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オリジナルキャラ・バトルロワイアル2nd Part2
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0148ドーン・オブ・リビングデッドを夢見て(代理投下)
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2011/10/17(月) 03:12:01.98ID:Whwvs5Qm
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【一日目・早朝/C-5 劉厳の死体の近く】

【逆井運河】
【状態】健康、疲労
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、スキルカード『二分の一』、不明支給品1〜2
【思考】
1.死体だし、追っかけられるし、また死体だし、もう死にたい…。

【田崎紀夫】
【状態】健康、疲労
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品1〜2
【思考】
1.うわ、これ、死体っスか!? またスか!? また死体スか!?

【一日目・早朝/C-6 林】

【猪目道司】
【状態】健康
【装備】S&W M10(5/6)
【スキル】『未来予知』 『ネクロマンサー』(浸食率0%)
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品2〜4 、予備弾薬(48/48)
【思考】
1.生き残って自由になる。
2.ゾンビのファンガールと共に、紀夫でも捜すかな。

※以下、【ネクロマンサー】によって生み出されたゾンビ
【ファンガール・M・J】
【状態】外的損傷無し
【装備】果物ナイフ
【スキル】『ものまね』
【所持品】基本支給品、
【思考】
1.【ネクロマンサー】所持者に従う。

0149創る名無しに見る名無し
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2011/10/17(月) 03:13:59.74ID:Whwvs5Qm
以上で代理投下終了です。
状態表のみ行数制限に引っかかったので、こちらの独断で分割させて頂きました。
申し訳ない。


ああ、ファンガール……
まあ、やはり一介の中二病患者とベテラン殺人鬼じゃこうなっちゃうよなあ。
ファンガールの一人称視点、面白かっただけに残念だけど、仕方ないね。
ようやく効力を発揮したネクロマンサーがどうなることやら……
0150創る名無しに見る名無し
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2011/10/17(月) 15:46:15.51ID:34Gn9UUx
投下乙
二階堂さんが封印されてしまった…殺人鬼スゲェwww
果たしてゾンビ化したファンガールちゃんの実力は…?
0154創る名無しに見る名無し
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2012/07/02(月) 07:06:01.69ID:BovNgoep
なるほどね
0156創る名無しに見る名無し
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2012/09/10(月) 00:40:21.23ID:EvLnd1We
ほぼ一人の票だった気がしないでもないが

というかそんな情熱あんなら再開させろよww
0157R-0109 ◆eVB8arcato
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2012/10/24(水) 19:12:42.35ID:VOh5ja4r
初めまして、そうでない人はお久しぶりです。
現在、投票で決めた各パロロワ企画をラジオして回る「ロワラジオツアー3rd」というものを進行しています。
そこで来る11/3(土)の21:00から、ここを題材にラジオをさせて頂きたいのですが宜しいでしょうか?

ラジオのアドレスと実況スレッドのアドレスは当日にこのスレに貼らせて頂きます。

詳しくは
http://www11.atwiki.jp/row/pages/49.html
をご参照ください。
0162僕たちの失敗 ◇EDO/UWV/RY (代理)
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2012/11/04(日) 18:55:18.23ID:GGR5rvWO


あの生きる都市伝説フィクションさんがいなくなってしばらくしてのこと。私はとりあえず近くにあった電波塔のてっぺんに登っていた。
理由は単純。他人に迷惑がかからないようスキルをこっそり試し打ちしたかったし、地図と辺りの風景を照らし合わせたかったからだ。
え? どうやってわざわざ登ったって? 気にしないの、そういうのは。元エージェントよ私は。軽いってのこれくらい。
まぁとにかく、登ってね。まずさっそくスキルカードのパワーを解放して、そして試し打ちしたわけですよ。
そして満足したら、今度は一心不乱に地図を見ていたわけですよ。それはもう穴が空くくらいにはね。実際手汗で空いたわ、隅っこが。
で、その結果、気付いたことがあるのよ。いや、ぶっちゃけ気付きたくなかったんだけどこれ。
でも気付いちゃったからには、見て見ぬふりは出来ないんですよ、この問題は。

やってしまいましたなぁ。

実はね、首輪を解析するためのグッズとかメカとかが置いてそうな場所を求めてたの。技術者が腕を振るえるように、ね。
だから私はわざわざこんな高い場所で地図を見ていたんだけどね……どうも、それが出来そうな施設がないのよ。
いや、ホントに。だって見てよこれ。デパートにそんなグッズある? よしんばホームセンターチックなコーナーがあっても、ちょっと厳しいでしょ。
神社とか警察署でこんなもんどうにかなるわけないし……希望があるとすれば病院かな。でも病院に行ってX線検査しても、どうかなぁ。
実際ね……素人なら自転車直すような工具とかドライバーあればいいんじゃね?≠チて思うかもしれないけどね……無理よこれ。
見てよ、つなぎ目一つ無いでしょこれ。ドライバーがあってもさぁ、刺さんないわよ。こんな状態でX線検査してもさ、解決しないっしょ。
だからね、うん……やばい。ちょっと生半可なことじゃあ、この首輪は中を探れそうにはない。エージェントの目で、はっきりとそう分かった。

ほぼ詰んだわー。

やばいなー、どうしよっかなー。
いやー、首輪に対してアクション起こせないのも辛いけど、何よりもフィクションにどう言い訳すりゃいいか考えなきゃなのが辛いわー。
いっそこう、架空の世界に出てくるようなドラゴンがいてくれたりしないだろうか。出来ればこう、すっごく強そうな。
そんでもってぎゃおーとか言いながら熱いブレス吐いてくれたら、この継ぎ目のないガワ≠熄緕閧「具合に溶けて……その前に中身ごと溶けますよねー、わかります。

いや、まぁ、私のスキルでどうにかならないかな? とか思ってたりはするんだけどね。

私はさっき「ほぼ詰んだ」と思ったわけだけど、それが「ほぼ」だったのはそれが理由。
実はだ、今の私ってば……なんか凄い能力ゲットしちゃったわけなのよ。いや、本当に。
試し打ちもしたから分かる。このスキル自体はまったくもって素晴らしいものだ。

ご覧下さい。この凍り付いた電波塔を。
0163僕たちの失敗 ◇EDO/UWV/RY (代理)
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2012/11/04(日) 18:56:40.11ID:GGR5rvWO

私に与えられたスキルカード。それは「エターナルフォースブリザード」とかいう、なかなか奇妙奇天烈な名前のものだった。
曰くこれは、対象を大気ごと凍らせる力らしい。ぶっちゃけ強すぎじゃないですか、と思って電波塔に登ったまま℃獅オ打ちしたんだけど……ほら、ご覧の有様ですよ。
もはやこの電波塔、電波塔じゃない。こりゃ氷山だ。しかもこう、タイタニックに大打撃与えられる類いの硬度の。
だから、もしやこのパワーで首輪を氷付けにしてしまえば、後は割るだけで安全に中身が見られたりするんじゃないかなと思うのよ。
……ただね、それを試す勇気は今はない。何せ首輪なんてまだ一つしか持ってないし、それが仮に凍った状態でも容赦なく爆発されると困る。
しかもほら、下手したら私の手首から先が吹っ飛びますし。それだけは駄目だよね。エージェントが片手吹っ飛ばしてちゃ話にならないですよ。
だからほぼ詰み≠ニはそういうこと。私はもっと首輪を集めなきゃいけない。そうじゃなきゃフィクションとの約束なんて絶対に守れない。
下手な鉄砲数打ちゃ当たる。危険人物相手ならば自分から喧嘩を売ることも視野に入れなきゃ。私は、闘いには無縁ではいられないらしい。
よし、そうと決まればじっとしているわけにはいかない。逆井運河を探しつつも、急いで首輪を集めないと。

だからとりあえず、誰か助けてください。

え? 急にどうしたって? いきなり助けを求めるとかエージェントらしくない? 支離滅裂?
いや、あのね、聞いて欲しいんだけどさ……実は私ね、動けなくなっちゃった!
さっきほら、足下の電波塔めがけてスキルを試し打ちしたって言ったじゃない? そして見事に電波塔は凍って、ね?
でさぁ……初めてだから、コントロール出来なかったのよ。だからほら、見てよ……足首まで凍っちゃってやんの。
本来は電波塔の先まででよかったのに、勢い余って氷がバキバキバキって私の足首まで侵蝕してね。そんでこれなのよ。

助けてー。

どうしようね、これ。レディ・スミスで叩きまくったら氷割れるかな? 割れたら良いな。割れませんかねぇ?
とりあえず自分でも頑張ってみるけど、もしも割れなかったら……ほぼ詰んだわー。

やってしまいましたなぁ。



【一日目・早朝/C-5電波塔のてっぺん】
【イリアム・ツェーン】
【状態】健康、足首から先が凍り付いて電波塔とドッキング、動けない
【装備】M36レディ・スミス
【スキル】エターナルフォースブリザード
【所持品】基本支給品×2、不明支給品0〜1、首輪×1
【思考】
1.やってましましたなぁ。ほぼ詰んだわー。助けてー。
2.参加させられてるであろう逆井運河を探す
3.首輪を解析できる技術者を探す
4.正午に教会でフィクションたちと落ち合う
※参加者候補の名前は記憶しています
※電波塔が凍り付いています

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以上で投下終了です。
したらばがないとの事なので先日のラジオツアースレ(下記)に投下されていました。
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/5008/1351943650/
しばらくはここを使うのもいいかも?

というわけで投下乙!
エターナルフォースブリザードが日の目を見たと思ったら自爆wwwwww アホスwwwwwwwww
マーダーに会う前に脱出したいですね!
0164創る名無しに見る名無し
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2012/11/04(日) 19:19:45.74ID:58Br8/TQ
投下&代理投下乙です
イリアムさん、登場話から失敗しかしてない気がするなw
探してる運河は近くにいるから早めに見つけてもらえるといいね!
0166騎士と騎士 ◇BUgCrmZ/Lk
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2012/11/08(木) 00:35:50.54ID:nvboJMLX
じきに夜も明けようかという頃。
薄暗い山中で、足元すら見えぬ獣道を進む二つの影があった。
一つは姫フランドール・オクティルであり、もう一つは騎士フランツ・O・ブリュデリッヒの影である。

道なき道をかき分けるように先頭を行くのはフランツだ。
周囲への警戒を怠らず、後を行くフランドールのため獣道をかき分け最低限ながら道を整え進む。
その表情にはいまだ疲れの色は見えず、余裕すら感じられる。

対照的に、その後を行くフランドールの顔色は優れない。
見せぬようにはしているがその表情の端からは若干の疲労の色が覗いた。
それも当然。夜行訓練などによりある程度は慣れているフランツとでは溜まる疲労度が違う。

「フランドール様。このあたりで少し休息に致しましょう」

そう言ってフランツが足を止めた。
見れば、少し先に休憩に適しているであろう、比較的開けた平地が見えた。
その提案が自分を気遣っての事だと気づいたのだろう。
フランドールはその提案を否定するように首を振った。

「フランツ様、お気遣いは無用です。今は先を急ぎましょう。
 こう見えても私、山歩きは得意ですのよ?」

この言葉自体は嘘ではない。
フランドールは日頃から城を抜け出して動物や子供らと戯れるおてんば姫だ、山道には慣れている。

だが、整備された山道と獣道ではわけが違う。
加えて、夜道ともなれば、その歩き方も変わってくる。
更に異常なこの状況下における精神的な負荷。
どれも無視できるようなものではない。

「逸る心中はお察しします。ですが、逸ればこそ今はまだ無理をするべきではありません。
 時期日が昇ります、せめてそれまでは身を休めご自愛下さい」
0167騎士と騎士 ◇BUgCrmZ/Lk
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2012/11/08(木) 00:36:55.84ID:nvboJMLX
この手の場面での定番である、自分が付かれたから休もうなどという、気の利いた事をこの武骨な男が言えるはずもなく。
フランツはただ、実直に自らの意思を述べた。実直で不器用な男である。

「……そうですね。申し訳ありません。少々気が逸っておりました」

だが、その裏表のない言葉が響いたのか、フランドールが折れた。
フランドールはフランツに感謝の意を表すと、腰かけに丁度良さ気な岩の上に腰かけ一息ついた。
少し緊張の糸を緩めると同時に、一瞬フラリとするような疲労が襲い掛かった。
そして自分が思っていた以上に気を張っていたことに気づく。

「出発は日の出の後に致しましょう。このような場所で申し訳ありませんが、それまではゆっくりとお休みください」
「承知いたしました。そうですね。それまでまだ時間がありますし、少しお話しましょうか。フランツ様」
「話、ですか?」

その言葉にフランツは眉をひそめる。
必要な事であれば自然とは口を付くが、改まって話をしようと言われると戸惑ってしまう。
彼にとっては女性を楽しませる話術など、あるいは戦闘などより難しい事なのかもしれない。

「ええ、私たちはまだお互いの事を知りません。一時とはいえ主従の誓いを交わした身。
 よろしければフランツ様のお話などを聴かせていただけませんか?」

そう言われては断るのも無粋である。
窮しながらもフランツは腹を決める。
当然、自分語りなど得意ではないが、女性の好む話を無軌道に話せと言われるよりかは、幾分かマシである。

「そうですね…………では、」

そしてフランツはポツリポツリと語り始めた。
友の話を。

■■■■■■■■

偽りの姫君、溝呂木桐子と騎士らしらぬ騎士カイン・シュタインがたどり着いたのは、市街の端にあるとあるホテルであった。
安ホテルと呼んで差支えないような飾り気のない施設だったが、贅沢を言っていられる状況でもない。
ここを一晩の宿と決め、まずは安全確認のためカインがホテル内へと先行した。

「姫様。一先ず待ち伏せやトラップと言った形跡はありませんでしたので、夜明けまではここで休むことに致しましょう」

一通り安全を確認したカインが戻ると、二人はいざという時のため脱出しやすい最下階の一室を陣取り、ようやくの休息に息を吐いた。
真っ先にベットに腰かけ身を休めた木桐子とは対照的に、カインは何かあればすぐに動ける入り口近くに起立する。
周囲にばれぬよう、明かりはつけていないため室内は薄暗く、これと言った娯楽もない。

「このまま休んでるだけってのも退屈ねぇ。
 そうだ、騎士様。何かお話しませんこと?」
0168騎士と騎士 ◇BUgCrmZ/Lk
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2012/11/08(木) 00:39:05.73ID:nvboJMLX
唐突な木桐子の提案にカインはにこやかにに応じる。

「よろしいですよ。どのようなお話をお望みで?」
「そうねぇ。あなたの話なんてどうかしら?
 聞きたいわ。勇敢な騎士様のお話」

そう言って木桐子は誘うように笑う。
その笑みはあるいは妖艶であり、あるいは獲物を狙う蛇の様であった。

その言葉に互いの理解を深めようなどという真摯な気持ちはない。
少しでも相手の情報を知ることで、いざという時のための何らかの弱みを掴もうという魂胆である。

その意図に気づいてかいないのか、カインは変わらず笑顔で応じる。

「構いませんよ、と言っても私に誇れる武勇などそう多くはありませんので。
 つまらない話になるかもしれませんが、よろしければ私の昔話などを一つ」

そしてカインはスラスラと語り始める。
友の話を。

■■■■■■■■

カインがブリュデリッヒ家に従者として迎えられたのは13の時だった。

戻る宛ても住処もないカインはブリュデリッヒ卿の温情により屋敷の一室を与えられ、住み込みで小間使いとして働いていた。
そのためフランツとは同じ屋根の下で暮らしていたのだが、嫡男と小間使いでは立場が違いすぎるため、二人の接点などほとんどなかった。

彼らの関係が変化したのは、とある事件を切欠としていた。

それはカインがブリュデリッヒ家に住みついて1年が経とうという頃、他の使用人らと共にある一室の清掃を命じられた時の話だ。
その一室は他の部屋とは――少なくともカインが入室を許された部屋の中では――明らかに一線を画していた。
まず入室してすぐ目に入るのは壁際につりさげられたブリュデリッヒ家の家紋を模した巨大な旗である。
大理石で拵えられた床の上には、一般人には価値も計れないほどの豪華な絨毯が敷かれており。
壁際には厳かな鎧兜が立ち並び、調度品も一見してわかる一流品ばかりだ。
聞けば、この部屋は昨年、死去したブリュデリッヒ家の大祖父の部屋だという。
このような場所への侵入を許されるのは、着実に自らが信頼を勝ち得てきている証であると考え、周囲の心証をさらに高めるためカインは清掃に励んだ。

だが、その途中、カインはあるものに目を奪われ作業の手を止めた。
それは手のひらに収まるほどの小さな装飾だった。

それはブリュデリッヒ家の大祖父が先の戦乱での多くの武功を認められ陛下より賜ったという騎士の勲章。
その存在感は膨大であり。その絢爛豪華な装飾はさることながら、何よりカインの心をつかんだのはその在り方。
これこそが武力と権力と名誉の象徴。
カインの憧れる全てである。
その象徴に、彼の心は強く魅かれた。
0169騎士と騎士 ◇BUgCrmZ/Lk
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2012/11/08(木) 00:41:36.60ID:nvboJMLX
その夜。カインは高ぶり抑えきれず、こっそりと大祖父の部屋へと忍び込んだ。
くすね取り自分のモノにするなどという大それたことは考えていない。
そんなことをすればどうなるかくらいは理解している。
まずいことだと理解しつつも、だた、どうしても一度手に取ってみたかったのだ。

掃除の際に最後に閉めておくと言って鍵は預かっていた。
そっと音を立てず鍵を開け、部屋の中に忍び込む。
当然中には誰もいない。
カインは吸い込まれるように勲章の前まで移動すると、そっとそれに手をかける。
それを手に取った瞬間、カインは言いようのない高揚感に包まれた。

それは人に、国に、全てに認められた証である。
己の存在を、己の武功を、己の名誉を。
他人のモノではなく、己の力でこの勲章を手に入れる事。
これこそが虐げられ、侮蔑されてつづけた男の、己の野心の到達点なのだと、この瞬間彼はそう確信した。

陶酔するカイン。
それを現実に引き戻すように。
ガチャリと、背後から扉が開く音が聞こえた。

「ッ!?」

カインが振り返ると、そこには慌てて扉から立ち去る小さな影が見えた。
影は一瞬でその場から立ち去ったため、その全容は把握できなかったが、その影が誰のモノであるかはすぐにわかった。
この屋敷に子供はカインとフランツしかいない。つまりあの小さな影はフランツのモノだ。
おそらく、夜中に部屋を抜け出したカインを偶然見つけ、何をしているのか気になりその後をつけていたのだろう。
尾行への警戒を怠った己の不覚に舌を打ちそうになるが、それよりも重大な事実に気付きカインの全身から血の気が引いた。

先ほどまで手に持っていた勲章がない。

慌てて地面を見れば、大理石の床に直撃した勲章は、装飾の一部が砕け欠け落ちてしまっていた。
勢いよく振り向いた拍子に落としてしまったようだ。

フランツに気付かなかった事。
鍵を閉め忘れた事。
目撃されてしまった事。
いや、それ以前に、そもそもらしからぬこんな愚行を犯した事。
いくつもの不覚が積み重なり今の最悪を引き起こした。
取り繕うこともできない、大失態だ。

終わった。何もかも。
絶望の中カインはそう思った。
失意に包まれながら、最低限の体裁を整え大祖父の部屋を後にした。

ブリュデリッヒ家の家宝ともよんでいいモノの欠損だ。
すぐに使用人の誰かが気づくだろう。
勲章を壊した瞬間をフランツが見ていたとも思えないが状況からして、追及されるのは間違いないだろう。
逃げ出してしまおうか、そう思えど行くあてなどない。

いつ呼び出され、首を切られるのか。
それから数日は、生きた心地がしなかった。
死刑を待つ死刑囚の気分だった。
0170騎士と騎士 ◇BUgCrmZ/Lk
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2012/11/08(木) 00:45:32.92ID:nvboJMLX
だが、意外なことに数日たってもカインに何も御咎めが下ることはなかった。

激動する心中を隠しながらも日常は続く。
小間使いである彼に暇はなく、業務をこなしているなかで、数日ぶりにカインはフランツの姿を見ることとなった。

廊下で偶然すれ違う瞬間、カインが見たのは顔を腫らしたフランツの姿だった。

カインはその事情をそれとなく噂好きのメイドに聞いたところ。
大祖父の賜った大事な騎士勲章を、夜中に大祖父の部屋に忍び込んだフランツが誤って壊してしまったという。
あの顔は、その話に激昂した現当主であるブリュデリッヒ卿によるものであり、フランツはここ数日、謹慎と称して部屋に閉じ込められていたという話だ。
品行方正なお坊ちゃんがなぜそんなことをしたのか、などと噂好きのメイドはその後もいろいろとまくしたてていたが、カインの耳にはもはやそんな声は聞こえてはいなかった。

従者見習いという立場のカインが家宝に近い勲章を壊したとなれば、すぐさま屋敷を追放され路頭に迷うだろう。
最悪、この事態に当主であるブリュデリッヒ卿が激昂すれば、小間使いなど命を落としてもおかしくない。

だが、勲章を壊したのが嫡男であるフランツであったという事ならば話は別だ。
追放されることはまずないし、殺されることもあり得ない。
大目玉をくらうだけで済むだけの話だ。

その天秤を顧みれば、フランツがカインを庇うのは当然の事である。
少なくともフランツ自身は何の疑問もなくそう思っていた。

だが、カインの中では違った。
その時カインが感じた感情は一言で言い表せないほどに複雑なものだった。

当然のようにその選択を選ぶ、選べるフランツの環境、人間性への嫉妬。
最大級の弱みを握られた恐怖。
単純に助かったという安堵。
何を狙っているのかという猜疑心。
なにより、この行為を恩に着せるでもなく、何事もなくふるまうフランツの態度は完全に理解不能な代物であった。

その直後の話だった。
フランツが此度起こした愚行に対する罰としてお目付け役が付くこととなり。
年が近かったこともあるだろう、その役目を命じられたのはカインだった。
この命とともにカインは正式な従者として迎えられ、その地位を高めた。

カインの壊した勲章の罰としてフランツにお目付け役としてカインがつけられる。
なんとも皮肉な話だった。

あの日から二人の関係は変化した。
良くも悪くも、劇的に。

■■■■■■■■

「――――それから今日この日までカインは私を支え続けてくれました。
 彼は感謝して若し足りないほどの恩がある」
0171騎士と騎士 ◇BUgCrmZ/Lk
垢版 |
2012/11/08(木) 00:47:33.94ID:nvboJMLX
フランドールがフランツから聞いたのは、彼の従者であり騎士でもあるカインという男との昔話だった。
フランツの言葉の端々から、この場にいないカインへの信頼を感じとり、フランドールは笑みをこぼす。

「カイン様というのは、どのような方なのですか?」

フランツがこれほどまでに信頼を寄せる、カインという男がどのような男なのか。
この場にいないカインへの興味が湧き、フランドールはそう尋ねた。

「ハッキリとした性格故、誤解されることも少なからずありましたが。
 私などは違い何事も器用にこなす、とにかく優秀な男でした」

フランツはそう素直に友を評した。
己の持たぬ器用さを持ち合わせたカインは、憧れの対象だった。

フランツは少しだけ照れの様な表情を浮かべた後。
噛みしめるように口を開いた。

「そして、」

■■■■■■■■

「それで、それからその次期当主って子と友情を育んだって訳ね。素敵な美談ね」

話を聴き終え、木桐子はそう頷いた。
本心からではない。
水商売で鳴らした耳触りのいいただの相槌だ。

「ええ、屋敷に年の近い者がおりませんでしたので、それからは自然と。
 あれからもフランツには助けてもらってばかりで、彼には感謝してもしきれない」

嘘である。
もちろん野盗紛いの事をしていた過去はぼかしてあるし、その他の細かい部分も適当に脚色している。
何よりカイン自身がフランツへ向ける感情は、単純に友情とは言い難い。
この話の意図は、フランツを己の弱点として仕立てことだった。

「どんな人なの、そのフランツって人は?」

興味を持ったのか木桐子がフランツの話題に喰いついてきた。

「そうですね。私と違い、実直かつ誠実な真面目な男でした。
 家柄、実力、人柄どれを取っても非の打ちどころのない騎士の鑑の様な男ですよ」

流れるようにカインは友褒め称える。
心からの本心とはいかないが、客観的な事実としてカインも認めている。

そしてカインは注意しなければ気付かぬような一瞬の間の後。
確かめるようにように口を開く。

「そして、」
0172騎士と騎士 ◇BUgCrmZ/Lk
垢版 |
2012/11/08(木) 00:50:54.49ID:nvboJMLX
■■■■■■■■

『彼は私にないモノを持った、掛替えのない友ですよ』

持つ者と持たざる者。
器用な男と不器用な男。
それが互いに共通する真実だった。

【一日目・深夜〜早朝/C-2 山道】
【フランドール・オクティル】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品1〜2
【思考】
0.夜明けまで休息をとる
1.すべての悲劇を止める
2.ヨグスにしかるべき裁きを与える

【フランツ・O・ブリュデリッヒ】
【状態】健康
【装備】なし
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品1〜2
【思考】
0.夜明けまで休息をとる
1.フランドールに忠誠を誓い、その理想を叶える

【一日目・深夜〜早朝/F-5 市街地】
【カイン・シュタイン】
【状態】健康
【装備】スタンロッド
【スキル】『その歌をもて速やかに殺れ』
【所持品】基本支給品 、不明支給品0〜1
【思考】
0.夜明けまで休息をとる
1.トウコと共に行動をし、情勢を見る。

※スタンロッド
 長さ60センチほどの金属製のロッド。スイッチを入れるとスタンガンの様な電撃を発し、触れた者を気絶させうる効果がある。
 数回使うと電気切れして、ただの固い鉄の棒同然になる。

【溝呂木桐子】
【状態】健康
【装備】魔王のドレス
【スキル】不明カード
【所持品】基本支給品 、液体の入った小瓶
【思考】
0.夜明けまで休息をとる
1.カインと共に行動し、守って貰う。

※魔王のドレス
 魔王が女性の姿をするときに身につけるドレスの内一つ。非常にエロスなデザイン。
 防御効果など何らかの魔法効果が付与されている。

※液体の入った小瓶
 10p程度の小瓶に、何かの液体が入っている。説明書きがあったため、桐子はその効果が何かは知っている。
0173創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/11/08(木) 22:04:16.82ID:riv/6NbI
投下乙!
うーん、この2通りの騎士コンビ。
それぞれがそれぞれを補い合う感じだったんだろうなあと、思ったり。
0174創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/11/13(火) 01:14:31.91ID:x/PgsBrY
ここに来て投下だと……
騎士コンビは、果たしてどうなるのかなあ。
ロワで騎士とか、嫌な予感しかしないですわw
0177目まぐるしく回る事態 ◆42Xd0tQxv2
垢版 |
2012/11/13(火) 01:15:24.88ID:F65I4UDd
魔法少女。
一言で言ってしまえば、ファンタジーの生き物だ。
どのあたりが魔法少女なのかは、魔法少女ごとに異なる。
その中でも、めぐるの能力は異色の方だった。
私が思い描いていた、魔法少女とは遠くかけ離れた能力。
自分がもしあの能力だったら、きっと絶望していたと思う。
それでも、そんな能力を手に入れさせられても。
めぐるは、いつも笑っていた。



二人は相談の結果人が集まりそうな場所を目指す、ということを決めた。
地図との照らし合わせで、一番近かったランドマークが南の学校だったため、そこに向かうことにしたのだ。
歩きながら、二人は会話を紡いでいく。
日常生活のこと、好きな食べ物のこと、大切な友人のこと。
他愛もない会話を挟みながら、笑い、怒り、悲しみながら歩き続ける。
ここが、殺し合いの現場であることを忘れようとしているかのように。
「ねえ」
そんな会話の途中、ふと智美がさくらを呼び止める。
「やっぱ、言っとく」
さくらが振向いたとき、その顔は少し強張っていた。
「めぐるの能力について……」

聖澤めぐるの能力。
それは血液を代償に力を手に入れるというシンプルかつわかりやすい能力だった。
血液を消費すれば消費するほど、強大な力を手に入れることが出来る。
腕一本をカラカラにするほどの血液を消費すれば、素手の一振りでそこらの人間は即死させられるほどだ。
病院生活の聖澤めぐるが健常な肉体を手に入れることが出来たのは、この能力をじわじわ使っていたお陰だ。
但し、そのまま生活し続ければ血液が枯渇して死んでしまう。
だから戦いの場に身を投じ、血液を浴びて染み込ませる事によって、自身の血液を消費しないようにしていた。
彼女が魔法少女としての武器に双剣を選んだのは、近接戦闘を必要とし、大量の血を浴びることが出来るから。
聖澤めぐるは普通の生活を守るために、戦い続けていたのだ。

「嘘……」
思わず漏れた言葉は、否定。
「ホントだよ」
否定を、否定する。
「あのヨグスってのが、どーやってめぐるとアタシの力を抜き出したのかは知らない。
 けれど、本当にめぐるの力がそのままだったとするなら……」
一息ついて、智美はさくらへ警告する。
「もう一度言う、頼むから無理だけはすんな」
無言。
警告はさくらの心に届いたのかどうか、智美は知ることは出来なかった。
学校は既に、二人の目の前まで近づいていた。
0179目まぐるしく回る事態 ◆42Xd0tQxv2
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2012/11/13(火) 01:15:41.44ID:F65I4UDd
「琥珀さん! 見てくださいよコレ! 発電所っすよ! マイクロ波でウニョニョニョ〜ンっすよ!?」
バカバカアンドバカ、バカにバカを上塗りしたようなキングオブバカの発言が脳を揺さぶる。
考えるだけでも頭が痛くなってくる、やはりまともに取り合わないのが正解だったか。
バカの思いつきのような「発電所に行きましょう!」という発言に付き合った結果がコレだ。
バカは大騒ぎ、電波シスターは何考えてるのかわからない。
先が思いやられる、いや既にもうどうしようもないのかもしれないが。
バカと電波を放っておき、巨大な画面に記された数々の情報を頭に入れていく。
マイクロ波による発電、明らかにオーバーテクノロジーである存在による膨大な発電量。
この会場の電気を全て賄えるほどの技術が、あんな小さなパラボラアンテナで実現できるというのか。
「まあ、宇宙人の技術だからムリもクソもないか……」
あの二人に聞こえないようにぼやく。
続けて操作盤をいじくり、様々な項目を閲覧してみる。
そのうちの一つ、監視カメラの映像を見ていたときだった。
何故だか分からないけれど引き込まれるような感覚に襲われ、その画面に釘付けになっていた。
何か嫌な予感がする、なぜかその画面から目を離すことが出来ない。
「璃乃ちゃん! パラボラ見に行こうぜ! パラボラ!」
その時、バカの声が頭に響く。
パラボラの映像を見ていた事を察してか、いやただの好奇心か。
電波女は既に言いくるめられ、あのバカについていくようだ。
流石に一人取り残されるのも面倒だと思ったので、私も渋々ついていくことにした。

それが、あんなことになるなんてこの時は全く考えていなかった。



少しずつ、視界が戻る。
足下にあるのは一人分の死体。
特に興味を引かれることなく、その上に浮き上がったスキルカードを体に取り込む。
技能は大いに越したことはない、より多くの技能があれば、殺人を容易にすることができる。
この場の全てを殺戮し尽くすと決めた以上、有利に働く物は全て奪い去る。
ただ、それだけ。
その時、耳に二人分の足音が聞こえてきた。
特に抱く感情はない。
生きている奴がいるのならば、殺すだけ。
0181目まぐるしく回る事態 ◆42Xd0tQxv2
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2012/11/13(火) 01:16:26.14ID:F65I4UDd
自信がなかった。
戦いの場に立ったことなんて当然あるわけもなく、ましてや人殺しの経験なんてもってのほかだった。
ああは言ってみたものの、やはりいざとなった時に彼女を守れるかどうかは正直言って不安である。
そもそも、戦いとはどうすればいいのか?
人を殺すとは、どういうことなのか?
今まで考えたこともなかったことが、頭の中でグルグル回って止まらない。
気がつけばただ足を動かすだけで、目の前の光景なんてまったく見ていなかった。
だから、反応できなかった。
「さくら! 危ない!」
その声に反応して意識を向けたとき、全身を貫くような痛みに襲われた。
「クソッたれ!!」
襲い掛かった雷をすんでの所で避け、拳銃を数発放ちながらさくらを抱えて脇に隠れる。
遠距離から放たれた光速の雷は、一般人のさくらには到底避けられない物だった。
自分は殺気を感じ取り先に一歩引いていたが、さくらはその強烈な雷に焼かれてしまった。
白と水色を基調としたドレスが薄く焼け焦げ、体中からは煙が立ち登っている。
「とも、み、ちゃ……」
「喋るな!」
声が弱弱しくなっている上、目に見えて衰弱しているのが分かる。
雷を放ってきた相手がこちらに向かっていることは分かりきっている。
拳銃を数発打ち込んだところで、どうにかできているとは到底思えない。
危機は迫っている、それは分かっているのに答えが見えない。
この状況ではさくらは戦うことは出来ない。
しかし自分の武器は拳銃のみだ。
雷を操るのが相手なら、圧倒的に分が悪すぎる。
この先に待ち受けるのは、二人とも死ぬ未来しかないというのか。
「あの、ね」
さくらが言葉を紡ぎ続ける。
今にも死んでしまいそうなその声は本当に弱弱しく。
それでも、智美の耳に届き続ける。
「めぐる、ちゃんに、よろ、しく」
その一言の後、さくらは笑った。

ああ、死ぬんだな。
自分のことは自分が一番よく分かっている。
体から力が抜けていくのが何よりの証拠だ。
いろいろ考えたが、やはり自分に戦闘なんて出来るわけも無い。
このまま起き上がったとしても、自分は微塵の役にも立ちはしないだろう。
いくら戦闘経験があって手には拳銃があるとはいえ、智美ちゃんがあの雷に一人で対抗するのははっきりいってムリだろう。
ではどうすればいいか、それを考えたときに智美の言葉が頭を過ぎった。
聖澤めぐるの能力は、血液を力に変える能力。
ならば、この身に流れる血を全て力に変えれば。
少なくとも智美ちゃんだけは生き残れるのではないか。
スキルカードは装着者が死ねば、その遺体の上に現れる。
ならば、やるしかない。
そうすれば、彼女は生き残れるのだから。
彼女は、この場所でやることがある。
自分もやることはあるが、この状況をどうにかできるのは彼女しかいない。
だから、彼女に全てを託す。
お父さん、お母さん。
先立つ不幸をお許し下さい。
ごめんなさい。
智美ちゃんへ。
絶対めぐるちゃんを見つけて、殺し合いを止めてください。
任せっきりになるけど、ごめんなさい。

ああ。
死にたく、ない、なあ……。
0183目まぐるしく回る事態 ◆42Xd0tQxv2
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2012/11/13(火) 01:16:51.50ID:F65I4UDd
無感情。
目に映った二人の少女に対し、特に思うことも無く雷を放っていく。
一人が素早く反応し、此方に向けて銃弾を打ち込んできたのは意外だったが、特に驚くことも無い。
一歩ずつ確実に歩み寄っていく、命を確実に刈り取るために。
一歩ずつ、一歩ずつ、近づいていく。
その途中で、銃を撃ったほうの少女が現れる。
雷を浴びた方の少女のような衣装を纏いながら。
「テメぇだけは……」
少女が息をすうっと吸い込む。
「ぶっ飛ばす!!」
その一言と共に、少女は一瞬で自分の目前に現れた。
超速で振りぬかれるその拳に、全く反応することは出来なかった。
左頬に突き刺さるその力が、全身をふわりと浮き上がらせる。
そして自分の体が、まるでギャグ漫画のように。

空を舞った。

「……馬鹿野郎」
襲撃者の男を一撃で吹き飛ばした後、めぐるの衣装を纏った智美は小さく呟く。
さくらはあの一言の後、眠るように死に果てて行った。
浮かび上がった一枚のスキルカードと、青ざめた死体を見て全てを察する。
その身に宿る全ての血液を、力へと変換したことを。
「馬鹿ヤロォオオオオオオオオオオオ!!」
そのお陰でこの窮地を切り抜けることは出来た。
だが、その代償はあまりにも大きすぎた。
能力が無い自分なんて、こんなにも無力で、弱くて。
どうしようもないのだろうか。
「めぐる……早く逢いたいよ……」
親友の名を、この能力の本来の持ち主の名前を小さく呟く。
涙が一粒、ぽとりと落ちた。
0184目まぐるしく回る事態 ◆42Xd0tQxv2
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2012/11/13(火) 01:17:08.06ID:F65I4UDd
管理部から少し離れた場所にある小型のパラボラアンテナ。
そこに近づくにつれてバカのテンションはうなぎのぼりに上がっていった。
バカっぽい単語の一つ一つが、イライラを加速させていく。
そして、ようやくその直下に辿り着いた時。
一人の人間が、超速でアンテナに突っ込んできたのだ。
「なッ……!?」
驚いたのはそれだけではない。
その男の全身から雷が発せられ、パラボラアンテナにその光が密集され、一筋の光となって男に打ち出された。
パラボラからの雷を、さらに自身の雷で相殺する。
そんなありえない光景に意識を奪われていた。
超人のような男が、空から舞い降りてくる。
「す、すっげ」
そこまで言いかけたバカの首が、瞬時に飛ぶ。
熟練された者の、疑いようの無い動き。
それを認識したとき、自分の視界が宙を舞う。
ああ、私も首を刎ねられたのか。
そう思ったと同時に、意識が暗転した。

「あなた、天罰が下りますよ」
一人残された愛子は、突然の襲撃者にその一言を放つ。
瞬時に二人を肉塊にして見せた男に、恐れの一つすら抱かずに。
「関係ないな」
男も、勿論恐怖しない。
恐怖する理由が無い。
「神なんざ、居る訳が無いからな」
その一言と共に雷を放ち、まるで日常生活のように一人の女子大生の体を真っ黒の炭へと変えていく。
天罰だろうがなんだろうが、恐れる物は何も無い。
自分に立ち向かう存在がいるのならば、殺すだけだから。

次の獲物を求めて、オーヴァーは歩き出す。
0186目まぐるしく回る事態 ◆42Xd0tQxv2
垢版 |
2012/11/13(火) 01:17:34.53ID:F65I4UDd
【龍造寺さくら 死亡】
【花緒璃乃 死亡】
【白井慶一 死亡】
【琥珀愛子 死亡】

【一日目・早朝/E-2学校】
【安田智美】
【状態】健康
【装備】小型拳銃
【スキル】ブレインイーター、『ある魔法少女の魔法能力(めぐる)』
【所持品】基本支給品、空のカード(残り9枚)、不明支給品1〜3(さくら)
【思考】
基本:めぐるととっとと会って、早くこの殺し合いをぶっ潰す
1.……バカ
※どの小型拳銃は不明。残弾も不明ですので、後の書き手様に任せまする。
※双剣はめぐるの魔法少女としての能力で生成された物です

【一日目・早朝/E-7・発電所、パラボラアンテナ傍】
【オーヴァー】
【状態】左頬にダメージ
【装備】サンダーソード、ヘルメット
【スキル】『剣技』『平賀源内のエレキテル』『雷剣士』『魔弾の射手』『<<]]巻き戻し』『光あれ!』『復讐するは我にあり』
【所持品】基本支給品、デザートイーグル、金属バット アンドロメダ星マジカル消臭スプレー、金槌、不明支給品×0〜1(愛子)
【思考】
1.この場にいる全てを皆殺し
2.最後にヨグスも殺す

----------

以上で投下終了です。
0189 ◆yXlaa6e0uc
垢版 |
2012/11/13(火) 22:24:07.29ID:egd8DAsY
短いですが、投下します
0190さよなら、私  ◆yXlaa6e0uc
垢版 |
2012/11/13(火) 22:24:49.91ID:egd8DAsY
歩く。
歩く。
今にも倒れそうになりながら、歩く。

歩かなくては。
歩かないと。
ここで倒れるわけにはいかない。
せめて、どこかの岩陰に隠れなければ。

少し前までの自分の判断を呪う。

こんな崖まで深追いしなければ。
あの二人が山に逃げ込んだ時に諦めていれば。
そもそもあの二人を襲っていなければ。
最初からこの殺し合いなんかに乗らなければ……

「……っ!」

一瞬、頭に浮かんだ後悔に戦慄する。
私は一体何を考えているんだろう。
あの二人を死なせた私が、後悔するなんて許されるはずはないんだ。

もう、正義のヒーローには戻れない。
日常に戻る資格なんて、ない。

だから私はこのカードを使う。



「【エネルギードレイン】」



少し前に同じ能力を持った怪人と戦ったことを思い出す。
愛する人を守るためにすべてを壊そうとした悲しい人だった。
あの人は命は落としたけれど、大切な人は守り抜いた。

これは私の決意だ。
あの人と同じように大切な人を守るためにすべてを殺す。

これは私への罰だ。
一瞬でも人の命を奪ったことを後悔してしまった私への罰。
0191さよなら、私  ◆yXlaa6e0uc
垢版 |
2012/11/13(火) 22:26:25.39ID:IHoe+6Az
もう手をつなぐことはできない。
だけど、構わない。

私が後に戻ることはない。
私が後を振り返ることはない。
私が止まることは許されない。


私はこれから人を利用し、裏切り、殺すだろう。

だから、最後に一言弱音を吐いて終わりにしよう。

殺した二人へか片嶌さんへかそれとも昔の自分自身へか、
誰に向けたものなのかは自分でもわからない。
でもこれは私の、椎名祢音の最後の言葉。


「ごめん…なさい」


自分の中でナニカが変わるった、そんな音が聞こえた気がした。


【一日目・黎明/C−3 山道】
【椎名祢音】
【状態】疲労(極大)、精神摩耗
【装備】ダイバーズナイフ
【スキル】『変身』『エネルギードレイン』
【所持品】基本支給品×2、不明支給品×0〜2(確認済み、武器はなし)
【思考】
1:????
2:片嶌俊介以外全員殺す
3:しばらく休む。場合によっては同盟の結成や保護対象として演技をすることも視野に。
0193創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/11/15(木) 01:06:25.02ID:SnpL/R4s
投下乙!

うーん、もう戻れない決意ってのはこう、何回見てもツライっすなあ。
望みが叶うといいけれど……
0195創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/11/23(金) 10:06:16.23ID:RK1dTfxb
久々に来たら来てたage
智美ちゃんこれ精神やられちゃうじゃないですかーやだーwwwwww
0196 ◆IjfUSUNsIR9f
垢版 |
2012/11/25(日) 09:28:57.28ID:Cg9ab6Zd
愛澤、片嶌、篠田を予約
0197創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/11/25(日) 18:04:12.63ID:HmaFz5UI
http://junko717.exblog.jp/
魔法をかけてあげよう、小便小僧に・・・
僕に魔法をかけて、小便小僧に・・・
この野郎、小便はかけんなよ・・・
0199創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/11/29(木) 00:23:50.40ID:FdSgMDrF
wktk
0202Don't think just feel!! ◆IjfUSUNsIR9f
垢版 |
2012/11/29(木) 23:03:01.03ID:FdSgMDrF
―――高校生片嶌俊介の同級生、西城幹事の談話


え?片嶌?…ああ、片嶌ね。知ってるぜ、そりゃあ。
知ってるも何も俺、同級生だし!で、何?

…えっ?片嶌がどんな人間か教えろ、だって?
物好きだなあ。よりにもよってタッちゃんや金村とか、ああいう人気株じゃなくて片嶌だなんてさ。
まああいつは出来る奴だし、隠れ人気は高いとは聞くがね…お、すまんすまん、独り言は俺の悪い癖だ。

んで、なんで片嶌の事を知りたいのか…って、理由は聞かない方が良さそうだな。
今さっき、バツの悪そうな顔しただろ。へへ。凄いだろ俺。
…顔に出てる。分かるんだぜー!俺!

あ、で、片嶌だよな。話戻すか。

片嶌はな、一言で言えばあいつは優れた奴だよ。
何より、勉強も出来るし、スポーツも、性格もなおよし。
ホントは俺らみたいな脳ミソまで筋肉出来ている奴らなんかいる所より、法英とか爽明館とか、鹿瀬とか。エリート階級にいるべき人間なんだよな、アイツ。
ただ、ただアイツはバスケがしたいってだけでこの高校に来たんだっ、て自分で言ってたよ。
意思の固さも、誰にも負けないって事かな。

…ん?他に何か無いのかって?
ああ。無い訳じゃない。ただ、アイツに関しては多すぎるんだ。言うことが。
アイツとあくまでもクラスメイト止まりの俺でもな。

ただ、ただこれだけは言っておきたい。いいか、アイツは………

んっ?ああ、やべ次家庭科じゃーん!!
わり、ちょっと急がなきゃ!ごめんな、また後で!

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
0203Don't think just feel!! ◆IjfUSUNsIR9f
垢版 |
2012/11/29(木) 23:03:52.59ID:FdSgMDrF
「ここまで来れば大丈夫だろ…」

片嶌はそう呟くと額の汗を拭う。
ふう、と一息をつく。早朝故か、妙に肌寒い。
ただ体は火照ってはいる。尚更、気温との差で落ち着いてくる。

また、一息。
すると、襲いかかる疲労。ただ無心のまま、走り続けた為か、片嶌に襲いかかる。
普段なら…そう、高校バスケの名門、秋月高校で二年生ながらPG(ポイントガード)としてスタメン出場している程優秀な片嶌なら、こんなインターバル、屁でも無い筈なのだが。
今の彼に襲いかかるのは、宍岡との闘いや逃走による身体的疲労だけではない。
(…本当に、人が死んだ。俺の目の前で)

宍岡琢磨が死んだ事。
呼吸が落ち着いてくる程、あの光景が頭を過る。
片嶌とて、既に高校生とはいえ17だ。自分の祖父は病気で亡くなった事は、よく覚えてる。
ただ、天寿を全うした祖父の死と宍岡の死は根本的に違う。
死する事の理不尽さ。
急に死を与えられた現実。
祖父のように、愛する人々からも見送られず、死ぬ準備も出来ないまま、死を受け入れるこの状況。

(…俺も、死ぬのか?あんな風に)

片嶌を襲う、『死への恐怖』。
無情さ、やるせなさ、理不尽さ、悔しさ。
それらを押し殺して殺される、現実。
急激に体が固まる様な感覚。
0204Don't think just feel!! ◆IjfUSUNsIR9f
垢版 |
2012/11/29(木) 23:04:45.65ID:FdSgMDrF
「祢音…」

果たして、俺は守れるのだろうか。
あのいたいけな、純粋無垢な彼女を。
ただの非力な高校生の俺が―――

「ねえ、ちょっといい?」

ハッ、とする。
女の声。いきなり頭の中から現実へと引き戻される声。
声がした方向を向く。
そこに立つのは、ナース服の女。
眼鏡をかけ、髪の毛は黒色のショート。
垂れ目ながらも目は二重で、おっとりとしながらも何処か聡明さを感じさせる。
唇は弾力があり、肌は白い。
ピッチリとしたナース服の上から故か、更にその大きさ、形が分かる大きな胸。
少し汗がにじみ出ている故か、何処かそれさえも見てる者に不純な動機を伺わせる。
何処か庶民的で、でも何処か余裕のある、手の届かない雰囲気。
『白衣の天使』だ。
これでこそ、全男性が思い浮かぶ『ナース像』。

「ねえキミ、色々考えてる前に手を離してほしいなーって」

ナースの女はそう片嶌に言うと慈しみを持った、それでこそ微笑んだ。
それに対し片嶌は、「あっ」と発すると手を放した。
必死で気づいてもいなかった。
全力で逃げてる最中にあった、この女性の手を引き片嶌は逃げてきたのだ。
またこれも無心のまま。
0205Don't think just feel!! ◆IjfUSUNsIR9f
垢版 |
2012/11/29(木) 23:06:03.45ID:FdSgMDrF
「あ、あのー、すんません。いきなり引っ張っちゃって…俺、片嶌俊介っていいます」

やらかしたのかと不安になった片嶌はとりあえず謝り、名前を告げる。
敵意が無いのは示すため、両手をホールドアップ。
それを聞いた愛沢はクスリと笑う。

「謝らなくて平気だから、ね。片嶌君だっけ?」
「あ、はい」
「固まらないでいいから。気軽にいいわよ」
「…えーと…じゃあよろしく」
「よろしく。私、愛沢優莉。見ての通り看護婦やってるわ。大丈夫よ両手なんか挙げなくて。私も殺し合いはする気無いから」

真っ赤な嘘。愛沢は自分で話しながらも自嘲を覚えた。
本当ならば、この場でも殺せるのだ。自分の手で。すぐにでも。
愛沢の記憶が確かであれば、片嶌はただ人を助けたいが為に自分を引っ張って、ここまで連れてきた。
そんな馬鹿正直な人間は、おそらく人を裏切ったりする事はない、純粋な男。
それに、その時の眼は血走りながらも真っ直ぐであったのも、その一因。
ただ、愛沢優莉は考える。


何もこの場で殺す必要は無いし、一応表向きは友好を示すべきだ、と。
0206Don't think just feel!! ◆IjfUSUNsIR9f
垢版 |
2012/11/29(木) 23:08:04.90ID:FdSgMDrF
殺しには慣れている。
何人も、いや下手すれば何十人と患者を殺害してきた自分からすれば、別に殺すことなどどうだっていい。
しかし今は違う。
それは殺す相手が少なからず健康であることだ。
目の前の片嶌が今体力を消耗しているからといって、寝たきりの患者達とは違い片嶌は下手すれば逃げられるだろう。
そうしたらどうなる?自分の悪評が広まると少なからずやりづらい。

愛沢優莉は考える。
よく自分の表面上の、この殺し合いを裏で操る主、三城愛理沙が、よく言っていた事を。

『優莉ちゃんは何も考えなくていいの。人をどう殺すのも、用意するのも、根回しも、そして、貴女に人をどう殺させるかも。私が全部してあげるから、ね?』

(いつも、私の本質を見抜いた様な、そんな目であの人は見ていた)

自分が考えないが為に不易な事態に陥る事を、主である三城はいつも見抜いていた。
それは分かってる。だから深く考えなかった故に三城に弱みを握られてしまうのだ。
だからこそ。愛沢優莉は考える。
普段使わなかった頭をフル回転させて。
そして、結論。


片嶌俊介を、利用する。
この純粋な青年を自らの奴隷にする。
丁度三城愛理沙が自分にそうしたように。
0207Don't think just feel!! ◆IjfUSUNsIR9f
垢版 |
2012/11/29(木) 23:09:01.64ID:FdSgMDrF
(…こんな時まで、まるで二番煎じね)

こんな時に、やはりあの三城の存在が自分を動かしている。
三城が偽善とは思えぬ笑顔と雰囲気で自らに接近した事を思い出して。
不必要になれば、その時に殺せばいい。
この純粋で真っ直ぐな眼を、濁りきった、よどんだ眼にしてみせよう、と。

まずは、無害であることの証明の為に更なる情報交換がいるのかもしれない。だったらまずは。

「あの、片嶌君はこの殺し合いに知り合いは―――」
「お、おい大丈夫か!?しっかりしろ!!」
「…ん?」

片嶌に切り出した瞬間、片嶌は目の前にはおらず、川の沿岸に居た。
川から引っ張るように、1人の男を助けているのだろうか。

「愛沢さん!いきなりだけど手伝ってほしいんだ!運がいいことに看護婦さんらしいし…」
「え、あの片嶌く「くそっ、これどうすればいいんだよ愛沢さん!」

片嶌が、自分に真摯な表情で訴える。
仮にも、全力疾走した人間がどうして人を助ける気力まで残ってるのか。
愛沢は呆れながらも、どこか軽蔑に近い敬意を抱きながら、片嶌と男に近づいていった。

(…あれ?これ上手く行くのか凄く不安なんだけど)









愛沢優莉は、考える。
片嶌俊介は、純粋であると。
0208Don't think just feel!!
垢版 |
2012/11/29(木) 23:10:16.01ID:FdSgMDrF
【一日目・早朝/F-3ホテル周辺】
【片嶌俊介】
【状態】ダメージ(中)、疲労(大)
【装備】なし
【スキル】『ブレーキ』
【所持品】基本支給品、不明支給品1〜3(確認済み)閃光弾×2
【思考】
1.目の前の人を助ける
2.弥音を探す
3.愛沢さんと協力

【愛沢優莉】
【状態】健康
【装備】ナース服
【スキル】『病の呪い』
【所持品】基本支給品、不明支給品1〜2
【思考】
0.え?なに?(本日二回目)
1.片嶌を利用…したいなあ
2.殺し合いに乗る
3.F-4病院を目指す
【備考】
※ヨグスは実在せず、この殺し合いの黒幕は三城愛理沙だと思っています。
【篠田勇】
【状態】疲労(極大)、気絶
【装備】なし
【スキル】『重力操作』
【所持品】基本支給品、フラッシュグレネード×4
【思考】
0.……魔王
1.殺し合いを潰す為仲間を増やす
0209創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/11/29(木) 23:57:32.59ID:dPgPZn5c
投下乙!
なるほど、積極的に殺すのではなく……
利用する立場から、利用される立場へ動こうとしているけれど、相手は純粋だからなあw
0210 ◆Z2CJJz2v/o
垢版 |
2012/11/30(金) 02:03:55.94ID:A9fV2fMo
投下乙っす
私も書けたんで投下しますね
0211熱き血潮に ◆Z2CJJz2v/o
垢版 |
2012/11/30(金) 02:05:40.13ID:A9fV2fMo
――――豪と、虚空を切り裂きながら板垣退助の剛腕が奔る。

板垣が放った一撃はまさに必殺。
直撃しただけで跡形すら消し飛ぶのではないかと思うほどの一撃が、人体急所である水月に正確に叩き込まれた。

だがしかし相手は人外。魔の頂点たる大魔王である。
これほどの一撃を受けながら、平然と魔王は反撃の一撃を繰り出した。

「むっ!?」

その一撃を躱さんと、その場を飛びのこうとした板垣が怪訝の声を上げ動きを止める。
何時の間にそこにあったのか。
見れば、魔王の腹から口のようなものが生えていた。
そしてその口が板垣の放った右拳に喰らいつき、その回避行動を封じていた。
咄嗟に力を込め、無理矢理拳を引きその高速から脱するも、そこに容赦なく魔王の鉤爪が振り下ろされる。
半端な刃物では傷つける事すらかなわなかった板垣の皮膚が容易く切り裂かれ、そのまま肉を抉り鮮血が舞う。
板垣がたたらを踏み、僅かに後方に下がった。

『■■■■■■■■■■■■■』

久々の肉の感触に歓喜するような、声ならぬ咆哮。
穏やかだったこれまでの姿とはかけ離れた、己が魔性を剥き出しにした魔王の姿。
だが、その魔性を、誰よりも恐れ、誰よりも忌み嫌っているのは他ならぬ魔王自身に他ならない。

強大な力は同時に、強大な凶暴性をも秘めていた。
その野生がいつ爆発してもおかしくない、魔王は常に、そんな危うい状態だった。

暴虐を是とし、殺戮を良とする。
そんな、価値観ならばよかったのだろう。
だが魔王は違った。
平和を愛し、日常を好む。
そんなあまりにも普通な、あまりにも人間的な価値観。

その不幸は魔王として生まれ。魔王にふさわしい力を持ちながら、魔王らしからぬ人間性を持ってしまった事にある。
故に、魔王は恐れていた。
己の力を、己の暴力を、己の暴走を。
そのため、普段の魔王は己の力を制御するために、その力の大半、実に七割を力の抑制に割いている。
それにより、暴力を律する理性と柔和な精神を獲得した。
それが俗に第一形態と呼ばれる姿である。

だが、魔王という立場上、自称勇者や騎士、冒険者との戦闘は少なからずあった。
中には強者もいる。
平和を好む性分とはいえ、素直に殺されるほどお人よしではないし。
自らの役割を放棄するほど無責任でもない。

そのために生み出したのが第二形態。
理性と本能の釣り合いが取れるぎりぎりのラインまで力を解放した戦闘用の姿である。

そして、この最終形態。
といっても、最終形態とは名ばかりである。
何のことはない、力を押さえつける事をやめただけ。
最終ではなく最初。
魔王の、真の姿だ。
0212熱き血潮に ◆Z2CJJz2v/o
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2012/11/30(金) 02:10:35.59ID:A9fV2fMo
『■■■■■■■■■■■■■』

押さえつける理性から解放された、人でも獣でもないモノの雄叫び。
破壊衝動の赴くまま、魔王は板垣へと襲い掛かる。

それに対し、板垣は身構える。
相手の次の攻撃を予測し、後の先で討つ心積もりだ。
来るのは、爪か足か、それとも牙か。

だが、意外!それは尾先!

人類には存在しない部位からの攻撃である。
完全に意表を突かる形となった板垣の身を、鞭のようにしなりを上げた尾先が強かに打ちつけた。
破裂するような衝突音。
100倍もの重力に耐えきった板垣の体制がぐらりと崩れる。

こうなるとさすがの板垣も認めざる負えない。
一国の軍事力に匹敵するとされている板垣退助の武力が、目の前の相手に完全に後れを取っているという事実を。

それも当然。相手は一国どころか世界を支配した大魔王だ。
賢者や戦士といった仲間もおらず。
伝説の装備も持たず。
拳ひとつで簡単に圧倒できる相手ではない。

だが、こんなことなど珍しい事ではない。
意外に思われるかもしれないが、苦戦など彼には珍しい事ではないのだ。

万の軍勢相手に疲弊し追い詰められた事もあった。
政界に蔓延る魔物どもを相手に苦戦を強いられたこともあった。
理解なき国民に理解を訴えかけるため苦心したこともあった。

そしてその全てを乗り越えてきた。
その全てに己が意志を貫き通してきた。
そのためにありとあらゆる力を手にし、ありとあらゆる手段を用いてきた。

そうやって、生きてきた。
そうやって、勝ってきた。
それが板垣退助の在り方である。

ヨグスの意図に縛られるを良しとせず、己の肉体のみを頼りここまで来た。
だが、本当の自由とは縛られぬことではない。
本当の自由とは自ら選択することだ。
自らの意志を貫くべく、自らの意思で全てを決め、実行することを言うのだ。

つまりコレを使わぬも自由。
そして使うもまた自由なのである。

故に、板垣退助は宣言する。

「スキルカード――――『血流操作』」

瞬間、赤い霧が辺りを覆った。
それは一面に蒔き散った板垣の血液が霧化したものだ。
だが、霧が一面に舞ったのは一瞬。
その一瞬で体制を整えた板垣に向かって、霧散した赤い霧が収束してゆく。
0213熱き血潮に ◆Z2CJJz2v/o
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2012/11/30(金) 02:12:57.85ID:A9fV2fMo
――――スキル『血流操作』。
それは自らの血液を硬質化、射出、霧化など多様な方法で操る汎用性の高い能力である。
だが、板垣が行った使用方法は実にシンプルなものだった。

何の奇をてらうこともなく、血液を凝固させて、ただ身に纏う。
血液の凝固作用を利用した高質化。
その強度は鋼にも勝るだろう。
それは鎧であり武器であった。
幾多のダメージを負った証である大量の出血が、この時より一転、完全なる凶器となる。

全身を赤き血の鎧で覆った、その姿はまさしく――――紅き鬼神。

鬼神が魔王に向かって真正面から突撃する。
拳を振りかぶる板垣。
その光景は、先ほどの焼き直しだ。
先程はその拳は通じなかった、だが、今は決定的に違う点が一つ。
板垣の拳の先に存在する、ひとつの巨大な紅い棘。

接点が少なければ衝撃は収束する。
つまり、面では通らなかった衝撃も点ならば――――貫ける。

『■■■■■■■■■■■■■!!』

これまでとは毛色の違う、痛みを訴えかけるような魔王の叫び。
板垣の正拳突きが魔王の分厚い腹部を破り、その孔から大量の赤い血液が噴き出した。

「ぬっ」

その返り血を浴びた瞬間、板垣の拳を覆っていた血液の鎧がドロリと溶けた。
酸の類か。と一瞬、訝しんだがそうではない。
なるほど、これが他者の血が混じれば無効化されるという特性か。
スキルカードを宣言した瞬間に頭に流れ込んできた情報と照らしあわせて、そう板垣は理解する。
つまり返り血を浴びる度に使用出来る血液の量が減っていくということ。
ならば、こちらの血液が尽きるか、相手の息の根が止まるか、此処から先は根競べである。
0214熱き血潮に ◆Z2CJJz2v/o
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2012/11/30(金) 02:14:47.97ID:A9fV2fMo
「ハァ―――――――――ッッ!!!」

打。
打。
打。
打撃に次ぐ打撃。
拳が肉を打つ音が打楽器のように鳴り響く。

隙間のない連打は嵐のようだった。
降るは拳の雨。
吹くは獣の雄叫び。
もはやどちらのものとも知れぬ血しぶきが飛び交い、戦場を彩る。

魔王を打った拳に返り血を浴びる度に、他の場所から血液を補填しあくまで攻撃を重視する板垣。
それに対して魔王も、攻撃に転化し薄くなった板垣の装甲を文字通り食い破る。
板垣もこれを防御はしない。
なぜなら、ダメージはそのまま攻撃力となる。
魔王の牙によって溢れた血液は再び装甲と化し、板垣の全身を覆ってゆくのだ。

ここからはもう、互いに完全に防御を捨てた命の削り合いである。
無論、ダメージが攻撃力につながる板垣と違い、魔王にノーガードの打ち合いに付き合う道理はない。
だが、板垣がそれを許さない。

パワー、スピード、タフネス。どれをとっても魔王のほうが上だろう。
人類の極地といえど、人外にスペックでは勝ち目がない。

だが、技は、武術家としての技量だけは板垣のほうが上である。
日々の鍛錬という積み重ねにより技を重ねる。
これが生まれついての化け物とは違う、人間の吟味である。

その技量を持って魔王の防御を許さず、攻撃をブチ当てる。

差異はあれどそれの繰り返し。
だがその過程、全てが常人なら触れただけで死に絶えるほどの苛烈さを持っていた。
永遠に続くかと思われた攻防、だが何事にも終焉は来る。

幾度目かの攻防。
魔王の爪が板垣を切り裂く。
だが、これまでとは明らかな違いが出た。
切り裂かれた傷口から血が吹き出さず、ただ白い脂肪が覗くだけだったのだ。
それは遂に板垣の血液が尽きたことを示している。
見れば、健康優良の象徴とも言える板垣の顔色が、見る影もなく青白くなっていた。

勝敗を分けたのは単純な体格差。
2m超の板垣は人間としては規格外の巨体だろう。
だが、魔王の巨大さは次元が違う。
体格に比例して、血液量もまた多いのも道理である。

板垣の全身を纏っていた血液の鎧も遂には右の拳を残すのみ。
対して、魔王は全身を穴だらけにしながらも今だ健在。
その生命力は超次元生物としての在り方をまざまざと見せ付けていた。

そして最後の血液を込めた板垣の一撃も、魔王を倒すに至らず。
返り血により全ては使用不可能になった。
これで、詰みだ。
0215熱き血潮に ◆Z2CJJz2v/o
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2012/11/30(金) 02:16:34.56ID:A9fV2fMo
「■■■■■■■■■■■!!」

理性ではなく本能で勝利を感じ取った魔王が歓喜の雄叫びを上げる。
雄叫びのまま大顎を開き、板垣の肩口から脇にかけて一口で食らいついた。
血の気のない肉を咀嚼するように顎を鳴らす魔王。

喰らわれる板垣は、喰らわれたまま静かに拳を引いた。
血液が底をつき、満身創痍となろうとも板垣の目には諦めの色など一片も帯びてはいなかった。
あくまでも勝利を、己が意志を諦めない。

否、違う、そうではない。

諦める諦めない以前に。
この状況、ここまで板垣の想定通りである。
この距離だからこそできる事がある。

構えるのは拳ではなく貫手。
密接したまま狙うは一点。胸骨の下部、水月。
更にいうならば、最初に打ち込んだ大きな傷口。

危険性を本能で察した魔王が、一刻も早くその息の根を止めるべく齧り付く顎に力を込める。
だが遅い。
勢いよく突き出された指先は、魔王の胸元に空いた大きな傷口に突き刺さった。
そして、板垣はその勢いを止める事無く突き刺した指を傷口に捩じり込み、抉り、抉り、抉る。
ドクドクと魔王から大量の熱き血潮が流れ出した。
それでも板垣は止まらず、肉をかき分けるように魔王の内側を蹂躙する。

強靭な生命力を持つ超生物を殺すには如何とするか?
板垣の出した答えは単純すぎるほどに単純だった。
狙うは外ではなく内。
臓腑を抉り、直接、心の臓を握り潰す。
いかなる生物であろうとも、心臓を潰されて生きていられるものなど存在しないのだから。

これを可能としたのは、布石として最初に打ち込んだ渾身の一撃はもとより。
お互い逃げられぬ零距離での密着。
全身の血が抜け、腕のサイズが一回り落ちていることも、また一つの要因だろう。

「■■■■■■■■!!!!!!」

断末魔の様な魔王の絶叫。
遂に、丸太のような板垣の腕が魔王の中に肘まで埋まった。
そして板垣の腕が、確かに脈打つその臓器をしかと握りしめた。
もはや、板垣を噛み殺すことすら忘れ、魔王は暴れ狂うように叫びをあげた。

「ぬぅん――――!!」

気合一閃。
魔王の抵抗も無視して、裂帛の声と共に板垣は魔王の心臓を握りつぶした。

「―――――――――――」

口からどこに残っていたのかと思えるほどの大量の血液を吐きながら、魔王が声にならない叫びを上げた。
魔王が上空に噴き出した血液が地に落ち、血の雨が降った。
そしてゆっくりと、その巨大が傾き、ドシンという地響きとともに辺りに砂埃が舞った。
板垣は、全身を返り血で赤く染めながら、その姿を見送る。

決着である。

人間、板垣退助の勝利だった。
0216熱き血潮に ◆Z2CJJz2v/o
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2012/11/30(金) 02:19:30.00ID:A9fV2fMo
勝利を収めた板垣はその余韻に浸るでもなく、早急にその場を離れた。
本当にギリギリの勝利だった。
ダメージは多く、なにより血を失いすぎた。
板垣でなければとっくに死んでいる状態だ。
意識があるのが奇跡のようなものである。
この状態を誰かに襲われてはさすがの板垣も言えどもひとたまりもない。

まずは何よりも失った体力を回復することが急務だ。
ここで板垣が取るべき選択肢は三つ。

一つ、どこか拠点を見つけ身を休める。

この状態で、安全な拠点を見つけるのは骨だが、幸いにも市街が近い。
身を隠す場所を見つけるのにそれほ苦労はないだろう。
問題はこれほどのダメージの自然回復を待つとなれば時間がかかりすぎるという点か。

二つ、栄養補給を行い積極的に体力回復に努める。

最低限の支給はあるものの、失ったエネルギーを補給するにはこの程度ではまるで足りない。
食料を探す必要がある。できるなら肉類が望ましい。
野ウサギなどの野生動物がいれば良いのだが。

三つ、病院をめざし輸血を行う。

直接血液を補充するもっとも適切な対処だが。
この舞台に用意された病院にどれほどの設備があるのかは怪しいところだ。
なにより新鮮な血液があるかどうかというのは非常に不明確だ。

どうするべきか。
慎重な判断が必要だろう。

【一日目・早朝/E-4とF-4の堺 平地】
【板垣退助】
【状態】全身にダメージ(極大)、血液枯渇、全身血塗れ
【装備】なし
【スキル】『血流操作』
【所持品】基本支給品、不明支給品1〜2
【思考】
基本:自由を愛し、平等に生きる
0.体力回復に努める
1.闘いを挑む者には容赦しない
2.自由を奪う男(主催)を粛清する
0217熱き血潮に ◆Z2CJJz2v/o
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2012/11/30(金) 02:22:11.68ID:A9fV2fMo
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..
...
..............
..........................................


一面の赤だった。
むせ返るような血の臭いが辺りを漂う。
池の様な大量の血溜まりは戦場の名残だ。

その中心に横たわるのは巨大な肉塊。
その肉塊が唐突に動いた。
いや、動いたというのは正確ではない。
巨大な肉塊が収縮し始めたのだ。
1tを超えようかという質量は人型のそれに収束する。
というより、初めの姿に戻っていったといったほうがわかりやすいだろう。

肉塊とは言わずもがな、魔王の死体である。
この場においてのは始まりの姿に戻った魔王、もちろん傷はそのままだが。
だが、命の尽きたはずのその肉体が、何故そのような動きを見せたのか。

「がッ――――ハ!」

死体が吐き出すように息を吐いた。
だが、心臓を失って生きていられる生物などいるはずもなく。
それは魔王とはいえ例外ではない。

大魔王は伝統的に心臓を三つ持つ。
板垣と同量、いやそれ以上の血液を失いながら、まだまだ血液量に余裕を見せていた正体がこれだ。
つまり、彼にはまだ二つ心臓が残っている。
端的に言うと、魔王は死んでなどいなかった。

とはいえ、臓器を直接握りつぶされた事には違いはない。
通常であらばショック死してもおかしくない。
それでもなお生きながらえているのは、魔王の強靭な生命力の賜物だろう。
0218創る名無しに見る名無し
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2012/11/30(金) 02:26:52.03ID:WuFOKb5U
支援
0219創る名無しに見る名無し
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2012/11/30(金) 06:50:07.54ID:9cyDBRS2
しえん
0221創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/11/30(金) 12:24:12.73ID:jSdPWSab
211 :熱き血潮に ◆Z2CJJz2v/o:2012/11/30(金) 02:28:17 ID:Gq1Yidzs0

「くっ―――――ぁ」

声を出すのも苦痛なほど胸が痛む。
当然だ胸には大穴が開いているのだから。

板垣から受けたダメージにより、魔王はその力の殆どを失ってしまった。
不幸中の幸いか、それにより押さえつけるべき力をも失った魔王は、理性を取り戻すこととなる。

理性を失っていたころの記憶は正確ではないが、前後の記憶から今の状況は魔王にもわかる。
まさか全力を出した大魔王が人間一人に負けるとは信じ難いが、己の状態からして信じざる負えないだろう。
ダメージは甚大、というより死にそうだ。
今すぐ生命力を回復させなければ非常にまずい。
幸いにも、その方法は知っている。
この場には材料も事欠かない。
簡単だ。

人間ヲ喰ラエバイイ。

「―――――!?」

あまりにも自然に脳裏に浮かんだ発想を必死で魔王は否定する。
魔の王、魔性の本能としての発想。

力を失い、凶暴性を弱めたと同時に、それを押さえつけるべき理性も弱まっている。
つまりは両方のバランスがとれていない。
今の魔王は、非情に危うい状態だ。

「…………篠田は、下流か」

流れる川を見ながら自分が放り投げた勇者を思う。
まずは彼との合流を目指そう。
今のダメージで一人でいるのは危険だ。
また板垣のような化け物に襲われたら為す術もない。

そしてなにより、もし自分が暴走したとして、篠田ならそんな自分を止める事ができる。

そう縋るように、魔王は勇者を求めて歩き始めた。

【一日目・早朝/E-3 川沿い】
【魔王】
【状態】ダメージ(瀕死)、疲労(極大)、精神不安定
【装備】なし
【スキル】『落とし穴』
【所持品】基本支給品、釣り竿
【思考】
1.篠田と合流

※E-4戦場跡に池の様な血だまりがあります

212 :ナナシサン・ゾルダート:2012/11/30(金) 02:30:16 ID:Gq1Yidzs0
OH...最後にサルったズェ

1レスだけですけどどなたか代理お願いします
0222創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/12/01(土) 12:53:45.88ID:mq8G+bkY
投下来てた!乙です!
板垣人間やめすぎワロタwww魔王様に勝つとは…


魔王は生きてたけどちょっと怖いなあ…不安だ。
0223創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/12/02(日) 02:16:14.93ID:g4HrkL8s
投下乙!
板垣さんこええwwwwwwww こいつ殺せる奴いるのかよwwwwwwwwwwwww
しかし魔王に危ないフラグが……どうなることやら
0224創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/12/05(水) 06:58:03.27ID:ktNcXc27
今まだ早朝行ってないのは誰?
0225創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/12/05(水) 09:22:23.38ID:gB5m4ZMx
黎明
真琴御木エジソン藍葉
加山イロハ
フィクション加奈子
祢音

黎明〜早朝
フランドールフランツ
カイン溝呂木

黎明〜早朝の四人と周りに誰もいない祢音は早朝描写なくても大丈夫かも
0226 ◆zVAORjU2u0G9
垢版 |
2012/12/05(水) 15:17:32.50ID:ktNcXc27
じゃあ加山とイロハ予約
0227 ◆zVAORjU2u0G9
垢版 |
2012/12/05(水) 16:29:51.82ID:ktNcXc27
わざわざ教えてくれた人ありがとう。
こっちが先だったすまぬ。
0228 ◆zVAORjU2u0G9
垢版 |
2012/12/09(日) 22:19:35.70ID:kmyv3fjR
すんません、明日ぐらいまでかかります。
0229 ◆Z2CJJz2v/o
垢版 |
2012/12/10(月) 22:55:44.75ID:nSSxodFy
じゃあ俺はフィクション葉桜加奈子を予約するぜ
0231転校生 ◆Z2CJJz2v/o
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2012/12/13(木) 01:20:00.78ID:LOv8iJV+
どうも、秋月高校二年一組、出席番号26番、葉桜加奈子です。

時刻は現在、午前5時を過ぎた辺り。
もうすっかり夜も明け、辺りには朝の気配が漂い始めてきた頃合いです。

この島(?)に拉致されてからはや5時間。
最初にフィクションさんに出会って行動を共にすることとなり、途中でイリアムさんと出会ってったもののすぐに別れ。
それ以降は特に誰に会うでもなく、本当に殺し合いを強いられているのか信じられなくなるほど何事もありませんでした。幸運にも、今のところ。
とはいえ、支給された拳銃は本物っぽいし(というか実際、フィクションさんが撃っちゃったしね!)冗談や洒落の類ではないのは私にもわかる。
何より、行動を共にしているフィクションさんに緊張感の欠片もないので、それを反面教師としてせめて私は緊張感を保とうと努めているのだ。
私も喧嘩なんて小学生の頃、幼馴染の圓をイジめる近所のガキ大将相手にして以来だけど、
私以上にこの人争いごとに向いてなさそうなんで、いざとなったら守って上げなければなるまい。

「ねぇねぇ加奈子ちゃん、疲れてきたんでそろそろ少し休もうよ」
「またですか、フィクションさん。市街地ならこのまま真っ直ぐ行ったらすぐですって。休むのはその後にしましょうよ」
「まあまあ、この年で夜通し歩きっぱなしはつらいんだって。少し迂回して、そこの木陰で休もうよ」

そのフィクションさんは、事あるたびにそう言って休憩したがる。
まあ私としても、何時間も夜道を歩くのはしんどいんだけど、にしてもすこし寄り道が多い。
真っ直ぐ最短距離を進めばとっくに地図で言うところの美術館辺りについているはずだったのに、迂回を繰り返し何故か今や病院近くである。

この五時間、ずっと行動を共にしているこの人だけど。
ここまで行動を共にして来たこの人がどんな人なのかというのを一言で言うと、まぁよくわからない人だ。
よくわからない、が服を来たような人だ。
まあそれは言い過ぎにしても、人物像がいまいちつかめない。

名前も変な名前っていうか、あだ名だって言ってたから、本名は別にあるんだろうけど。
常に飄々としていて緊張感というモノがなく。かと思えば、抜けているようで抜け目ないところもある。
人と争えないような貧弱な雰囲気を醸し出しながら、慣れた手つきで拳銃を組立てみたりしたのも謎だ。
色々と細かいことに気づくくせに、意外と結構適当だったり(というより無関心?)。
なにかと特徴的なのに存在感がないのも不思議な所だ。
そして何より、何か隠してる感じはひしひしと感じるが、その辺は今のところ詮索するつもりはない。
この状況で、その判断はバカだと思われるかも知れないが、話したいなら向こうから話すだろうし無理に秘密を聞き出すようなマネはしない。
とりあえず悪い人ではない、と思うし、その辺はとりあえず保留ということで。

最初の説明が本当ならば、時期に放送が流れる頃合いである。
フィクションさん曰く、そのタイミングで参加者の公開がされるんじゃないかという話だけど。
フィクションさんがイリアムさんから譲ってもらったという参加者候補名簿により私たちは一足早くその候補を知ることとなった。

秋月の生徒が多い。とはフィクションさんの指摘。
言われてみれば、知ってるだけでも私と圓はもとより。
圓の友達の宇都井くん。
1年から同じクラスの麻矢ちゃん。
麻矢ちゃんの双子のお姉さんである亜矢さん。
バスケ部のエースである片嶌くん。
いろいろと顔の広い西城くん。
そして一時的とはいえ在籍した彼女を含めて計8名。
多いといえば確かに多い(フィクションさんに言わせれば異常らしいが)。
私の知らない上級生や下級生も含めれば、ひょっとしたらもっと多いのかもしれない。
0232転校生 ◆Z2CJJz2v/o
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2012/12/13(木) 01:22:28.93ID:LOv8iJV+
「ところで。加奈子ちゃん。本当にキミの学校って何か変な事やっないのかい?
 秘密の訓練してるとか、謎の人体実験をしてるとかさ」

それが引っかかるのか、フィクションさんは学校のことを気にしてくる。

「いやぁ、そんなマンガやゲームじゃあるまいし。
 本当に普通の学校ですよ。普通も普通の普通科ですよ。
 そりゃあ、最近ちょっとした騒ぎはありましたけど」

基本的にはごくごく普通の学校だと思う。
変な人が多いのは否めないが、それでも常識の範囲内だと思う。

「ちょっとした騒ぎって?」
「なんというか、まぁ一言では説明しづらいんですが、空からお姫様が降ってきましてですね……」

ある日、登校中の私と圓の目の前に空からお姫様が降ってきた。
何言ってんのかわかんないだろうけど、事実である。
パラシュート一つでヘリから飛び降りてきたのは本物のお姫様、フランドール・オクティルである。
え? そんな非現実的な体験した人間がマンガやゲームじゃあるまいし、とか言うなって? そりゃごもっとも。

「……フランドール・オクティルか。
 確か後継者争いでもめてる国の第一王女だったっけ」
「知ってるんですか?」
「まぁね。もちろん面識はないけど、仕事柄、各国の要人の顔と名前くらいはね」

そういやこの人の職業って結局なんなんだろう。
なんかその辺もぐらかされる感があるなぁ、いいんだけど。

「と言っても、その辺のゴタゴタはもう解決したんですけど。
 その時にフランが私たちの学校に特別留学生として転入するしないの騒ぎがあったんですよ。
 と言っても滞在して一ヶ月もたたずに、国に帰っちゃいましたけど」

本当に、本当に色々あったんだけどその辺の細かい話は、そのうち語る機会もあるだろうけど今は割愛。

「ふーん。そうか、そうだねぇ。
 小国の王女か…………自身はともかく、少し弱いか」

そう小さな声でぼつりと呟く。
少し弱い? どういう意味なんだろうか?

「他に何かないかい?
 事件と呼べるほどの事じゃなくてもいい。
 ここ最近君の学校で何か変わったことはなかったかい?」
「変わったとことと言われても…………うーん、あ」

少しだけ考えて、一つだけ、思い当たった。

「何かあるのかな?」
「いや、でも大した話じゃないですよ」
「構わないよ、嫌じゃなければ聞かせてもらえるかな?」

そうフィクションさんに促される。
特に話すのを嫌がるような話じゃないのだけど、少しだけ躊躇われる。
本当に大した話じゃないし、この状況だからこそ思い出された事でもある。

「ええっと。本当に大した話じゃないんですけど。
 二ヶ月くらい前の話なんですけど、変わった転校生が来たって少しだけ噂になったんですよ」
「変わった? どんなふうに?」
0233転校生 ◆Z2CJJz2v/o
垢版 |
2012/12/13(木) 01:24:21.01ID:LOv8iJV+
お姫様の転入話にすっかり話題を攫われてしまったけれど、そんなことがあった。
6月っていう、なんとも微妙な時期での転校だったので、少しだけ印象に残ってる。
その辺は家庭の事情もあるだろうし深くは気にしなかったが。

「クラスも違うし、あんまり詳しくは知らないんですけど、その子と同じクラスの友達から聞いた話だと、」

その転校生の話が、なぜ今それが思い出されたのか。
それは、その友人が言っていた『ある単語』が今の状況で強く印象付いた言葉と一致していたからだ、

「――――『宇宙人』みたなヤツだ、って」

それを聞いたフィクションさんが珍しく表情を崩し、眉をひそめる。

「宇宙人?」
「いや、あくまで例えですよ、例え」

確かに自称宇宙人に攫われたこの状況では笑えない例えに聞こえるかもしれない。
若干言いよどんだ理由もそれである。

「加奈子ちゃんはその転校生と直接話したりしたことは無いのかい?」
「クラスも違いますし話したことはないですね。何度か遠目に見たことくらいはありますけど」
「どんな風だった?」
「うーん、どんな風と言われても、注意して見てたわけじゃないんで…………なんというか、無表情、でしたね」

そして、たまたま私が見ているときだけだったかもしれないけれど、いつも一人だった気がする。

「…………うぅん」

思案するようにフィクションさんは口元に手を当て目を細める。
真剣に思い悩む表情は結構珍しい。

「ま、いいか」

あ、戻った。
実に短い憂い顔だった。

「どうせ今考えても情報が足りなさすぎるしね」

ははは、と適当に笑うフィクションさん。
まあこのほうがらしいといえばらしい。

「できれば加奈子ちゃんにはその転校生の事を知ってそうな人を教えてもらいたいところなんだけど、まぁそれはこの後にしようか」
「この後?」

その疑問に答えたのはフィクションさんではなかった。
辺りに音が鳴り響く。

「そ、候補じゃなくこれで本決まりするわけだし。その方が何かと都合がいいだろう?」

そう笑みのようなモノを浮かべながら、語りかけるフィクションさん。
その表情にわけもなく、少しだけ肌が泡立った。

――――『放送』が流れ始めたのだ。
0234転校生 ◆Z2CJJz2v/o
垢版 |
2012/12/13(木) 01:25:05.80ID:LOv8iJV+
【一日目・早朝/F-5 市街地近く】
【葉桜加奈子】
【状態】健康
【装備】折り畳み式ライフル(5/6)
【スキル】なし
【所持品】基本支給品、不明スキルカード、不明支給品0〜1
【思考】
基本:日常に帰る
1.加山圓や知り合いと合流したい
2.フィクションと協力して脱出方法を探す

【フィクション】
【状態】健康
【装備】日本刀
【スキル】『ブラックアウト』
【所持品】基本支給品、不明スキルカード(確認済)、候補者名簿、不明支給品1〜3
【思考】
基本:脱出してヨグスを始末する
1.イロハと加奈子の知り合いを探して合流。オーヴァーはとりあえず放置
2.機会があれば板垣退助を殺す
3.正午に教会でイリアムと落ち合う
※板垣退助の外見的特徴を把握しています



以上
投下終了です
0235創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/12/13(木) 18:52:56.34ID:Xct2cWin
投下乙です!!
この二人は気になるなあ

てか秋月の人多いなw
さやかちゃんの法英…
0236創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/12/13(木) 21:01:15.40ID:BOjVIYJ5
投下乙
謎の転校生は果たしてこの殺し合いに関係があるのか

あと確かに秋月は多いなw
高二勢で秋月じゃないのはさやかちゃんの他には篠田君と智美ちゃんだけだしw
0237創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/12/13(木) 22:38:14.75ID:gYKafRYn
投下乙!
緊張感のない人が一番緊張感があるって言うなんとも矛盾した状況w
秋月八人か……これは何か重要な情報なのかも?
0238創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/12/13(木) 22:53:39.75ID:LOv8iJV+
高校生の所属まとめ

【秋月高校】
葉桜加奈子
加山圓
片嶌俊介
一色亜矢
一色麻矢
白井慶一
宇都井健吾(不参加)
西城幹事(不参加)
田中伊知郎(不参加)

【法英高校】
龍造寺さくら

【不明】
篠田勇
安田智美
橘蓮霧
藍葉水萌
二階堂永遠
東海夏姫(不参加)
山田曜子(不参加)
志村春樹(不参加)
志村夏樹(不参加)

白井が麻矢と田中を知ってるので秋月っぽい
白井と片嶌が知らなかったので篠田は秋月ではないっぽい
さくらェ…
0239 ◆BUgCrmZ/Lk
垢版 |
2012/12/14(金) 02:02:23.18ID:+SueuOi/
加山とイロハと後ついでにオーヴァを予約したいんですけど
◆zVAORjU2u0G9氏は状況どうでしょうか?
完成の目処がたってるなら諦めます
0240 ◆zVAORjU2u0G9
垢版 |
2012/12/14(金) 08:03:46.62ID:Ox67fVJy
連絡遅れました。
予定が合わないので破棄します。すみません。

ちなみに、予約期間はどのくらいですか?
0241 ◆zVAORjU2u0G9
垢版 |
2012/12/14(金) 08:08:25.45ID:Ox67fVJy
あ、別に氏の予約期間ではなくてこのロワで決められた予約期間の事です。
我ながらわかりにくい文章…
0242創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/12/14(金) 08:21:58.52ID:DUVuB9hv
基本三日+延長三日ですね
その時点で予約がなければゲリラ投下もアリです
0243 ◆zVAORjU2u0G9
垢版 |
2012/12/14(金) 12:50:55.48ID:Ox67fVJy
あざす!
次からは気を付けます…
0244 ◆BUgCrmZ/Lk
垢版 |
2012/12/15(土) 01:17:48.38ID:IdMGq0DJ
それでは改めまして
加山、イロハ、オーヴァー予約しますね
期間は>>239からで(多分)大丈夫です

あと予約関連に限らずですけど
ルールやテンプレもまとめたいですね
0245 ◆BUgCrmZ/Lk
垢版 |
2012/12/17(月) 00:26:02.95ID:uvXgvaCi
↑の予約したやつら投下します
0246なんだお前か ◆BUgCrmZ/Lk
垢版 |
2012/12/17(月) 00:29:02.69ID:uvXgvaCi
どうも、秋月高校二年一組、出席番号11番、加山圓です。
今現在、森の中にいます。

スキルにより強化された視力で目撃した、遠方で行われる人智を超えた乱戦に巻き込まれないよう、人気のない森を進んでいた。
朝露に濡れる森は深く、吸う空気が濃く感じる。
網目のような枝葉に光が遮られ、空はいまだに薄暗い。
地には木の根が貼り巡り、足場も凸凹が多く歩くだけでも非常に困難だ。
暗くとも夜目遠目がきく俺はともかく、まだ年端もいかないイロハちゃんには厳しい道程だろう。

「イロハちゃん、足元の木の根っ子とかに気をつけてね」

そう促すと、イロハちゃんはこちらの言葉に素直にコクリと頷いた。
だが、こちらの心配を他所にスイスイと危なげなく獣道を進んでゆく。
あれ? ひょっとしたら俺より森歩き上手いんじゃないか?

「…………イロハちゃん、少し止まろう」

最初に感じたのは、臭いだった。
おそらく今の自分以外なら気が付かないほどの微臭。
風に運ばれて微かに香る鉄の臭い。

この先で何か起きている。

どうする?
進むか戻るか。決断を迫られる。
どちらにせよ、ひょっとしたらこの場に安全な場所など無いのかもしれない。

ならば、何があったか調べるべきか。
この状況で情報に取り残されるのは死に繋がる。
慎重さも大事だが、時に大胆な行動も必要になるだろう。
なにより、この能力は斥候には適している。
相手に視認されるよりも早く、状況を捉えられるはずだ。

とはいえ、この先を調べるにしても、イロハちゃんを連れて行くわけにはいかない。
ここに一人で放っておくのもそれはそれで危険だが、辺りを確認する限り危険はなさそうである。

「イロハちゃんここで隠れて待っててくれるかな?
 すぐに戻るつもりだけど、もし何かあったらすぐに逃げるようにね」

何の疑問なく俺の言葉に頷くイロハちゃん。
ひとまず、発見されづらそうな木の陰にイロハちゃんを残して。
俺は一人、異臭の元を調べるべく、森の奥へと進んでいった。

■■■■■■■■

周囲を警戒しながら深い森を進んでゆく。
先に進むたび、徐々に匂いが濃くなってゆくのがわかる。

だか何かおかしい。
血は香るものの、その血を流しているであろう人影がどこにも確認できない。
確認できるのは各所にまだらに撒き散った血液だけである。
誰かが傷を負わされ、どこかに逃げ去った跡だろうか?

なにか悪い予感がある。
今すぐ引き返すべきだと思う心と、だからからこそ何が起きているのか知らなければという心がせめぎ合う。
明確な判断がつかないまま、足は誘われる様に前へ進む。
0247なんだお前か ◆BUgCrmZ/Lk
垢版 |
2012/12/17(月) 00:32:05.01ID:uvXgvaCi
そこにあったのは、ぶちまけたような赤だった。
だが、そこに死体はなくその代わりに、拳大の塊のようなものがゴロゴロと転がっていた。
それがなんであるかを認識した瞬間、眩暈のような吐き気を覚えた。

「……………ぅ」

口元を抑える。
撒き餌のように広範囲にばら撒かれたそれは、バラされて砕かれた『人間の破片』だった。
これは酷い。
なぜこんな事を、ここまでする必要がどこにある。
ただ殺すだけなら、ここまでする必要はどこにもない。
とても人間の所業とは思えない。
いや、野生動物でもここまで食い散らかすことはない。
私怨か。それとも単純に異常者か。
いや、

(撒き餌…………?)

ふと、先ほどの自分の発想に疑問を覚える。
瞬間。空気がひりつくような微かな違和感を肌に感じた。
そして遠方から聞こえた僅かな音。

その違和感に従い、躊躇うことなく全力でその場を飛びのいた。
同時に、炸裂音の様な雷鳴が轟き、それまで自分がいた位置を紫電が切り裂いた。

襲撃だ。
死体を撒き餌として、注意をそらすと共に、それに怯んだ瞬間を狙い打つ。えげつなさすぎる罠。
五感強化で触覚と聴覚が強化されていなければ、俺も気づくことすらできず丸焦げになっていただろう。

飛び退きざま、雷撃の射線上に襲撃者の姿をとらえる。
襲撃者はこちらに近づく気配を見せない。
その場から雷で射殺すつもりなのだろう。

敵は雷を操るのようだ。
雷を操るなど常識で考えればあり得ない話だが、この場においてはそれを可能とする理屈を知っている。
『雷使い』、そういう”スキル”か。

だが、こちらとしてもそう簡単にやられるつもりは毛頭ない。
徹底的に抗ってやると決めたんだ。

容赦なく続けざまに放たれる雷撃を紙一重ながら躱してゆく。
もちろん、ただの勘で躱しているという訳ではない。
そもそも雷速で放たれる雷を何の根拠もなく躱せるはずもない。
ただ、俺にはこれから雷が辿るであろう軌道が”何となく”わかるのだ。

俺自身、雷について詳しいわけではなく、これは学校の科学教師が雑談がてら話した内容なのだが。
本来空気は電気を通さない。
そのため、落雷には空気を変質させ、雷の通る道筋を作る過程が必要となる。
それをなすのが先行放電(ステップトリーダー)と言われるもの。
その先行放電で作られた道筋を辿って初めて落雷電流(リターンストローク)は地面に落ちるのだ。

先行放電の速度は落雷電流の約1000分の1。
もちろん、それでも人間の目では捉えられない速度であるのだが。
しかし今なら、その瞬きにも満たないその瞬間を捉えることができる。
五感強化によって強化された動体視力はその一瞬を見逃さない。

つまり今の俺は、雷を避けられる。
0248なんだお前か ◆BUgCrmZ/Lk
垢版 |
2012/12/17(月) 00:35:17.02ID:uvXgvaCi
これで幾度目か、雷を躱し続けるこちらに対して、相手は遠距離では埒が明かないと判断したのか。
遂に襲撃者が姿を現し、距離を詰めてきた。

矢のような速さで地を駆ける襲撃者。
片手には抜身のサーベル。
駆ける勢いをそのままに振りぬかれた一撃を、小太刀の腹で受けとめる。
そして衝撃を殺すように手首を返し、後方へ刃を捌く。
刃をいなされた襲撃者はそのまま後方へ駆け抜け、すぐさましなやかに身を翻しこちらに向き直った。

真剣を片手に対峙する。
互いの距離は2間にも満たない。
既に間合いである。

「――――――ふぅ」

呼吸を一つ。
焦るでもなく、まずは心を整える。
生憎と、真剣を突きつけられるのには慣れている。

まずは冷静に、敵を図るように見つめる。
年の頃は思ったより若い。
顔つきからして日本人ではないようだ。
目つきは鋭く、それでいて泥の様に濁って光が見えない。
そして口には歪んだ笑み。

その笑みのまま、敵が動いた。

眉間。首。心臓。
同時に放たれた突きは三つ。
狙いは正確すぎるほどに正確。
一片の躊躇もなく殺しにかかっている。

だが、こちらもそう簡単にやられはしない。
高速で放たれたその全てを見切り。
眉間を狙う一撃を躱し。首を狙う一撃を弾き。心臓を狙う一撃を小太刀で受けとめた。

身体能力も高く、有段者並の技量はある。
確かに強い。
確かに強いが。
敵わないというほどの絶対的な差は感じない。

視力強化により敵の太刀筋がすべて見えているというのも大きいだろう。
何より、ジイさん程の腕ではない。
ジイさんに鍛えられた読みと、この場で得た動体視力があれば、十分に対応はできる。
もっとも、それも剣術だけに限定するならば、だが。

「っ…………ぁ!」

受け止めた刃を通して雷撃が来た。
そんなことも出来るのかと驚愕する。
だが、大した威力ではない、おそらくは隙を生むための牽制だ。
その隙を突かれぬよう、咄嗟にバックステップで距離を取った。

だが、敵はその距離を詰めるでもなく、片腕を軽くこちらに突き出す。
また雷を放つのか。
そう思い、発動の瞬間を見逃さぬよう目を見張るが、そうではなかった。

放たれたのは閃光だった。
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