
この二人もこの場で殺す。
もう後戻りなどするつもりはない。
0367その手の温もりを ◆Z2CJJz2v/o
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2013/02/20(水) 23:46:29.19ID:eLRt9WCl
「フランドール様。ご指示を」

忠実なる騎士は対峙する化物を睨みつけながら、主君に指示を仰いだ。
騎士とは主君に剣を捧げた身。振るう意思は主君ものである。
どのような指示にも異議を唱えず、ただ望みを叶えるべく全力を尽くすのが剣の務めである。
主君たる王女が下した決断は果たして。

「……殺さぬよう……制してください」

体力を奪われ息を切らしながら、それでもはっきりとフランドールはそう言った。
この期に及んでも、血の決着を望まぬ決断。それは戦いに血の流れる事を知らぬ戯言か。
否。彼女はそれを知っているし、何より自らが痛みを受けた直後だ。
それでもなお、甘言を唱えれるならば。
それは現実の見えない理想主義者などではなく、現実を見据えたうえでなお理想を唱える、もっと欲深い別の何かだ。
そして、その決断はフランツにとっても好ましい。

「御意に」

主の意志に応えるのが騎士の務め。
務めを果たすべく、フランツは無言のまま漆黒の大剣を上段に振りかぶる。
フランツほどの大男が、上段から繰り出す一撃は正しく必殺だろう。
それ故に、この構えは相手を殺さず制圧するには向いていない。
何故その構えを選択したのか。
見守る姫君は信じるのみである。

争いを好まぬ気質とはいえ、その技量は騎士団の中でも随一。
騎士の鑑とまで呼ばれた男である。
そして、代々武勲で功を上げてきたブリュデリッヒ家が賜りし名は'Overcome(打ち勝つ者)'。
その名を誰よりも体現しているのがこのフランツという男だ。
一度、戦うと決めた以上、その刃の波紋が曇ることはない。

そのフランツと対峙する祢音は、圧し掛かる様な重圧を感じていた。
上段に構えるその姿は、ただですら巨大なフランツの体躯が更に一回り大きく見で、威圧感が増す。

隙はある。
隙はあるが、上段の隙は誘いの隙だ。
その間合いに迂闊に入り込もうものならば、電光石火の一撃をもって一刀両断にされるのがオチだ。

だが、同時にそれが弱点でもある。
一度振り下ろした剣は、必殺であるが故にそう簡単にはきひ戻せず。
標的を仕留めそこなったならば、それはすなわち相手に死に体を晒すこととなる。
さらに言えば、既に剣を振り上げている以上、行動は限定され狙いも絞れるため、行動は読みやすい。
それでも素人には対応できないだろうが、生憎と祢音は素人ではない。

――――椎名祢音は改造人間である。

謎の組織『GODS』によりその身を攫われ、改造手術を施された、
肉体の改造が終わり、洗脳手術を施そうかという直前に、組織を脱出。
その後、自分を改造した連中をたった一人で壊滅させた経験を持つ。

以来も正体を隠しながら平和を脅かす存在と日夜戦い続けてた。
人間とは次元の違う身体能力を持った怪物や、あり得ない超能力を操る怪人たちを倒してきた。
今は変身のために必要なアイテムを没収されているためスキルに頼っているが。
それでも見た目にそぐわない数多の戦闘経験を誇る彼女に、教科書通りの上段など通用しない。

タンと、思いのほか軽い音と共に、祢音が駆けた。
瞬発力と持久性を兼ね備えた人外の脚力は、一足で最高速度まで到達する。
常人には消えたとしか見えない急加速、少なくともフランドールには見えなかった。
だが、フランツは捕えている。
0369その手の温もりを ◆Z2CJJz2v/o
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2013/02/20(水) 23:51:19.39ID:eLRt9WCl
巨大な体格と大剣を持つフランツの間合いは広い。
既にフランツの射程圏。
今にもその剣を振り下ろさんとした刹那、祢音の疾走は、あり得ない軌道をたどる。
その身に宿した両翼で空を切り、弧を描くように滑空。
空中を泳ぐように、完全に意表をつく形で、フランツの側面を捉えた。

殺った。祢音はそう確信する。

「くっ…………ぁっ!」

だが、驚愕の声は少女の口から零れたものだった。
必殺を確信した一撃を繰り出し、騎士の側面をすり抜けた少女は、そのまま着地もできず崩れ落ちる。
すぐさま立ち上がろうとするが、全身に力が入らない。
見れば肩口から切り裂かれており、右腕は腱を絶たれたのいくらもがいても何の反応もしない。
果たして何が起きたのか、少女が理解できたのは全てが終わった後でだった。

あれほどの速度で迫る祢音に対して一切惑わされず、放たれたのは済まし通すような一撃。
スレ違いざま、振り下ろされた一撃はまさしく閃光だった。
上段が来ると予測し、予測通りの上段が来たのに、祢音は反応すら出来なかった。
鮮やか過ぎる切り口には痛みすら無い。
殺すほどには深すぎず、動けるほどには浅すぎない。
なんという技量。
たった一撃で、完全に無力化された。

変身や改造によって得た圧倒的身体能力や超能力とは全く違う。
ただひたすらに磨き上げられ積み重ねられた技術だ。
まさしく次元が違う。
先ほど心中で下した評価を改めざる負えない。
変身が完全だったとしても、果たして勝てるかどうか。

立ち上がれぬままの祢音にフランツ歩を詰め、剣の切っ先を突きつける。

「降伏を」

簡潔な一言。
圧倒的技量差を見せつける事。フランツの狙いはそこにある。
寡黙な騎士は黙したまま、抵抗は無意味だと雄弁に語っていた。

誰がどう見ても受け入れるしかない状況。
だが、このまま敗北を受け入れそうになる心を、唇をかみしめ必死で繋ぎ止める。

諦めるなどありえない。
諦めるなど許されない。
フランドールの態度からして、殺されることはないだろうが。
ここで拘束でもされようものなら目的が達せられなくなる。
0370その手の温もりを ◆Z2CJJz2v/o
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2013/02/20(水) 23:53:17.75ID:eLRt9WCl
――――思い出すのはあの雨の日。

組織を抜け出して、復讐を果たしたあの日。
純粋な人間ではないとはいえ、初めて人を殺したあの日。

最新技術を詰め込まれたそのスペックで、組織を壊滅まで追いやったものの、彼女自身も無傷とはいかなかった。
雨の中傘も差さずとぼとぼと歩く少女の両腕は、自分のモノとも誰のモノともわからない血で塗れていた。
そして、そんな血にまみれた両手を見て、自らを巻き込んだしがらみを破壊したものの、もう日常には戻れないと悟った。
彼女はそこで日常を諦めた。

『…………祢音か?』

それは偶然の出会いだった。
相手は近所に住む高校生だった。

『って、おい! 怪我してるじゃないか! どうしたんだ!?』

彼は少女の様子に気づくと、驚いたように駆け寄ってきた。
彼とはミニバスのコーチをしてもらってからの縁だ。
時折、彼の家に行ってバスケを教わったりもした。

それは在りし日の象徴のようで、諦めたはずの日常を想起させる。
そんな相手に、今の自分の姿を見られるのが酷く恥ずかしかった。

『放っておいてください』

居た堪れなくなって、突き放すようにそう言い放った。
そして視線をそらして、足早にその場を後にしようとして。

『放っておけるわけないだろ!!』

本気で怒るような声に引き止められた

『怪我してる女の子を、こんな雨の中に放り出せるわけないだろ、バカ!』

そう言って、彼は彼女の手をとった。
そしてそのまま、手を引いて、治療を施すべく彼の自宅へ向かって歩きはじめた。
戸惑いながらも、彼女はその手を振り払うことはできなかった。

その手は温かかだった。
繋がれた手から、凍りついた何かが溶けてゆくようだった。

血に濡れた手を優しく包んでくれた。
何も聞かずにキズだらけの手を引いてくれた。

たったそれだけの事だったけど。
たったそれだけの事が、嬉しかったんだ。
涙が出たんだ。

あの温もりを、彼女は忘れたことはない。

あの温もりがあったから、彼女は日常に戻れたんだ。
この力を、大好きなみんなを守るために使おうと思えたんだ。
彼がいたから彼女は正義の味方になれたんだ。

だから、彼女が彼を生かそうとするこの行為は彼から得たものを、彼に返すだけだ。
与えてくれた生きる希望を、還すだけ。
0371その手の温もりを ◆Z2CJJz2v/o
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2013/02/20(水) 23:54:36.09ID:eLRt9WCl
もう二度とこの手をとってもらえることはないとしても。
例え全てがなくなったとしても。

椎名祢音は片嶌俊介のために戦い続ける。

「―――――ぅああああああああああああああああああああああ!」

喉の張り裂けるような叫びを上げて、椎名祢音が立ち上がった。

敵の動きを封じるべく、的確にその身を切り裂いた。
その手応えがあったからこそ、動けないはずの相手が動いたという事態はフランツの反応を僅かに遅らせた。
その隙を逃さず、祢音は大きく後方に飛びのき、そのまま一直線にフランツたちとは逆方向に逃避した。

フランツはその背を追おうと踏み出した足を止める。
単純な速度ではフランツよりも祢音が上だ。追いつける速度ではない。
なによりダメージを受けたフランドールを置いていくわけにもいかない。

「申し訳ありません。取り逃がしてしましました」

騎士は主の前に向き直ると、申し訳なさ気に首を垂れた。

「いえ、見事でした。騎士フランツ」

その言葉に嘘はない。
目的こそ果たせなかったが、その力量は見事としか言いようがなかった。
初仕事としては及第点と言えるだろう。

「勿体ないお言葉。
 ですが、フランドール様。これからは無茶はおやめください。
 接触するにしても最大限のご警戒を」

そう騎士は苦言を呈する。
参加者との接触をする際には、まず彼女が話してみるというのは、フランドールの意向であった。

「いいえ、自ら踏み込まねば、信頼は勝ち得ません」

痛手を負ったにもかかわらず、姫君の信念に変わりはない。
あれほど圧倒的な技量を見せた騎士の鑑であるが、この筋金入りの頑固さを持つ姫君にはどうしたものかと頭を悩ませるのであった。

【一日目・朝〜午前/C-3 警察署近く】
【フランドール・オクティル】
【状態】疲労(大)
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品1〜2
【思考】
1.すべての悲劇を止める
2.ヨグスにしかるべき裁きを与える

【フランツ・O・ブリュデリッヒ】
【状態】健康
【装備】勇者の剣・黒
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード
【思考】
1.フランドールに忠誠を誓い、その理想を叶える
0372その手の温もりを ◆Z2CJJz2v/o
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2013/02/20(水) 23:57:43.24ID:eLRt9WCl
.

.

.
.
.
.
..
...
..............
..........................................


「ハッ……ハッ……ハッ……!」

息が切れる
心臓の鼓動がうるさい。
口から心臓が飛びだしそうだ。

動けないはずの彼女が動けた、その方法は実に単純明快。
動けない体を動けるように、切られた神経を繋がった神経に”変身”させたのだ。

だが、この方法はいわば、外法。
変身がとけてしまえば傷は再び開くし、変身に使用したコストは戻ってはこない。
ただの一時しのぎにしかならず、先ほど得たエネルギーをすべて使ったどころか、収支はマイナスにしかならない。
だが、一時しのぎとはいえ、逃走は成功した、とりあえずはそれで十分だ。
だが問題はこの疲労。

襲撃は失敗。
回復するという目論見も破綻。
回復するどころかむしろマイナスだ。

エネルギーが足りない。
今すぐ何かで補充しないと意識が途絶えてしまいそうだ。
必死になって辺りを見渡すと、ほどなくして見つけた。
というより、見つけてくれと言わんばかりに何か喚いて騒いでいる。

「うわぁぁああ!! 人が死んだ! 人殺しがいるぞ!! 人が、」

それは目の前で人の死を目撃し混乱するトーマス・A・エジソンだった。
何かを騒いでるが、そんな声は祢音には聞こえない。
もはやそんなものを気にしている余裕などない。
最後の力を振り絞り加速し、その勢いののまま跳びかかる。
掴みかかると同時に限界が来て、変身は解けたが、勢いだけで縺れ合うように倒れ込む。

「うゎ!? 何だお前は!? ヤメろ! 暴力はキライだ! ヤメろ! ヤメろ! 放せ!」

なおも騒ぎ立てるうるさい口を左腕でふさぎ、そのまま顔面へ体重を乗せて押さえつける。
変身前でも改造人間である祢音の身体能力はそれなりに高い。
だが、体力も底をつき、右腕が動かないため上手く押さえつける事が出来ず、相手に暴れる隙を与えてしまう。
エジソンは手足をバタバタと振り回し、拘束を解こうと無茶苦茶に暴れまわる。
その力は成人男性にしては非力な部類だが、それでも本気で暴れる大の大人を子供が片腕で押さえつけるのは体格的に至難の業だ。
0374その手の温もりを ◆Z2CJJz2v/o
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2013/02/21(木) 00:00:17.91ID:Jr5qlTrW
「ッ………うぅ! うーッ!」
「痛ッ!?」

エジソンは口元を押さえつけていた指を噛んだ。
手加減などない、ゴリゴリと噛みしめる歯が、柔い肉を破り血が滲む。
それでも祢音は決して手を放すことなく、必死で喰らいつくようにドレインを続ける。

「ぅぅううう!」
「このッ! このッ!!」

互いの口から洩れるのは獣のような唸りだけだ。
もはやそこに人間らしさなどない。
ただ殺そうと必死に食らいつく祢音。
ただ生きようと必死にもがくエジソン。
獣のように泥臭い命のやり取りだった。

だが、エネルギーを奪い続ける捕食者とエネルギーを奪われ続ける被食者では、その差は明確であり決定的だ。
時と共に、エジソンの指を噛む力や、暴れまわる勢いは徐々に弱っていき、最後には動かなくなった。

「ハァ……ハァ………ハァ……………ッ!」

息を切らしながら、動かなくなった男を見下ろす。
エネルギーとは熱量でもあるのか、手に伝わるのは冷たい感触。
エネルギーを吸い尽くされたその体に温かなどない。
生気を吸い尽くされた姿は干からびた木乃伊のようだ。

荒い息もすぐに整う。
傷までは治らないが、人一人の命を啜ったのだ、体力はだいぶ回復できた。
動かない右腕も、変身している間は動くようになる。いざとなれば問題はない。

当初の予定とはかなりずれたが回復という目標は果たせた。
次は武器だ。
死体を漁りその荷物を確認する。

支給品と思しきものは二つ。
粉末状の薬の様なもの。
どのような効果があるものなのかはわからない。
元の持ち主が捨ててしまったのか、それとも初めからないのか説明書の様なものは見当たらない。

そしてもう一つは鞭。
サーカスの獣使いが使うような長い鞭だ。
鞭など扱ったことはないが武器であることには変わりない。

未使用のスキルカードも見つけた。
躊躇うことなくスキルカードを宣言する。

「スキル【植物操作(プラントオペレート)】」
0375その手の温もりを ◆Z2CJJz2v/o
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2013/02/21(木) 00:02:19.87ID:eLRt9WCl
スキルカードが光となり、新たなスキルが体に染みこんでゆく。
新たなスキルの効果が頭の中で自然に理解される、それと同時に別のスキルが生まれるのを感じる。

【食人植物(マンイーター)】
植物越しにエネルギードレインを行えるスキル。

複合スキルの発生。
彼女にとって思わぬ僥倖である。
これで体力回復もやりやすくなった。

能力を活かせる森を目指すべきか。
いや、殺すべき相手がいなければ意味が無い。
植物の少ない市街地は避けたいが、人の集まることろに行かなくては。

そう彼女は次の動きを考えながら。
もう自らが殺めた命を振り返ることもせず。
彼女は戻ることのできない道を突き進んでゆく。

【一日目・朝〜午前/D-3 中央付近】
【椎名祢音】
【状態】疲労(小)、精神摩耗、右腕不能、左腕指先に裂傷
【装備】ダイバーズナイフ、皮の鞭
【スキル】『変身』『エネルギードレイン』『植物操作(プラントオペレート)』『食人植物(マンイーター)』
【所持品】不明薬物、基本支給品×3、不明支給品×0〜2
【思考】
1:植物があり、人の集まりそうな場所を探す
2:早急に片嶌俊介以外全員殺す

【複合能力】『エネルギードレイン』+『植物操作(プラントオペレート)』
【スキル名】食人植物(マンイーター)
【効果】エネルギードレインを植物を通して行える
【持続】植物操作を使用している間
【備考】なし

【トーマス・A・エジソン 死亡】
0377創る名無しに見る名無し
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2013/02/21(木) 01:38:25.23ID:N1GYzO2+
投下乙です
騎士と姫の初戦は善戦したけど敵を逃がしたか
逃げた祢音ちゃんは新しい能力を手に入れて貴重な首輪解除要因のエジソンが……
これ、もしかしなくても積んだんじゃw
0378創る名無しに見る名無し
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2013/02/22(金) 21:18:55.12ID:Ffq9ITOU
あああ…エジソン死んだ…
ただ逆にこれはまなみんに期待ですね(ニッコリ)


そして片嶌イケメンすぎワロタwww
0380創る名無しに見る名無し
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2013/02/23(土) 16:19:14.78ID:QquO0MF6
某所で書き手紹介が流行ってるけどこのロワの場合、どんな感じになるのかな?
自分で書ければ一番早いんだろうけど文才も発想力もないからなぁ……
0382創る名無しに見る名無し
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2013/02/24(日) 17:32:05.08ID:I9gynjN4
これですな
【名前】
【性別】
【年齢】
【職業】
【身体的特徴】
【好きな事・もの】
【嫌いな事・もの】
【特技】
【趣味】
【備考】
0384病の呪い ◆BUgCrmZ/Lk
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2013/03/06(水) 23:12:00.98ID:RESC5A7Q
放送が流れる。
配布された名簿に三城愛理沙の名はない。
おそらくどこかで高みの見物を決め込んでいるのだろう。

愛理沙が何を考えているのか私にはわからない。
こんな目に合わせされているにもかかわらず、それでも私は愛理沙を切り捨てられないし、愛理沙もきっと私を切り捨てられない。
その共依存といえる関係性は、切り捨てようとしても簡単に切り捨てられるものではない。
私は彼女の望むように、与えられた役割を演じるしかない。
殺人鬼としての役割を、先ほどであった少年を利用して。
その利用すべき少年を窺って見れば、何やら様子が少しおかしいようだ。

「どうかした? ひょっとして呼ばれた中に、知り合いでもいた?」
「……いえ、知り合い…………っていうか」

返るのはいまいち歯切れの悪い微妙な反応。
ああ、そういえば、彼はもともと殺人鬼から逃げてきたとかいう話だったっけ。
目の前で殺された誰かの事を思い出していたのだろう。

「…………それより彼の容態はどうですか?」

露骨に話をそらそうとしている感はあるが、まあいいだろう、追及するほどの話でもない。
彼の言葉通り、現在私は放送前に発見した男を診ている。
もちろんこんな濡れ鼠を診たくて診ているわけではない。
彼にせがまれ、身に着けているナース服をまさかコスプレだと言い張るわけにもいかず、半ば強引に看護を任されてしまったからだ。

簡単にとはいえ、しっかりと脈拍や外傷の有無を確認してしまうのは職業病か。
打撲や裂傷などの外傷が多く、体温の低下も見られるが、命に別状はなさそうである。
体力の低下した状態で水中に飛び込んだため、溺れて意識を失ってしまったようだ。

「そうね、意識を失っているみたいだけど、」

ふと、そこで言葉を切り、眠り続けるクランケの顔を見る。
その無防備さは、ある意味いつもの通りの獲物のそれである。
必然、ふと頭の中をよぎる思考がある。

(試してみようかしら…………?)

何を試すかなど言うまでもない。
スキルカードという名の病を発症させるという力である。
愛理沙の用意したオモチャがどの程度のモノなのか、無防備に眠るこの少年を利用して実験してみるのも悪くない。

だが何が発症するかはランダムというのがいまいち、使いどころを躊躇うところだ。
使えるか使えないかを判断するためにも試してみない事には始まらないのだが。
仮に実際に発症したとして、空気感染などでこちらも感染しては元も子もない。
仕方ないので、少しでもリスクを軽減して、使用するとしよう。
0386病の呪い ◆BUgCrmZ/Lk
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2013/03/06(水) 23:13:35.01ID:RESC5A7Q
「――――少し、危険な兆候が見られるわね」
「危険な兆候、ですか?」

深刻な顔をしながら片嶌が問い返す。
よく見ず知らずの他人のためにそこまで深刻になれるものだと関心しながら、そっと眠る青年の頬に触れ『病の呪い』を発動させる。

これで成功、したのかしら?
即時発症で潜伏期間はないと思うのだが。
というかそうでないと使い物にならない。

「ええ、ただ詳しい検査をしようにもここじゃちょっとね。
 出来れば病院かなにかで検査をしたいのだけど、私一人じゃ彼を運ぶのは難しそうだし手伝ってくれないかしら?」
「任せてください!」

快く引き受けてくれる好青年。
という訳で接触感染のリスクは彼に負ってもらうとしよう。
地図を見て確認したところ、病院は1ブロック隣にあるようだ。

「そうね、病院はそう遠くなさそうだし、急ぎましょうか」

そう言って作り笑顔を浮かべながら片嶌の方を見る。
だが、その片嶌は意識を失った青年を背負ったところで、呆けたような顔をして固まっていた。

「…………なんだ、あれは?」

こちらに向けられたものではない、思わず漏れたといった風な片嶌の呟き。
誘われるようにその視線の先を辿ると、私も思わず言葉を失った。

そこにはこちらに近づいてくる異様な影があった。
それは見るからにボロボロで、全身が紅い血に塗れていた。
何より目を引くのは、ここからでも見えるほどの大穴が胸に開いており、看護師である私じゃなくても分かるくらいに、生きているのか不思議な容態だ。
いや、その状態でも動けるのは不気味だが、言葉を失った理由はそこではない。

獣の様な角や異様な色をした皮膚。
それが人間と同じ二足歩行で歩いているのが不思議でしょうがない。
それは、人ではなく、まして獣ですらなかった。
およそこれまでの生涯で目にしたことのない生物。

それは、魔王としか形容し難いモノだった。
0387病の呪い ◆BUgCrmZ/Lk
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2013/03/06(水) 23:14:14.53ID:RESC5A7Q
【一日目・朝/F-3ホテル周辺】
【片嶌俊介】
【状態】ダメージ(中)、疲労(大)
【装備】なし
【スキル】『ブレーキ』
【所持品】基本支給品、不明支給品1〜3(確認済み)閃光弾×2
【思考】
1.篠田を病院に運ぶ
2.弥音を探す
3.愛沢さんと協力

【愛沢優莉】
【状態】健康
【装備】ナース服
【スキル】『病の呪い』
【所持品】基本支給品、不明支給品1〜2
【思考】
0.え?なに?(本日三回目)
1.片嶌を利用…したいなあ
2.殺し合いに乗る
3.F-4病院を目指す
【備考】
※ヨグスは実在せず、この殺し合いの黒幕は三城愛理沙だと思っています。

【篠田勇】
【状態】疲労(極大)、気絶、何らかの病が発病
【装備】なし
【スキル】『重力操作』
【所持品】基本支給品、フラッシュグレネード×4
【思考】
0.…………
1.殺し合いを潰す為仲間を増やす

【魔王】
【状態】ダメージ(瀕死)、疲労(極大)、精神不安定
【装備】なし
【スキル】『落とし穴』
【所持品】基本支給品、釣り竿
【思考】
1.篠田と合流
0390創る名無しに見る名無し
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2013/03/08(金) 00:16:16.08ID:T6esF+kZ
投下乙です。
マズい流れにマズい人が……
リア充高校生はどうなる、どうなれ!
0392創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/03/12(火) 10:03:35.54ID:XXX3/Q3L
乙!
これは光が見えないwww
0394創る名無しに見る名無し
垢版 |
2014/05/10(土) 15:20:28.48ID:1Q5uW2a+
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    ̄ ̄ I WANT YOU              ニュー速(嫌儲)
     FOR POVERTY.ARMY    http://fox.2ch.net/poverty/



     【ひろゆき】今2chで何が起こっているのか?【#偽2ch騒動】
      http://www.youtube.com/watch?v=Rhi87ky-Dqo
0396創る名無しに見る名無し
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2017/07/10(月) 05:00:08.17ID:ugHrL6M5
☆ 日本人の婚姻数と出生数を増やしましょう。そのためには、☆
@ 公的年金と生活保護を段階的に廃止して、満18歳以上の日本人に、
ベーシックインカムの導入は必須です。月額約60000円位ならば、廃止すれば
財源的には可能です。ベーシックインカム、でぜひググってみてください。
A 人工子宮は、既に完成しています。独身でも自分の赤ちゃんが欲しい方々へ。
人工子宮、でぜひググってみてください。日本のために、お願い致します。☆☆
0397創る名無しに見る名無し
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2017/12/27(水) 10:20:12.81ID:C1Z7QFDy
家で不労所得的に稼げる方法など
参考までに、
⇒ 『武藤のムロイエウレ』 というHPで見ることができるらしいです。

グーグル検索⇒『武藤のムロイエウレ』"

ZOOBL8I8KZ
0398創る名無しに見る名無し
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2018/05/21(月) 08:48:17.68ID:tRZnwP6O
知り合いから教えてもらったパソコン一台でお金持ちになれるやり方
参考までに書いておきます
グーグルで検索するといいかも『ネットで稼ぐ方法 モニアレフヌノ』

95WFN
0399創る名無しに見る名無し
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2018/07/03(火) 19:09:12.15ID:f1dClnnX
SSH
0400創る名無しに見る名無し
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2018/10/17(水) 19:08:53.60ID:ZU7x6aHX
中学生でもできるネットで稼げる情報とか
暇な人は見てみるといいかもしれません
いいことありますよーに『金持ちになる方法 羽山のサユレイザ』とはなんですかね

EAB
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