「何から聞いていいのやら」
 本音を呟く私に、ちょっと待ってろと老人は一度席を立ち奥の部屋に消えて行った。
 私はコーヒーをすすりながら部屋を見渡した。
しかしまあ見事なものだ。様々な郷土品が所狭しと並んでいる。
それとまるで横町の飯屋のようにジュースの冷蔵庫がどかんとあり、その中には炭酸ジュースなどが気持ちよく汗をかいて居座っている。
そして地元のお菓子だろうか、せんべいだとかそういったものが値段を貼られて置かれていた。
「お土産屋なんですか、御主人」
 奥にいる老人に聞えるように少し声を張ったつもりだったが、返事は「なに」だった。
 手持無沙汰でポケットに手を入れる。そこには少し前に許可証だと偽った携帯電話料金の督促状。
何気なしにそれを取り出してぼうっと見る。日付は今日のものだ。
<逃げるんですか?>
 せめて烏丸に二度もそう言わせない為に、私は自分で逃げずに確かめる事に決めたのだが、支払いからは逃げている。
「くっ……くくくっ」
 そう思うと情けないやら可笑しいやらで笑いがこみ上げてきた。
「はははっ」
「どうしたんじゃ気色悪いのう」
 老人が紙袋を持ち戻って来た。私の耳が熱くなったのは決してコーヒーの所為ではないのは明白だ。
「いえ、お恥ずかしい。ちょっとした思い出し笑いみたいなもんです。ところで、そちらは?」
 老人はどか、と椅子に腰を据えて持っていた紙袋をテーブルの上に置いた。
「これをあんたに渡すようにと言われておる」
「烏丸?」
「そう烏丸さんからじゃな」