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ドリームチームが犯罪者を追い詰める...
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0001創る名無しに見る名無し
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2011/01/01(土) 21:44:53ID:s52/D/Sn
捕まる側の犯罪ドリームチーム(●ーシャンズシリーズ)があって何で捕まえる側にはないのか?
様々なジャンルのエキスパートがときには対立し、ときには協力して犯罪者を追い詰めても良いのではないでしょうか?

【概要】
 暗い過去を持つ元剃刀現在飲んだくれ捜査官、トラウマを持つ元敏腕スパイパー、人の心を読む「メンタリスト」、訳あって第一線から退いてたプロファイラー、
 変人の数学・物理学者、曲者ハッカー、死者の声が聞ける能力を持つ一般人‥どっかで聞いたことある設定の登場人物が集められ協力して犯人を追いつめる

【設定】
・舞台はFBIロサンゼルス支部

【注意】
・企画の性質上、登場人物が死亡する描写や、残酷な表現が含まれています。
・スルー検定9級実施中です。荒らしは華麗スルーしてください。それが紳士淑女の条件です。
・シェアードで進行します
0369ファイルNoゼロ「旅する死神」
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2011/09/11(日) 23:31:59.09ID:X2z+Zswu
「前の4件と後の5件のあいだか!前後が開き過ぎてるのが気になってたんだが……まてよ!?」
画面を覗きこ込んだハーパーの声のテンションが一変した。
「……ニッキー・スローンはHN『アクトレス』、カポーティは『不和の女神』……」
眉を寄せたハーパーの呟きがブツブツ続く…。
自ら手を伸ばしマウスを掴むと画面をスクロールさせはじめた。
「……アリゾナのホバート老人は『カノン』…………」
カチッ!カチッ!
クリック音が続き、画面がぎこちなくギクシャクとスクロールする。
「……あった!これだ!「『キッチンドリンカー』!!」
ハーパーが小さく叫んだ。
「「いままで『旅人』は被害者の特定のアルファベットについて拘りを見せていたが、その特定のアルファベットを選ぶ理由がサッパリ判らなかった。しかし……」
手近の紙きれを引き寄せると、それに「Kitchindrinker」と走り書きした。
「『旅人』は基本的に獲物を掲示板『ヨルダン川の辺』の住人として知っている。『旅人』にとって獲物は『人』である前に、掲示板記載の『文字データ』なんだと思う…。だから…」
ハーパーは、今度は「Kitchindrinker」の上に「Canon」、「Kitchindrinker」の下に「Producer」「Actress」と書いた。
「どっちもHNとして書き込みがある。『アクトレス』は内容的にニッキーだから、『プロデューサー』はたぶんカーモディーだろう」
「じゃあ!?じゃあ!?じゃあー!?」
何時の間にか自主的に現場復帰していたキャリーが大声で叫んだ。
「他の被害者のHNはー!?」
「ちょっと退いてくれハーパーさん。オレが調べる。その方が速い」
クリスが再びパソコン前に戻り、猛烈な勢いで画面をスクロールさせ始めると、「なんだか面白くなってきた」とエミーももう一台のパソコンを立ち上げた。
「クリス!情報があったら読みあげて。全米犯罪情報センターに照会するわ」
「オッケー、判った!」
クリスが掲示板からHNと個人の特定に結びつく情報を読みとると、直ちにエミーが犯罪情報センターの記録と照会。
自然発生的に集合した5人は、既にチームとして機能し始めていた。
そして、更に……。
0371ファイルNoゼロ「旅する死神」
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2011/09/11(日) 23:36:41.53ID:X2z+Zswu
「……HNウルフェン!」
「ウルフェン??」
「ホイットリー・ストリーバーの小説だよ。正体は多分プロの投資家で、自分が貪欲に過ぎないかと書いてる」
「貪欲?……ああ、ウルフィッシュ(Wolfish)の駄洒落ね。ちょっと待って……それならWで始まる凶器か……」
クリスに負けず劣らずのスピードでキーが打ちまくられ、すぐさまエミーは答えに行き当たった。
「ビンゴよ。ビル・アッシャー。52歳。オレゴン州ポートランドの自宅でウィスキーボトルにより撲殺」
「お、おい、また当たりなのか!?いまので何件目だ?」
「いまのビンゴで6件目でーす」
キャリーは三代目のパソコンで被害者データの表を作成していた。
「キャリー!発生日付順に並べ替えてくれよ」
「了解です、ウィンフィールド先生!」
カチッ!
キャリーはなれた仕草でデータを発生日/昇順でソートをかけた。

Ruin/ライフル銃による射殺
Ironist/象牙の彫像による撲殺
Doctor/ドアーストップによる撲殺
Editor/電気ヒーターによる感電死
Wolfen/ウィスキーボトルによる撲殺
Honeydripper/ハーケンによる刺殺
Indian/アイロンのコードによる絞殺
Rocker/ロープによる絞殺
Elis/エレキギターによる撲殺
Dominic/辞書のページを大量に喉に詰め込まれたことによる窒息死
Brewer/バットによる撲殺
Lowyer/羊の骨付き肉(おそらく使用時は凍結)による撲殺。死体の上にはラオディキア教会の観光案内あり
Canon/チェーンソウによる滅多切り
Kitchindrinker/ナイフによる喉斬り
Producer/ピースメーカーによる射殺
Actress/アーミーナイフによる喉斬り

「ちょっと待って」
並びを変えた表を見たベックマンから注文がついた。
「アリゾナとニッキーの事件は小文字だったんだ。すまないがキャリー、小文字にしてくれるかな。それからエミー、死体に文字の情報は?」
「特には無いですね」
「それじゃ『旅人』の仕業とは限らないわけか」
「でもベックマン…」
エミーはだんだんベックマンとため口をきくようになっていた。
「……羊の骨付き肉で殺られたネバダの事件じゃ、ラオディキア教会の観光案内があるわ。
少なくともこれだけは『旅人』の仕業に間違いないでしょ」
「うむ……しかし……」
ベックマンはキャリーの表にもっと顔を近寄せた。
「…この文字列じゃなんの意味も読みとれないな。並べれば、何か意味が浮かんでくると思ってたんだが……」

「……いや、意味は通ってると思いますがね」

肩越しに聞えた未知の声に、ベックマンが驚いて振返った。
0372ファイルNoゼロ「旅する死神」
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2011/09/11(日) 23:42:08.07ID:X2z+Zswu
 エミーが戸惑い顔で尋ねた。
「プリスキン刑事、その方は??」
尋かれたソフィアも明らかに戸惑っている。
「……来なくてもいいと言ったんですが……」
「ああ、僕のことなら気にしないで……夜の安眠を取り戻したくてついて来ただけですから」
「ドクター・ロレンゾです。ドクター・サンベルト・ロレンゾ」
「ロレンツォです」
ソフィアの紹介を即座にロレン「ツォ」は訂正した。
「ゾ、じゃなくてツォですから、プリスキン刑事はちっとも覚えてくれなくてね」
「あのー、一般の方はー……」退去させようとしたキャリーにあやすような仕草を見せると、ロレンツォは室内に一瞬視線を走らせ、誰が指導的立場にあるのかを直ちに見切った。
「あなたは……?」
「ハーパーです。チャールズ・ハーパー。失礼ですが部外者は……」
「その前に、私の話を聞いたほうがいいと思いますよ。なにせ、次の被害者に関わる話しですから」
「つ、次の被害者だって!?」
「……いいですか?」
ロレンツォはまんまとその場に留まる暗黙の許可をゲットすることに成功した。
「この犯人、……あなた方の呼び方に従って私も『旅人』と呼ぶことにしますが……『旅人』は、『ヨハネの黙示録』に拘りのようなものを見せていますよね?」
ハーパーもこれに応じた。
「それは我々も感じています。一連の殺人で観光案内の置かれていたのが三件で、エペソ、ペルガモン、ラオディキアと総て黙示録に関係したキリスト教会の所在地ですね。
それにトロントで二件続いた殺人では、ペルガモン教会についての黙示録の記載が再現されています」
「ニューヨークでの事件だと現場にレンブラント作『洗礼者ヨハネの斬首』が飾られていた。それからそのHPの名前ですが……」
ロレンツォは「ヨルダン川の辺」を指さした。
「……ヨルダン川というのは、ヨハネが洗礼を行っていた場所ですよね。イエスもそこでヨハネの洗礼を受けています。だから……」
ロレンツォは今度はキャリーの作った表を指さした。
「あの文字列も、『ヨハネの黙示録』に即した内容だとして読むべきなんです」
FBI捜査員とニューヨークの刑事の視線が文字列に集まった。
「いいですか?ここに少なくともREDと読める部分があります。それからその下の部分はBLCKと続いてますね?これはLとCのあいだにまだ繋がりの見えてこないAの事件があると考えれば……」
「……ブラックだね。だけどそりゃ論理の飛躍が……」
しかしクリスの反論するより早く、ロレンツォは自論を結論まで突っ走った。
「……レッドの上にはWHIがある!これは明らかにホワイトだ!つまり!黙示録の四騎士のうち『ホワイト』『レッド』『ブラック』と三騎までが揃っていることになる!」
反論しようとしていたクリスも含めた全員の目が被害者リストに集まった。
「……で、ブラックの次はPAまで来てるんですよね?次にくるアルファベットが何か、もう私が言わなくっても判ったでしょ?」
………数秒の沈黙のあと、ハーパーはクリスに命じた!
「クリストファー・ウインフィールド!その掲示板に、HNがLで始まる書き込みがあるか!?」
「一人います!HNはロンサムボーイ(Lonesomeboy)」
すると、それまで口を出さずに聞いていたベックマンが不意に口を開いた。
「ウィンフィールドくん!合法であると非業法であると手段は問わない。そのHNの主を特定できるかな!?」
「………大統領、僕の前科を忘れたんですか?」
クリストファー・ウインフィールドの瞳が鋭く光った。
0373創る名無しに見る名無し
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2011/09/12(月) 18:05:55.39ID:vV/eXPPT
まとめサイトを>>377まで更新しました
0374ファイルNoゼロ「旅する死神」
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2011/09/12(月) 23:45:36.90ID:jEi/JRPa
 「HN『ロンサムボーイ』は、メリーランド州フレデリック……」
ネット上での追跡を開始してからクリストフォー・ウィンフィールドが目指す相手を特定するまで、僅か十数分だった。
「……番地13号、ロバート・モーガン」
「近いわね!」とエミー。「やっほー!」はキャリー。
「ハーパーくん!行ってくれ!!」
「了解です!」
「社長!車は僕のを使って!」とクリスがキーを投げた。
「ご一緒させてください」と申し出たソフィアに、ハーパーが手真似で「来い」と承諾すると、二人はアカデミーを飛び出していった。

「……青ざめた馬が完成するまで……」

一同が声に振返ると、ロレンツォが独り、幽霊でも見たような顔でパソコン画面を見つめていた。
「青ざめた馬(Pale・horse)が完成するまで、あと2文字です」
のろのろとロレンツォがベックマンの方に向き直った。
「『ヨハネの黙示録』は世界の最終闘争について記述しています。そして『旅人』は、その黙示録に異様な拘り見せている……ベックマンさん……あと二文字です。『旅人』が『ペイル』を完成させたとき、いったいどんなことが起きるのだと思われますか?」
0375ファイルNoゼロ「旅する死神」
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2011/09/12(月) 23:47:46.26ID:jEi/JRPa
州道4号を抜け5号に入ってから約一時間弱……ハーパーの運転するピックアップトラックが隣州メリーランドの住宅地へと滑り込んだ時、辺りは既に夜になっていた。
急に車の窓を開け闇に目を凝らすソフィアに、ハーパーは尋ねた。
「………どうかしたのか?」
「警官の臭いがします…」
「今のいままで知らなかったよ。警官に臭いがあるなんて」
「………随分来ています。遅かったようですね」
ナビの表示が目的地に近付くにつれ、樹間や屋並みのあいだに赤い回転灯が垣間見えるようになってきた。
目指す家の周りはまずパトカーと野次馬で一杯だった。
 やって来たピックアップトラックに気付いた年配の警官が野次馬を押しのけやって来た。
「FBIのチャールズ・ハーパーさんとプリスキンさんだな?」

「……ひょっとしてベックマンから?」
「決まってるだろ。オレはここの署長のビンセントだ。まあこっち来てくれ」
どうやらベックマンは、ソフィアのこともFBI捜査官と伝えてあるらしい。
ソフィアに目配せすると、二人のFBI捜査官は署長に先導されてローバート・モーガンの家へと入って行った。

 ロバート・モーガンの家は、見かけと中が全く違っていた。
見かけは古いレンガの壁に蔦の這うニューイングランド風の作りなのだが、地下室に降りるとそこはライトグレイのプラスチックと金属の銀色に支配された別世界が広がっていた。
壁に作りつけられた様々なスイッチのいくつかは警報装置で、いくつかは空調装置のようだ。
警報装置を一目見るなりハーパーが唸った。
「なんだ?この警報装置は??民間の住宅に設置される水準のものじゃないぞ!?」
「空調の方も妙ですね。最初は一時流行った個人宅用核シェルターかと思いましたが、与圧の設定が逆です」
核シェルターの場合、放射性物質を含む空気がシェルター内に入り込まないよう、室内の空気圧を高くする。
だがロバート・モーガン宅の地下空調は、室内を減圧する設定になっていた。
「ハーパーさん。この家でロバート・モーガンはいったい何をしていたんでしょうか?」
「……嫌な予感がするよ」
「いい感してるな。さすがはベックマンの仲間だ」
振返りもせずそう言うと、署長は地下室最奥の扉に手をかけた。
「さてと……こっから先は地獄の一丁目だぞ」
ビンセント署長が外から圧の掛ったドアを重そうに引き開けると、シューーーーッと外の空気が中へと吸い込まれる音が聞えた。
0376ファイルNoゼロ「旅する死神」
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2011/09/12(月) 23:52:32.15ID:jEi/JRPa

塵ひとつ落ちていない銀とライトグレイの部屋の中で、深紅の広がりはとてもよく目立った。
試験管に培養皿。
顕微鏡に小型冷蔵庫。
最奥の部屋は明らかに研究施設。それも、絶対外に漏らしてはならない物のための研究施設だった。
無機的な部屋のど真ん中で、ロバート・モーガンは脳天をトマトのように潰され、大の字に手足を伸ばしていた。
血にまみれた長さ20インチほどの金属の棒が死体の傍らに転がっており、それが凶器らしい。
「鋳鉄製だ。妙な装飾がされいるんだが……何なのかはまだ判ってない」
「プリスキン、何か思い当たるか?Lで始まる道具でこういうものを……」
「……天秤秤」
「畜生!」
悪態ついて右拳を左手の平に叩き込んだとき、ハーパーは殺人現場でうろついている人間の動きがプロらしく……というより警官らしく見えないのに気がついた。
「署長」
同じことを感じたらしくソフィアが署長に尋ねた。
「彼らは鑑識のように見えません。……鑑識の作業前に素人らしい者が現場をうろついているワケをご説明いたたげませんか?」
「ヤツらは殺されたロバート・モーガンの勤めていた研究所の者だ。なんでもモーガンが職場からなんたらいう株式だかを勝手に持ち出してたらしくてな……」
「……株式だって?」
冷蔵庫の中を調べていた男が突然振返った。
真っ青な顔色と血走った目が、彼の心境を何より雄弁に語っている。
「何度行ったら判ってもらえるんです!持ち出させていたのは、レストン株です!」

 「レ、レストン株ですって!?」
ハーパーからの緊急連絡を耳にするなり、サンベルト・ロレンツォが飛び上がった。
「で、その大馬鹿者は、レストン株で何をやっていたんですか!?」
「『ヨルダンの川辺』での告解の書き込みからするとですねー……」
掲示板に目を通していたキャリーがロレンツォに言った。
「……改良って書いてるんですけどー……。ところでドクター、レストン株ってなんですかー?」
「エボラ出血熱って知ってるかい?死亡確率80%に達する悪魔のウィルスなんだけど……」
「昔本で読んだわね」ミノムシ女エミーも身を乗り出してきた。
「……たしか血液その他の体液の飛沫で感染するって……」
「普通のエボラアィルスなら、たしかにその通り。感染者の体液に触れない限り安全です。
しかし、レストン株だけは違う!あのタイプのエボラは……」
ロレンツォの顔は、モーガンの家を創作していた同僚たちと同じほどに青ざめていた。
「……エボラウィルスのレストン株だけは、空気感染するんです!」
0377創る名無しに見る名無し
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2011/09/14(水) 23:26:48.18ID:Bg0Iu2tt
相棒のトリオみたいな面白ツンデレキャラがいてもいいかもな
シリアスの合間合間にはさめば清涼剤になるし
0378創る名無しに見る名無し
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2011/09/14(水) 23:27:17.32ID:iQt6I7fA
ロバート・モーガン殺しの場面は、構成案が二つあった。
一つは採用した方の案。
もう一つは……「モーガン宅でハーパー+ソフィアが『旅人』とニアミスし、戦闘になるが逃げられる」案。
これはこれで面白いんだけど、最後の大仕掛けが機能しなくなる可能性があるんでボツ。
仕掛けが機能してくれないと、「DT編成が必要になる」理由が組み立てられなくなる。
さて、上手くいくかな?
0379ファイルNoゼロ「旅する死神」
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2011/09/15(木) 20:16:20.44ID:1SupKwNB
本部への再上申からベックマンとハーパーが足早に戻ってきた。
「諸君!これより『旅人』に関する捜査は、FBI本部によって行われることになった。
これにより我々のこの非公式なチームは……」
ここでベックマンは「チームだよな?オレたちは……」と言って一時表情を和らげた。
「……『ヨルダン川の辺』に関するデータも含む、総ての捜査資料を本部の捜査チームに引き継いで解散ということになる」
「えーーーっ!?」
即座にキャリーが不満の声を上げた。
「これまで私たちが追っかけてきたっていうのにー?!」
「仕方ないんだキャリー」
ベックマンに代わり説得を買って出たのはハーパーだった。
「これまで『旅人』は殺人現場から次の殺人に使う凶器を持ち去ってきた。
そしてモーガン殺しの現場から持ち去られたのは、空気感染能力をもつレストン株に、遺伝子操作によって人への致死性を付与した、いわばスーパー・レストン株だ」
「あなたの気持ち判るけど……でもハーパーの言う通りよ」
そうは言いながらも、エミーの口ぶりもどこか残念そうだった。
「スーパー・レストンが凶器に使われたら、殺人のターゲットそのものは特定の誰かだとしても、結果は不特定多数を巻きこむバイオテロになっちゃうんだから」
「ありがとうエミー、ハーパーくん」
すまなそうに言うベックマンの表情にも、他の皆と同じ感情が見て取れる。
「もうこの事件は、ただのシリアルキラー捜査ではなくなってしまった。例のディミトリィ・ノラスコが所属するHRTにも既に臨戦態勢での待機命令がだされている。
CDCはもちろんのこと、国家非常事態省やホワイトハウスにも連絡がゆくだろう。
軍の対NBC戦部隊にも連絡がいくだろう。軍の対NBC戦部隊だって出て来るかもしれない」
すると……いつのまにか彼の定位置になっていたパソコン前の椅子で、クリスが遠慮勝ちに手を上げた。
「あの……ですね。おそらく僕は掲示板からの追跡を続けろって指示を貰うことになると思うんですよ。…でもって、エミーとキャリーはここクワンティコで待機ってとこかなと…。プリスキン刑事はもちろんニューヨークに戻ると……。
で、ベックマンさんとハーパーさんはどうなるんですか?」
困ったような顔でベックマンはハーパーの顔を見た。
肩をすくめてそれに応えると、ハーパーはクリスだけでなく、エミーやキャリーにも向かって口を開いた。
「我々二人は、それぞれの担当エリアに戻り、通常の活動に復帰するよう指示されている」
クリスは鼻柱に皺を寄せて天井を仰ぎ、エミーは逆に床へと視線を落とした。
ハムスター女だけは、黙っていることができなかった。
「そ、そんなのってないですー!」
ハムスターがトラのように叫んだ。
「これまで『旅人』を追いかけてたのはハーパーさんとベックマンさんなのに!前に上申したときは相手にもしてくんなかったのに!こんどは、オマエもういいから引っ込んでろって言うんですかーー!?」
「……オ、オマエら?オマエらって、オレたちのことか??」
ベックマンは苦笑し、ハーパーはゲラゲラ笑い出した。
「あの、あのあのあの……別に私、お二人のことをオマエなんてお呼びしてつもりは……」
「判ってる。判ってるさ。キミの言いたいことは」
青くなったり赤くなったりオロオロするキャリーを宥めると、ハーパーは彼女に手を差し出した。
戸惑いながらもキャリーがそれを握り返すと、ハーパーは順にクリス、エミー、ソフィアと握手を交わしていった。
「ありがとう皆、短い時間だったが、とてもいいチームだったと思うよ」
「お!?私とも握手してくれるのかな?」
差し出されたハーパーの手に驚いたようにそう言うと、慌ててロレンツォはズボンで手を拭いた。
「……ありがとうございます」
あくまでクールに、ソフィアは握手を交わした。
「とても勉強になりました。これからも……」
「此処に来ないか?」
「え?」
「君は管轄の狭い州警よりも、こっちの方が合ってるような気がするな。その気があるなら待ってるぞ」
「…………………考えさせてください」
そして、ハーパーに続いて全員が全員と握手を交わし、この臨時捜査チームは「発展的に」解散をしたのだった。
0380ファイルNoゼロ「旅する死神」
垢版 |
2011/09/16(金) 23:46:23.36ID:NuXjADgw
 ハーパーらから「旅人」捜査を引き継いだFBI本部の動きは、さすがに速かった。
クリストファー・ウィンフィールドも引き続き参加したIT犯罪捜査班は掲示板書き込み者を追跡し、「旅人」の次のターゲットを特定しようと努めていた。
一方、これと並行して掲示板書き込み者の生死確認も行われ、ハーパーらの捜査ではあぶり出されなかった殺人も見つけだされた。
その結果、「HNの頭文字を連ねると黙示録の四騎士になる」というロレンツォ説の正しさが立証。
FBI本部は「旅人」の次のターゲットを、HNがEで始まる掲示板書き込み者4人に絞り込んだ。
プロバイダーに圧力が加えられ、4人全員の住所と氏名を直ちに特定。
それは、さすがというより他にないFBIの組織力による成果であり、FBI上層部も「旅人」捕捉は時間の問題と、考えはじめていた。

ただ一人、クリストファー・ウィンフィールドを除いては……。
0381ファイルNoゼロ「旅する死神」
垢版 |
2011/09/16(金) 23:47:59.61ID:NuXjADgw
(ホントに大丈夫なのか?!)
心に湧きおこる不安にかられて、クリスは自分のブースで立ち上がった。
「旅人」は、クリスがやったのと同じようなやり方で、獲物の個人情報を得ていたにちがいない。
そう考えたFBI上層部は、「旅人」狩りにIT犯罪捜査班を投入した。
クリスの見渡す室内には、見渡す限りパーテーションで区切られた小ブースが並んでいた。
パチパチと音がするだけのその一つ一つに、パソコン一台と捜査員一名が配置されており、ネット上から「旅人」の足取りを追いかけているのだ。
(呆れるほどの組織力だな。人権もプライヴァシーもあったもんじゃないね。でも…)
クリスの心には、ある暗い確信が根を張っていた。
(FBI本部は「見えない」と思って「ヨルダン川の辺」を土足で踏み荒らしてる。だけど……)
……バキッ!
(……「旅人」が気づかないなんてこと、あるはずがない!)
気づかぬうちに、クリスは手にしたポールペンをへし折ってしまっていた。
(こんなとき、あの社長なら、どうするだろう……)
0382ファイルNoゼロ「旅する死神」
垢版 |
2011/09/16(金) 23:51:48.40ID:NuXjADgw
同じころ、クリス・ウィンフィールドの覚えた不安と呼応するかのように………

「……………………」
ただ黙したまま、男は携帯を閉じた。
口元に浮かぶ酷薄な笑み。
彼には総て予想の範囲だった。
連続殺人に気付いた者の最初にぶつかる壁が「獲物の選定方法」。
「ヨルダン川の辺」の掲示板が獲物の「選択場」であることに気づいた場合、追跡の手もネット上からかかるだろう。
だから……「ヨルダン川の辺」を監視していれば、「敵」の捜査の進捗状況を察知することができるだろう。
技術的なことや、難しいことはなにも必要ない。
ただ「ヨルダン川の辺」の来客数を見ればいいのだ。
「ヨルダン川の辺」は、極マイナーなHPだ。
歴史だってそんなに長いわけでもない。
だから来客数の伸びもごく微々たるペースであって、一日の来客数が0の場合だって特に珍しくは無かった。
ところが……ロバート・モーガンを殺した翌日、「ヨルダン川の辺」へのアクセス数が二ケタにも達したのだ。
来客数が急に伸びたそのワケは?
……考えるまでも無い。
だがそれだって、彼にとっては予想のうちだ。
………バカものがエサに喰いついてくれたのだ。
こっちはこっちの計画を、粛々と実行すればいい。
ただそれだけのことだ。

(我はペイルライダー、我は疫病をもたらすもの……主の僕となりて、ミレニアムを拓く捨石とならん……)

再び口元にかすかな笑みを浮かべると、「旅人」はバイクのキーに手を伸ばした。
0383創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/09/22(木) 23:26:38.09ID:N4xkw4PN
(人物名)レヴィ・キム
(人物説明)LAPD
(簡単な経歴)韓国系アメリカ人男性。外見年齢は30代
      LAPD勤務の刑事。性格は、良く言えば
      義理堅く、悪く言えば頭が固い頑固者
      基本的にFBI等余所者を嫌っているが、
      過去にFBIの露骨な介入で闇に葬られた
      とある出来事があったため
      身長が高く厳つい風貌に似合わず、天然な
      ところがある

(人物名)グラハム・イマオカ
(人物説明)LAPD
(簡単な経歴)日系4世。レヴィとは同期で腐れ縁
      日本名は「今岡 怜太(いまおか れいた)」
特撮・アニメオタクで隠れ厨二病(色々痛いブログをやってる)
      生真面目な日本人のイメージとはかなり
      かけ離れたいい加減な性格だが、仕事
      は言われた範囲ならしっかりこなす
      ちゃっかり上司に対してアピールする
      抜け目のなさも併せ持っている
      『危ない橋は渡らず、長い物には巻かれろ』
      が座右の銘らしいが、曲がったことが嫌いで
      犯罪を憎む強い正義感を内心に秘めている

      好きなヒーローはバットマンと仮面ライダー
      ティム・リーとは知り合いで、よく飲みに行く
      一人称は「俺」、ブログ上では「吾輩」「我」
      レヴィとは違い、FBIを嫌っていない。むしろ、
      コネをつくれる機会と捉えている     
      

レヴィがロボットのボディならグラハムは頭脳
ちょくちょく出てくる刑事兼三枚目ポジションです
たまに2人して頓珍漢な推理をします(レヴィはDTに対して徐々にツンデレ化)
ティムとは知り合いという設定で、トリオ・ザ・LAPDになるときもあります
0384創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/09/23(金) 23:55:05.57ID:BUM3POKd
支援
0385ファイルNoゼロ「旅する死神」
垢版 |
2011/09/25(日) 13:25:52.79ID:PmSE6aKA
 ついに「旅人」の足跡を捕まえ、チームを解散したあの日の3日後……。
久しぶりにハーパーは、馴染みのホットドッグスタンドに足を運んでいた。
いつもの席で新聞を広げていると、注文した覚えも無いハーパー・スペシャル=特濃ブラックコーヒーがテーブルでどきつい香りをテーブルで放っていた。
目を上げると、店主のボブが煩そうについっと視線を外した。
僅かな動作に「オレからのサービスだ」と「煩せえからいちいち聞くな」という二通りのニュアンスを読みとったハーパーは、そのまま黙ってコーヒーカップを口へと運ぶ。
ハーパーの手にした新聞には「旅人」がらみの報道は、特には見当たらない。
しかし彼の元には、エミー・ハワード、クリストファー・ウィンフィールドから、その後の展開についての続報が入れられていた。

まず、ロバート・モーガンの頭蓋骨を粉砕した「長さ20インチの鋳鉄製の棒」はソフィアの見立て通り、やはり天秤秤だった。
トロントで殺されたニッキー・スローンが「魔女の生まれ変わり」として人の罪の軽重を計るとき使うことになっている天秤秤が、ニッキー自身の手により撮影所から持ち出され、「旅人」の手に渡っていたのだ。
またクワンティコのプロファイリング班は、「旅人」を強度の秩序型と推定。
「高い知能と人を引き付ける外観や話術」を持ち「経済的に恵まれ」た「30代後半から40代前半ぐらい」で「独り住まい」をしている「男性」として「旅人」像を描き出していた。
 更にクリストファー・ウィンフィールドも参加するIT犯罪捜査班が割り出した「ヨルダン川の辺」のパソコン所在場所をカンザス州のレバノンと割り出した。
だが急行した捜査員が発見したのは、パソコンだけが設置された無人の部屋だけだった。
部屋は一年間の賃貸契約で、5年前からの自動継続。
家主が契約相手と顔を会わせたのは一度も無く、最初の一回は電話であとはメールでのやりとりだったという。
契約書記載の氏名はナサニエル・ジョーダン。
住所と保存されていたメールアドレスからフィラデルアィアの高級アパートを突き留めたのがその翌日。
ナサニエル・ジョーダンの風貌その他は、プロファイリング班の描いた犯人像と見事に一致していた。

犯人はジョーダンと断定して間違いない。

FBI本部はジョーダン追跡と並行して、最後の獲物である可能性のある「Eで始まるHNの主」四人を密かに保護下に置き、その周囲に十重二十重の警戒網を張り巡らせ「旅人」来訪を待ちかまえていた……。
0386ファイルNoゼロ「旅する死神」
垢版 |
2011/09/25(日) 13:29:40.71ID:PmSE6aKA
ロスでチャールズ・ハーパーが顰めっツラでどす黒いコーヒーを啜っていたころ……。

大陸の反対側、ヴァージニア州クワンティコでは、HRT隊員たちが、一つ部屋に集合していた。
 赤毛のアイリッシュ、HRT隊長エドガー・ファーガは集まった部下たちを前にいつものように切りだした。
「さて諸君……」
二枚目だが、いかつい顔立ちでもあるので実年齢より年上に見える。
そのため、落ち着き払った口調ともあいまって、「ハイスクールのフットボールかバスケットボール部のコーチみたいだ」と評するむきもあった。
事実、エドガーはその職務に関して間違いなく「名コーチ」といえた。
「……例によって予習の時間だ。予習と復習をサボるヤツは……」
「長生きできませんっ」
タイミングよく誰かが応じてエドガーはニヤリと笑う。
「……よく判っているな。その通り!自分の命だけではない!人質や仲間を誤射したりしない為にも、予習・復習は不可欠なのだ」
そしてエドガーは、目の前のホワイトボードにバンと音をたてて一枚の写真を貼り付けた。
同時にその拡大版がホワイトボードに投影された途端、HRT隊員たちの顔から笑いが消えた。
「こいつがナサニエル・ジョーダン。通称『旅人』だ。貴様らが、せっかくの楽しい週末に彼女とデートにも行けず、むさくるしい野郎ばかりで待機する破目になったのは、コイツのせいだ」
それは三人の男が並んだ写真の、その真ん中の男をアップにしたものだった。
落ち窪んだ青い目、両サイドだけ後退した生え際、そして山脈のように隆起した鼻柱と二つに割れた顎……やや藪睨みで顔の左側をカメラ正面に向けている。
左腕にトロフィーを抱え、右手のガバメントは明らかにカスタム仕様。
明らかに何かの射撃競技会での入賞記念写真である。
それが、ナサニエル・ジョーダンという男だった。
「判っている限りで既に22人を殺し、23人目を殺そうとしている男だ。
こいつの犯行には、前の殺人現場から次の殺人で使う凶器を持ち出すというパターンがある。
そして、最後の現場から持ち去られた物、言い換えれば次の殺人で使われる凶器が……
これだ!」
エドガーは一目で顕微鏡写真と判る写真を、ライダーの隣に貼り付けた。
「これは、最後の被害者、ロバート・モーガンが作り出した最凶最悪の殺人ウィルス、エボラ・スーパー・レストンだ。
「隊長!質問が……」
隊員の一人が声をあげた。
「もし仮に、それがニューヨークで凶器として使用されたと仮定すると、どういうことになりますか?」
「CDCの技官の意見では、マンハッタン島を即座に検疫隔離しないかぎり、最悪一週間で州全体が壊滅するそうだ」
あまりの回答に、隊員のあいだではどよめきすら起こらない。
「捜査の結果、『旅人』の次の標的はこの男と……」
ホワイトボードに顔が映し出されると、「あれっ?コイツは……」という声が漏れた。
「…諸君らもテレビなどで見たこともあるだろう。この男、HNは『エレクター』。民主党選出の下院議員で週末開かれる民主党党大会に出席するためフィラデルフィアにやって来る!」
会議室を埋める男たちのあいだに電気が走る!
「諸君!もう判っただろう!『旅人』の23番目の殺人の舞台は、市域住民12万の大都市だ。
今回の行動には陸軍の対NBC部隊も参加するが、それはあくまで最悪の事態を想定してのバックアップに過ぎない!前線に立って市民を守るのは、我々HRTだ!!」

0387ファイルNoゼロ「旅する死神」
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2011/09/25(日) 13:31:29.66ID:PmSE6aKA
「…ファーガ隊長」
ブリーフィングが終って帰りかけたエドガーを、出来の悪い生徒のようにディミトリィ・ノラスコが廊下で呼びとめた。
「なにか質問か、ディミトリィ?」
「こいつが『旅人』だってことですが、間違いないんでしょうか?」
数秒ほどディミトリィの顔をじっと見返してから、エドガーはおもむろに口を開いた。
「オマエは単独で『旅人』を追っていたんだったな?」
「なんでそれを??」
「ウィンチェスター市警からやんわりと文句が来た」
「……すみません」
「気にするな。もう慣れた」
独断先行に過ぎるディミトリィがいまだにHRTに留まっていられるのは、ひとえにエドガーのおかげと言ってよかった。
「……で、オマエはこのジョーダンが『旅人』じゃないと言うのか?」
「そこまでは言いませんが……ただ……ちょっと」
ディミトリィは口ごもった。
「上手く説明できないか?」
「ただ、酷く嫌な感じがするんです。上手くは言えないんですが……」
エドガーの視線がディミトリィから離れ、しばし宙をさまよった。
何の根拠も無いと頭から否定されても仕方の無い話だろう。
しかし、エドガーはそんな男ではなかった。
「……ときどきいるだろ?天気の変り目を先読みするようなヤツ。あるいは…ゲームがやたらと強いヤツ」
「はあ?」
「ああいうのはな、本人も気がつかないうちに、脳味噌が瞬間的に判断してるんだそうだ」
「なんの話をされてるんですか?」
「オマエの話だ!まあ最後まで聞け!!」
エドガーは明らかに言葉を探し、選びながら話をしていた。
「相手の視線とか……筋肉の動きとか……あるいは湿度の変化とか……そんなものを察知して、意識するより早く判断する。けれども……意識より早い瞬間的な判断だから、根拠を聞かれても答えられない。説明できない……判るか?オレの話が??」
ディミトリィはとりあえず頷いておいた。
「オマエはそういう部類のヤツなんだと、オレは思う」
「………」
「オレたちは、上層部の判断に従って動いてるだけだ。だがオマエは違う。ただ一件とはいえ、現場に立ち何かを掴んで来た。
それがオマエの『嫌な感じ』の正体なのかもしれん……だがな」
殴ったら拳の方が壊れそうな、岩を刻んだようなエドガーの顔が、ジッとディミトリィを見据えていた。
「FBIに限らず、警察や軍の力というものは組織の力だ。組織の力で国民を守っているのだ……」
ディミトリィは、エドガーの「岩の顔」の意味を、そして彼の言わんとすることを察しとった。
「……だから、FBIの頭脳がある決定をした場合、手足であるHRTが、これと異なる行動をすることは許されない。わかるか?ディミトリィ」
「はい」
頷いたディミトリィの顔は、憑き物が落ちたようなスッキリした表情だった。
「……我々HRTに選択の余地はない。あくまでナサニエル・ジョーダンを『旅人』として逮捕するしかない。もしこれに従わないならば組織に留まることはできないと、そういうことですね」
エドガーが頷き返すと、一礼してからディミトリィは背を向けた。
部下の後ろ姿が廊下の彼方に見えなくなるまで、エドガーはそのままの姿勢で見送っていた。
彼の顔は、もう岩の顔ではなくなっていた。
0388ファイルNoゼロ「旅する死神」
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2011/09/25(日) 23:09:45.80ID:PmSE6aKA

 腹は決まった。
そうとなればディミトリィの動きは速い。
ブリーフィングのあったその日のうちに、ディミトリィ・ノラスコはニューヨーク市警を訪れていた。
「……HRT所属、ディミトリィ・ノラスコ……FBIの方ですね」
「たぶんすぐに『元』ってことになるだろうな」
ディミトリィの答えに、ソフィアの瞳が微かに揺らいだ。
HRTには対「旅人」で待機命令が出ているはずだ。
こんなところをウロウロしていていいはずない。
「つまりアナタは、FBIは間違った相手を折っていると考えているのですね」
「察しがいいな。…まぁ確信とか証拠とかがあるわけじゃねえんだが……。もしオレのカンが当たってりゃあ、殺人ウィ……」
「秘密漏洩にはなりませんから、ご心配なく」
「そうだったな。アンタはハーパーと一緒にあの場に居合わせたんだったな」
どこまで話していいのか?そのレートが無くなってディミトリィの態度がざっくばらんになった。
「話し易くて助かるぜ。上層部は、『旅人』のつぎの仕事場はフィラデルフィアだと考えてる」
「フィラデルフィア……たしか黙示録に登場する7つの教会の一つですね」
「そうさ。それも上層部がフィラデルフィアを次の仕事場と睨んでる理由のひとつさ」
「……フィラデルフィア……門をひらく。御言葉に従い、名を否まず、力があった……」
おそらく何度も読み込んでいたのだろう、ソフィアは「黙示録」中のフィラデルフィア教会に関する個所を暗唱した。
「フィラデルフィアでは確か……」
「カンがいいな。エミーの言った通りだ。フィラデルフィアじゃ週末、民主党の党大会が開催される。つまり『門を開く』ってわけだ。確かにスジは通ってるよな」
(……この男も同じだ)とソフィアは感じ取った。
ハーパーやベックマン、キャリーにエミーにウィンフィールドと同じ種族。
管轄に縛られるセクショナリズムとか、他の人がやるだろうなどという無責任とはもっとも遠いところにいる人種。
自分のできることを、最大限までやり抜こうとする人種。
ニューヨーク市警という「枠」に自分は囚われている。
しかし目の前の男は、自分を閉じ込める「枠」を一気に乗り越え此処にやって来たのだ。
思わず前のめりになって、ソフィアは言った。
「アナタは本当の殺人を防ぐため、待機命令も無視して此処に来られたんでしょう?私にも是非強力させてください!」
「それじゃあ、お言葉に甘えて……最初の凶器になったボルカニック連発銃を見せてくれねえか?」
0389ファイルNoゼロ「旅する死神」
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2011/09/28(水) 23:59:23.59ID:m+ZYNN0i
 ディミトリィが手にした弾薬は、極めて異質なものだった。
手にした1発、そしてテーブルに並んだ5発の弾も、すべて真鍮の薬莢がついていない。
ボルカニックライフルの弾薬は、弾の底部に発射薬が埋め込まれる構造なのだ。
「ボルカニック社ってなぁ確かS&Wの前進だったよな?ってこたぁ、マサチューセッツに在ったのか?それともウィンチェスター繋がりでコネチカット??」
「コネチカットで1855年創業。1866年に解散です」
「弾薬製造は?……当然同じか。聞くまでもないな。こんな妙な弾作ってるトコなんて、銃の製造元以外あるわけねえか………」
ディミトリィは古びた弾丸をテーブルに置くと、今度はライフルの方を手に取った。
銃把の前のレバーを動かす操作感は、普通のウィンチェスターライフルと特に変わるところは無い。
「……この銃の出どころは?こんなもん持ってるヤツならマニアか火器関係の博物館だ。
すぐ判んじゃねえのか?」」
「それが判らないんです。全米ライフル協会や著名ガンマニア・研究家にも協力を求めたんですが、持ち主は判っていません」
「それも妙な話しだな……こんな骨董品の出どころが判んねえなんて……」
苛立たしげにディミトリィが首を傾げた時だった。
証拠保管室の扉が開いて、ソフィアの相棒グレック刑事が入って来た。
「おう探したぞプリスキン!例のロケット・ボールの出何処が判ったかもしれん!………って、この兄ちゃん、だれ??」
「FBIのディミトリィ・ノラスコ捜査官です。それよりグレック、この弾の製造元が判ったっていうの!?」
グレックは鼻の穴をふくらませて胸を張った。
「鑑識のヤツに機械いじりの好きなヤツがいてよ、そいつが言ったのさ。この弾そのものは鋳造だけど、火薬を入れる窪みは電動ドリルかなにかで開けてるみたいだってよ」
「電動ドリルだと!?」
ディミトリィは驚いてテーブルから総ての弾を掴み取った。
古びて酸化による染みの浮いた金属表面は、確かに百数十年の時の流れを感じさせた。
しかし目を閉じて弾の底面をそっと指で撫でてみると、中の一発に鋭角の部分がある。
「○×▼□!」
ディミトリィの口から、ここには到底書けないような悪態が迸った!
「ワザと古びたようにしてるのだわ!歴史関係の博物館の収蔵品なのね?」
ディミトリィに代わってソフィアが聞き返すと、グレックは一枚のメモをヒラヒラさせることで応えた。
「ニアピンだな。所有者はカリフォルニアの郷土史家らしい。カリフォルニア、特にゴールドラッシュのころのカリフォルニアの物品を中心にコレクションも多いらしいな。
名前はパトリック・ライダー。住所は、ほら、このメモさ」
「よこせ!」
グレックの手からメモを奪い取って、ディミトリィは証拠保管室を飛び出した!
「グレック!私も行きます!代わりに有給申請出しといて!!」
「お、おい!」
止める暇もあればこそ、ディミトリィを追ってソフィアも保管室を飛び出していった。
0390ファイルNoゼロ「旅する死神」
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2011/09/29(木) 00:03:38.32ID:1tO9ocPA
 ディミトリィとソフィアはロケットボールを手掛かりにカリフォルニアへ…。
同時にFBI本隊は「旅人」を絡め取らんと、フィラデルフィアに十重二十重の網を張る。
ひとたび凶器の殺人ウィルスを使われれば、巨大都市が地獄に変る。
なにがなんでも食い止めなくては。
同じその思いを胸に、「旅人」狩りは北米の両極へと別れて走り出していた。
そしてもう一人……。
0391ファイルNoゼロ「旅する死神」
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2011/09/29(木) 00:07:44.97ID:1tO9ocPA
「やれやれ、今朝も奥さんに朝飯作ってもらえなかったのかい?」
「なんでわかった?」
「ホットドッグも注文したからね」
ハーパーの前のテーブルにはハーパー・スペシャル=特濃ブラックコーヒーとモーニングセットのホットドッグが並んでいる。
「やれやれ……個人情報バレバレだな」
ギブアップを宣言すると、ハーパーはコーヒーカップを口へと運んだ。
ハーパーの手にした新聞には、今日も「旅人」がらみの報道は見当たらない。
だが、フィラデルフィアでの民主党党大会を明日に控え、FBI本体は合法非合法あらゆる手段を尽くして、必死に「旅人」ナサニエル・ジョーダンの行方を追っているはずだった。
「だが本当に……」
「何か言ったかい?」
「ああ、ごめん。独りごとだよ。気にしないで……」
ボブに謝るとハーパーは視線を新聞紙面に落とした。
見開き両面を使ってアメリカ全土が掲載されている。
どこかのスーパーだかの広告で、自社の店舗がどれだけ全国に在るかを誇っている。
もちろんフィラデルフィアにも店舗所在の☆印がついていた。
ハーパーはテーブルにあったペンで無意識に丸く囲った。
(本当に、ナサニエル・ジョーダンという男が「旅人」なのか?そして次の殺人の舞台は本当にフィラデルフィアなのか?)
さらにハーパーは、彼が知る限りの「旅人」による殺人の舞台を広告に書き入れていった。
(最初がニューヨーク………サウスダコタ………ポートランド………アリゾナ、アラスカ、トロント、そしてメリーランド州フレデリックか……)
ほどなくしてシリアルキラー「旅人」の全仕事が地図上再現された。
やや東部に集中しているきらいもあるが、おおむね全米あまねく均等に散らばっている。
(そういえば、「ヨルダン川の辺」のパソコンが置かれていたカンサス州レバノンは、通称「アメリカのへそ」だ。
当然、全米にばら撒かれた殺人のど真ん中に「ヨルダン川の辺」はあることになる。ゆっぱり、ジョーダンが「旅人」で間違いないのか……)
そのときカウンターの向こうから店主のボブが唸るように言った。
「答えなら、ロスアンゼルスだよ」

0392ファイルNoゼロ「旅する死神」
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2011/09/29(木) 00:10:37.34ID:1tO9ocPA
「えっ!」
思わず叫んでハーパーは新聞を置いた。
「ロ、ロスアンゼルスだって!?次の殺人が!?」
「次の殺人??いったいなんの話だい?ワシの言ってるのは懸賞の答えだよ。あんた、それをさっきから考えてたんじゃなかったのかい?」
「……懸賞??」
「あんたが今読んでる新聞にも出てるはずだ。店にもポスターが張ってあるよ。ほら。あそこだ」
ボブの指さす方を、反射的にハーパーは目線で追った。
携帯の普及で今は殆ど使われてるところを見ないが、店の隅には電話スタンドがまだ接地されている。
ボブの言うポスターはそのすぐ横に貼り出されていた。
「カリフォルニア………ゴールドラッシュ展?」
「あんた知らなかったのかい?こいつぁあ驚いた。テレビのニュースでも結構やってるぜ。ほら今も……」
ボブの頭上の空間にはポータブルのテレビが置かれ、ちょうど朝のニュースがやっていた。
マイク片手のレポーターと顎の鋭い金髪の男が話をしている。

『ゴールドラッシュ展開催が明日に迫りましたね。陳列予定品が盗難にあったりと色々大変でしたが、ライダーさん、何かご感想を』
『盗まれた品は、残念ながらまだ一つも戻っておりませんが、これも主の与えたもうた試練と信じ、なんとかこうして開催までこぎつけることができました。感無量です』
『ありがとうございました。展示品提供者のお一人、パトリック・ライダーさんのお話しでした』

(パトリック・ライダー?Pライダーってわけか)
そして、いくらなんでも考え過ぎだぞと、ハーパーは頭を振った。
ボブが答えを教えてくれた懸賞はポスターの下部に載っていた。

ゴールド・ラッシュ展が開催されるのはどこの都市ですか?ヒント、「天使の都」といえば……

バカにするにも程があるぞと、ハーパーは苦笑した。
(これで答えが「ロスアンゼルス」だと判らないヤツは、絶対頭がどうかしてるぞ)
そして再び紙面の広告に目を落としたとき、ハーパーは背筋に一瞬嫌なものが走るのを感じた。
(空白だ……)
ハーパーが作ったばかりの「旅人」全仕事。
そのなかで、カリフォルニアは全くの空白地帯となっている。
「旅人」の足あとは、北のポートランドと南のアリゾナ、東はユタまでだ。カリフォルニアには……ヤツは来ていない)
0393ファイルNoゼロ「旅する死神」
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2011/09/29(木) 23:32:57.34ID:1tO9ocPA
 チャールス・ハーパーが「旅人」の殺人地図を作っていた午前8時前……、東海岸のヴァージニア州では同日の11時ごろ、ドア口をノックする音にエミーが顔を上げると、キャリー・グリーンが彼女らしからぬ浮かぬ顔で立っていた。
理由をエミーが尋ねるより早く、キャリーは自ら口を開いた。
「ディミトリィ・ノラスコさんが辞表を出して、どっか行っちゃったみたいです」
「…あの鉄砲玉が?」
「辞表は、HRTのファーガ隊長の預かりになってるみたいなんですけど」
「ファーガのおっさん、ノラスコの奴を買ってるみたいで、いままでも随分庇ってたみたいだけど……待機命令中の職場放棄ってなったらどうしようもないわね」
「でも辞表はファーガ隊長預かりになってるんでしょ?」
「『旅人』狩りの出動命令が出た時ノラスコの奴が此処に戻ってなきゃ、辞表が預かりになってたって関係無いわよ。クビになっちゃうんだから」
「そんなあぁ……」
キャリーが泣き顔になった。
彼女はディミトリィが単独で「旅人」を追ったことを知って、ある種の仲間意識を感じているようだった。
「『旅人』狩りの出動は、いつになりそうなんですか?!」
「上層部は『旅人』のつぎの舞台をフィラデルフィアの民主党大会だと考えてるわ」
「ってことは次の日曜?!」
「大会が始まってしまったらもうこっちの負けね。だから上層部は勝負を急いでるはず。
HRTに出動命令が下るのは、だぶん今日。でなけりゃ明日の早いうちよ」
0394ファイルNoゼロ「旅する死神」
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2011/09/29(木) 23:39:38.55ID:1tO9ocPA
(もしも……あくまで「もしも」だが……)
一方ハーパーは、「旅人」全仕事図を前にして、すっかり「狩人」の顔になっていた。
(「旅人」のつぎの仕事場がフィラデルフィアでなく、ここロサンゼルスだとするなら、それは何時だ?!)
その答えは……自問する前から明らかだった。
(フィラデルフィアで民主党大会が行われるより前だ。フィラデルフィアは、本当の標的を隠すためのフェイントに過ぎないからだ!)
となると、ロスを次の舞台と仮定した場合、殺人は今日か明日。
フィラデルフィアとの時差を考えれば、遅くとも明日の午前中ということになる!
(くそっ!時間が、無いっ!)
たちまちハーパーの脳裏で、FBI上層部が「鉄板」と信じているカードが次々裏返り始めた!
(「旅人」に迫るには、インターネットのHP「ヨルダン川の辺」を経由するしかない。だから「旅人」は逆にそれを利用したんじゃないか!?)
掲示板書き込み者を、書き込み時に使ったHNの頭文字と同じ頭文字の凶器で殺し、それによって一連の文章を作りだす。
そうすれば捜査陣は、「PALE」の最後の一文字、「E」で始まるHNの書き込み者を次の標的と考えるはずだ。
しかし「旅人」はその裏をかいて……。
不吉な衝動に突き動かされ、ハーパーは携帯を取り出すとクリストファー・ウィンフィールドに電話をかけた。
彼からの情報によれば、「E」で始まるHNの書き込み者は他に三人いるはずだった。
その中の一人でもロスアンゼルス近郊の在住者がいれば、逆に言うとロスアンゼルスは最後の舞台にはならないはずだ……。

『……社長ですね。僕です。ウィンフィールドです』
電話に出たクリスの声には、はっきりと疲れが感じられた。
「忙しいところ悪いんだが……」
『全然かまいません。実は僕の方から連絡したいくらいだったんですから。……で、用件は?』
「例の掲示板に書き込んだ、Eで始まるHNの主の住所なんだが……州名だけでいい、教えてくれないか?」
『おやすいご用です。えーと………いいですか?一人目は「エレクター」、ニューハンプシャー在住でこれが例のフィラデルフィアです。
二人目は「エンパイア」でニュージャージー在住。
三人目は「イージーラバー」でウィスコンシン。
最後は「オイゲンシュタット」でミネソタ州在住です』
「……ロサンゼルスと関係ありそうなヤツはいないかな?」
『四人とも国のこっち側半分ですね。ロスと関係ありそうなヤツはいないと思いますよ』
「そうか……ありがとう。ところで君の方の用件は?」
『実は……気になっていることがあるんです。上層部は、掲示板の解釈を間違ってるんじゃないかって……』

短く礼を言って、ハーパーは電話を切った。
本当を言えば、考え過ぎだという証拠が欲しくてかけた電話だった。
だが、その結果はむしろハーパーの疑念を強めるものでしかなかった。
掲示板の本当の意味……本当の解釈とは?
そのとき、ハーパーの携帯が着信音を放った!

0395ファイルNoゼロ「旅する死神」
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2011/10/01(土) 09:49:26.67ID:/xe17i2a
『…ハーパー?』
「オレだよ、エミー。何かあったのか?」
『HRTが動いたわ』
「そうか!ジョーダンの尻尾を掴んだんだな」
『イーストフィラデルフィア空港とトロリーバス乗り場に設置された防犯カメラにそれらしい人が写ってたのよ』
「そこから予想される移動経路上の防犯カメラを追ったか……」
『待機命令の出てたHRTを動かす以上、上層部は居場所まで特定してるわね』
「そうか……上層部の読みが当たってくれてりゃいいんだが……」
すると……いつもは反応の早いエミーが携帯の向こうで一瞬黙り込むのがわかった。
『ハーパー、それ、どういう意味?』
「どういう意味って?そりゃ聞いた通りの意味さ。それよりエミー、ひょっとして君も何か……」
ハーパーが最後まで言うより早く、エミーは答えを口にだした。
『実はさっき、あのフロリダの変な医者先生から電話があったのよ。気になることがあってニューヨーク市警に電話したんだけど、プリスキン刑事はFBIの捜査官と二人でどっか行ったらしいっていうのよ。それで先生、こっちに電話を……』
「…彼女と行動してるFBI捜査官ってのは誰なんだ?」
『たぶんHRTのディミトリィ・ノラスコよ。待機命令無視して飛び出してったから』
「おい!HRTはフィラデルフィアに出動したんじゃないのか!?」
『もちろんあのボケナス抜きでよ!』
これにはさすがのハーパーも絶句した。
待機命令無視だけでも懲罰必至だというのに、肝心な出動に参加していないとあっては懲罰的解雇は免れない。
(だが……それだけ必死の何かを追ってるってことか……)
ドクター・ロレンツォからの電話。
そして共に行動しているというディミトリーとプリスキン。
事態はハーパーも知らないところで大きく動いていた。
問題は、どこに向かって動いているかということだ。
「……エミー、君のことだからロレンツォの連絡先も控えてあるんだろ?教えてくれないか?彼の電話番号を?」

事態は何処に向って動いているのか?
その答えは「ヨルダン川の辺」の解釈にかかっている。
そしてそれを正しく解釈できる男がいるとすれば、それはあの衒学的なイタリア系医師をおいて他には考えられなかった。
ハーパーはエミーに教えられた連絡先をプッシュした。
0396ファイルNoゼロ「旅する死神」
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2011/10/01(土) 09:52:38.15ID:/xe17i2a
ジョンFケネディ空港から空路でロスアンゼルス空港へ。
空港内でレンタカーを借りだすと、あとは陸路で郊外に。
ディミトリィ・ノラスコとソフィア・プリスキンの臨時コンビは、グレック刑事から渡された住所へと車を走らせていた。
「やれやれ……とうとう国の反対側まで来ちまったぜ。いまごろはHRTにも出動命令が出てるだろうよ。……となりゃあ、クビ確定だな」
ハンドルを握るディミトリィがぼやくが、冷静なソフィアはそれを全く相手にしない。
「……そろそろだと思います」
「例の郷土史家先生のお宅か」
当たりの風景は次第に家もまばらになり、あいだの荒れ地が目立つようになってきた。
大小の赤茶けた砂岩が転がり、枯れ果てた木が骨のように白く乾いた木肌を晒す。
僅かな草はそれらの陰に隠れてひねこびるばかり……。
「……荒れ地の誘惑……」
「…?何か言われましたか??」
「オマエ聖書読んだことねえのか?イエス様が40日間荒れ地に篭るだろ?そうすっとサタンが来てだなぁ……」
「…見えてきました!」
「聞けよおい……」
道は砂岩の赤い丘へと登り、その曲がった果てに一軒の巨大な灰色の家が姿を現した。
0397ファイルNoゼロ「旅する死神」
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2011/10/01(土) 11:28:23.76ID:/xe17i2a
『ミスター・ハーパー、お久しぶりです。ロレンツォです』
電話の向こうの医師の声は、酷く疲れているようだった。
「お疲れのところすみませんが、ロレンツォ先生……FBIの方にお電話いただいたと聞きまして……」
『ええ、お電話さしあげましたよ。さしあげましたとも』
医師は電話口で喉の調子でも整えているようだった。
『このあいだクワンティコでお話しましたよね?夢見が悪くて眠れないと』
「……ルービン殺しの夢ですね。そのお話は、確かにうかがいましたが……」
『クワンティコまでお邪魔したから、さあこれでぐっすり眠れるぞと、そう思ったんですよ。ところが、やっぱり眠れない。それどころか悪夢がますます酷くなる……』
(まさかこの医者、愚痴をこぼしたくってFBIに電話してきたんじゃないだろうな?)
不眠の悩みだったら精神科医に相談してくれ?との思いがハーパーの頭をかすめる。
『昨日の夜もやっぱり眠れないもんで、それならいっそ悪夢の元と対決しようと思って、パソコン立ち上げて『ヨルダン川の辺』に行ったんですよ』
「あのHPに行かれたんですか」
『ええ、行きましたよ。で、ハーパーさん、質問なんですが……』
「質問ですか、守秘義務がありますから答えられる範囲なら……」
『窺いたいことは、HPの主に関する事項です。名前とか住所に、ナサニエルとかジョーンズ、ジョーダン、あるいはエディスンという名称が含まれていませんか?』
「……!?」
一瞬ハーパーが絶句したことを、医師は敏感に察知したらしかった。
『含まれているんですね』
捜査上の秘密ではあるが…ハーパーは直ちに腹をくくった。
「含まれています。あのHPの開設者がナサニエル・ジョーダンという男なんです。しかしロレンツォ先生、何故それに気付かれたんでしょうか?」
電話の向こうで医師がため息をついたのが聞えた。
『ジョーンズあるいはジョーダンは簡単です。HPのタイトルからすぐ出て来ますよね?』

* 日本でヨハネと表記される名前は英語ではジョーンズ、同じくヨルダン川はジョーダン川になる。

「そっちはオレにも判りますが…、ナサニエルの方は?」
『「ヨルダン川の辺」のトップページを覚えていますか?』
「あれはなんて言えばいいのか……」
ハーパーはクワンティコで見たHPを思い浮かべた。
「なんて表現したらいいのか……茶色の唐草模様がぐるぐる渦巻いたりしてるデザインだったかと……」
『唐草模様じゃないです。あれは唐草模様なんかじゃない』
そしてロレンツォの声のテンションが微妙に上がった。
『模様をずっと指で辿ってみてください!頭があることに気がつくはずです!』
「頭がある?あの唐草模様に??し、しかしそれにいったい何の意味が?!」
『あれはヘビ、あるいはドラゴンです。しかも自分の尻尾を口に加えている。
つまり、あのトップページで渦巻いているのはウロボロスなんですよ!!』
「ウ、ウロボ…ロス?」
『自分の尻尾を加えることで無限円環を意味するドラゴン。それがウロボロスです。
そして…『邪竜ウロボロス』というタイトルの幻想小説を書いた作家の名前が、ナサニエル・エディスン!』
ハーパーの頭の中で、様々な情報が一気に繋がった!!
『あのHPは単なる駄洒落です。ナサニエルからウロボロス、そしてジョーダンからヨルダン川を導いて洗礼者ヨハネ。
いいですか、ミスター・ハーパー!あのHPは、他人の信仰心を笑う性質の悪いブラックジョークに過ぎないんです。しかし、それをジョークで済まさなかったヤツがいた!そいつが「旅人」なんですよ!!』
ハーパーは確信した!!
(ナサニエル・ジョーダンは「旅人」なんかじゃない!)
そして次の標的がロスアンゼルスであるということも。
(円環だ!始まりが終わりへ、終りがはじまりへ!ニューヨークの凶器の出元で、殺人ウィルスが使われるんだ!!)
0398おわび
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2011/10/01(土) 19:04:44.54ID:/xe17i2a
いや、どじった。
大昔の記憶に頼って、下調べを端折ったら間違ってる。
「邪竜ウロボロス」の作者はエディスンだけど、「ナサニエル」じゃなく「エリック」だった。
学校のテストなんかで出る可能性はまず無いと思うが、エリック・クラッカー・エディスンが正解。
「ヨルダン川のほとり」管理者の名前も、ナサニエル・ジョーダンじゃなくエリック・ジョーダンにしなきゃいけなかった。

お詫びの上訂正します。
0399ファイルNoゼロ「旅する死神」
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2011/10/02(日) 23:57:01.90ID:cX98LQHJ
「さて諸君」
FedExの集配トラックに偽装した隊員輸送車内で、エドガー・ファーガはきりだした。
「あと5分ほどでこのトラックは、とあるビジネスホテルの前に到着する。
『旅人』はそのホテルの三階、廊下の一番奥から二つ目の302号室だ」
隊員たちの誰一人として質問などしない。
いまは、ファーガ隊長の式のもと、チェスの駒に徹して行動すべきときなのだ。
「ホテルのロビーにはすでにこちら側の人間が待機しており、我々の到着と同時に2基あるエレベーターを2基とも抑える手配になっている。
建物内の本階段は我々が、非常階段は別動のBチームが上がる。三階305号の人間は客を装った監視要員だが、それ以外はすべて一般人だ。廊下に出て来られては面倒なので、それ以前に迅速に決着をつける必要がある」
トラックがスピードを落としたのが社内からもはっきり判った。
他の車のエンジン音やクラクションが遠くなったので裏道に入ったらしい。
裏道に正面玄関があるのであれば、ビジネスホテルの中でもランク低い部類だ。…ということは……。
「このホテル、ロビー班の報告によると、壁は薄くて階段は上がるとギシギシ音がするそうだ。つまり大人数ではヤツに確実に感づかれる。よって、最終突入はオレを含む5名。メンツは……」
そして……偽装トラックは、ホテル前にゆっくりと停車した。
0400ファイルNoゼロ「旅する死神」
垢版 |
2011/10/02(日) 23:59:09.14ID:cX98LQHJ
 角のところの色が薄く掠れた古い革張りアタッシュケースの金具の掛り具合を、「旅人」は慎重に点検した。
中には8インチ銃身のルガーP08、通称「砲兵モデル」一丁。
9ミリパラベラム弾は、グリップ内の7発と薬室に装填済みの1発の他に、32発フル装填されたスネイルマガジンが一個。
手製のサプレッサーも一度は収めたが、結局持っていかないことにした。
これを使うときには、もう発射音を気にする必要など無くなっていると考えたからだ。
ウィルスのアンプル6個を収めた対衝撃保冷ケースは、すでにバイクの左サイドバッグに収容されている。
あとは右のバッグにこのアタッシュケースを積み込んで出発するだけだ……。
そのとき……道を上がって来たエンジン音がいつのまにか聞えなくなっているのに「旅人」は気づいた。
(客か?だが、こんなときにどんな用が??)
一瞬動きを止めた彼の両足が、階段を上がってくる柔らかな「震動」を感じ取った。
車でやって来た何者かは、ネコのような足をもっている!
(ただ者じゃあないな)
「旅人」はアタッシュケースの留め金に指を掛けた。
邪魔立てする者は、それが誰であろうと排除されなければならない……。
0401ファイルNoゼロ「旅する死神」
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2011/10/03(月) 00:02:05.47ID:RiP3SyxM
かっきり続けて二回、それからあいだをおいてもう一回、302号室のブザーを押した。
ブザーに反応し、部屋の中で足音がゆっくり戸口に近づいてくる。
そして短くもう一回。
それが突入の合図だった!!
正面突破部隊が特殊爆薬でドアを破壊し室内に突入!
同時に、階上の402号待機の隊員が、ロープ伝いで通りに面した窓から飛び込んだ!
「FBIだ!」「な、なんなんだ!?」「抵抗するな!」「おとなしくしろ!!」
302号は一瞬で爆発の煙と男たちの怒号に満ちた!
白い埃のなかにチラチラ動く赤い点は、向かいの建物に待機した狙撃班だ!
エドガー・ファーガ率いるHRT突入班は、突入開始後数秒も要さずに「旅人」ジョーダンの逮捕に成功していた。
「例の物を探せ!」
エドガーの指示で、隊員らが直ちに室内を捜索。
隊員の一人が、寝室で古びた革張りのアタッシュケースを発見した。
「鍵は掛っていませんが……開けてみますか、隊長?」
エドガーが無言でうなずき、隊員は金具を操作した。
カチャッ!
微かな金属音。
そしてアタッシュケースは、内臓のバネにより自分からその内部を晒した。
……………。
拍子抜けしたように、ケースを開いた隊員が言葉を漏らした。
「なんだ?こりゃ??」
アタッシュケースの中身は……ありふれた替え下着と、ウィスキーのポケットボトルだけだったのだ。
0402ファイルNoゼロ「旅する死神」
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2011/10/03(月) 00:07:24.88ID:RiP3SyxM
「失礼ですが、どちらさま……」
「旅人」がインターホンで最後まで誰何しきるより早く、「ネコ足の訪問者」は監視カメラに向けてライセンスを提示した。
「自分はFBI捜査官のディミトリィ・ノラスコ。となりはニューヨーク市警のソフィア・プリスキン刑事です。失礼ですが、パトリック・ライダーさんでしょうか?すこし窺いたいことがあるんですが」

0403ファイルNoゼロ「旅する死神」
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2011/10/05(水) 23:54:36.54ID:dI2OM24g
 がちゃっ…ガチッ…チャキッ、
ロックの解除音は三回だった。
どれも意外なほど重くがっしりしている。
開き始めたドアの、初期速度も遅い…。
(…重いドアに頑丈な錠が三つ)
ほとんど職業病だが、ディミトリィは瞬時にドアの強度を値踏みした。
同時にドアに触れた手が、その厚みと材質がライヴオーク、樫であることを伝えてきた。
(このドア、斧やスレッジハンマーでも跳ね返すぞ)
ディミトリィはこのライダーという男の家を、「ちょっとした要塞」と判定した。
立て篭もりの舞台にされたなら、HRTといえども苦戦は免れないだろう。
装甲板のような扉がゆっくり開いて……静かな笑みをたたえて館の主人が立っていた。
「私がパトリック・ライダーです。今日はいったいなんの御用なのでしょうか?」
「郷土史家」などという肩書からある程度高齢の男性を想像していたディミトリィとソフィアだったが、現実のP・ライダーは30代後半ぐらいにしか見えなかった。
身長6フィートに僅かに欠けるくらい。
無造作に手串でまとめた金髪。
落ち窪んだ青い目に、薄い唇。
きれいに髭が剃られているせいで、こけた頬が目立つ。
その面立ちから連想する肩書は「郷土史家」でなく「苦行僧」だろう。
女性らしい観察を働かせてソフィアが尋ねた。
「失礼ですが、どこかへお出かけになるところだったのでしょうか?」
「実は、ロスのど真ん中で今日からゴールドラッシュ展が始まるんですが、その開会セレモニーに呼ばれていまして、それで出掛けるところだったんですよ」
「お忙しいところ申し訳ありませんが、少しお時間よろしいでしょうか?」
何時になくソフィアが多弁なのは、口下手なディミトリィをフォローするためだ。
「時間厳守というわけでもないですから別にかまいませんよ、さあどうぞ」
館の主人に導かれ、ディミトリィとソフィアは応接へと通された。
家の外観は「大地の底から四角く切りだされた岩」だったが、応接間はログハウスのような作りになっていた。
壁には古い人物写真が何枚もかかっていた。写真の男たちは皆豊かな髭をたくわえ、手には古い小銃を携えている。
「みな、私の一族です」
ディミトリィの視線を追うと、誇らしげに「旅人」は言った。
「私の先祖ウィリアム・ライダーは、ザカリー・テイラー将軍指揮下でメキシコ軍を破ったその年に、このカリフォルニアの地にやって来ました」
「旅人」はその中の一枚、ひときわ古い写真を指さした。
「ウィリアムです。彼は黎明期のカリフォルニアを縦横に駆け巡りました。
雪の残るトラッキー湖畔までドナー隊を探しに行ったメンバーの一人でもありました。
血なまぐさい殺人旅籠事件や、奇怪な影のつきまとうハルピン・フレイザー殺しでも、彼は必死に犯罪者の影を追ったのです。
無法者の凶弾に斃れるその日まで、カリフォルニアの治安を守るため、彼、ウィリアムは駆け続けたのです」
その男は、八の字髭をたくわえ古臭いデザインの帽子を目深に被っていた。
帽子のつばの下から覗く眼光が鋭い……。
だが、ディミトリィの目はウィリアムの手にしたものに釘付けになっていた。
「ボルカニック連発ライフル!」
ディミトリィが写真に駈け寄った。
0404ファイルNoゼロ「旅する死神」
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2011/10/05(水) 23:56:16.73ID:dI2OM24g
「ライダーさん!アンタこの写真にも写っているボルカニック連発銃をもってませんでしたか?」
言葉足らずのディミトリィをソフィアがフォローした。
「私たちは、デルハイル事件を追っているのですが、その凶器として使われたのがボルカニック連発ライフルだったんです」
「デルハイル事件というのは……ニューヨークで投資会社の社長が射殺された事件でしたね?新聞だと凶器はライフルということでしたが……ボルカニックだったんですか」
やや眉を寄せて「旅人」は抑制の効いた驚きを見せた。
「弾の製造業者からここが浮かびました。製造依頼を受けた業者がジャイロ・ジェット弾の規制に触れないか、市警の意向を聞いた記録があったんです」
「ロケット・ボールがジェイロジェット規制にひっかかる?」
「旅人」にもこれは初めて聞いた話だった。
「わたしには覚えがありませんが……何年ごろの話ですか?」
「記録によると96年のことのようです」
「それでしたら、きっと父の依頼だと思います」
「旅人」は別の壁面に飾られたカラー写真を指さした。
「父、ランドルフ・ライダーは一族の歴史に強い誇りを抱いていました。それで、一族がこのカリフォルニアにやって来たころからの歴史的な文物や器物をコレクションしていたんです」
父の想いを口にするとき、「旅人」は微かに胸を反らした。
「ウィリアムは当時最新式の火器であったボルカニック連発銃を手に、このカリフォルニアにやって来ました。ですから父がボルカニック銃を手に入れるばかりでなく、それ用の弾まで作らせていたとしても、別に驚くには当たりませんね」
そして「旅人」は静かな声で「父にとってはそれだけ価値のあることだったんでしょう」とつけくわえた。
「そんじゃそのボルカニック連発銃はいま何処に?!」
「父がコレクションにあったんだと思いますが、もうここにはありませんよ」
「此処に無いってんなら、じゃあ、何処にあるんだ?!」
「一地年ほど前、父のコレクション一切寄贈してしまったんですよ、ロスアンゼルス市に」
「するってぇといまもロス市が?」
「ところが…ややこしい話なんですが、市がゴールドラッシュ展開催を準備しているあいだに賊に入られまして……」
「ってこたぁ、ボルカニック連発銃も?」
「もしその銃がニューヨークで使われたというのなら、他のガラクタと一緒にそのとき盗まれているんだと思いますよ」
自分の額を鷲掴みにしてディミトリィがソファーに背中を預けると、入れ替わりにソフィアが尋ねた。
「御手数ですがミスター・ライダー。違いなく寄贈品の中にボルカニック連発銃があったか確認することはできませんでしょうか?」
「……たしか随分以前に父の作った目録があったと思います。探してみましょうか?」
「是非、お願いします」
「わかりました。しばらくお待ちいただけますか?」
0405ファイルNoゼロ「旅する死神」
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2011/10/06(木) 00:00:21.61ID:KN1+RPH0
 「お待ちくださいますか?」とライダーが部屋を出ると、ディミトリィがソファーから立ち上がった。
「やっぱりスタート地点はこのカリフォルニアだったんだ!」
「でもノラスコ捜査官、これまでの『旅人』のパターンだと、ロスで誰か殺されていなければならないはずです」
「おう、早速ロス市警に回って調べてもらうか」
「それよりハーパー捜査官と連絡をとって調べてもらった方が……」
ソフィアは携帯を開いたが、すぐポケットへと放り込んでしまった。
「どうしたんだ?電池ねえのか??」
「アンテナが立ちません」
「そうか、ほとんど砂漠みたいなトコだからな……ん!?なんだありゃ??」
妙な声をあげて、ディミトリィがランドルフ・ライダーの写真の隣に貼られた、もう一枚の写真に顔を塚寄せた。
「………ライダーの一族の写真じぇねえぞ、間違いねえ!こりゃチャールス・ハーパーだ!!」
「……まさか」
しかし、それは間違いなくFBIロス支局所属の捜査官、チャールス・ハーパーの横顔を写したものだった。
おそらく新聞記事から切り抜いたもので、さらによく見ると写真の上と下に何か言葉が走り書きされている。
「上の言葉は……外国語かよ」
「ドイツ語です。ええと……『心するがよい。怪物と争う者、みずから怪物となる惧れのあることを。深淵を覗くとき、深淵もまた汝を覗いていることを』。ニーチェですね。それから下の書き込みは……『狩人よ、追え!我を』………………………まさかこれは?!」
ソフィアとディミトリィの顔色が変わった次の瞬間、外で銃声がバンバンと二発、続けざまに轟いた!
「ちっくしょう!!」
拳銃を掴みだしてディミトリィが窓際に飛び付くと、青白色にペイントされた大型バイクにうち跨って、パトリック・ライダーが屋敷から走り出すところだった!
「ヤツだ、ソフィア!ライダーが『旅人』だったんだ!」
0406創る名無しに見る名無し
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2011/10/06(木) 00:04:52.42ID:KN1+RPH0
ようやく終幕近くまでたどり着いた。
あとは殺人ウィルスを携えゴールドラッシュ展会場へと疾駆する「旅人」」とディミトリィ+ソフィアの追撃戦。
それから会場での「旅人」対ハーパーでエンディング。
早けりゃ週末か?
0407ファイルNoゼロ「旅する死神」
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2011/10/11(火) 23:38:38.33ID:M1ceVyFk
「ソフィア!ハーパーに連絡しろ!『旅人』を阻止させるんだ!」
「了解です!」
ソフィアは携帯を取り出したが、使い物にならないことを思い出し、すぐに部屋の固定電話に手を伸ばした。
だが受話器からはなんの音も聞こえてこない。
「電話器死んでます!」
「こっちもだ、ドアが開けらんねえ!電子ロックでコード知らなきゃロック解除できねえようになってやがる!」
「それなら窓を…」
「無駄だ、ソフィ……」
「普通に開けるつもりはありません!」
ソフィアはM9を両手で構えると窓ガラスに向け立て続けに三連射した!
バン!バン!バン!……しかし,ガラスには僅かな傷がついただけ。
「ぼ、防弾ガラス!」
「だから無駄だって言ったろ。こんな要塞みたいな家の窓が防弾ガラスじゃねえわけねえ」
「それじゃどうすれば外に!?」
「この家の電源を探すんだ。電子ロックなら、電源を止めりゃドアは自動開放されるんだよ!」
「…それならきっと」
ソフィアは家の裏手へと駆けこんだ。
「…あった!」
「カンがいいな。この手の設備は大抵家の裏手、台所か倉庫の近くだ」
ディミトリィが配電盤を開いてメインスイッチを切ると、横の裏口が音もなく開いた。
家の表に走るとレンタカーへ。
「運転頼む!」
拳銃を抜いてディミトリィが助手席に滑り込んだ。
「……は、はい」
「町に入られたら厄介だ。途中の砂漠地帯でヤツに追いつけ!オレが仕留める!」
「了…解です」
頼りなげな返事…。
ガクンという大きな振動とともに、車のエンジンが咳き込んで止まった。
「おまえひょっとして……運転下手か?」
「はいっ!」
今度は元気に返事してエンジンを再始動すると、ソフィアは迷わずアクセルペダルを床まで一気に踏み込んだ!
「おわっっ!」
安レンタカーの薄い背もたれにディミトリィの背中がめり込む!
派手なスキール音とともに車が前に飛び出したすと、今度はディミトリィの側のウィンドミラーが門柱に接触しモゲて飛んだ!
そして家の敷地を飛び出して州道を西にとるとき、車は派手に一回転と1/4、つまり450度ターンを決めた。
ワザとやったんなら凄い腕だが、もちろんワザとではない!
「おい!交代しろ!やっぱりオレが運転する!」「そんな時間ありません!」
0408ファイルNoゼロ「旅する死神」
垢版 |
2011/10/11(火) 23:42:03.92ID:M1ceVyFk
 ハーパーには確信があった。
次の殺人ウィルスを使う殺人が最後の犯罪。
そしてベックマンが恐れていた「とびきり邪悪なイベント的殺人」に違いないと。
そしてその舞台は…
(間違いない!あのゴールドラッシュ展だ!掲示板をエサにFBIの目をフィラデルフィアに引きつけておいて、同時期に開催されるゴールドラッシュ展を狙う。そしてそのターゲットは……)
E=Everybody……つまりは皆殺し。
一年のうち「少なく見積もっても」365日は晴れると言われるカリフォルニアで、ハーパーの背中に寒気が走る。
(だが……FBIやロス市警を動かすには、「旅人」の殺人とゴールドラッシュ展を結び付ける証拠が必要だ!)
どうすればゴールドラッシュ展と「旅人」を結び付けることができるのか?

『自分の尻尾を加えることで無限円環を意味するドラゴン。それがウロボロスです』

「そうだ!」
ハーパーが思わず声に出して叫び、店主のボブが驚いたように目を剥いた。
「さっきのニュースで言っていたゴールドラッシュ展出展品の盗難事件だ!ニューヨークで使われたボルカニックライフルがゴールドラッシュ展の出展品から盗まれた品だったとしたら!?」
ロスからニューヨークへ。
そして全米を駆け巡って再びロスへ。
「…それですべての辻褄があう!!」
(ロス市警に照会だ!)
ハーパーは直ちに携帯を取り出した。
『…お待たせしました。ロスアンゼルス市警です』
聞き覚えのある声。
なんどか顔をあわせたこともあるソバカス顔の女性警官の声だ。
「オレはハーパー、チャールズ・ハーパーです。すみませんが監察部の……」
『ああ、奥さんね。ちょっと待って……』
婦警もハーパーの声に聞き覚えがあったらしく、二つ返事で電話を回してくれた。
だが、内線回送された先で受話器をとったのは彼の妻ではなかった。
『……ハーパーさん?僕です。マイクです。もうしわけないですが奥さんは……』
「あれ?いないのか??」
『今日はチーフや部長のお供でゴールドラッシュ展のオープニング・セレモニーに出席してますよ』
「な、なんだって!?」

 ハーパーは、盗まれたゴールドラッシュ展示予定品の中にボルカニックライフルがあったかどうか、調べてくれるようマイクに依頼して電話を切った。
これまで「旅人」は、FBI捜査官としてのハーパーが追う獲物だった。
しかしマイクの話によると、ハーパー自身の妻が「旅人」の最後の舞台にキャストとして上がっているという!
店の時計はあと20分ほどでゴールドラッシュ展が開幕するという時刻を示している!
(…時間が無い!!)
マイクからの調査結果は待てない。
血相変えてハーパーはホットドッグスタンドを飛び出した。
0409ファイルNoゼロ「旅する死神」
垢版 |
2011/10/11(火) 23:44:05.84ID:M1ceVyFk
「そんなバカな!?」
フロントガラスに噛みつこうとでもするような姿勢で、ソフィアがもらした!
「もう荒れ地を抜けてしまったとでも!?」
「そんなはずぁねえ!」
ソフィアに負けない大声でディミトリィも怒鳴り返した。
「こんな砂に覆われた道を高速でぶっ走ったら、必ず砂埃が巻き上がる!けども、見渡す限り砂埃なんて……」
…そのとき!
車の右手で低く鈍い爆音が沸き起こったかと思うと、数メートルほどの砂岩の崖から、巨大な黒い影が飛び出してきた!
「待ち伏せかっ!」
ディミトリィの叫びと同時に、車のルーフを重い車輪が一撃!
鉄製のルーフ中央が一気に4インチ以上もめり込んだ次の瞬間、青白い幽霊のようなカラーリングのバイクが車左手に着地!
その乗り手の右手に長銃身のルガーが!
「アタマさげろーっ!」
自分も身を伏せながら、とっさにソフィアのアタマにも左手をかけてハンドルに叩きつけるような勢いで頭を下げさせる!
バイクと車、唸る二つのエンジンで拳銃の発砲音は聞えなかったが、車の右と左、二枚のガラスが粉々になって吹き飛んだ!
「ぶつけろソフィア!」
「……了解っ!」
ソフィアが手荒くハンドルを右にきると、波打つように蛇行した車の後部がバイクを襲う!
重量1トンを超える鉄の塊のアタックを受け、バイクのバランスが一瞬崩れた。
「お返しだぜ!」
ディミトリィのベレッタM9も猛然と火を吹いた!
バイクのバランスを半ば腕づくで立て直すと、「旅人」は車の後部へとバイクを素早く横滑りさせた。
「……チャンス!」
ルームミラーでこれを見たソフィアが、今度は床までブレーキを踏みける!
車とバイクの車間が一瞬でゼロになり、バイクの前輪が車のリアバンパーに触れた!
しかし「旅人」は追突しかかった状態でクルマのトランク部分に蹴りを入れると、今度は車の左へと滑り出た!
「ソフィア!頭を下げろ!」
ディミトリィが叫びソフィアが頭を下げると、伏せたソフィアの頭越しに「旅人」とダィミトリィの銃撃戦が始まった。
残っていたガラスはあっというまに総て砕け散った。
ベレッタが吐き出す焼けた薬莢が車の中で飛び跳ね、いくつかはソフィアやディミトリィにもぶつかったが、熱いと感じる余裕など無い!
(5発……6発……)
猛スピードで走りながらの銃撃戦……しかしその中でディミトリィは冷静に敵の発射弾数をカウントしていた。
(P08のマガジンは装弾数7発。薬室に1発あったとしても、最大で8発……)
……マガジンを交換するには両手を使わねばならない。
しかし高速でバイクを運転しながら、ハンドルから両手を離してマグチェンジするのは、不可能ではないまでも極めて困難だ。
(あと2発撃ったら、ヤツは弾切れだ。そこで、決めてやる!)
車の右に左にと車線を変えながら銃撃をかけていた「旅人」のバイクが突然スピードを上げ、左から一気に車を追い抜いた。
「旅人」のP08が2回撥ね、ルームミラーと左ウィンドミラーが弾け飛ぶ!
「今ので弾切れだぁっ!!」
ディミトリィがM9を両手ホールドし狙いを合わせた。
……「旅人」とディミトリィの目があった。
(笑ってる!?)
そしてディミトリィは、車のボンネットからもうもうと白煙が吹きだしているのに気がついた!
「オーバーヒート?!」
「そうか、ヤツがあの要塞みたいな家から脱出したとき聞えた、あの2発の銃声は、これだったのか!」
家から脱出したとき、「旅人」は二人の乗って来た車のラジエターに2発、弾を撃ち込んでおいたのだ。
連絡手段の無い砂漠地帯の真ん中にディミトリィとソフィアを置き去りにして、自分は
悠々とロスに向かう……。
「……はめられました」
「狙った場所でエンコさせるため、敢えて勝負を仕掛けたのか!畜生っ!!」
ヤケクソでディミトリィの最後の一発は、もちろん「旅人」には当たらなかった。
「旅する死神」の後ろ姿は、みるみる小さくなっていった。
0410ファイルNoゼロ「旅する死神」
垢版 |
2011/10/12(水) 23:43:12.37ID:bnqSoJ5m
ゴールドラッシュ展会場に向かったハーパーの車は、事故発生によるノロノロ運転の群れに飲みこまれつつあった。
「くそっ!こんなときに!」
裏道を行くか?と思ったそのとき、マナーモードにしておいたハーパーの携帯が震動した。
『…マイクです。さっきの件ですけど』
「で、どうだった?!」
『盗難にあったゴールドラッシュ展示予定品のなかに、ボルカニックなんたら…の記録は有りませんでした』
(…とりこしぐろうだったか)
『…でもアンティークライフルの記録はありました。それからロケットボール弾のレプリカ品が2ケース12発……』
「ロケットボールだって!」
車のシートの上で、ハーパーは本当に飛び上がった。
「そのアンティークライフルがボルカニックだ!ロケットボールは専用弾なんだ!!」
ありがとうを言う余裕も無く携帯を切ると、ハーパーは行く手の道路状況を見遥かした。
ハーパーの車のいるあたりではまだノロノロ走行だが、100メートルほど行った先の
合流路あたりで完全に止まっていた。
(開会まで……あと15分か)
ついに意を決してハーパーは車を降りた。
「…キミキミ、ここは駐停車禁止…」
つかつかやって来た警官に、ハーパーは身分証明を見せ車のキーを押しつけた。
「FBIだ!邪魔だったら動かしてくれ!」
「動かしてって?オレがかぁ?!」
「まかせたぞっ!」
それ以上相手に言わせず、ハーパーは猛然と駆け出した。
0411ファイルNoゼロ「旅する死神」
垢版 |
2011/10/12(水) 23:45:07.57ID:bnqSoJ5m
 戦いの余韻を全身に感じながら、「旅人」はバイクを走らせていた。
(ハーパー以外にも、まだあんな奴らがいたのか)
風に晒された頬に思わず笑みが浮かぶ。
(この国も、まだまだ捨てたもんじゃないのかもしれない)
ディミトリィとソフィアが訪ねて来た時、あの家で二人を殺すことは十分可能だった。
自身が「砦」と呼ぶ家は、彼がデザインした彼だけの戦場だったからだ。
だが、殺さなかった。
FBIや警察官が単独で行動することは普通ない。
女性刑事はロス市警でなくニューヨーク市警だった。
男の方も戦闘力からして並みの捜査官のはずはない。
それが、フィラデルフィアでなくこのロスにまでやって来た。
間違いない。
彼らも狩人だ。
「旅人」の先祖、ウィリアム・ライダーのように、縦横に国を駆け、そして命賭けで悪を撃つ「狩人」。
(……ハーパーだけではなかったか)
そして「旅人」の頬が、無駄ではなかったとの想いに再び緩む。
絶滅危惧種たる「狩人」が集まって、彼を討伐するならそれでよし。
彼を討伐できないなら、利己主義と拝金主義の腐り果てたこの国を、彼の手で浄化するだけだ。

 「旅人」の駆るバイクは、砂漠地帯を抜け、住宅地に入って行った。
これまで長い旅を続けてきた「死神」は、その旅の終着点に辿りつこうとしていた。
0412ファイルNoゼロ「旅する死神」
垢版 |
2011/10/12(水) 23:46:47.21ID:bnqSoJ5m
 (くそぅ…なんて暑さだ)
ハーパーは走りながら上着を脱ぐと、近くの植え込みに放り込んだ。
下のシャツは水でも浴びたように濡れそぼっている。
顔といわず首といわず、滝のように流れる汗のせいだ。
日ごろの走り込みは怠っていないつもりだったが、それでもきつい。
そもそも日ごろ走り込みだと服装はトレーニングウェアだし、重い拳銃も下げていない。
でも、足を止めるわけにはいかなかった。
ゴールドラッシュ展に「旅人」が現れる。
殺人ウィルスによる大量殺人を実行するために!
しかもそこにはハーパー自身の妻もいるのだ。
ハーパーは必至で駆けながら、携帯でなんとか妻とコンタクトをとろうと何度も試みていた。
(頼むっ!出てくれ!!)

『……もういい加減にしてよ!何度も何度も!』

やっと電話に出てくれた彼の妻は怒っていた。
『…セレモニーの最中に電話に出られるワケ無いじゃないの!』
「ごめん、それより……」
『朝ちゃんと話しといたじゃないの?!』
妻はさっぱりハーパーの話しを聞いてくれない。
『…今日はチーフや部長のお供でゴールドセッシュ展のオープニングセレモニーに参加するって。ほんとにいつも上の空で……』
「悪かったよ、今度はちゃんと気合い入れて話し聞くから……」
『そのセリフだってもう何度も…』
……話が前に進まない。
そのとき…電話の向こうで何かの破裂音が聞えた!
「おい!いまのはなんの音だ!?」
『……バックファイアじゃないかしら?ちょっと見て来るわ』
「バ、バカ!行くな!行くんじゃない!!」
ハーパーの怒鳴り声も虚しく、妻との電話は切れてしまった。
(待ってろ!オレが行くまで!頼むから!お願いだから!!)
赤鬼のような形相に、道行く人が次々飛び退いた。
そして、ゴールドラッシユ展会場のロスアンゼルス歴史博物館が見えてきた。

0413ファイルNoゼロ「旅する死神」
垢版 |
2011/10/12(水) 23:48:19.07ID:bnqSoJ5m
 「愛馬」ペイルホースを停車させ、後輪左右のバッグを外して左肩に振り分け荷物にすると、「旅人」はロスアンゼルス歴史博物館の正面階段を大股に上がって行った。
服装を見た係員が駈け寄りかかったが、顔を見て関係者だと思いだして足を止めた。
「ライダーさん。どうされたんですか?そのかっこうは?埃だらけじゃないですか」
「いけないよ君。人を服装で判断しちゃ」
そして「旅人」は係員の眉間に口径9ミリの穴を開けた。
一方のバッグから「カタツムリ」の仇名のある32連弾倉を取り出して銃にセット。
反対側のバッグからは、同じく革製のショルダーバッグを取り出した。
バッグの中からは電気のコードが伸びていて端には作動スイッチらしきものがついている。
バッグを肩にかけ、コードの余分な部分をざっと手首に巻きつけてからスイッチ部分を握ると、それで準備は終りだった。
「さてと……5分ほど遅刻するかと思ったが、なんとか少しの遅刻で間に合ったな」
「旅人」は1メートルをゆうに超える歩幅で悠然と、オープニングセレモニー会場に向かって歩き出した。
0414創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/10/15(土) 23:03:01.45ID:4mLvGvhl

完結後にまとめサイトにまとめる予定です
0415ファイルNoゼロ「旅する死神」
垢版 |
2011/10/15(土) 23:27:25.85ID:iXYkvXbm
 ゴールドラッシュ展開会セレモニーの会場では、ロスアンゼルス市市長が開会の言葉を述べているまっ最長だった。

「……1848年、メキシコとの戦争に勝利し、ここカリファルニアは合衆国の一部と……」
そのとき演説する市長の傍らで、微かにブーム………ブーム………とバイブの震動音が聞えて来た。
「……それに続くゴールドラッシュによってカリフォルニアは更なる発展の……」
ブーム………ブーム………ブーム
「……発展の道に」
苛立った市長が口ごもると、演壇後隅に座っていたスーツ姿の女性が警官が慌てたように席を立つと背後のカーテンの陰に消えた。
「いらいこのロスアンゼルスはニューヨークに次ぐアメリカ第二の……」

「……もういい加減にしてよ!何度も何度も!」

カーテンの向こうから女の声がする。
市長は無視して演説を続けた。

「…セレモニーの最中に電話に出られるワケ無いじゃないの!」

女の声はヒートアップしてきた…。
「現在では!アメリカ第二位の大都市に……」
カーテンの向こうの声を打ち消そうと市長の声も大きくなった。

「今朝ちゃんと話しといたじゃないの?!」

…市長の負け。
カーテンの向こうの声の方がずっと大きい。
もう記者席まで聞えている。
記者の何人かはクスクス笑ったり、思わせぶりに顔を見合わせたり、俯いて笑い顔を隠したりしている。

「…今日はチーフや部長のお供でゴールドセッシュ展のオープニングセレモニーに参加するって。ほんとにいつも上の空で……」

記者席で「ハーパーだ、ハーパー」「どっちのハーパーだよ?」「決まってるだろ」
などとおおっぴらに私語が交わされはじめた。
市長はついに演説を止め、ロス市警チーフと監察部長がカーテンの方を振返った。

「そのセリフだって…」

ついに監察部長が席を立って背後のカーテンを引き開けた。
さっきの女が背中を向けて携帯を耳に宛てている。
監察部長が女の肩に手を賭けようとしたとき……博物館正面の方でバン!と破裂音が聞えた!
0416ファイルNoゼロ「旅する死神」
垢版 |
2011/10/15(土) 23:28:58.30ID:iXYkvXbm
「……バックファイアじゃないかしら?ちょっと見て来るわ……………げっ!?」
電話をかけていた女性は、振返ってみてカーテンが開いているのに気がついた……。
しかし、市長をはじめとする列席者、それから記者たちも博物館正面へと続く扉の方を見ている。
「市長、こちらへ」「…念のためです」
市長を反対の避難口へと誘導しようとボディーガードたちが立ちあがった。
一方、博物館の警備員がセレモニー会場正面出入り口へと小走りに向かう……。
しかし、閉ざされた戸口に手をかけた警備員はすぐさま振返った。
「開きません!」
「なんだと!?」
驚きの声をあげ立ち上がると、市警チーフは市長らに叫んだ。
「待て!行くな…」
警告の声と同時に、市警らの向かっていた先の非常口が、弾けるように左右に開いた。
服装はカジュアルだが、埃まみれなので100年以上まえの金鉱掘りのようにも見える。
「ライダーくん、その服装はいったい……」
「………いけませんよ市長。服装で人を判断しちゃ」
そのときになって、市長は始めて相手の手にしているものに気がついた。
ドラムマガジン付きの長銃身ルガー!
銃の存在に気づいたボディーガード三人が一斉に銃を抜く!
「旅人」は腰のあたりまで銃を持ち上げただけだった…。
その姿勢のまま、バーーーーンとほとんどひと続きの銃声が響いて、三人の額にそれぞれ一つづつの真っ赤な穴が開いた!
額から赤い噴水をあげながらボディーガード三人が後ろざまに倒れると、中年女性記者の一人が怪鳥のような悲鳴を上げた!
「ぎ、ぎぇぇぇぇぇぇっ!!」
それが引き金だった。
開会式参加者たちは、他人を押し倒し踏みつけながら、一斉に開かない正面出口に殺到した。
悲鳴に怒号を上げつつ我先に逃げようとする正装の人々を眺めながら、「旅人」は呆れたように呟いた。
「……醜いな。なんて醜いんだろう」
そして死神はチーフらの方に顔を向けた。
「命をかける値打ちなんて無いよ。あんな奴らを守るために」
右手の自動拳銃はチーフと監察部長のほうに向けられている。
「僕の腕は御覧になったでしょう?いちいち照門なんて覗かなくたって、僕はこいつをアナタの眉間に正確に送り込めるんです」
ロス市警幹部二人の額に玉の汗が浮かぶ。
相手に指摘されるまでもなく、撃ちあっても勝負にならないことは判り切っていた。
ただ一人……「旅人」が式場に入って来たとき、たまたまカーテンの後ろに居たため、気づかれずに済んだ女性警官を除いては……。

0417創る名無しに見る名無し
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2011/10/16(日) 10:26:04.04ID:jma7ilXZ
面白くなってきますたな。

(人物名)チーフ・ライアン
(人物紹介)死刑囚
(簡単な説明)アリゾナ出身。34歳。金髪に顎髭を生やした男。死刑囚(実は冤罪)。
見た目からは信じられないが、元外科医。
ヘラヘラとしていてふざけているのか真面目なのか分からない性格だが、注意深い。
ハーパーの事を知っているらしい。映画やドラマに例えて物事を話す。
護送車をパンクさせた隙に五人の囚人と逃走を計る。
電話でハーパーやエミーにヒントを与えながら自分の事件を解決させようとする。
妻がいたが、裁判の途中で拳銃自殺した。そのせいで引き金は引けない。
真の目的は、真犯人を殺し自殺することで、しかもその真犯人は…
0418ファイルNoゼロ「旅する死神」
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2011/10/23(日) 19:47:17.45ID:pcxXZ87L
出口に殺到する群衆を掻き分け、博物館側の警備員たちが駆け戻ってきた。
各々の手には既に抜き身の拳銃が握られている。
「じゅ、銃を捨てろ!」「手を上げるんだ!」
めいめいが勝手に銃を構え、前後左右から「旅人」に迫る。
「手を出すんじゃない!お前たちの手に負える相手じゃ……」
しかし、無謀な行為を制止しようとするチーフの叫びよりも、「旅人」が動く方が速かった。
「……わらわら出て来たね。殺られキャラの集団が」
埃にまみれた上着が、うねる竜巻のようにその場でターン!
同時に、人間竜巻めがけ警備員らが一斉に発砲!
会場内が硝煙で満ち、何発かの弾丸は確実に旋回する上着を引き裂いたように見えた!
……しかし!
「はい、残念でした」
無謀な挑戦を試みた警備員らは、一人残らず後ろざまに倒れていった。
顔面から、赤く長い尾を引きながら……。
「遅いよ。遅すぎる。銃を顔の前まで上げないと狙いが付けられないんじゃあ、僕には勝てないね……」
そして、腰の銃把に指までかけたチーフの方を見て言った。
「ギャレット署長。あなたは僕と撃つあおうなんて考えるほど、頭が悪いわけじゃないでしょ?」
「旅人」は、これまで総てヒップシューティングの姿勢で、正確に相手の眉間を射抜いている。
速さだけなら太刀打ちできる者もいようが、早撃ちでブルズアイをやれるガンマンなどいない。
チーフのこめかみを汗が伝い、指がそっと銃把から離れた。
「ライダーくん…君は何故こんなことを?」
「……ギャレット署長、井戸の底を覗いたこと、ありますか?」
「井戸?……井戸の底をか?」
「深い深い、とっても深い井戸の底です。……覗いたことありますか?」
とまどい気味のチーフの顔を見て「旅人」は言った。
「僕は覗きましたよ。とっても深い、煙突よりも深い穴を……そうしたらですねぇ……」
「旅人」はすっと目を細めた。
「……底には真っ黒な満月のように水が溜まっていました。その真ん中から誰かが僕を見上げていたんです。よく見ると、それは僕自身でした。白目の無い、真っ黒な目をした僕自身が、じっと僕のことを見上げていたんです」
0419ファイルNoゼロ「旅する死神」
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2011/10/23(日) 19:49:24.86ID:pcxXZ87L
はあっ、はあっ、はあっ…
粗い息でハーパーが博物館正面の階段を駆け上がって行くと、入れ替わりに十数名の来館者が血相変えて駆け出していった。
正面ロビーに駆けこむと、さっきの入館者たちを恐慌状態に陥れた原因「ちょっと前まで生きていた係員」がそのまま転がっている。
(眉間をただの一発!ヤツだ!!)
奥の「第一会場」と表示のある扉の向こうからは、凄まじい怒号や悲鳴。押し合いへしあう気配が噴き出している。
それを押さえこんでいる扉は、取っ手にバイクを停めておくとき使うチェーン錠が巻きつけられていた。
「この向こうか!」
ハーパーは拳銃を抜くとドア脇に立ち、ドアとほぼ平行になる角度から357マグナムを構えたが……。
(……もしこの向こうで既に殺人ウィルスが使われてしまっていたら!?)
ドアが開いて感染者が市内に散った時点でゲームオーバーだ。
(ど、どうする!?)
そのとき、ハーパーの胸元で携帯が鳴った。
電話ではない!
メールの着信音だ!

『ゴールドラッシュ展開会式場に、自動拳銃を持った男性がいます。
名前はパトリック・ライダー。
年齢は40前後で、身長は……』

メールは彼の妻からだった。
(……メールオールか。さすがだな)
閉ざされた事件現場から、会場内の情報を伝えてきた妻の豪胆さに舌をまく。
しかし、メールの続くセンテンスを一読するなり彼の鼓動が急上昇した。

『……右肩から左に襷がけしたショルダーバッグの中から電気コードが伸びて、男の
左手の中に消えています。
バッグの中身は爆薬で左手に握っているのは起爆スイッチではないかと……。』

(ショルダーバッグの中身は例の殺人ウィルスで左手にその散布用スイッチか。まだスイッチを握っているってことは!)
ハーパーはドアを封鎖するチェーン錠に再び拳銃を向けた!
(……殺人ウィルスは散布されてない!)
今度は迷わず引き金を引き切った!
バンッ!
357マグナムがチェーン錠をぶち切ると会場ドアが爆発するように左右に開いて、正装した一群の男女が押し合い突き倒しあいながら、ロビーへと転げ出た。
紳士・淑女の群れをドア脇でかわすと、入れ替わりにハーパーは開会式場に飛び込んだ。
0420ファイルNoゼロ「旅する死神」
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2011/10/23(日) 19:52:48.30ID:pcxXZ87L
「おお、ついに来たね。待ってたんだ。『天使の都』の守護天使殿」
「旅人」は笑顔でハーパーを迎えた。
演壇の向かって左、ハーパーに背中を向ける姿勢で市長。
その足元には護衛三人が転がり、彼らに代わってロス市警チーフが盾となって立ちはだかっている。
更にその周りには半円を描くように博物館の警備員たちが顔面を開けに染めて動かなくなっていた。
左手のコードはまだ握られたまま。
長銃身ルガーを手にした右手はだらりと下がっている。
しかしこの殺人者は、このままの体勢からでも必殺の9ミリ・パラベラムをハーパーの眉間に送り込むことができる……。
妻の伝えてきた姿を両手ホールドの大型リボルバーでポイントしながら、ハーパーはゆっくり距離を詰めていった。
「そのコードを握っているところを見ると、殺人ウィルスはまだ使っていないようだな。もうこの会場にいるのは我々だけだぞ。これで殺人ウィルスの散布は失敗だ。おとなしく……」
しかし、笑顔のままで「旅人」は首を横に振った。
「会場に閉じ込めた奴らがいなくたって、別に問題なんて無いよ」
「問題無い?」
「閉じ込めておいた紳士淑女のみなさんは、ただのギャラリーに過ぎないんだ。僕と君との決闘のね」
「決闘だと!?」
「あれ?嫌なのかな??」
「旅人」は両のまゆ毛をひょいと上げ、そして笑顔を見せてから真顔に戻って言った。
「…まあそうだろうね。だって君は犯罪者を殺さないから。どんなときだってそうだった。あのトマホークのような殺人鬼だって射殺しなかった。でも、今日はそうはいかないよ」
「旅人」は襷にかけたショルダーバッグを叩いて見せた。
「エボラウィルス・スーパー・レストン株は、僕が持参しているこれ以外、市内の5か所にも仕掛けてあるんだよ。僕がこの……」
…と言って「旅人」は、今度は左手をそっと掲げて見せた。
「……この手に中のスイッチを押せば、そのすべてが殺人ウィルスをまき散らすんだ」
「な、なんだと!?そんなことをしたら!」
「もちろん最低でもロスは滅亡するね。それからロスでの封じ込めに失敗すれば、この国そのものも……」
口の動きで「ボカン」と表現して「旅人」はまたも笑った。
「『黙示録』によるとね、Paleライダーは悪疫をもたらすんだそうだよ」
(ヤツに退く気は無いか……ならば)
静かに視線を動かすと、カーテンの影から覗く気丈な妻の顔が見えた。
目が合うと妻に向かってハーパーは、有るか無きかの微笑みを送り……そして「旅人」に言った。
「よかろう。決闘に応じよう」
「やっぱり応じてくれたね。信じてたよ。だって君は……」
満足そうだった「旅人」の言葉が途切れた。
ハーパーが、相手をポイントしていた拳銃を降ろすと腰のホルスターへと収めたからだ。
0421ファイルNoゼロ「旅する死神」
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2011/10/24(月) 00:00:13.73ID:pCm9MZkT
ハーパーが拳銃をホルスターに収めたのを見て、不思議そうに「旅人」尋ねた。
「……決闘を受けてくれるんじゃなかったのかい?」
「正調の決闘ならこの状態からスタートだろ?……あ、そっちはそれでいいぞ。ホルスターなんて持って来てないだろうから」
「なるほどね…それじゃ僕はお言葉に甘えて……」
埃まみれの上着の男と、汗だく男が両手をだらりと垂らして向かい合った。
カーテンの影でハーパーの妻が素早く十字をきったのが見えた。
こころの中で(心配かけてすまない)と妻に詫びると、ハーパーはそれきりの妻のことも心の中から閉めだした。
……ゆっくり息を吐きだしてゆき、吐き切ったところでそのまま呼吸を止める。
視線はどこかを凝視するでなく、ただ向かい合う相手の全体を捉える……。

ハーパーがトマホークの手斧を砕いたときのタイムがおよそ0.5秒。
早撃ちの協議会でない、完全な実戦であること、それから動く標的だったことも考えればかなり早い方だ。
だが「旅人」はマーク・リード並みの早撃ちで、おまけに標的射撃なみの正確さでもある。
はっきり言って、ガンマンとしてはハーパー以上の腕だ。
勝つのは99.99%「旅人」だろう。
しかしハーパーには、残り0.01%の勝機があった!

(お願いあなた!死なないで!!)
ハーパーの妻が心の中で叫んだその瞬間!
二丁の拳銃がまるで一丁であるかのように、同時に吠えた!
「旅人」はヒップシューティングのまま、ハーパーはクラウチングの姿勢のままでピクリとも動かない……やがて………。
ハーパーの手からリボルバーが音を立てて床へと落ちた。
そして幾筋もの赤い線が指先を伝って床へと落ちる。
「あなた!」
カーテンの影からハーパーの妻が飛び出すと、崩れかかったハーパーに抱きついた。
「あなた大丈夫なの!?」「……ああ、大丈夫だよ」
そしてハーパーは気さくな口調で「旅人」に話しかけた。
「殺せたのに、なんで外したんだ?」
「…決まってるじゃないか、決闘に負けたからさ」
「旅人」はスイッチを握ったままの左手を高く掲げて見せた。
握った拳の中から出た電気コードは、肘のあたりで切断されている!
「ワザと後の先を狙ったね」
人を撃つとき、先手をとった側の動作は脳の支配を受けている。
しかし、後手に回った側の反応は、脊髄反射の支配を受ける。
そのため後の先をとった方が、先手よりも0.2秒ほど早くなるのだ。
もちろんそんなことのできるのは、恐ろしいほどのレベルに達したガンマンだけなのだが……。
「後の先をとったばかりじゃない。この期におよんでまだ僕を殺さずに、作動スイッチのコードを狙うとはね。おそれいったよ。僕の完敗だ」
そして「旅人」は左腕を降ろすと、そのままの姿勢で真後ろへと朽ち木のように倒れていった。
「ど、どうしたんだ!?弾は当ててないはずだぞ!?」
怪我も忘れてハーパーは「旅人」に駈け寄った。
大の字に斃れた「旅人」の、それまで上着に隠れていた右脇の下に、ごく小さく鮮やかな赤い滲みが広がっていた。
「なんだこの傷は??何時、誰にやられたんだ!?」
「実はここに来る途中、君の仲間とちょっと遊びすぎちゃってね。外の出血はそれほどでもないけど、でも肺の中はきっと真っ赤っかなのさ」
「オレの仲間?……そうか!ディミトリィだな!」
「たしかそんな名前だった。若いしちょっとマヌケだが、きっといい狩人になれるよ」
「……おかしいなとは思ったんだ。いくらなんでもオレが勝てちまうなんて」
「気にすることはないさ。運とか仲間とかだって、実力のうちだよ」
……「旅人」が突然咳き込んだ。
すると、蒼白の唇に赤い血の泡がひとつ、ぽつんとにわかに現れた。
「最後にひとつ……言っておきたい……ことが……ある」
「まて!無理するな!なにも言っちゃ…」
「……ドラゴンに……10の角と…七つの顔を持つ獣に……気をつけろ」

そして、北米全土を股にかけ、死をまき散らした「旅人」はこの世に存在することを止めた。
0423ファイルNoゼロ「旅する死神」
垢版 |
2011/10/24(月) 20:19:56.36ID:wyCQtWO7
「何年ぶりですかね?」
HRT隊長エドガー・ファーガが右手を差し出すと、トーマス・ベックマンがガッシリ握り返した。
「7年か、8年じゃないかな?ところでエドガー、君はディミトリィの解職に随分反対していると聞いたんだけど」
「アラスカまで聞えてますか」
エドガーは苦笑した。
「まあ、あなたのことですから、きっと特別なルートがあるんだとは思いますが……」
「徹底抗戦の構えだと聞いてるよ」
ベックマンの顔からいつもの笑みが消えていた。
「なぜそうしてまで彼を守る?」
「それは……」
エドガーも真顔になった。
「ああいうヤツが必要だと思うからです」
「ああいうヤツ?」
「勇気と決断力、それから揺るがぬ正義感を持ち、ただ一人でも悪と対決する覚悟のあるヤツです」
「何故そういう男が必用なのだと?」
「オレは、FBIの組織力は世界一と信じています」
エドガーはベックマンに向かって無意識に胸を張ってみせた。
「…しかし、どんなに有能な組織でも組織であることによる弱点があります。その弱点を補完する存在が必要なのです!!」
「……それがディミトリィってわけか」
「ディミトリィだけではありません、あなたやロスのハーパーもそうです。あなた達がいなかったら、最低でもロスアンゼルスは死の町と化したでしょう」
「おいおいなんだ、オレも含めての話しかよ」
「もちろんです!それから……他にも加わった者がいると聞いています。彼らこそが、組織としてのFBIを補完してくれる存在なんです」
「それで君は……」
ベックマンは聞いていた。
エドガー・ファーガが自身の首まで賭けて、ディミトリィの解職に抵抗していると。
「彼らは絶対に必要です。ディミトリィを首にするなどとんでもないこたというのが、オレの考えです」
う〜んと唸って、ベックマンは窓の外、クワンティコに広がる木々に目をやった。
アラスカでは、落葉樹はすでに葉を落としてしまってしまっていたが、ヴァージニアではまだ紅葉したところだった。
「だけどエドガー、君の考えには一つ、大きな問題があるよね?」
「はい」
その問いかけを期待していたかのように、すぐさまエドガーは返した。
「FBIという組織の一部である以上、彼らを管理する人物が必用になります」
「しかし、ディミトリィのような男は管理が難しい。ハーパーだって、彼の上司は……」
ベックマンは何度かその愚痴の聞き役を努めたことがあった。
「そこでですトム!」
HRT隊長が、ベックマンの前で直立不動の姿勢をとった。
「ヤツらを束ねることができる男にただ一人心当たりがあります。オレがまだ駆け出しだったころ、オレと組んで導いて下さった先輩捜査官の方であります」
(やれやれ……)
ベックマンはもう一度窓の外の景色を見た。
(冬枯れの前に、もうひと頑張りしろってことか)
0424創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/10/24(月) 20:24:04.10ID:wyCQtWO7
>>422
あと2レスでDT結成の契機……というか、FBI上層部がDT設立を発表せざるを得ないとこまで書ききれる。
それでフィニッシュね。
今日中に終わるよ。
0425ファイルNoゼロ「旅する死神」
垢版 |
2011/10/24(月) 23:06:43.24ID:wyCQtWO7
「おはようエミー」
『こんちわハーパー、そっちはどうなの?』
「公式発表はまだだけど、例のウィルスの最後のアンプルが見つかったよ。映画観のロビーに仕掛けてあった」
『エロ映画観?』
「…うん、きっついヤツ」
『やっぱりね。ライダーは堕落したアメリカ人に対するアルマゲドンを意図してたみたいだから。たとえば最初の被害者デルハイルは……』
エミー・ハワードは得々と自説を語った。
『……だからその映画館も只の映画じゃなくって、そういう映画観じゃなきゃいけないのよ。……ところでハーパー、あなた何でそのエロ映画がきっついヤツだって知ってるの?』
電話越しの流れ弾に思わず首をすくめつつ、ハーパーは聞き返した。
「ところでエミー、そっちはどうなんだい?何かあったから連絡くれたんだろ?」
『たぶん一時間ぐらい後になると思うけど、上層部が記者会見を開くわ』
「ロスでの騒動とフィラデルフィアでの不始末の釈明か。で、どんなシナリオで行くんだ?」
『ベックマンの提案を飲んだみたい』
「丸飲みシナリオか。フィラデルフィアとスロアンゼルス、どっちが最後の舞台になるかか絞れなかったから、最初から両面作戦でいったっんだっていうシナリオ」
『功績横取りもいいとこよね。ふざけた話しだわ』
「でもベックマン・シナリオならディミトリィの行動も上層部の承認済みってことになるから、当然馘首にはできないな」
『ほんとベックマンのおっさん、意外に策士よね。あ、それからこれはあくまでウワサなんだけど、他にも何か発表するみたいよ』
0426ファイルNoゼロ「旅する死神」
垢版 |
2011/10/24(月) 23:15:12.10ID:wyCQtWO7
記者会見場でマイクの前に現れたのは、広報班でなくFBI長官ゴードン・ヴェンターだった。
この時点で、その会見はすでに異例だったといえただろう。
「……今後このような事件が再び発生した場合に備える必要を私は痛切に感じました。
そこで我々FBIは新組織、Wide range investigation unit(広域捜査班)を立ち上げることとしました。
今回のロスの事件で活躍した二人の捜査官も、今後はその新組織に加わることとになります……」


ファイルNoゼロ「旅する死神」

お し ま い
0427創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/10/24(月) 23:23:56.34ID:wyCQtWO7
「旅する死神」これにて終了。
一応は、FBIが新組織を「立ち上げざるをえなかった」理由付けまでキッチリ書ききることができたかなと思う。
約束通り第一話は簡潔させたので、いったん別スレに引き上げます。
長いことスレを独占してもうしわけなかった。
それでは……ファイルNo××「狂気の監獄」にてお会いしましょう。
では、また。
0428創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/10/26(水) 15:35:32.58ID:Iqx4FIJR
投下乙です。
序盤のトリックと終盤の展開がなかなかおもしろい話でした。
ところで、書いて貰っている手前悪いですがトリつけて貰えますか?
0429創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/10/26(水) 22:50:31.69ID:3lvOq2pb
肝心なことを書いておくのを忘れた。
「旅する死神」構成過程で集めた資料。

FBI関連施設所在地
「上層部」と書かれているFBI本部はワシントンDC。
「HRT」「プロファイリングチーム」「FBIアカデミー」はヴァージニア州クワンティコ。
ただ、ワシントンDCそのものが地理的にはヴァージニア州の中に在るので、大雑把に全部ヴァージニア州内にあると考えてもいい。

時差
合衆国本土内には四つの時間帯がある。
ちなみに東部ニューヨークと西海岸のロスアンゼルスでは三時間の時差。
だから日本語で書くと、ロスの人間が「おはよう」と電話してニューヨークの人間が「こんにちは」と答える可能性がある(これが英語なら、どちらも「ハロー」ですむ)。

ロス市警署長
日本語表記で「署長」とすると警察署の長のようになってしまう。色々迷った挙句現地表記の「チーフ」に。
だからギャレット・チーフと書いてあっても「チーフ」の部分は肩書。

それぞれの都市の地勢なんかも調べてたから、書いてるより調べてる時間の方が長かった。
やっぱり外国が舞台ってのは難しい(笑)。
0430創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/10/26(水) 22:53:14.38ID:3lvOq2pb
>>428
「トリ」ってのは「トリップ」の略という理解でいいんだよね?
ネットスキルが低いからどうやって付けるのかさっぱり判らない。
やり方調べてみるか。
0431 ◆Zxf52S9TbpmL
垢版 |
2011/10/27(木) 16:27:07.69ID:K0/E8LRY
名前欄に半角で#と打ち、その後ろに適当に文字を打てばいい。
後は、普通に投下すればトリが完成。
(*注意…半角の後ろは、漢字がよろしいかと、他人が平仮名は調べられるため。)
不安なら、テストスレに投下すればいいと思う。
0433創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/10/27(木) 23:47:00.72ID:SAG8XL09
乙!次回作も楽しみに待ってます
それと>>189のまとめサイトに載せました
気に入らない人は修正ヨロ
0434創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/11/11(金) 02:00:32.48ID:oIh8tVwk
支援
0435創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/11/15(火) 22:08:52.77ID:RZJwQf+K
0436 ◆JamT9c3Z2k
垢版 |
2011/11/21(月) 21:57:02.88ID:rU865o80
test
0437創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/12/01(木) 22:50:06.23ID:DynK9lgf
〈人物名〉サージ(本名不詳)
〈人物説明〉「カーネル」ことウォレス大佐の右腕
〈簡単な経歴〉アングロ・サクソン系アメリカ人で40歳前後としか判らない。
軍の特殊部隊出身らしく、そのころの階級「軍曹(サージャント)」の略である「サージ」で呼ばれる。
「カーネル」直属の兵として、殺人・傷害・暴行・脅迫・恐喝・誘拐などを主に扱う。
通常は大口径リボルバーを使用するが、日本で活動した際はデザートイーグルを使用。
銃器以外にも体術を用いた格闘戦も「殺し合い」に限れば超一流。
眼球潰し(=相手は完全失明)、睾丸蹴り潰し等など限りなくえげつないスキルの宝庫であり、ファン・リーテンに言わせれば「不具者量産機」。
相手を殺していいなら、アルティメット、ボクシング、レスリング、柔道、空手使いなど如何なる相手にも負けないという絶対の自信を持つ。
0438創る名無しに見る名無し
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2011/12/01(木) 22:53:31.49ID:DynK9lgf
〈人物名〉ファン・リーテン(本名不詳「ファン・リーテン」は本名でなくコード・ネームに過ぎない)
〈人物説明〉「カーネル」ことウォレス大佐の左腕
〈簡単な経歴〉オランダ系イギリス人でサージより少し年上らしい。
SASで非合法の諜報・破壊工作・暗殺に従事。
「カーネル」直属の兵として、謀殺・毒殺・爆殺など比較的凝った殺人を得意とする。
本人曰く「私にとって、殺人はパズルゲームみたいなもんだよ」。
普通に戦っても強いが、どちらかというと暗器を使って卑怯に殺す方を好む。
本人曰く「自分が何故殺されたのか全然判んないまま死んでいく……そんな顔が堪らないねぇ」
暗器は大量に常備しているため、カーネルから「歩く暗殺博物館」とからかわれている。
日本で活動したときは、短縮型M1カービンをベースにした仕込み銃を使用。
0439創る名無しに見る名無し
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2011/12/03(土) 21:15:40.76ID:vqFTs5Rz
面白いなやっぱ.海外ドラマっぽくて
どんどん来てほしい
0441創る名無しに見る名無し
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2011/12/05(月) 22:44:35.18ID:uS94FUHo
他のスレ住人はどうかしらんが……どんどん使っちゃえ(笑)。
ちなみに437のキャラは他スレで活躍中。
0442創る名無しに見る名無し
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2011/12/10(土) 18:49:58.89ID:Y44h4rgV
《人物名》スワ・ユウマ(諏訪悠磨)
《人物紹介》日本人
《簡単な説明》日本人。三重県出身。ひょうきんな性格。
   見た目は二十代後半から三十代半ば優男。
   無論、英語は喋れない。日本語を話す際は、伊勢弁を話す。
   口癖は「ウケルわ〜」と「キギョーヒミツヤ」。イヒヒヒと笑う。
   自称「化け物を二回殺した英雄」。胡散臭い態度をとる。
   未解決事件や、不可解な事故などを独自に調査する。
   経歴などは口にしようとしないが、銃器に精通している。
   愛銃はカスタムされた64式小銃。
0443創る名無しに見る名無し
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2011/12/10(土) 23:17:09.36ID:7a+HEM3o
とんでもない世界観になってきたなと(笑)。
諏訪っていうのは「愚者」に出てきてた彼でしょう?
それだと諏訪対サージ対ハーパー対モンスターなんてのも組めちゃうことになる。
むかし「バイオニック・ジェミー」に宇宙人が出てきたり、「悪魔くん」に未来人が出て来る話もあったから、FBIもので超自然臭の強いのを一本組むのもアリかも。
0444創る名無しに見る名無し
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2011/12/12(月) 18:34:59.18ID:z2ZK+jZm
実はというと、諏訪くんとディミトリをもっと凄いとこに出すつもり。
スレ汚しになるかも知れないので一応、言っておきます。
0445創る名無しに見る名無し
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2011/12/22(木) 01:58:49.96ID:vqGyCgbV
宇宙人だか幽霊なんだかわからんのが出てきて謎が残るって話は結構多いよね
スレが賑うのはいいことだ
0446創る名無しに見る名無し
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2011/12/24(土) 23:22:54.48ID:sQdYfy28
「旅する死神」はDT設立に至る経緯の話しなんで、意図的にDTメンバー全員を登場させなかった。
例えば、DTの監視を命じられているルイなんかが、ファイルNoゼロに出てきたらおかしい。
だから手順から言えばファイルNo1を書く人は、ルイなんかの正規組織となって以降に加わったメンバーを描かなきゃならないんだよね。
ゼロ段階からのメンバーと1で加入のメンバーとの邂逅とか不和とか和解の話しを。
オーソドックスな事件だけど、例えばディミトリとルイが対立できるような話。

誰か書かない?
0447創る名無しに見る名無し
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2011/12/30(金) 14:35:02.39ID:QNaYDtj3
支援age
0448創る名無しに見る名無し
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2012/01/17(火) 01:31:05.67ID:cbHIAAQ5
ルイスの設定的に早く見たい
プライド高い小物→仲間思いの皮肉屋 になると思うし、凸凹コンビもみたい
過疎ってるのはおしい...
0449創る名無しに見る名無し
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2012/01/17(火) 23:06:56.40ID:9mMUNxQb
初登場で盛り上げ易いのは、確かにルイだね。
キャラ設定に「爆発物処理」があるから、ラストにこれをもってくると盛り上がるかな?
最初は格闘でも射撃でも道場チャンピオンで、実戦では??と描く。
そのクセ喋くりや理論武装は一流で、正直うざい。
でも最後に爆発物処理で意地を見せる。
例えばこんな感じに。

 起爆装置を解体しきったところで汗を拭きふき振り返ると、ディミトリも汗だくになってへたり込んでいる。
緊張のため唾液も乾ききった口で、掠れるようにルイは言った。
「逃げろっていったでしょう?聞こえなかったんですか?」
「……オレは耳が悪いんだ」
「耳が悪い?……なのに、今の僕の酷い声はちゃんと聞きとれるんですね」
「うるさい、うるさい」と逃げるディミトリを冷やかすようにルイが追う。
「アンタも素直じゃないね。正直に言えば?『仲間は見捨てられません』って」
「だからオマエを仲間だなんて、オレはこれっぽっちも……」

以後二人の関係は、「口げんか」と「あげ足の取りあい」で進行する……ってな感じかな?
0450創る名無しに見る名無し
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2012/01/22(日) 20:27:36.96ID:MoIJGID+
ルイの脳内イメージがFate/Zeroのケイネスがスーツ着てる感じなんだが…
わかんねーよな...
0452創る名無しに見る名無し
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2012/01/25(水) 21:06:58.69ID:zAifDYPp
>>451
口調が丁寧なんだけど相手の痛いところをえぐっていく感じはわかる
表面的にはともかく、性格は違うだろうけど
0453創る名無しに見る名無し
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2012/01/28(土) 23:37:32.63ID:TrGFeTsK
Fateっていったいなんだ?と思って調べてみたが、大昔のメディアミックスのころの女神転生みたいなものらしいね。
幸い、北欧、ケルト、マヤ、インカ、ギリシャ等々ネタは持ってるから、そのうちそれっぽい話でも創ってみるかな。
願望器が中心になるんだったら……日本民話の「竜宮の臼」をもってくれば、ヤマトタケルとか崇徳上皇とか、大河ドラマ主役の清盛だって出せるけど。
……ちっともFBIじゃないのが難だな。
0454創る名無しに見る名無し
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2012/01/31(火) 16:42:51.42ID:htsEDQWX
>>453
魔術士たちが英霊を召還して殺し合いをするアニメ・ゲーム・ラノベ
結構、シリアスでグロ描写もそれなりにある……こんな感じか?
0455創る名無しに見る名無し
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2012/02/02(木) 18:19:59.85ID:46cw7SKY
誰得なんだ俺的声優キャスト
(アニメ版/吹き替え版)
トーマス・ベックマン:斧アツシ/菅生隆之
チャールズ・ハーパー:速水奨/森田順平
キャリー・グリーン:喜多村英梨/小林早苗
ディミトリ・ノラスコ:稲田徹/乃村健次
ルイ・フィリップ・プラン:中村悠一/咲野俊介
ソフィア・プリスキン:豊口めぐみ/本田貴子
クリストファー・ウィンフィールド:/檀臣幸
エミー・ハワード:田中理恵/田中敦子
サンベルト・ロレンツォ:緑川光/桐本琢也
バーナード・ブルータス・ウォレス:茶風鈴/石住昭彦
ケヴィン・レーマン:平田広明/横島亘
ボブ・ラインハート:田中一成/落合弘治

0456sage
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2012/02/02(木) 18:23:25.25ID:46cw7SKY
>>455
修正
クリストファー・ウィンフィールド:中井和哉/檀臣幸

マジで誰が得すんだこれ...orz
0457創る名無しに見る名無し
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2012/02/12(日) 20:47:32.73ID:MAaSMUeQ
過疎
0459創る名無しに見る名無し
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2012/02/18(土) 23:22:46.82ID:LQJMl4Qk
ちなみに俺得Ver
ハーパー:堀内賢雄
トム:井上和彦
キャリー:斉藤千和
ディミトリィ:伊藤健太郎
ルイ:石川英郎
ソフィア:川澄綾子
クリス:高木渉
エミー:伊藤静
ロレンゾ:千葉進歩
ケヴィン:田中正彦
ボブ:東地広樹
0460!ninja
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2012/02/23(木) 17:02:49.58ID:iLIR1NkU
age
0461創る名無しに見る名無し
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2012/03/01(木) 16:29:54.02ID:DshFfkZg
ところで第2話みたいな
第一話も面白かったし
0462創る名無しに見る名無し
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2012/03/05(月) 18:32:01.45ID:dJe+oncw
生き場のない、アンドロイドのメイドも使ってもらえませんかね…?
名はチェリーと言います
超高性能の原子炉つき美人メイドです
ろれつの回らない喋り方が特徴です
外見はベティ・ブープとマリリモンローを足した感じです
雇ってもらえるまで夜の街中をフラフラと徘徊しています…
あぁ、もうエネルギィが切れてしまいます、助けてやって下さい
0463創る名無しに見る名無し
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2012/03/06(火) 14:29:21.13ID:hxrbjwaA
age
0464「明戸村縁起」
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2012/03/06(火) 22:15:58.97ID:54ScpkXm
誰かが書くのを待つのでなく、自分で書くのじゃ。
0465創る名無しに見る名無し
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2012/03/07(水) 18:59:02.67ID:v54pEX6m
今は↑のフィニッシュに掛ってるんでこっちには書けないけど、終わり次第FileNo1を構成してみる。
再投下は他の住人投下作を2〜3作挟んでからがいいと思って、そっち用のは構成が進んでたんだけどね。
でも第二話ってことになると別に構成しなきゃならないなぁ…。
第一話は映画の「タワーリングインフェルノ」に倣った形にした。
だから第二話は……第一話とのコントラストをつけるためにもメインルートを決めた構成にする予定。
メインはディミトリィとルイのコンビ。
事件は仕掛け殺人というか殺人装置でいこう。
仕掛け殺人ってのは、犯人が直接的に殺人を犯すんじゃなく、予め設定しておいた「装置」で人を殺す方法ね。
典型的なのは時限爆弾。
それからアメリカで流行った装置だけど殺人金庫。泥棒が金庫を開けると中に仕掛けられた銃が発射されるってヤツだね。
殺人じゃないけど、教室のドアに黒板消しを挟んどくのも、手としては同種だ(笑)。

……当初は事故としか思われなかった殺人。
被害者は学校教師、元舞台俳優など多岐にわたり、犯人は一度使った装置を二度とは使わなかった。
被害者を繋ぐ糸は?
そして、なぜ犯人は毎回違った方法で殺人を犯すのか?
「FileNo1 殺人装置」

……こんな感じかな?
0466創る名無しに見る名無し
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2012/03/23(金) 00:59:55.69ID:8JaAxIDp
>>465
楽しみに待ってます
0467創る名無しに見る名無し
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2012/03/24(土) 00:07:46.29ID:Pufyd/vl
スレが落ちてもなんだから……少しづつボチボチ始めるか。
0468「殺人装置」
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2012/03/24(土) 00:09:49.68ID:Pufyd/vl
 「……おいエマ、誰かお客かい?」
「小包よ。宛先は……アナタみたいね。また何か買ったの?」
一介の高校教師、ロイ・ヘンダースのもとに「それ」が届いたのは、午前9時半前後のことだった。
天気予報は、その日の最高気温を15°と予報していたが、室温計はこの時すでにその予報された温度に届きつつあり、ロイの部屋の窓も前の芝生に向け開け放たれていた。
「小包?……何処から?」
「名前が書いてあるけど……覚えがないわ」
「どれどれ」
デスクから大儀そうに立ち上がると、冬眠明けの灰色熊のような姿勢でロイは書斎からやって来た。
「…………誰だ?」
送り状を見てロイも呟いた。
「あなたの教え子の誰かじゃないの?」
「…かもな。でも、覚えはないな」
小包を手に、ロイは妻に背を向けた。
昨年仕事を辞めるまでに、いったいどれくらいの生徒を相手にしただろうか?
正直、全員の名前を覚えている自信は無かった。
「開けて中を見れば思い出すだろう」
そんなことを呟きながら灰色熊は書斎に引っ込んでいった。
それから数分後………。

ガタン!

硬い物の倒れるような音、それからドタッというもっと柔らかくて重量のあるものが崩れる音がして、エマは縫物の手を止めた。
どうも音は書斎の方から聞えたような気がする。
「……あなた?また何か落っことしたのね」
退職後運動不足気味で体力低下の目立つ夫が、またなにか家具を落とすなり倒すなりしたに違いない。
エマが最初に想像したのは、その程度のものだった。
しかし、書斎からは予想した弁解も詫びの言葉も返ってこない。
「あなた?……ロイ?……どうかなさったの??」
(しょうがないわね)
縫い針を置きエマは立ち上がった。
居間を出て玄関前を抜けると、書斎は短い廊下で一直線だ。
ドアが開いていれば、わざわざ書斎まで行かなくとも用事は事足りるだろう……。
玄関前まで出ると、エマの想像していたとおり、定書斎のドアは開きっぱなしになっていた。
ロイの体がドアストッパーの代わりになって。
「あ、あなた!?どうしたのあなた!?」

ドリームチームの事件簿
ファイルNo1「殺人装置」
0469「殺人装置」
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2012/03/28(水) 22:41:21.45ID:AZ99EAaK
 寝起きの髪もそのままのジャージ姿でエミー・ハワードが地下射場に下りていくと、そこには既に先客が居るようだった。
バンッ!バンッ!バンッ!っとコンクリートに木霊す発射音に(……9ミリね)とあたりをつける。
(ソフィアかしら?)
こんな早い時間から射撃場に降りている相手として思い当たるのは、ニューヨーク市警からFBIにトラバーユしてきたばかりのソフィア・プリスキンだけだ。
バンッ!…バンッ!………バンッ!…………バンッ!
(……テンポが落ちてきたわね。リズムが無い上に指疲れってこと?ソフィなら……)
彼女なら正確さはそれなりだが、ともかく早いしタフだ。
ダブルアクションで指疲れするようなことは……。
(いったい何処のヘタレだよ?)
階段を下りきって遮音ドアを開くと、銃声のボリュームがいきなり撥ねあがった。
背後の気配に気づいて振返ったのは見知らぬ男だった。
背はエミーと同程度で、男性としてはそんなに高くない。
栗色の髪が描くウエーブは天然だろう。
グレイの眼の両サイドには、そう年にも見えないのに笑いジワが刻まれている。
そして、初対面の女性の胸の上に落ちた視線を隠そうともしない!
エミーは確信した!
(こいつ絶対フランス野郎だよ。…ってこたぁ)
「あんた……」
しかし、エミーが名を呼ぶより一瞬早く、フランス野郎は片手を差し出し自ら名を名乗った。
「僕はルイ。ルイ・フィリップ・ブラン。君なら、ルイスって呼んでくれていいよ」
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