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ジャスティスバトルロワイアル Part3
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0001創る名無しに見る名無し
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2010/11/23(火) 23:12:03ID:1WfGSVzJ
1 名前:創る名無しに見る名無し[sage] 投稿日:2010/09/04(土) 19:25:00 ID:uDrCIUCg [1/6]
「正義と悪はどちらが強いのか」
そんな単純かつ深淵なテーマを元にバトルロワイヤルを行うリレー小説企画です。
この企画は性質上、版権キャラの残酷描写や死亡描写が登場する可能性があります。
苦手な人は注意してください。

したらば
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/14034/

まとめwiki
ttp://www35.atwiki.jp/justicerowa/pages/1.html

前スレ
ジャスティスバトルロワイアル Part2
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1283595900/
0102第一回放送 メフィストフェレスの一滴 1
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2010/12/25(土) 22:34:58ID:AtxARIMN
雑居ビルのような建物の廊下を賀来は駆け抜ける。
この建物はH-4エリアにあるテレビ局。
賀来は額に汗を滲ませ、辺りを見渡す。
賀来には使命があった。
それは――
「私が結城を…あのメフィストフェレスを止めなければ……!!」
このゲームには、自分の人生のフィナーレとして、世界を滅亡させようと目論んでいた結城美知夫も参加している。
結城のことだ、未だにその目的を達成するために動いているだろう。
もし、そうであれば、この地にいる全員が結城のターゲットだ。
だからこそ、賀来はこのテレビ局を選んだ。
放送という媒体を利用して、結城の危険性を全参加者に知らせるために――。
賀来は歯ぎしりし、再び、誓う。
「お前の悪事…ここで潰して見せるっ!」

賀来の行動は犠牲を最小限に食い止めるための、まさに“尊き行い”である。
しかし、賀来は気付くべきであった。
この地にいるメフィストフェレスは結城一人だけではなかったことを――。
もう一人のメフィストフェレスが今、賀来に忍び寄ろうとしている。

0103第一回放送 メフィストフェレスの一滴 2
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2010/12/25(土) 22:38:01ID:AtxARIMN
「アンタ、何で走っているのさっ…!」
「えっ…!」
賀来は勢いよく振り返る。
そこにはシルクハットにタキシードというオペラの舞台から現れたかのような出で立ちの男が立っていた。
身なりは西洋人だが、髪の色や顔から判断すると日本人のようである。
男は無邪気そうに笑いながら、賀来に近づく。
「もしかして、何か探し物とかしているのか……放送器具とか……?」
賀来は飛び付くように、男の腕を掴んだ。
「それはどこにあるっ!教えてくれっ!」
「ひ…ひっつくなっ!オレには可愛いカミさんがいて……」
男は“頼むから訳を話してくれよ……”と困惑した面持ちで、賀来を落ち着かせる。
「あ…すまない……」
賀来はやっと我に返った。
自分としたことが何と取り乱していたのだろう。
賀来は深呼吸し、
「順を追って話すべきだな……」
と、語り始めた。結城がいかに危険人物であるかを。
結城美知夫――狂気の連続凶悪犯罪者。
結城は幼い時、MWという毒ガスを吸い、大脳を侵された。
これにより、知能は発達しながらも、良心やモラルが欠如。
また、肉体も蝕まれ、その寿命は風前の灯となっていた。
そこで結城はMWに関わった当事者達に復讐するために、連続誘拐事件と殺人を繰り返し、最後はMWで人類を滅亡させる計画を立てたのだ。
0104第一回放送 メフィストフェレスの一滴 3
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2010/12/25(土) 22:40:04ID:AtxARIMN
「……というわけだ…奴は悪魔、メフィストフェレスっ…!
私は仲間を集めたいのだ…奴を倒すためにっ…!」
ここまで話すと、賀来はやり場のない怒りを押さえ込むように俯いた。
目の前の男が、歓喜と悪意に満ちた笑みを浮かべていたとも知らずに――。

「アンタの気持ちはよく分かった……」
男は一つの部屋を指し示した。
「あの部屋にラジオ放送専用の機材がある……
それを使って悪魔の存在を皆に知らせるといい……そして……」
男は強い決意を滲ませたような瞳で賀来を見据えた。
「殺し合いを止めてやろうぜっ!“オレ達”でな……!」
「“オレ達”……まさか協力してくれるのか……!」
賀来の顔がパッと輝く。
何という幸運であろう。
ここで自分の志に共感する者に出会えた。
どんな状況下においても、神は正しき者に手を差し伸べる。
(神よ…!やはり貴方は私を見捨ててはいなかったっ…!)
神の慈悲深さを、賀来は改めて噛みしめた。
「では早速……」
「あっ…ちょっと待ってくれよっ…!」

0106第一回放送 メフィストフェレスの一滴 4
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2010/12/25(土) 22:44:12ID:AtxARIMN
「……で、これがその原稿か……」
賀来が手にしていたのは今し方ファックスで送られてきた一枚の紙。
そこにはゲームが始まってから亡くなった参加者の名、グループ別の退場者の人数、そして、禁止エリアと呼ばれる立ち入り禁止区域が記載されていた。
「ここのテレビ局には二種類のラジオ機材があって、一種類はいつでも放送できるが、放送エリアがランダムなもの。
もう一つがこれ。指定された時間に、この原稿を読まなければならないが、全エリアに音声が行き渡る……
オレ達にとって、こっちの方が好都合だろ…?」
「そうだな……だが……」
賀来は男の言葉に強く頷きつつも、申し訳なさそうに頭をかく。
「いいのか私が放送役で……」
男ははにかんだ微苦笑を浮かべる。
「オレって、アガリ症だし、アンタの方が結城って奴のことを知っている……
それに、アンタは平和を望んでいる……!
その熱意はオレの言葉じゃ…伝わらねぇからさ……」
「そうか……」
(この男もそこまで平和を望んでいたとは……!)
男の慎み深い心遣いに、賀来の胸が熱くなる。
賀来はいよいよ確信を抱いた。
神は殺し合いを望んではいないことを。
だからこそ、この男と自分を引き合わせてくれたのだと。
0107第一回放送 メフィストフェレスの一滴 5
垢版 |
2010/12/25(土) 22:49:06ID:AtxARIMN
スピーカーやミキサーなど、ラジオ放送に関わる機材に囲まれたレコーディングスタジオ。
その中央に設置されているマイクの前に、賀来は立つ。
時刻は5時59分。
放送機材が、一つまた一つと蛍の光のように淡く点滅し始める。
心の中でカウントダウンをしながら、賀来は男の方を振り返った。
「そういえば、貴方の名を聞いていなかった……」
「あぁ……オレの名か……」
男は口元を歪ませる。
「オレは“テンマ”っていうんだ……!」


朝6時。
耳障りなノイズと共に、全エリアに男性の声が響き渡る。

0108第一回放送 メフィストフェレスの一滴 6
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2010/12/25(土) 22:51:56ID:AtxARIMN
『あー、私の名前は賀来巌……
私も参加者の一人だが、主催者からの指示により、H-4のテレビ局で放送を行うこととなった……
それでは原稿を読み上げる……聞いてほしい……
まずはゲーム退場者の発表……
【七瀬美雪】【メロ】【相沢栄子】【夜神粧裕】【東方仗助】【内田かよ子】【ジェームズ・ゴードン】【アリサ・バニングス】【人吉善吉】【ヴォルフガング・グリマー】【夢原のぞみ】【ポイズン・アイビー】以上12人だ……
次にその退場者のグループ分け……
Hor2名、Set1名、Isi9名…だ…
そして、禁止エリアは【】【】
以上だ……』

賀来は一旦、言葉を切った。
この6時間でこれだけの人間が命を落とした。
救うことができなかった。
殺された者の中には結城が手を下した人物もいるかもしれない。
己の無力さがもどかしさとなってと心を責める。
(だが……!)
賀来は顔をあげた。
(ここで結城の危険性を訴えれば……そして、他の参加者に協力を呼びかければ……
殺し合いを終わらせることができるのだっ!)
賀来は鋭い光を瞳に宿らせ、再び、口を開いた。

0109第一回放送 メフィストフェレスの一滴 7
垢版 |
2010/12/25(土) 22:58:52ID:AtxARIMN
『本来ならここでマイクのスイッチを切るべきなのだろう……
しかし、私は切らない……
なぜなら、ある悪魔と戦うために仲間を集っているからだっ……!
この世を滅亡に導こうとした悪魔っ…!
その悪魔の名は――』
結城の名を口にしようとした次の瞬間だった。
襟に加わる強い力。
『えっ…』
身体が軽くなったと思いきや、押し付けられるような気圧に呑まれる。
宙に吹っ飛ばされたのだと賀来が理解した時、その身体はすでに『バン!』という激しい衝突音と共に壁に叩きつけられていた。
「くっ…」
痺れるような激痛が賀来の背中を刺激する。
一体何が起こったのか。
賀来が身体を起こした瞬間、彼の目の前に飛び込んできたのは、マイクの前に立つ“テンマ”の姿だった。
“テンマ”は己の首を強く握った。

『き…聞いて…くれっ…!奴が求めているのは……仲間じゃない……獲物だっ……!
奴はオレを…ゴホッ……!』

0110第一回放送 メフィストフェレスの一滴 8
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2010/12/25(土) 23:00:52ID:AtxARIMN
(なっ…!)
賀来の頭が真っ白になる。
“テンマ”が末期の病人のように弱弱しい喘ぎ声で己を否定した。
自分に協力したいと申し出てくれたあの“テンマ”が――。
(な……なぜ…?)
“テンマ”は自分を正しき道へ導くために神が遣わしてくれた使徒ではなかったのか。
受け入れがたい事実に、賀来の心拍は乱れ、疑問だけが累積していく。
おそらく、この疑問が解決されることはないだろう。
しかし、これだけは言えた。
(このまま“テンマ”を野放しにすれば……ほかの参加者から狙われるのは私だっ……!)
今の放送を聞いた者は皆、“賀来という男は他の参加者をも殺そうとしている”と誤解するはずである。
もし、そう誤解した参加者と賀来が出くわせば、その参加者は有無を言わせず、賀来に敵意と武器を向けるだろう。
これでは結城打倒の計画は頓挫してしまう。
(そんなこと……させるものかっ…!)

賀来は突き刺すような痛みを堪え、立ち上がるや否や、拳を振り上げ、“テンマ”の元に駆けだした。
『“テンマ”っ!貴様っ!』
振り返った“テンマ”は賀来の血走った形相に動ずることなく、マイクの電源を静かに切った。

0111第一回放送 メフィストフェレスの一滴 9
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2010/12/25(土) 23:02:53ID:AtxARIMN
賀来は敗北の色を滲ませた虚ろな表情で、床に伸びていた。
かつて非行グループに所属していただけあって、腕っぷしには自信があるし、喧嘩慣れもしている。
しかし、その賀来が放った拳が“テンマ”の顔面に届くことはなかった。
拳が届くよりも先に、“テンマ”は万有引力の法則を無視するような軽やかさで、跳び上がったからだ。
まるで、背中に翼が生えたかのように――。
否、実際に、“テンマ”の背中からは翼が生えていた。
暗闇を吸い取ったかのような漆黒の翼が――。
「遅いな…」
そう呟いた“テンマ”は翼を大きく広げ、身体をねじらせると、回し蹴りの要領で賀来の顔を蹴り飛ばした。

0112第一回放送 メフィストフェレスの一滴 10
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2010/12/25(土) 23:05:13ID:AtxARIMN
「放送ご苦労さんっ!賀来神父っ!」
“テンマ”は地に伏せる賀来を、新種の生物で出くわした子供のように、好奇心に満ちた瞳で見下ろす。
「アンタの熱弁、中々良かったぜっ……!
ゲームのルールを分かっていない、空気の読めなさがっ……!」
「なん……だと……!」
賀来は倒れたまま、苦々しさを含ませた眼で“テンマ”を射った。
“テンマ”の蹴りはものの見事に、賀来のこめかみを捉えていた。
こめかみは骨の厚さが薄く、打撃を加えられると、平衡感覚が一時的に失われ、場合によっては脳震盪を起こす。
今の賀来の身体はまさにそれであり、酔いに近い目眩が賀来の自由を奪っていた。

「いやぁ……本当はもっと演説を続けてほしかったんだけどさぁ……
結城っていう面白そうな役者が不利になるってのは……
ちょっとどうかと思ってな……」
“テンマ”はスタジオの壁にかけられている時計を見上げた。
「直にここに人が集まる……
もしかしたら、アンタが望む人種かもしれないし……
そうでない人種……オレみたいな不幸とか混沌を好む奴かもしれない……
共通しているのは、アンタを“テンマ”殺害を目論んだ罪人として見なしていることか……」

0114第一回放送 メフィストフェレスの一滴 11
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2010/12/25(土) 23:07:00ID:AtxARIMN
“そう勘違いした奴がアンタの命を狙うって思うと、ワクワクしちまうぜっ!”と“テンマ”は肩を震わせ笑い飛ばす。
「だけど……」
“テンマ”はうむと考え込む。
賀来は知らないが、“テンマ”は偽名であり、本当の名は杳馬。
このゲームでは杳馬の息子テンマと医者である天馬賢三の2名が参加している。
先程の放送で、“テンマ”の名を叫ぶ賀来の声をマイクは拾っている。
両方のテンマを知らないものからすれば、どちらのテンマなのかと困惑するだろう。
また、片方のテンマのみを知りうる人物であれば、もう片方のテンマが賀来という人物に殺されかけていたと誤解するはずである。
他の参加者から警戒されたくない杳馬からすれば、実に都合がよい偽名。
しかし、問題はどちらのテンマも知る人物で且つ、そんな人物が賀来の元に現れた場合だ。
この人物が賀来から“テンマ”は“タキシードにシルクハットを被った無精髭の男”と聞けば、一発でその“テンマ”が偽物であることを見抜いてしまうだろう。
しかも、テンマもしくは天馬賢三から杳馬の身体的特徴を聞いていたとすれば、その正体が杳馬であることまで感付くはずである。

0115第一回放送 メフィストフェレスの一滴 12
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2010/12/25(土) 23:09:26ID:AtxARIMN
「そいつはつまんねぇな……」
手品は最後まで種が分からないから興奮するのだ。
種が分かれば、観客は途端に興ざめする。
背後の存在など見えない方がいいに決まっている。
「今後のマーブルのためにってね……」
杳馬は賀来の頭を持ち上げ、弛緩するその口元に手を翳した。
杳馬の手のひらを中心に渦巻いた風が吹き始める。
そして――
「マーベラスルーム!!」
突如として風が掃除機にように賀来の口腔を吸いあげ始めた。

「なっ…!」
(何なんだ…この力はっ…!)
賀来は魔法のような杳馬の能力に当惑する。
しかし、その当惑は1秒しか続かなかった。
2秒目に賀来に訪れたのは舌の激痛だった。
マーベラスルームは物質を量子レベルに分解し、亜空間にばらまく一撃必殺の大技。
ただ、この能力はどうも首輪によって制限がかけられており、分解は狭い範囲でしか通用しない。
それでも賀来の舌を分解するには――賀来の口をきけなくさせるには充分だった。

賀来の舌が砂漠の砂のようにさらさらと崩れ、杳馬の手の中に吸い込まれていく。
やがて、風は蛇口を閉めた水のように収まった。

0117第一回放送 メフィストフェレスの一滴 13
垢版 |
2010/12/25(土) 23:12:37ID:AtxARIMN
「う…ぐおぉぉぉぉ!!!」
この直後、人間の言語からかけ離れた野太い声をあげながら、賀来は地面を縦横無尽にのた打ち回る。
焼きゴテを当てられているような灼熱の痛み。
口内は燃え盛り、賀来から思考を奪っていた。
賀来にできることと言えば、口を抑え、激痛に耐えることぐらい。
そんな苦しみもがく賀来に対して、杳馬は“やっぱり痛いよなー!オイラもびっくり!”と他人事のように言い放ち、腹を抱えて笑う。
その嗜虐に塗れた哄笑はしばらく続いた。

「さぁて余興はこれくらいにして…と……」
杳馬は賀来の頭部を人差し指で触れた。
賀来の頭部から黒い波紋が空気を伝ってトンと広がる。
賀来の動きがピタリと止んだ。
賀来は催眠術にかけられているような自失した表情で虚空を見つめる。
杳馬は賀来の耳元でささやいた。
「今、アンタの心に闇一滴を落とした…何が見える……?」
「……」

0118第一回放送 メフィストフェレスの一滴 14
垢版 |
2010/12/25(土) 23:15:15ID:AtxARIMN
賀来の瞳が捉えていたのはスタジオの白い壁ではなかった。
果てしなく広がる黒い空間――締め付けるように重い闇。
闇は賀来の身体に溶け込み、その動きを封じている。
なぜ、自分はここにいるのか。
泥沼にはまったかのように動かない思考がようやく産み出した疑問。
その疑問が頭を過った時、賀来は何かの気配を感じ、振り返った。
やはりそこにあるのも、闇。
しかし、その闇が少しずつ形を作り始めている。
血肉に飢えたような長い牙と口。
黒い剛毛に覆われた体躯。
研ぎ済まれた眼光。
(あ……あれは……)
賀来は直感的に気付いた。
あれこそが人間を誘惑し悪徳へと導こうとする地獄の大公、メフィストフェレスであることを。
メフィストフェレスはゆっくり賀来に近づいていき――。

0119第一回放送 メフィストフェレスの一滴 15
垢版 |
2010/12/25(土) 23:16:56ID:AtxARIMN
「ふ……ふぐおおおぉぉぉ!!!」
賀来は何かから逃げ出そうとするかのように手足を激しくばたつかせる。
勿論、賀来の目の前には何もない。
賀来の心は幻影に捕らわれていた。
それは杳馬が意図的に作り出したものなのか、または賀来が生み出したものなのか。
「さっそくいい感じにかき混ざってきたねぇ……」
杳馬は満足そうに立ち上がる。
「何を見ているかは分からないが…怖いだろう…?
怖かったら戦うしかないよな……
頑張って、マーブルを生み出してよっ……!」
賀来の悲痛な断末魔を背にして、杳馬は放送室を後にした。

0120第一回放送 メフィストフェレスの一滴 16
垢版 |
2010/12/25(土) 23:22:58ID:AtxARIMN
【H-4/テレビ局内:朝】
【杳馬@聖闘士星矢 冥王神話】
 [属性]:悪(Set)
 [状態]:健康
 [装備]:
 [道具]:基本支給品、フクロウのストラップ@現実
 [思考・状況]
 基本行動方針:殺し合いというマーブル模様の渦が作り出すサプライズを見たい!
 1:Dr.テンマが執着するヨハンに会ってみたい。
 2:会場のマーブルが濃くなったら、面白そうな奴に特別スタジオの存在を伝える。

【賀来巌@MW】
 [属性]:その他(Isi)
 [状態]:舌消失、錯乱中
 [装備]:なし
 [道具]:なし
 [思考・状況]
  基本行動方針:結城美智夫を倒す
 1:テレビ局の機材を使って、結城美智夫の危険性を会場全体に知らせる。
 2:悪魔である、結城美智夫を倒す
 3:メフィストフェレスが襲ってくる!
 [備考]
 ※参戦時期はMWを持って海に飛び込んだ直後。

0121 ◆uBMOCQkEHY
垢版 |
2010/12/25(土) 23:28:07ID:AtxARIMN
こちらで以上です。
最後までで読んでくださりありがとうございました。

今回、ロワの華ともいうべき放送を私のような若輩に委ねてくださり、なんとお礼を申し上げればよいのか。

もし、矛盾点などがありましたら、ご一報下さい。

では、よいメリークリスマスをっ!
0122創る名無しに見る名無し
垢版 |
2010/12/26(日) 22:52:13ID:DjFrNPVQ
投下乙!
なん……だと……!
流石貫禄の三大外道wwwかき回し方が容赦無いです
0123創る名無しに見る名無し
垢版 |
2010/12/28(火) 09:50:01ID:Mu/FGnS6
投下乙です!
賀来ェ…これは終わったな…
特に戦闘力があるわけでもないのに舌消失とか無理ゲーすぎるw

今更だけど杳馬の口調ってどことなくざわ…ざわ…漫画っぽいよね
作品把握してなかったときはカイジの遠藤みたいな感じなのかと思ってた
0124創る名無しに見る名無し
垢版 |
2010/12/28(火) 22:26:46ID:m+8yi3F3
遅ればせながらも放送乙。
神父さんマジカワイソス。もう一方神父はノリノリだっていうのに……。
そして親父い!テメエは絶好調だな!
0125創る名無しに見る名無し
垢版 |
2010/12/29(水) 23:09:18ID:IDjy1XBS
告知 予約解禁は1/4からです。

詳細は避難所にて
0126創る名無しに見る名無し
垢版 |
2010/12/30(木) 18:38:37ID:R2hAo61+
支援MADを作りました。登場話+αなMADです。
予約凍結期間中のおつまみにどうぞ。

ttp://www.nicovideo.jp/watch/sm13172362
ttp://www.youtube.com/watch?v=cH187HhUVJs
0129 ◆uBMOCQkEHY
垢版 |
2011/01/06(木) 23:30:16ID:DY2b3Mxm
突然ですが、1月8日に以前からお話ししておりました支援ラジオ開催します。
以下が告知です。

第一回放送突破記念っ!!!ジャスティスロワラジオ
日程:1月8日
時間:21:00〜0:00の3時間
内容:ジャスティスロワについての雑談
   ・メイン書き手様(特に1様)にインタビュー
   ・好きなSS
   ・今だから言える、没展開や没参加者
   ・どのキャラクター・グループが好きor気になる

ラジオについて
・当日、ラジオのアドレス・実況スレのアドレスを避難所の雑談スレとこちらに貼ります。
参加できなかった方のために録音あり。
・後日、公開。ただ、失敗したら、ごめんなさい。
・スカイプにてラジオ乱入可能っ!スカイプで「和野リエ」で検索してください。

注意
・パロロワ巡回ラジオ主催者R-109様のようなCOOLなラジオを期待しないでください。(BGM何それ?おいしいの…?)
・初めてなので進行が絶対的にクダクダっ…!
・地方民のため、やや言葉に難ありっ…!心で理解してやってください…!

それでも構わない方はもしよかったら、聞いてください。
0130 ◆uBMOCQkEHY
垢版 |
2011/01/08(土) 12:29:48ID:KHtpUfNm
本日、21時からジャスティスロワラジオ開催します。
ラジオURL
ttp://std2.ladio.net:8100/justicerowa.m3u
実況したらば
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/14404/

色々至らないリスナーですが、
どうかよろしくお願いいたします。
0131 ◆KKid85tGwY
垢版 |
2011/01/10(月) 20:27:40ID:mdD6ZIt/
我妻由乃、本郷猛、投下します。
0132 ◆KKid85tGwY
垢版 |
2011/01/10(月) 20:30:05ID:mdD6ZIt/
――――女はただ1人を追いかけていた。





1台のバイクが町の中を走っていた。
人の気配の無い町並みに、バイクの走行音だけが木霊する。
そのバイクを運転しているのは、まだ十代前半ほどの年齢の少女。
発育し切っていない肢体には明らかに大きすぎるバイクを、少女はまるで手足のごとく容易く操る。
少女にはバイクの免許はおろか、運転した経験すらない。
しかしその並外れた膂力でバイクを制動し
その並外れた五感で周囲の状況を察知して障害物を避わしていった。
少女は何か超常的な能力を有しているわけではない。
ただ知力や身体能力や五感など、人間が持ちうるあらゆる能力が並外れて優れているだけだ。
それは乗ったことが無いバイクをも、容易に運転できるほどに。

少女の名は我妻由乃。
無人の町を、我が物と言った風情で駆け抜けていく由乃だが
その表情には僅かに焦燥の色が浮かんでいる。
由乃は少しだけ顔を傾けて視線を背後に向ける。
自分を追って来る者の気配は無い。
ひとまず振り切ることはできたと言うことか、あの本郷猛を。

ならばそろそろ逃走に執心するのを止めて、次の行動に移るべきだろう。
現在、由乃の進行方向は西。方位磁針を見なくとも、由乃の方向感覚はそれを完璧に把握していた。
これは目的である天野雪輝が居ると推測された東南の都市とは、逆方向である。
早くそちらに進路を取りたいが、そうすると本郷に見付かる危険が有る。
遠回りになるが大きく迂回する進路を取った方が安全だろう。

(……でも、もうすぐ途中経過のアナウンスがあるんだよね)

由乃の人間離れした精度を誇る体内時計が、6時が近いことを告げている。
放送される内容によっては、書き留めておいた方が良いことも有るだろう。
本郷に追われてからほとんど休憩も取っていないし、他にもやらなければならないことが有る。
一刻も早く雪輝に会いたいという気持ちは何より強い。
しかし焦って不手際を起こせば元も子もない。
ここは放送を聞くついでに、どこかで休憩を取った方が良いと言うのが由乃の下した判断だった。

由乃の駆るバイクはその速さをほとんど変えず、民家と民家の間にある狭い路地に入った。
コンクリート製の民家の壁に挟まれた空間はちょうど陰になっていて、周囲からは一見して様子は伺えない。
しかし路地からは周囲の様子を伺い易い立地であった。
路地のちょうど真ん中辺りでバイクを止めて、由乃はそこから降りる。
0133 ◆KKid85tGwY
垢版 |
2011/01/10(月) 20:30:50ID:mdD6ZIt/
そして由乃は待ち切れないと言った様子で、雪輝日記を開いた。
天野雪輝の状況が逐次チェックできる雪輝日記の確認は、最優先事項だ。

『ユッキーが蝙蝠男と下水道にいる。そこで変な女と会ったよ』

ギリ、と大きく音をたてて歯を食い縛る。
自分を差し置いて蝙蝠男がユッキーと一緒に居ることすら許し難いのに、今度は女だって!?
由乃は慌てて続きを読むべく、日記をスクロールする。

『ユッキーと蝙蝠男が別れようとしてる。そんなことしたら変な女と二人きりになっちゃうじゃない!』

ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ
ギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリギリ
憤怒としか形容できない形相で目を剥く由乃。
女がユッキーと二人きりになるだと?
この女、私が居ない隙にユッキーを懐柔している。
ユッキーを守る役目は私の物なのに。
ユッキーの隣に居て良いのは私だけなのに。
訳の分からない女がユッキーの隣に居て
私はユッキーの傍に居ることも、ユッキーと語らうことも、ユッキーにメールを打つことすらできない!!!

我妻由乃と言う人格の最も主要な構成要素は、間違いなく天野雪輝への思慕だろう。
それは由乃の精神に雪輝が大きな影響を与えていると言う次元ではなく
由乃のあらゆる精神活動の根幹が、天野雪輝で構成されていると言った方が近い。
従って殺し合いという状況で雪輝と引き離され、連絡を絶たれた現在の状況は
由乃に多大なストレスを与え続けていた。
必然的に由乃の精神を常よりさらに不安定な物としていた。
だから些細なことにも激しく心を動かされる。
あるいは由乃にとっては、雪輝の近くに自分以外の女が居ることほど、重大事は無いのかもしれない。

(この女、私からユッキーを奪おうとしているな!? 殺すわよ!!?
 ……殺しちゃえば良いんだわ! ユッキーはIsiなんだから、誰を何人殺しても大丈夫だよね!!
 ここではどれだけ殺しても、警察が動く訳でも無いんだし!)

雪輝に近付く女は殺すと決めたことで、由乃の精神は幾分の安定を取り戻す。
そして日記をしまって路地のアスファルトに座り込み、バックパックから実験の手帳を取り出した。

『あー、私の名前は賀来巌……』

と同時に聞き覚えの無い男の声がする。
これが件のアナウンスなのだろう。由乃の体内時計に1秒の誤差も無かったと証明された。
途中経過のアナウンスと言うことは、雪輝の現時点での生死もこれで判明する形になる。
もっとも由乃は雪輝の生存を露ほども疑ってはいない。
雪輝と結ばれてHAPPY ENDを迎えることが、由乃の中で既に確信し確定しているのだから
それまでの過程で雪輝が死ぬことなどありえない。
はずだが、何故か身体が強張る。
その上を冷たい汗が流れる。
絶対の確信を抱いていても、どこかで分かっているのだろう。
雪輝が死ぬ可能性を。
でなければそもそも無理を押して雪輝を守りに向かう必要が無いのだ。
由乃は矛盾と緊張を抱えて、アナウンスの続きを聞く。

『“テンマ”っ! 貴様っ!』

アナウンスが終了する。
0134 ◆KKid85tGwY
垢版 |
2011/01/10(月) 20:31:53ID:mdD6ZIt/
名簿にある退場者として呼ばれた名前の上から線を引き、地図上の禁止エリアに指定された時間を書き込みながら
由乃はパァァと、花のような笑顔を浮かべていた。

(ユッキー生きてた! 凄いよユッキー!!)

有象無象が何人死んだとか、アナウンス中に誰か襲われたとかの些事は無視して
雪輝が生きていた喜びに浸る。
いや、それは本当は喜ぶべきことでは無い。
由乃がこの世に居る限り、雪輝もこの世に存在する。
それは世界の根本原則。
由乃の雪輝に対する愛は、いかなる摂理も超越して2人の未来を約束するのだから。

『私が未来のお嫁さんになってあげる』

あの日の約束は由乃の世界を全て変えた。
「将来の夢」というアンケートに何も書く事がない、夢も希望も無い日々が
雪輝との出会いで夢も、希望も、意味も、光も取り戻した。
由乃の人生はあの日の約束から始まったのだ。

恋する乙女は夢を見る。
想い人と星を見る未来。
そして迎える7月28日のHAPPY ENDを。
夢想だにするだけで至上の幸福に浸れる。
その下でどれだけの屍が築かれようが
そのためにどのような行程を歩こうが
由乃は決して省みない。
由乃が見るのは雪輝との輝かしい未来だけ。
逆に言えばそれほど希望の光が強いのだ。
だからこそ、それは反応した。

「……えっ?」

自身の手元から発せられる強い光に、由乃は珍しく気の抜けた声を上げた。


     ◇


――――男は当ても無く歩いていた。





受難、苦難、苦境、辛酸、艱難辛苦、呼び方は何でも構わない。
およそ生きていく上で、その精神に重荷を背負ったことのない者など居るだろうか。
大切な者の喪失、取り返しの付かない失敗
人はその心に様々な重荷を背負う。
全てが思う通りにいき、何も心に影を落とさない。
そんな人生を送れる者など、そうそう居るはずがないのだ。

とりわけ無人の街を1人歩く、この男にとってはそうだろう。
0135 ◆KKid85tGwY
垢版 |
2011/01/10(月) 20:32:54ID:mdD6ZIt/
寂寥感に満ちた風景の中で、男の規則的な足音だけが鳴り響く。
確かな足取りで進む男の瞳には、強い意志の光が宿っている。
そして深い部分にはそれ以上に哀しみの色が。

男の名は本郷猛。
男は“組織”によって五体を切り刻まれ骨を鋼と変えられた。
筋を脈を肉を毛皮を強靭なものに造り変えられ
その体は兵器と成り果てた……。
……それでも男には“魂”だけが残された――……。
組織の名は「SHOCKER」。
そして……始まりの男
「仮面ライダー」。

その体を改造され、しかし脳の改造は免れた男が選んだ生き方
それが人間の自由と平和を守るために、悪と戦う仮面ライダーだ。
人の心を持ちながら人ならざる体となり
なお人を守るために、自らの同胞たる改造人間との血塗られた闘いを続けた。
人間の幸福を全て奪われ、いつ果てるとも知れない孤独な闘争の日々。
しかしその地獄は、本郷が己の意志で選んだ生き方だ。
他にどれほどの選択の余地も無かったやも知れないが
それでも本郷の“魂”が選び取った結果である。
今さら本郷がそれに打ちのめされることは無い。
仮面ライダーを貫くためならば、いかなる地獄の業火にも耐える覚悟だ。
それが自分自身だけの問題ならば。
本郷にとって何より辛いのは、自身の苦痛ではない。
他者の苦痛であり、守るべき者の死である。

あまりにも容易く人が死んでいった。
守れたはずの3人が
更に本郷の知らぬところで9人の尊い命が失われた。
放送で告げられた退場者はおそらく全員が死亡したのだろう。
そして放送の内容に偽りはあるまい。少なくとも脱落者に関しては。
死んだ12人は本郷にとって、今日初めて知った者たちである。
人吉善吉、ヴォルフガング・グリマー、夢原のぞみとも出会って数時間しか経っていないし
他の9人とは面識すらない。
それでもその死は自身の体のいかなる傷より、本郷に痛みを与え
自身のいかなる労苦より重く圧し掛かる。
仮面ライダーが殺し合いの地に存在するにも関わらず、守ることが叶わなかった人たち。
そして善吉、グリマー、のぞみの3人の死は
明らかに本郷の失態が原因なのだ。
3人が殺される直前、殺害犯である由乃を追っていた時
本郷は由乃を捉える寸前で、突如現れた五代雄介に阻まれた。
仮面ライダーは、人間をはるかに超える五感を持つ。
早い段階で、五代の接近に気が付くことはできたはずなのである。
しかし実際は冷静さを欠いていたのだろう。
由乃を追うことに集中するあまり、周囲への警戒を怠った。
仮面ライダー、それも一号である自分は、誰よりも長い戦歴で己を鍛え抜いてきたのではなかったのか。
戦いは常に多勢に無勢。
目に見える敵が1人だとしても予断は禁物。
たとえ予め考えられる限りの想定をしていても、実戦の場では何が起こるか分からない。
だから如何なる状況に陥っても、動じずに応変の対処ができる覚悟をしておかなければならない。
それを誰よりも肝に銘じているはずではなかったのか。
仮面ライダーとしてあるまじき失態。
結果、命という何より重い損失。

それでも本郷の歩みは止まらない。
0136 ◆KKid85tGwY
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2011/01/10(月) 20:33:53ID:mdD6ZIt/
本郷は未だに仮面ライダー。人間の自由と平和を守ると誓った者だ。
自分の意思と生き方で以って、自分の存在を規定する者だ。
ならば今さら、それを投げ出すことは許されない。
例え戦いにその身を投げ打ち、命を賭けることになっても
死という安息すら許されないのだ。
自分の死に方を決めることすら望めない。
取り返しの付かない失敗。しかし本郷がこれまでに何度それを経験してきたことか、もう数え切れない。
そしてその度に立ち上がってきた。
仮面ライダーを貫くために。
本郷の目的は人間の自由と平和を脅かす悪を倒し、人々を守ること。
それはどこまで行っても変わらない。決して見失われることはない。
この実験に潜む悪を倒し、実験そのものを画策した悪を討ち
そして必ず生きて己の住む世界に帰り、そこでも人類の自由と平和を脅かす悪と戦う。
もはや他に生き方は選べないのだ。
苦難も罪業も全てを背負って、それでも生きるために戦う。
この命を人類の自由と平和を守る戦いに燃やし尽くすために。

歩み続ける本郷の目下の目標は我妻由乃。
本郷は今や由乃が、絶対に生かしては置けない敵である明確に認識している。
由乃が危険人物であることは明らかだし、何より本郷自身の決着を付けねばならない。
仮面ライダーとしても本郷猛としても捨て置くわけには行かない人物だ。
吉良吉影が撮影していたビデオに写っていた、3人を殺した場面。
その手際の良さ、躊躇の無さは、本郷をして戦慄を覚えさせるほどだった。
的確なタイミングで精確に急所を突いて人を殺す。
由乃が見せた非凡な戦闘と、そして殺人の才覚。
本郷の知るどんな怪人も持っていなかった恐るべき武器、それを年若い少女が持っている。
それはショッカーの改造人間やDIOのように、一目で剣呑さを察知できる者が持つより危険性が高い。
由乃はあまりに危険すぎる。放置しておけば、どれほど被害が出るか予想もできないほどだ。
だからこそ由乃を追うことを最優先の行動目的としているのだ。

しかも懸念事項はそれだけではない。
ビデオの中で、由乃はのぞみからピンキーキャッチュを奪い自分の腕に嵌めていた。
のぞみが由乃にプリキュアのことを説明していたのを、本郷は改造された聴覚で耳にしていたが
それによると、あれこそがプリキュアに変身するための鍵となる道具らしい。
のぞみ自身はその挙動から、一般的な女子中学生かそれ以下の身体能力しか持っていないのが伺えた。
しかしのぞみが変身したプリキュアは、仮面ライダーに比肩し得る能力を示した。
もし仮に、由乃がプリキュアに変身したら
あの闘争と殺戮の天才がプリキュアの力を得たら
そこに生まれるのは――――いったいどんな“怪物”だ?


     ◇


パルミエ王国に伝説として伝わる戦士、プリキュア。
その伝説の戦士となるためには、プリキュアに選ばれなくてはならない。
選ばれなくては、どれほど望んでもプリキュアになることはできない。
0137 ◆KKid85tGwY
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2011/01/10(月) 20:35:00ID:mdD6ZIt/
そして選ばれれば、絶大な力を持つプリキュアに変身することが出来る。

プリキュアに選ばれるためには、ある特定の心の力が必要だ。
あるいは『安らぎ』。あるいは『情熱』。あるいは――『希望』。
そしてこの殺し合いの地においても、プリキュアに選ばれし者が現れた。
誰よりも、強い『希望』を胸に秘めるがゆえに――――。



「あはははははっ! やったよユッキー!! プリキュアに変身できたよ!!」

由乃は両手を水平に上げてクルクルと回っている。
その様はさながら、童女が自分の衣装を両親に見せびらかしているようだった。
桃色と白を基調に全身にフリルをあしらわれた由乃の現在の衣装は
かつて夢原のぞみが変身したのと同一の物。
希望のプリキュア、キュアドリームの姿。

由乃はのぞみからプリキュアの話を聞いていた。
のぞみがどういうつもりだったのか、今となっては分からないが
変身方法やらどんな必殺技を持っているとか、色々説明されていたのである。
だからアナウンスを聞いた直後に、突然ピンキーキャッチュが光出した時もすぐに理解することができた。
自分は選ばれたのだと。

その場でピョンピョン飛び跳ねる。
軽く刎ねたつもりが、羽のように軽い身体が垂直方向へ1メートルは飛び上がった。
しかも片足で着地したのに、ほとんど負荷を感じない。
軽く目前のコンクリート壁を殴ってみる。
まるで発泡スチロールのような手ごたえ。呆気なく壁に穴が開く。
予想をはるかに上回るプリキュアの力に、由乃の笑いは止まらない。

「あはははははっ! 凄いよユッキー! これならユッキーの敵がどんなに強くても、皆やっつけちゃえるね!!!」

プリキュアの力に浮かれながら由乃は思う。
のぞみは馬鹿だ。
プリキュアがこれだけの力を持つのに、何で変身を解いたのかと。
本郷の変身のように怪物の姿になっている訳ではない。
プリキュアのままで居れば死ぬことも無かったかも知れないのだ。

(私はあんな馬鹿とは違う。何を利用しても、どんな手段を使ってでもユッキーを守って上げるから!!)

日記は見た。アナウンスは聞いた。プリキュアに変身できることも確認できた。
そろそろ休憩を切り上げて出発しよう。
問題はいかなる進路を通るかだ。
真っ直ぐ東南に向かう進路は、本郷に見付かる公算が高いから使えない。
幾らプリキュアに変身できたと言っても、本郷の力は脅威だ。
それにもう1体の怪物と組んでいる可能性もある。
可能な限り、本郷は避けるべきだろう。
やはりある程度、迂回する必要がある。
安全を考慮すればここから北に向かい、コロッセオを大きく迂回して南下するルートが考えられる。
しかしそれだと時間が掛かりすぎてしまう。
それと問題になるのがバイクの燃料だ。
バイクの給油タンクの蓋を開け、中を覗き込む。まだそれなりにガソリンは残っているようだ。
しかしさすがの由乃も、バイクに関しては素人なので
残った燃料でどれだけ走れるかの見当は付かない。
バイクの走行距離が分からない以上、あまり長距離となる進路を取る訳にはいかないだろう。
0138 ◆KKid85tGwY
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2011/01/10(月) 20:36:16ID:mdD6ZIt/
そうなると他に考えられるのは、ある程度南下してから東に向かう進路か。
これなら本郷を避けて、東南の都市へ行ける。
ただ1つ懸念材料は先刻のアナウンスだ。
アナウンスはH-4のテレビ局から放送されたと言っていた。そして危険人物の存在。
内容の真偽は問題ではない
問題はそれを聞いた本郷がテレビ局に進路を取りかねないこと。
そうなればテレビ局の位置的に、由乃の進行方向とも一致する。
しかしこちらはバイクで、向こうは徒歩か護送車しか移動手段がない。
移動速度は違っているのだから、それこそテレビ局に立ち寄らなければ鉢合わせになる公算は小さい。

(……あんまり本郷を意識しすぎてもしょうがないよね)

いずれにしても完全にリスクを回避するのは不可能。
ならば必要以上に煩っても仕方の無いこと。
そもそも真っ直ぐ東南に向かわなければ、本郷に掴まる公算は小さいのだ。
本郷は由乃が何処を目的地としているか知らないのだから
由乃の動向を予測することは不可能――――

(――――違う! 何かを見落としている!)

そこまで思考が進んだところで、由乃の中に強烈な違和感が生まれた。
自分が重大な考え違いをしている予感が。
由乃は違和感の元を自分の思考から探す。

(……あの時、アイツは何時から見ていたんだ?)

思い出されたのは、3人を殺した褒賞を得た後見つけた“ヨンヒキメ”。
あいつはあの時、逃げるように身を翻していた。
逃げようとしていたと言うことは、3人を殺す場面か
少なくとも3人殺しの褒賞を貰った場面は見ていたのだろう。
ならば、その情報が本郷に伝わっている公算が大きい。

(あの時はユッキーの位置を聞かなかったわ……。でも――――)


     ◇


歩み続けていた本郷だったが静かに瞑目する。
失われた命。全ての重みを受け止めるために。
そして力強く目を見開いた。
これ以上無為に省みないために。

命の重みを見失わないのは大事なことだ。
しかしそのために、まだこれから救える命を見失うほど愚かなことは無い。
まだ殺し合いは終わっていない。仮面ライダーの戦いはこれからである。
感傷に浸り、IQ600の頭脳という武器を錆付かせておくわけにはいかない。
現状を的確に分析し、これから何を為すべきかを考えなければならない。
戦いはそこから始まるのだ。

先刻のアナウンスを思い出す。
アナウンスは周囲に反響して音源が特定し難いようになっていたが
改造された本郷の聴覚はその音源が首輪だと捉えていた。
音質やノイズから、室内でマイクを使ってのアナウンスだと分かる。
0139 ◆KKid85tGwY
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2011/01/10(月) 20:37:09ID:mdD6ZIt/
そして賀来巌と名乗った男。
人は嘘を衝く時には、声のどこかに不自然な淀みや力みが混じる。
しかし本郷がどれほど耳を澄ましても、賀来の声からは虚偽の気配は感じ取れなかった。
主催者から任された定時アナウンスと言う性質を考慮しても
賀来の話した内容に偽りは無いと見ていい。少なくともその主観においては。

問題はテンマの方。
テンマがアナウンスをする直前、何かが壁に叩きつけられた音と賀来の呻き声が聞こえた。
おそらく賀来がテンマに壁まで投げつけられたのだ。
音から察するに賀来は、マイクから5メートルは離れた壁に叩き付けられている。
成人男性をそれだけ投げ飛ばした者が、直後に息も絶え絶えと言った様子で警告を発した。
賀来がテンマの接近に気付けなかったのは些か不自然。
そもそもテンマと言う“敵”が近くに居たのに、賀来からは警戒の様子すら読み取れなかった。
賀来を投げた方法に関しては、この実験内においては
未知の手段の可能性が多すぎるため、判断を保留する。
そして賀来がテンマと名を呼んだタイミングで、マイクの“スイッチを切った”。
バックパックから手帳を取り出し、名簿を見る。
記憶通り『テンマ』と『天馬賢三』と言う、2人のテンマが居る。
何より問題となるのは、テンマの声の奥に宿った底知れぬ悪意。
無辜の人々を落とし入れようと謀る悪と戦い続けてきた仮面ライダーなら、決して見逃さぬ悪意だ。
アナウンスの内容から推測するに、テンマが賀来を
そしてアナウンスを餌に集まる人たちを陥れようと仕組んだのだ。
テンマと言う名前も偽名だろう。

人々に害を為す悪がそこにあるのなら、仮面ライダーは討たねばなるまい。
できるかどうかなど問題ではない。
可能性など度外視し、ただ為すべきことを必ず為し遂げると己に誓う。
それは実験の主催者が相手であろうと、DIOが相手であろうと
由乃が相手であろうと変わらない、仮面ライダーのあり方なのだ。

(……由乃はこれからどう動くか、だ)

考察の対象を由乃に切り替える。
由乃が目的としているのは天野雪輝との合流だろう。
それは3人殺しの褒賞を受ける際、雪輝の位置情報を求めたことから明らかだ。
しかし由乃はその要求を撤回した。
そこから雪輝の位置の見当が、大づかみな形で付いていると推測できる。
ならば地図に記載されている建造物では無いだろう。
それだけ精確に把握しているのなら、位置を聞こうとはしなかったはずだ。
おそらく、もっと粗雑な把握の仕方なのだ。
例えば地形であるとかの。
何によって、そんな把握をしていたのか?
それは由乃が言っていた『雪輝日記のレプリカ』だろう。
雪輝日記と言う名称と由乃の話から、それは雪輝の状況が日記の形で記されるものだと推測できる。
そしてレプリカでは、より粗雑な情報しか得られなかったのだ。

(……その雪輝日記を根拠に、由乃は当初、何処に行こうとしていた?)

本郷は最初に由乃の存在を察知した時のことを思い出す。
善吉、グリマー、のぞみの3人と共に居た時。
まず南下する由乃の足音を捉え
そこから由乃はこちらの隙を窺う動きを見せ始めた。
つまり由乃は当初F-6で、南下しながら目的地に向かっていたことになる。
0140 ◆KKid85tGwY
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2011/01/10(月) 20:38:12ID:mdD6ZIt/
地図を広げる。
F-6以南で大まかな目当てとなる物があるはずだ。
海、は大きすぎる。
森、は拡散しすぎている。
――――市街地。それも大規模な。
それなら雪輝の周囲の状況描写から、大雑把な推測を立てたのが納得できる。
F-6以南で大規模な市街地となると――――

(由乃が雪輝の居場所と当たりを付けたのは……東南の都市か!)


     ◇


無人の町に騒音を響かせ、由乃はバイクを全力疾走させている。
表情には明確に焦燥が浮かんでいる。
そして自責の色も。

由乃は褒賞を得る際に
雪輝日記の存在
現在自分が所有しているのはそのレプリカであること
雪輝の捜索をしていること
しかし位置情報の優先順位は高くないこと
これだけの情報を流出してしまっていた事実に思い当たった。
無論、これだけの情報では由乃が想定している雪輝の居場所など
未来日記所有者でもなければ、分かるはずが無い。
普通の相手ならば。
しかし相手は、あの本郷猛なのだ。

(アイツはそんな甘いヤツじゃない!! きっとユッキーの居場所に勘付く!!!)

由乃は自分の仕出かした不手際に歯噛みする。
よりによって本郷に、雪輝の居場所を教えてしまっていたのだ。
あまりに手痛い失態。
これを致命傷とせぬために、由乃はバイクのアクセルを吹かす。
選んだ進路は一旦南下して、テレビ局を迂回した後東に向かう物。
それより近道を行けば本郷の異常な五感に捕まる危険が大きいし
それより遠回りをすれば時間が掛かりすぎるとの判断からだ。
もっとも、それすらどこまで安全かは分からないが、もはや熟慮しているような余裕は無い。
何としても本郷より先に雪輝の所へ行かなければ、どんな事態になるか分からないのだ。

(やっぱりアイツは、絶対に殺さないと駄目よ)

由乃が感じた直感はおそらく正しかったのだろう。
やはり本郷は由乃にとって、最大の脅威となる存在だ。
無論、最優先にすべきは雪輝の安全確保。
しかしそれさえ済めば本郷は必ず、確実にどこかで殺さなければならない。
由乃は静かに本郷への殺意を燃やす。

「……!!?」

突然バイクが急停止した。
そして慣性の法則に従って、乗っていた由乃の身体が前に投げ出された。
0141代理
垢版 |
2011/01/10(月) 20:52:26ID:5yCJIwG9
時速100キロを超える世界での、あまりに突然の出来事に
さすがの由乃も頭から叩きつけられる。

(何だ!? 何が起きた!!?)

プリキュアに変身していたため、負傷も衝撃も受けなかった由乃だが
全く事態が掴めず当惑する。
原因は由乃が乗っていたバイク、バギブソンに課せられた
時速100キロを超えると30秒で急停止し、30分間起動不能となる制限なのだが
由乃はそれを知らない。

(何なんだ一体いぃぃ!!!)

訳の分からない由乃は、右拳で道路のアスファルトに苛立ちをぶつける。
アスファルトは砂糖菓子のごとく、粉々に砕け散った。





歩いている内に本郷の体力は完全に回復していた。
腹の傷も完全にふさがっている。
改造された本郷の肉体は生物の常識を超えた回復力を得ていた。
これならば足を早めても問題は無いだろう。
ちょうど目標も定まったところだ。
しかも、偶然だがこれまでの進行方向と同じくそれは南にあった。

本郷の取る進路はまずテレビ局へ行き、そこでテンマの偽者を倒す。
賀来を助けるのに間に合う蓋然性は薄いが、何もしないまま諦めるつもりなど毛頭ない。
その後東の都市へ向かう。
そして天野雪輝を捜して、どんな人物か確かめる必要が有る。
この進路なら、おそらく由乃の取る進路とも大筋で合致するだろうから
どこかで由乃を掴まえられるかもしれない。
いや、絶対に逃がさないと己に誓う。
由乃は確かに狡猾な相手だ。
あるいはプリキュアと言う、強大な力を得たかも知れない。
それでも本郷は仮面ライダー
しかも最も古い、伝説の一号なのだ。
仮面ライダーは必ず悪に打ち勝つということを、由乃に思い知らせて見せるまでだ。

(俺がこれまで……どれだけ悪の陰謀を打ち砕いてきたと思う。……お前にも思い知らせてやる、我妻由乃)
0142代理
垢版 |
2011/01/10(月) 20:54:09ID:5yCJIwG9
【G-6/市街地:朝】

【本郷猛@仮面ライダーSPRITS】
[属性]:正義(Hor)
[状態]:健康
[装備]:ベレッタM92@MONSTER
[道具]:基本支給品一式、支給品1〜3(本人確認済)、善吉の首輪
[思考・状況]
基本行動方針:仮面ライダーとして力なき人々を守る
1:H-4のテレビ局に行きテンマ(の偽者)を倒し、賀来を救出する
2:東南の都市へ行き天野雪輝を捜す
3:全ての善を守り、全ての悪を倒す
4:首輪を解析する
[備考]
※参戦時期は次の書き手さんにお任せします

【F-4/市街地:朝】

【我妻由乃@未来日記】
[属性]:その他(Isi)
[状態]:健康、キュアドリームに変身中、強い苛立ち
[装備]:雪輝日記(レプリカ) 剃刀 バギブソン@仮面ライダークウガ コルトパイソン(残弾3/6) ピンキーキャッチュ@Yes!プリキュア5シリーズ
[道具]:基本支給品×4、支給品(確認済み)×2〜8 アストロライト液体爆薬入りの小瓶@現実×6 マッチ箱@現地調達
[思考・状況]
基本行動方針:ユッキー(天野雪輝)と共に生き残る。
1:ユッキーを探す。南下してテレビ局を迂回した後、東南の都市へ向かう。残りは愛でカバー!
2:Isiであるユッキーを保護し、ゲーム終了まで安全な場所で守る(雪輝の意思は問わない)
3:邪魔をする人間、ユッキーの敵になりそうな奴は排除する。殺人に忌避はない。特に本郷猛は必ず排除する。
4:最終的にユッキーが生き残るなら自己の命は度外視してもいい。
[備考]
※雪輝日記(レプリカ)
ユッキーこと天野雪輝の未来の行動、状況が逐一書き込まれる携帯電話。
劣化コピーなのでごく近い未来しか記されず、精度はやや粗い。更新頻度が落ちている。
※プリキュアに変身できるかどうかは、後の書き手にお任せします。

【支給品紹介:アストロライト液体爆薬@現実】
常温で液体である爆薬の一種。
爆薬としての威力はそれほど高くないが、安定性が高く不揮発性であるため、爆発力を維持しやすい。
何かにしみこませた状態での爆破も可能であり、上手く使えば建物を倒壊させることも可能だろう。

代理投下終わりです。感想はのちほど
0143創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/01/22(土) 11:06:34ID:gHI8Y17y
保守
0145禁忌惹厄アフター・ラジオ  ◇GOn9rNo1ts 代理
垢版 |
2011/01/22(土) 20:53:43ID:SQfGhKmT

欣喜雀躍
意味……雀が飛び跳ねるように非常に喜ぶこと。



◇ ◇ ◇



『魔法少女が殺し合いに巻き込まれた場合、どうなるのか。その一例』



高町なのはは、超一級の魔道士である。
杖から放たれる魔法は時に真っ直ぐに的を貫き、時に逃げる敵を的確に追尾する彼女の矛である。
圧倒的魔力から発せられる障壁は何人たりとも寄せ付けず、身に纏う白き衣装は魔力で構築された彼女の盾だ。
自由自在に編まれる魔術の縄は相手の動きを封じ、風を切り空を飛び、彼女自身が獲物を決して逃さぬ鷲の如き機動を成す。
一般人から見て余りある強さを持つ彼女はその実、同じ魔道士から見てもエース(憧れ)なのである。
今までに扱った事件は少ないものの、ジュエルシードや闇の書と言った管理局でも手に余る代物を相手取った戦績は素晴らしいの一言に尽きる。

さて、ここまで読んで常識的に考えて欲しい。
この『高町なのは』が『偶然魔法を手にした若干10歳の少女』であると、誰が信じられるだろうか。
常人が十何年も、もしかすると何十年も経験を積み、努力を重ね、漸く至る境地に、僅か一年足らずで辿り着いたと、誰が信じるだろうか。
専門的な訓練も碌に受けずAAAクラスの魔道士と互角に戦い、勝利さえ収めてしまう。
彼女の世界において魔法は資質の要素が大きいとはいえ、これは異常だ。異常に過ぎる。

その活躍を目の当たりにした人は、幼き彼女を羨望の対象として『天才』と呼ぶだろう。
為す術無く追い詰められた敵は、小さな彼女を恐怖の対象として『悪魔』と呼ぶかもしれない。

いずれにせよ、高町なのはは魔法絡みの事態に出張る時、『10歳の弱き少女』ではいられない。
『頼れる強者』として仲間を守り、問題を排除し、事態を解決するべき人間となるのだ。

ならなければ、いけないのだ。

さて、ここで焦点を当てていきたいのは彼女の魔法杖、デバイスに搭載されている『非殺傷設定』である。
魔術で相手の力だけを奪い文字の如く『殺傷』を引き起こさない、何とも便利で夢のあるシステム。
10歳の元一般人の少女が数々の強敵と戦えてきたのは、この装置によるものが大きいと考えられる。
いくら力があっても、どれだけ多くの魔法が使えても、それを使う『意志』がなければ意味がない。
そして意志は、戦いという名の奪い合いにおいては『覚悟』に上書きされる。
相手から何かを奪う覚悟、何かを奪われる覚悟。
人類有史以来、その思いなしで戦いに臨む者はただの愚か者か狂人と相場が決まっている。
高町なのはにも覚悟がある。並みの大人よりもよほど物事を考えている少女が、おちゃらけて戦いを行う筈はない。
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2011/01/22(土) 20:54:25ID:SQfGhKmT

しかし、その覚悟は『何かを奪われる覚悟』だけである。
もっと言えば、『己が傷つく事に対する覚悟』のみである。

『何かを奪う覚悟』に関しては、彼女は路地裏で喧嘩を行う不良少年よりも疎い可能性すら有る。
原因は言うまでもない、件の『非殺傷設定』である。
彼女はどれだけ危険な状態に有ろうと、決して非殺傷設定を解除しない。
意地を張るように、必ず非殺傷設定で強敵に立ち向かう。
その甲斐あって、なのはがいくら強い攻撃を行おうと相手の手足は吹っ飛ばない。目や耳を失う危険性もない。

命を奪うことなど、あり得ない。

これが、十歳の少女が戦いに全力をぶつけられるタネである。
なのはは大事なものを失う悲しみを理解できる。大切なものが壊れてしまう苦しみも想像できる。
だから、強い。悲しみを知る人間は強くなれる。優しくなれる。
しかし彼女は、相手のとり返しのつかないものを奪ってしまうことを肯定し、戦っているわけではない。
頑なに襲ってきた相手の戦闘力だけを奪い、拘束しようとする。道徳の見本となるような人間だ。

殺し合いという名の生き地獄に身を投じるには、彼女はあまりにも優しすぎた。
『命を奪う覚悟』を持つには、齢十歳ほどの彼女は、あまりにも幼すぎた。

そして彼女は、大切な誰かを奪われることを、命の脆さを、あまりにも知らなかった。
瞬き後に隣の誰かが吹き飛んでいるような、地獄の戦場を体験した傭兵ではなく。
捨て駒のように扱われ消費として明記される、軍隊の部品となる兵士でもなく。
達観しきった少女はそれでも、平和な国の学校に通う、どこにでもいる少女のままで。
戦いを知る若きエースであっても、殺し合いを知るアウトローでは、なかった。


だから。

「…………あ?」

誰かが死んだとき。

「あ……あ、あ、あ、あ、ああああぁぁ?」

……もしくは。

自分が、殺してしまったとき。

0147禁忌惹厄アフター・ラジオ  ◇GOn9rNo1ts 代理
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2011/01/22(土) 20:55:48ID:SQfGhKmT

「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」




高町なのはの中で、決定的な何かが、ぷつんと切れた。



◇ ◇ ◇



『人間は、自分以外が何を考えているのか分かるのだろうか。その一例』



昇り始めた真っ赤な太陽が、地上を光で隅々まで包み込む。
彼女の不在時に我が物顔で世界を乗っ取っていた暗き闇は、今や建物の影でこっそりと身を潜めていた。
身を切るような風がひゅうと、一際強く吹き付ける。
それに釣られて、歩道と車道の間に置かれていた花壇の中で、動きがあった。
咲き誇る濃紫のヒヤシンスの群れだ。彼女たちは小さな肢体を精一杯振り、踊る、踊る。
右に左に、揺れる、揺れる。時に立ち止まり、次の瞬間にはスキップを刻む。
全ては、風の気まぐれ通りに。花たちに抵抗することなど、出来ようもない。
そして、あまりに強く吹き付けられたため、一茎の乙女がへなりと、折れた。
折れたまま、彼女は二度と踊れはしなかった。風は残念そうに溜息をつく。
我関せずという風に、他のヒヤシンスは黙々と踊り続ける。
脱落した軟弱者には興味がないとでも言うように、踊り続けていた。


清々しい朝だった。


「彼女たちは、どうですか」
「ぐっすり眠っていますよ。よほど堪えたんでしょう」

日本国民なら大多数が知っているであろう、とあるファーストフード店に、二つの声が響く。
いかにも模範学生、と見える高校生ほどの少年一人。
落ち着きを持った、どこにでもいそうな優男一人。
夜神月(ライト)、高遠遙一。二人のSetは、テーブルを挟み対面に座っている。
そうして少しの沈黙の後、高遠の方が問いかけを切り出した。
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2011/01/22(土) 20:56:29ID:SQfGhKmT
「12人。月君、あなたはどう思いますか?」
「どう、とは」

薄い笑みを貼り付けて質問を投げつける高遠に、月はそっけなくその質問を返す。

「分かっているはずです。これは予想以上に……多い数だと」
「そう、ですか」

高遠は「良いですか」と前置きをしながら話を続ける。
月は、それを何処か遠くを見るように聞いていた。

「そもそものルール……三つのグループによる殺し合い。
私はこれを聞いた当初、事態はもっと膠着するものだと思っていました」
「何故です?人間なんてものは、一般的に考えられているよりも、遙かに弱い。
殺さなければ生き残れないと分かれば、あのワカメのような愚か者も現れるでしょう」
「ええ、そうです。しかし、それは『殺すべき者』がはっきりしている場合です」

まるでその言葉を待っていたかのように――実際、そう来るように予期していたのだろうが――高遠は淀みなく会話を続けていく。
身の入っていない月を置き去りにしながら。

「この実験が最後の一人になるまで殺し合え、という内容であれば12人という参加者の五分の一を占める死亡者の数にも納得できます。
しかし、これはチーム戦です。それも、誰がどのチームかは知らされていない。
むやみやたらに他人を襲っていけば、自分の首を絞めることになりかねません」
「だから、まずは様子見にまわる人間が多い、と?」
「ええ。ワカメ……間桐慎二のような人間ばかりだと、そもそもチーム戦にして『実験』する意味がありませんから」

参加者が間桐慎二のような人間ばかりだとすると、そもそもチームなんてものは必要ないだろう。
最後の一人まで殺し合え。それだけで良かったはずだ。
だが、実際は月や高遠のような頭の回る人間。
それに、イカ娘や高町なのはのような、人を傷つけることを良しとしない人間も参加している。
高遠や月はお互いに話していないが……知り合いであるLや金田一、それ以外の人間も、簡単に殺し合いに乗るとは考えづらい。
あくまでもこれは頭脳戦……理知的に殺し、論理的に生き残るゲームだと、高遠は考えていた。

「しかし、実際は12人。5分の1ほどの参加者がわずか6時間で死亡した。
単純に逆算すればですが、12人は『短絡的に殺しに走る人間』がいるということになります」

残り人数は48人。その中の4分の1は人殺し。
頭脳戦と言うからには、今は潜み機会を窺っている者もいると考えられる。

「幸運なのは、大体その人殺しの正体が……というには曖昧模糊ですが、分かっているということです」
「Setグループの人間、ですね」
「その通り。それは殺された人間の割合からも推測できます」

退場者のグループ分けはHor2名、Set1名、Isi9名。
圧倒的にIsiが多い。それに比べ、HorとSetは明らかに少ない。
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2011/01/22(土) 20:57:27ID:SQfGhKmT
「ただ生き残ればよいIsiが大勢死に、ただ殺せばよいSetの死者はわずか一名。
そしてSetは自分たちのグループ以外の人間を全員殺さなければ生き残れない。
私達の考え通り、Setに危険な人物が多く存在する、と考えるのが、一番筋が通ります」
「逆にIsiには、そのSetの攻撃から身を守ることが出来ない人間……弱者が多いと言うことにも、なる?」
「さすがは月君です。話が早くて助かります」

稼働していたドリンクバーの機械から二杯の透明なグラスに、紅茶が注がれる。
それを両手に持ち、席にゆっくり戻りながら、高遠は口を休めることはない。

「Horも時間内にIsiと共に生き残れば良いわけですが、彼らは二人が減っただけです。
これは、HorはIsiよりも強い人間が多いと言うことでしょう。
これならば、死んだ一人のSetは、Horの人間を襲い返り討ちに遭ってしまった、という推論も出来ます」
「主催者が僕たちのスタート地点を任意に操作した、ということも大凡はっきりしましたね
恐らく、速攻で殺しに走るようなSetの危険人物達が『共食い』しないように、ある程度配慮して配置しているはずです。
ついでに、殺しやすいIsiの近くにSetを配置して、ということにもなるかもしれません。
これなら、こんな広大なフィールドにおいてのIsiの大量死亡にもある程度納得がいきます」
「ならば私達の出会いも必然に近いものだった、という発想にも結びつきますよね。
全てが主催者の掌の上、という暗い考えも頭に浮かんでしまいますよ。フフフ」

冗談めかして笑う高遠が差し出したカップを、月は受け取りながらも口をつけようとはしない。
代わりに、ペンを持ちメモ帳に新たな一文。
・主催者は任意に参加者を瞬間移動させることが出来る。精度は不明だが、ある程度確かなものらしい。
受け取ったコップをテーブルにカタリと置きながら、対面に座る高遠に視線を向ける。

「だけど、それなら何故主催はわざわざ殺すためにIsiを参加者にしたのか、と言う点が気になります。
Horの勝利条件にはIsiの生存も含まれている……つまりHorの人間の危機感を煽るため……?それとも……」

考え込むような表情の月の顔が、何かに気付いたように一点に注がれる。
そこには、相も変わらず目を細め微笑んでいる、高遠の姿があった。
月は彼を見つめ、小さく目礼。感謝の言葉を紡ぎ出す。
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2011/01/22(土) 20:58:21ID:SQfGhKmT
「ありがとうございます、高遠さん」
「いえいえ、礼には及びません。どうぞお好きなときにお飲みください」
「……いえ、飲み物の件ではなく」

月は完璧な微笑を、完璧すぎる微笑を、高遠に見せた。

「貴方の気遣いに、ですよ」
「何のことでしょう」

白を切る高遠に、月は少し照れくさそうに高遠の「気遣い」を示す。
学校の先生に答えを発表する生徒のように。

「貴方は気付いていたはずです。呼ばれた死亡者の中に……僕の身内がいたことを」

暗いトーンが、混ざる。

「夜神粧裕。僕の……妹です」

月は目を伏せ、愛すべき妹のことを想った。
活発で、裏表のない性格。その明るさは多くの人を笑顔にしただろう。
その一方で勉強が苦手で、良く月に教わっていた。手がかかったがそれ故に可愛かった。
そんな彼女が、死んだ。たった六時間で、彼女の魂はこの世から消滅してしまった。

「予想は、していました。あいつがこの場で生き残れる可能性は、非常に少ない。
戦う力もないし頭も回らない。間桐慎二のような超人的力を持っていなくとも、容易にねじふせられる。
正にIsiに相応しい、生け贄でしょう」

それでも、と。
月は声を絞り出す。顔に浮かぶのは、彼がこの場で始めてみせる表情――悲しみ。
涙を流さずとも、身を削るような感情の奔流が月を支配していると見て取ることは高遠には容易だった。

「生きていて、欲しかった……!」
「月君」

そこで重く一息ついた月は、高遠の言葉を待たず、更に己の推理を口にする。
そうすることで、安寧が得られるとでも言うように。
己の苦しみを、紛らわせようとするように。
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2011/01/22(土) 20:59:37ID:SQfGhKmT
「でも、僕は何事もなかったようにイカ娘やなのはちゃんのメンタルケアに、貴方と一緒に当たった。
戦闘力のある彼女たちが機能しなければ、僕たちがこれから生き残れるかは分かりませんでしたから。
…………いえ、そんな論理的な理由ではなかった。
僕は彼女たちにも貴方にも、見せたくなかったのかもしれません。
大声で泣き怨嗟の声をあげる、僕の愚かで、醜い姿を」

彼女たちを助けることでちっぽけなプライド、自尊心を保とうとする。
自分よりも弱い者の救済に専念することで、傷だらけの自分を一時でも忘れる。
本当にメンタルケアをされていたのは、僕の方かもしれない。
滑稽でしょう、と月は自嘲気味に笑う。

「しかし、彼女たちが寝付いた今、僕が縋れるものはなくなってしまった。
僕は妹を失った悲しみと、加害者や主催者への怒りとに苛まれ、それを外に出さないように心を砕いていた。
貴方へのリアクションもさぞかし間抜けなものだったでしょう?」
「……それで?」
「そのことを気にかけた貴方は、わざわざ海の家で行った共通認識の確認を、再度行った。
放送という新しいファクターから得られた情報、それを利用した推論の補強も。
だめ押しに、Isiの存在意義に疑問が向くように会話を誘導した。
全ては……僕の心を妹の死からそらすため。違いますか?」

心の傷は、目に見えない。
一晩で消えてしまうものもあれば、死ぬまで残るものだってある。
はっきりと完治させる治療法など存在しないし、個々人によって症状も千差万別。
だけど、そんな難しい傷も、痛みを緩和する方法ならばだいたいの人は知っている。
すなわち、意識を別の所に向けること。簡単に言えば、気晴らしだ。

「貴方はイカ娘となのはちゃんのメンタルケアを終えた後、次は僕の番だと考えた。
だけど、僕は彼女たちのように慰められても効果が薄いと感じ、僕の得意な『考察』をメンタルケアの代用法とした。
こんなところでしょう。お恥ずかしながら、ほとんど全てがただの想像ですけどね」

月は、挑戦するように、解答を突きつける。
そう言われた高遠は、笑みを濃くしながら。

「ご想像に、お任せします」

と、柔らかく答えたのだった。
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2011/01/22(土) 21:00:12ID:SQfGhKmT
その後、月と高遠は今後の方針について話し合った。

「彼女たちは私達の生命線。無理だけはさせたくないものです」
「そうですね。もう少しだけでも、休ませてあげるべきでしょう」

なのはとイカ娘は、感情の整理のために二時間ほど寝かせておくべきだということ。
その間は動けないため、出来る限りは体力の回復に努めるべきだということ。

そして、一番の問題。
放送が行われたここから程近いテレビ局に対し、どうアプローチを取るべきか。
行ってみるか。それとも行かないのか。
そこで出会うだろう人物に対し、いかなる反応を取るべきか。または取らないべきか。
二時間という、少なくない間を空けて行く際のメリット、デメリットetc……。

「考えるべき懸案は山のようにあります。月君、貴方の知恵も、是非ともお借りしたいところですね」

「僕のような若輩者でよければ、いくらでも」

二人はニコニコと笑みを被せ、言を重ね、議論を続けていく。
端から見れば、優等生が放課後に先生と話し合っているようにも見えたかもしれない。
しかし、彼らの本性とお互いの目的を知れば、知るほど。
彼らの談笑は、不格好なものに感じる、かもしれない。
夜神月はそのような意図を持って、己の妹のことを明かしたのか。
高遠遙一はどのように考えて、月との対話を望んだのか。

全ては全て、現段階では真っ暗な闇の中。
私達は誰かの心情を推し量ることは出来ても……理解することなど、出来ないのだから。
だけど、これだけは言っておこう。
彼らが、互いの害意に気付いている彼らが、額面通りのやりとりを行っていたはずがないと。

キラと地獄の傀儡師の化かし合い。騙し合い。
それはずっとずっと続くのかもしれないし……次の瞬間には、決着しているかもしれない。
ここまでの会話全て、彼らの計画(シナリオ)どおり。
ここから先、どちらの思惑が上回るかは……神のみぞ知る。

さて。ご静聴ご静聴。

敵意を隠し本音を呑み込み、見えない凶器で互いの背中を刺し合いっこするアソビ。
十手先を読み百手先を予測し、意味と無意味をドロドロに混ぜ合う、悪人同士の静かな頭脳戦。

はじまり、はじまり。
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2011/01/22(土) 21:01:01ID:SQfGhKmT


◇ ◇ ◇



『人間に近しい知性を持ったイカは夢を見るのか。その一例』



相沢栄子が、死んだらしい。

『月、今の声はなんだったのでゲソ?』

イカ娘が全く与り知らぬところで。
イカ娘が呑気にエビカレーを食べている最中に。
イカ娘が心強い仲間に囲まれている時に。
イカ娘がワカメと戦っている間に。
イカ娘は生きている、のに。

あの相沢栄子が、死んでしまったらしい。

『月……そういう冗談は笑えないでゲソよ?』

死。人間界に疎いイカ娘でも、その概念は理解している。
いや、のほほんと生活している大多数の人間達に比べて、彼女は海の中で弱肉強食という世界を生き抜いてきたのだ。
死、などは常にありふれたものであり、サメなどの外敵に襲われ死を覚悟したことも一度や二度では済まないだろう。
だが、しかし。

『おかしいでゲソ!そんな、のは……おか、しい……ゲソ』

相沢栄子は、そんな悲しいモノとは遠いところに存在するはずだった。
海中でサメに襲われることもなく、地上で平和を享受して生きるただの人間であるはずだった。
海の家で給仕をして、掃除をして、会計をして。
一緒にテレビを見て、ご飯を食べて、同じ部屋で眠って。
馬鹿にされて、馬鹿にして、共に笑って、共に生きて。


そんな相沢栄子が、もう……いない?


こちらを見て無邪気に笑う彼女の顔が。
こちらを見てげんなりする彼女の顔が。
こちらを見て驚きを露わにする彼女の顔が。
こちらを見て「おはよう」と言う彼女の顔が。
こちらを見て「おやすみ」と言う彼女の顔が。
頭の中で、全て真っ赤に染まった。
全身が黒く包まれ、散り散りと霧散。
残ったのは、空白。
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2011/01/22(土) 21:01:40ID:SQfGhKmT
痛い。何処かが痛かった。
ズキズキと痛いのは頭?
チクチクと刺されているのは顔?
ポッカリと穴が開いているのは身体?
ギシギシと軋みを挙げるのは手足?
それとも……それともそれら全部の苦痛は、胸の内に隠されている小さな心(ハート)からやって来ているの?
痛い。苦しい。どこもかしこも張り裂けそうだ。
目尻から溢れ出す大量の液体と、鼻から漏れる粘着質のイカスミが、止まらない。
身体中が熱くて寒い。たけるから教えて貰った癇癪玉と、海の家にあるかき氷が同時に襲いかかってきたようだ。
前後不覚。左右不安定。内と外の区別も付かない。
ぐるりぐるりと、世界が回る。
イカ娘は堪らず悲鳴を上げる。


「助けてでゲソ!」


どうしたことだろう。
さっきまで一緒にいた夜神月も、高遠遙一も、高町なのはも、ここにはいない。
誰かいないか。誰かいないか。見渡せど見渡せど、誰もいない。何もない。
ただ、何もないという空間だけがあるだけだった。
色を説明すれば透明と言うほか無く、カタチを説明すれば永遠、と言う言葉しか浮かばない。
そんな場所に、一人ぼっち。

怖い。

当然のように湧き出てくる感情。恐怖。
気付いた時には、イカ娘の足は動き出していた。
夢中になって得体の知れない霧中を駆け回る。
誰かいないか、と声を張り上げ。
返事をしてくれと、懇願し。
辿り着いた、何もないところに。


ソイツはいた。


仮面。特徴はそれだけで事足りる。
テレビでしか見たことのない、踊るようなステップを刻み。
テレビでも見たくはない、怪奇極まりない容貌を見せつけ。
その怪人――先程会ったVとやらは現れた。
かつり、かつりと不気味に足音を鳴らしながら、彼(?)はこちらに向かってくる。

(逃げなきゃ)

全身が、コイツが危険だと叫んでいる。
第六感。獣の勘とでもいうような非科学的産物が、コイツの全てを否定している。
サメに睨まれたときの百倍は怖気が走る。
千鶴の怖い笑顔に匹敵するほど、心臓が縮み上がる。
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2011/01/22(土) 21:02:29ID:SQfGhKmT
(逃げなきゃ)

冷や汗が止まらない。
足が震え、立っているのもままならない。
このままだと崩れ落ちそうなので、そうなる前に……足を動かした。
逆走だ。来た道を息を切らし更には切れ切れさせ、外敵から逃げ惑う。
はあ、はあ、と必死になって足を動かし、世界の果てまで逃走する。
今の彼女は、地上を侵略するために現れた海からの使者などという大仰なものではなかった。
ただの、臆病風に吹かれた子供だった。

「助けてでゲソ!」

二度目の叫び。
今度は、中の痛みではなく、外からの攻撃のため。
首をギリギリ言わせて振り返ると、Vはつかず離れずの距離を滑るように追走している。
早苗に追われる時とは比べものにならない恐れが、心を支配した。
追いつかれたら、どうなってしまうんだろう。
手に持ったナイフで切り刻まれるのだろうか。
その後は大きな大きな鍋に放り込まれ、焼かれるのだろうか。
更にその後は、仮面を外し狂気の顔を見せる男の口の中で……クチャクチャと、咀嚼されてしまうのだろうか。

悪夢の発想は連鎖し、連結し、無限大に大きくなっていく。
捕まってたまるか。こんなところで死んでたまるか。絶対に逃げ切ってみせる。
そんな決意を嘲笑するかのように、膝がガクガクと笑う。呼吸がままならない。
終わりの見えないデッドレースはイカ娘の体力を容赦なく奪い、精神を徐々に摩耗させていく。
もう、駄目だ。絶望が身体と心の隅々までを巣くって行く。それでも、走りは止まらず。
最早歩みとなっていることにも気付かぬまま、鉛のように重い手足を必死に動かして。
そうして。
ぜいぜいと荒い息を吐きながら何百回目の小さな一歩を踏み出そうとして、彼女は転けた。

「あっ」

ずてーん、という擬音がお似合いな、見事なこけっぷりだった。
顔を地面にびたーんと張り付けて、そのまま動かない。
いや、動けない。とうの昔に限界は超えている。
大きく息を吸い、吐き、呼吸を整え、恐る恐る顔を上げると。
すぐ目の前に、仮面が有った。
色々なものが、瞬時に麻痺した。

怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い怖い怖い怖い怖い!

壊れた機械のように何度も何度も堂々巡りを繰り返す思考の渦の中で、イカ娘は再三叫ぶ。

「助けてでゲソ!」

喉がかすれて、一回目に比べると全然小さな声しか出ない。
絶望に犯されて、二回目と比べると全然希望を抱けやしない。
そして、やっぱりいつも通り、叫びは無の空間に消えていった。
何事もなかったかのように仮面の男、Vはナイフを振り上げて。
イカ娘は抵抗する力も意志もなく、ぎゅっと目を瞑る。

(せめてもう一度、エビをお腹いっぱい食べたかったでゲソ……)

昔の偉い人はこう言った。
二度あることは三度ある、と。
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2011/01/22(土) 21:06:58ID:SQfGhKmT

だけど。




「うちのイカ娘に――――――」




昔の偉い人は、こうも言った。




「何しとんじゃボケナス―――――!!!」




三度目の正直、と。


「えっ……」

目を開くと、そこにいたのは。

小さな相沢たけるでもなく。
大きな相沢千鶴でもなく。
海を守る同士、嵐山悟郎でもなく。
勿論、長月早苗でも、シンディーでも、斉藤渚でもなく。
3バカトリオ……はあり得ないとして。


「え、え、えええええ」


「よっ、大丈夫か、イカ娘」


「栄子――!」



相沢栄子が、そこにいた。



仮面の男を蹴り飛ばしたそのままの姿勢で、不敵に笑い。
彼女はヒーローのように自信満々に、こちらに歩み寄る。
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2011/01/22(土) 21:09:47ID:SQfGhKmT
「まったく……お前の触手があればあんなのくらいちょちょいのちょいだろうが」

「そ、そんなことより、本当に栄子なのでゲソか!?」

「お前の目は節穴か?どうみたって私は私だろ?」

「ほ、本当に、本当に本当に本当に、栄子なのでゲソか?」

「しつこい!」

突っ込みが心地よい。怒った顔を見ると、どこからか元気が沸いてくる。
その元気を推進力に変え……イカ娘は相沢栄子に突撃した。タックルだ。
ぽすりと、些か控えめな胸の中に飛び込む。そのまま身体を腕でロック。
驚いて固くなった栄子の身体を、これでもかというようにきつく抱きしめる。

「わ、わ、わ、わ、どうしたよいきなり」

「だって、栄子は、栄子は、栄子は……死んだって……!」

かすれた涙声で、認めたくなかった事実をはじめて口にした。
怖かった。次の瞬間に栄子が消え失せてしまうのではないかと。
怖かった。今ここにいる栄子が、お化けの類であると知らされるかもしれなくて。
怖かった。全ては自分の妄想であり、栄子はイカ娘の生み出した幻想なのではないかと。
でも。

「はあ?何言ってんだ気色悪い。栄子様の華麗なキックを見てなかったのかよ。
それとも足がある欧米タイプの幽霊かあたしは。こちとら混じりっけ無しの日本人だっての」

「本当に本物のなま栄子でゲソー!」

先程までとは違う種類の涙が溢れてくる。止まらない。
黒いイカスミの鼻水が栄子の服に付着するが、無視する。
栄子に言われるまでもない。彼女の身体は温かくて、柔らかくて、それがどうしようもなく気分を高揚させて。
あまりに興奮しすぎて、イカ娘の十本の触手が彼女の身体を巻き取ってしまった。
栄子の身体のどこかしこも、ぎゅっと締め上げる。もう離さないと、力を込めた。
ギャアという男前な悲鳴も、今は生を示す貴重な証拠に他ならない。

「く、苦しいって!」

「約束して欲しいでゲソ!」

「な、何をだよ……」

「もう、もうどこにも行かないって!」

「はあ?」

「ずっと一緒にいるって、約束して欲しいでゲソ!」

「意味が良く分からんが……」


あたしはどこにも行かないよ。
約束する。
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2011/01/22(土) 21:11:11ID:SQfGhKmT
その言葉が、エビをたらふく食べた時よりも、嬉しくて。
イカ娘は満面の笑みでもう一度、相沢栄子を強く二本の腕で抱きしめた。
薄い胸から、心臓の音が伝わってくる。ドクンドクン、ドクンドクン。
生きているって、素晴らしい。


「ほら、いい加減離れろ。さっさと帰るぞ」

「何処にでゲソ?」

「『海の家 れもん』に決まってんだろうが。みんな待ってる」

「…………たけるも?」

「当たり前だろうが。ほら、とっとと歩く歩く」


何か大事なことを、とてもとても大事なことを忘れているような気がしたが。


イカ娘は、頭のもやもやを振り切りながら、相沢栄子の隣に並んだ。
そんなことよりも、彼女の顔を見ながらスキップをすることの方がよっぽど楽しかったからだ。

「何時まで笑ってるんだよ、頭でも打ったのか?」

「私は今、笑っているのでゲソか?」

「ああ、何が面白いのかは知らんが、笑ってるよ」

「それは良いことでゲソ!ほら、栄子も一緒に笑わなイカ!」

「理由もないのに笑えるか!」

そう言いながらも。
相沢栄子も、気付いているのかいないのか、笑っていて。
イカ娘はそれを見て、更に笑う。


ほら、海が見えてきた。
空は青く、波は白く、砂浜はギラギラに輝いていて。
毎度おなじみの、大きいとは言えない、でもとっても素敵な海の家、れもんが彼女たちを出迎えてくれた。
水着の人間共の群れを足早に駆け抜けて、彼女達は家族、友人の許へと向かう。
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2011/01/22(土) 21:13:09ID:SQfGhKmT
「おかえりなさい、イカ娘ちゃん」

「イカ姉ちゃん、おかえり!」

「おお、イカ。どこ行ってたんだ?」

「イカちゃーん!今日私の家に来ない?イカちゃんがやりたがってた新作のゲームを偶然手に入れたの!」

「そんなところよりも、早く私の研究所に行きましょう。貴方のような宇宙人を連れて帰ることこそが私の……」


突っ込んでくる早苗を触手で張り飛ばし。
拉致しようとするシンディの顔にイカスミをぶっかけて。
悟郎に絡み、渚を驚かして、栄子に怒られて。
千鶴の作った料理を運びながら、たけるに声をかけ。
侵略へとは到底結びつかない。
だけども、輝かしい日々が。
イカ娘はとっても、とっても楽しかった。


「栄子」

「どうした、腹が空いてもエビはやれんぞ」

「ずっと、ずーーーーっと一緒でゲソからね!」

「はいはい分かった分かった……仕事中なんだから離れろ!早苗に見られたら何いわれ」

「あー!栄子がまたイカちゃんとベタベタしてる!イカちゃん、私というものがありながら……」

「私はお前のものではないでゲソ!」

「分かったから早く仕事に戻れ!って早苗はこっちに走って来るなー!」

「栄子!逃げるでゲソ!」
0160禁忌惹厄アフター・ラジオ  ◇GOn9rNo1ts 代理
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2011/01/22(土) 21:14:37ID:SQfGhKmT
早苗に追われ、栄子と共に砂浜を行く。
真夏のビーチが肌を焼き、潮の香りがふんわりと薫る。
ちらりと横を見ると、死にもの狂いで走る栄子の横顔が、眩しかった。
イカ娘は思う。以前よりも少しだけ、栄子に優しくしようと。
イカ娘は思う。以前よりも少しだけ、栄子とくっついていたいと。



「今日も、地上を侵略するのでゲソー!」



高らかに、高らかに。
威風堂々と、彼女は性懲りもなく己が目的を世界に晒す。


イカ娘の新しい侵略生活は、幕を開けたばかりだ。







そこでようやく、目が覚めた。
0161禁忌惹厄アフター・ラジオ  ◇GOn9rNo1ts 代理
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2011/01/22(土) 22:01:38ID:SQfGhKmT
◇ ◇ ◇



『親友一人と知り合い三人。どちらを取るべきなのか。その一例』



ぱちりと目を開けた。
視界に映るのは、ほの暗い天井。
顔を動かすと、すぐ横には水色の髪(触手?)と白い帽子。
ここは、ファーストフード店の従業員仮眠室だ。
そこまでを確認し、高町なのはは静かに息を吐いた。

「アリサちゃん」

小さく、言葉を漏らす。呟きは誰かに聞こえることもなく、儚げにカーペットに落ちた。
ウサギのように真っ赤に染まった目を、ごしごしと拭う。
いくら拭っても、高町なのはの気は晴れなかった。
むしろ、拭えば拭うほど、目の奥からじわじわと悲しみが襲ってきて。
声には出さぬまま、胸の痛みに耐えながら彼女は泣いた。

高遠遙一や夜神月がなんと言っていたかは、ほとんど覚えていない。
人の話はちゃんと聞きましょう、なんて当たり前の道徳は、なのはを襲った衝撃で紙風船のように吹き飛んだ。
きっと、慰めの言葉や希望的観測をつらつらと並べてくれたのだろうが、今はそんなものに全く価値を見いだせない。
悪い人間だ、と思う。
高遠も月も、放送で親しげな人物の名を聞いたのかもしれないのに、あの時のなのはを精一杯励ましてくれて。
それを全て聞き流している自分は、他人の好意の上に胡座をかいて、メソメソしていただけ。
そんな自分が、嫌になる。

「アリサちゃん」

アリサ・バニングス。高町なのはの親友。
なのは、すずかを引っ張るリーダーのようなポジションにいた、金髪の少女。
勝ち気で行動的で、でもとっても頭が良くてテストではいつも100点を取っていた。
喧嘩をすることもあるけれどいつも仲直りして友情を深め合っていた、高町なのはにとってとっても大切な人。
そんな彼女の名前が、先程死亡者として、放送で呼ばれた。
あまりにあっさりと告げられたその名前の意味を、なのはは何度も何度も頭の中で反芻した。
結論。アリサ・バニングスはもうこの世にはいない。死んでしまっている。
そう思った時は、まだ泣かずにいられたはずだ。
脳が、現実を現実として認識することがなかなか出来なくて、フリーズしていた。
出来事が、出来事として理解できない。理解したくない。
今の状況が、自分のものとして認識できない。認識したくない。
0162禁忌惹厄アフター・ラジオ  ◇GOn9rNo1ts 代理
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2011/01/22(土) 22:03:22ID:SQfGhKmT
心配そうに声をかける夜神月も。
声を挙げて泣いているイカ娘も。
こちらの頭を撫でる高遠遙一も。

高町なのはは、現実として受け入れることが、出来ない。
どこか向こう側の世界をモニター越しに見ているような錯覚が、彼女を襲う。
ぼんやりと、ここに来て会った彼らがフェードアウト。
代わりに網膜に映るのは、幸せな過去。
アリサちゃんとすずかちゃんと、お弁当を食べている。
アリサちゃんとすずかちゃんと、一緒に授業を受けている。
アリサちゃんとすずかちゃんと、沢山お話をしている。
アリサちゃんとすずかちゃんと、バイバイを言い合って。
ずっとずっとそんな日が続いていて。


でも。


『なのは君』


『泣きたい時には、泣いても良いんです』


駄目だった。
誰かに言われたその言葉が、トリガーとなって。
がくんと、甘い過去が遠くへと飛び去ってしまう。
遠い世界から、苦い現実へと引き戻されて。
一気に、泣いちゃ駄目だと思う間もなく、彼女の涙腺は崩壊していた。

それから先のことは、あまり思い出したくなかった。

「どうして、なの」

恐らく、その問いに対する答えなど、ない。

主催者がこんな実験を開催したから。
アリサ・バニングスがその参加者となったから。
彼女が力のない少女だったから。
彼女の近くにいた誰かが、殺人を犯せる人間だったから。

どの選択肢を選ぼうが、高町なのはがその解に満足することは、一生無い。
いくら論理的だろうと、納得など出来ようもないし、する気などさらさらないのだから。

「どう、して」

最初の問いを諦めて、次の問題。
ドロドロと焼き焦げた塊が、なのはの中で蜷局を巻いていた。
火の玉が中で暴れ回っているような錯覚さえ感じる、激情的な感情の渦。
絶対零度の悲しみを溶かし、身体を奥から熱くするそれは。
実験を開いた主催者に対する怒り。アリサを殺した加害者に対する憎しみ。そして。
己に対する、後悔。
0163禁忌惹厄アフター・ラジオ  ◇GOn9rNo1ts 代理
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2011/01/22(土) 22:04:22ID:SQfGhKmT
心配そうに声をかける夜神月も。
声を挙げて泣いているイカ娘も。
こちらの頭を撫でる高遠遙一も。

高町なのはは、現実として受け入れることが、出来ない。
どこか向こう側の世界をモニター越しに見ているような錯覚が、彼女を襲う。
ぼんやりと、ここに来て会った彼らがフェードアウト。
代わりに網膜に映るのは、幸せな過去。
アリサちゃんとすずかちゃんと、お弁当を食べている。
アリサちゃんとすずかちゃんと、一緒に授業を受けている。
アリサちゃんとすずかちゃんと、沢山お話をしている。
アリサちゃんとすずかちゃんと、バイバイを言い合って。
ずっとずっとそんな日が続いていて。


でも。


『なのは君』


『泣きたい時には、泣いても良いんです』


駄目だった。
誰かに言われたその言葉が、トリガーとなって。
がくんと、甘い過去が遠くへと飛び去ってしまう。
遠い世界から、苦い現実へと引き戻されて。
一気に、泣いちゃ駄目だと思う間もなく、彼女の涙腺は崩壊していた。

それから先のことは、あまり思い出したくなかった。
0164禁忌惹厄アフター・ラジオ  ◇GOn9rNo1ts 代理
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2011/01/22(土) 22:06:07ID:SQfGhKmT
「どうして、なの」

恐らく、その問いに対する答えなど、ない。

主催者がこんな実験を開催したから。
アリサ・バニングスがその参加者となったから。
彼女が力のない少女だったから。
彼女の近くにいた誰かが、殺人を犯せる人間だったから。

どの選択肢を選ぼうが、高町なのはがその解に満足することは、一生無い。
いくら論理的だろうと、納得など出来ようもないし、する気などさらさらないのだから。

「どう、して」

最初の問いを諦めて、次の問題。
ドロドロと焼き焦げた塊が、なのはの中で蜷局を巻いていた。
火の玉が中で暴れ回っているような錯覚さえ感じる、激情的な感情の渦。
絶対零度の悲しみを溶かし、身体を奥から熱くするそれは。
実験を開いた主催者に対する怒り。アリサを殺した加害者に対する憎しみ。そして。
己に対する、後悔。

分かっている。
何故、Vと別れた後に今の三人と共に行動しようと思ったのか。
甘かったのだ。何もかもが。
どんなに焦っていても、どんなに急いでいようと、心の何処かで。
友達が死ぬなんてことは、ないと思いこんでいたのだ。
己は間桐慎二に襲われたというのに、親友二人が同じ目に遭っている可能性から、目を逸らしていたのだ。
その場の雰囲気に流され、イカ娘と森を歩き。
月や高遠と言った年上達と一緒にいる安心感に、身を委ねて。


本来なら、足手まといな彼らなど放っておくべきだったのに。
0165禁忌惹厄アフター・ラジオ  ◇GOn9rNo1ts 代理
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2011/01/22(土) 22:08:01ID:SQfGhKmT
「なん、で」

そんな答えにあっさり辿り着いたことに、愕然とした。
普段のなのはならば絶対に至らない、エゴ的な発想。
自分さえ良ければそれで良いと言う、唾棄するべき考え。
理由はなんとなく察しが付く。放送前の問答のせいだ。
高遠に言われた言葉が、じわじわと身に染みこんでくる。


『貴女がそれほど強くお友達を案じていらっしゃるのなら――――何故、私たちは貴女に殺されていないんでしょうか?』

言われた意味が全く分からなかった。

『それは、貴女がお友達を本気で捜すつもりが無いからですよ』

信念とでもいう固い意志に、綻びが生じた。

『貴女は強い人だ。そしてそれゆえに、残酷だ』

その綻びはどんどん、どんどん広がっていって。

『貴女が出来もしない夢想で偽りの希望を持たせて、人の心を弄ぶような人物だったとは』

遂に、表層に顔を出した。

『貴女がそれを望むのなら、私はこの命を差し上げましょう』



わたしはあのときなにをかんがえていたの?



自分が、ガラガラと崩れていく。
正しいと信じ切っていた己の行動全てが、間違いだと断言されているよう。
奥深くに覆い隠していた、醜いものを剥き出しにされたよう。

「私は、間違ってなんかない……」

力なく、ほとんど消え入るように言う。
だって、人を殺すことは許されないし、自分だけじゃなくて皆のことを考えるべきだ。
自分は正しいことをしている。自分は間違っていない。そう言い聞かせてみる。
貴方は良い人間ですと、頭の中で天使がさえずった。
その言葉に心がこもっていないことは、自分が一番よく知っている。

反対側から、良い子にしていてどうなるの?と悪魔の囁きが心を刺した。
良い子にしていた結果がこれじゃないの?と。頭の中の彼女は意地悪げに微笑む。
また過ちを繰り返すつもり?と、悪魔は大声で笑った。
0166禁忌惹厄アフター・ラジオ  ◇GOn9rNo1ts 代理
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2011/01/22(土) 22:09:25ID:SQfGhKmT
「だけど、それなら……!」


「……どうすれば、良いの?」


悪魔はとっくの昔に解答を出している。
自分が必死に目を逸らして、見ないようにしていただけだ。
天使が、止めなさいと制止の声を挙げる。
正しくあれ、善くあれ、と高町なのはの倫理観と道徳観を呼び起こす。

「すずか、ちゃん」

だけど。
頭の中で、思い描いてしまったから。
今、何の力もないすずかが、酷い目に遭っているところを。
名前も知らない誰かが、彼女めがけて凶器を振り下ろすところを。
次の放送で、小さな背中が、また泣いているところを。
想像だけで、息が苦しくなる。胸がジクジクと痛む。
己の痛みならば、苦しみならば、耐えることが出来ただろう。
死ぬまで続くような責め苦に、それでも屈することはなかっただろう。
しかし、すずかのことを考えると、その覚悟はあっさりと砕け散る。



『貴女は殺し合いの中で何の力も無い少女が、友にどんな手段を使っても良いから助けて欲しいと
 ただ、そう心の中で願うことさえ許さないと仰るわけですね? それは非常に興味深い考え方です』


またも、高遠の言葉が奥深くまで突き刺さる。
彼の言葉は間違っているのか、それとも正しいのか。
自分の考えは本当に正しいのか、それとも、間違っているのか。
頭の中で、グルグルと正誤が揺れる。
彼の考え方はおかしいと、断言できる根拠があるのだろうか。
既に一人の友を助けることが出来なかった自分に、綺麗事を吐く権利などあるのだろうか。
失敗は自信の喪失に繋がり、絶対的価値を持っていたはずの己の意志が、ガクガクとぶれる。

このまま考え続けていると、頭がおかしくなってしまいそうで。
命と言う名の重圧に押し潰されかけた幼き少女は、希望に縋る。
そうすることで、最善の解が得られるとでもいうように。
己の内の天使に、己自身に、ゆっくりと問いかけた。


正しいことをしていれば、幸せはやって来るの?

己の信念を貫き通せば、大切なものを守れるの?

幸せも大切なものも、たった六時間で一人分失ってしまったというのに?

答えは、なかった。でなかった。
悪魔だけが、ケタケタと嘲笑っていた。
0167禁忌惹厄アフター・ラジオ  ◇GOn9rNo1ts 代理
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2011/01/22(土) 22:10:45ID:SQfGhKmT
「やらなきゃ」


自分の成すべきことを、頑張って頭の中で形にする。
それは、設計図のないお城を粘土で作ることに似ていた。
だけど、不鮮明で曖昧模糊とした頭の中の道筋を、何とか渡り終える。
見出したのは一筋の、光。無数の選択肢から選び取った、「一番良い方法」
でも、最善とは程遠く、最良とは言えない、選択肢。
イカ娘や、高遠や、月からは、同意を得られるとは思えなくて。
非難囂々。お前なんか仲間じゃないと、罵倒されるかもしれない。
それは、想像するだけで堪らなく辛い。
仲間だと思っておいた人達から、友達になった子から。
軽蔑の目で見られると思うと、想像するだけで吐き気がする。

「でも、私が、やらなきゃ」

アリサの顔を思い出して。すずかの顔を思い浮かべて。
はっきりと断言できる。自分がしたいことを。自分に出来ることを。
立ち止まることも大事かもしれないけど。考えることは必要だけど。
やっぱり、動かなきゃ、行動しなきゃ、駄目なのだ。
ベッドの中で暗く沈むよりも、やらなきゃいけないことがある。
弱気の虫が顔を出す前に、決意が鈍ってしまう前に、行動を起こす必要がある。
今この瞬間から動こうと思い、幼きエースは。


デバイスに、手をかけた。
0168禁忌惹厄アフター・ラジオ  ◇GOn9rNo1ts 代理
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2011/01/22(土) 22:11:35ID:SQfGhKmT
◇ ◇ ◇






「ゲ、ゲソォォォォォォ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」






「ひゃっ!?」


突然の奇妙な悲鳴に、心臓が飛び出したかと思った。
バクバク、バクバクと、高鳴る胸をおさえて深呼吸。深呼吸。
そっとベッドから上体を起こし、今の声が夢ではないことを確認。
目を見開いて隣を向くと、そこには、脂汗を流している同行者の姿があった。

「イカ娘ちゃん?」

返事はない。
ただ、件の主は苦しそうな顔で時折、手や足をジタバタさせていた。

(嫌な夢でも、見てるのかな?)

恐らく、これが演技でもなければ、そういうことだろう。
うなされる、という反応がぴたりと当てはまる。
見ていてとても可哀想だが、自分に出来ることなど何もない、と考えてしまった。
揺り起こしてあげるべきなのか。でも、そうして現実に戻ってきても……彼女がどう思うかは分からない。
暗い現実をずっとずっと生きていくのと、少しの間だけでもそこから逃れるのと、イカ娘はどちらを望むのだろうか。
行動に躊躇が生まれる。一挙一動が間違っているかもしれないと、恐怖が襲いかかってくる。

失敗を、怖がっている。

普段のなのはならば、こうはならなかっただろう。
相手にこっぴどく打ち負かされても、更なる高みを目指し己を研磨しただろう。
己の力不足を解消するため、いかなる努力も惜しまなかっただろう。
だが、この場では拳の振り上げた先に何もないし、何を頑張ればいいかも定かではない。
彼女は全てを見通す賢人でもなければ、ただ欲望に従うだけの愚人でもない。
少し周りよりも大人びた考え方の出来る、小さな女の子に過ぎないのだから。
魔法による戦闘ならばいざ知らず、殺し合いという舞台で心を揺さぶられて、平気でいられるわけがなかった。

「た、す」

でも。
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2011/01/22(土) 22:12:18ID:SQfGhKmT
「たす、けて……!」

イカ娘から必死に伸ばされた右手が、自分の方を向いた時。
何かを求めるような、懇願の叫びを聞いた時。


「あっ」


思わず、魔法少女はその手を握っていた。
あたたかい。汗で少し湿っている。
そして、小さく震えている。

「大丈夫、だよ」

それが自分の喉から出ているものだと理解するのに、数秒かかった。
迷う。こんな無責任な発言をしても、良いのかと。
自分に、こんなことを言う権利があるのかと。

「大丈夫だから」

でも、自分の心に嘘はつけなくて。
イカ娘の手を、両手でぎゅっと握る。
頑張って、と彼女にエールを送るが為に。
自分はここにいる、仲間はここにいる、と教えてあげたくて。

身体に、違和感。



「ふぇっ?」



まわりを見ると、彼女の身体にイカ娘の触手が迫ってきていた。
身をよじるも、イカ娘の手を離して良いものか、少しだけ悩んでしまった隙に。
全身を、水色に染められる。拘束するように、抱きしめるように。
0171禁忌惹厄アフター・ラジオ  ◇GOn9rNo1ts 代理
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2011/01/22(土) 23:01:05ID:SQfGhKmT
細い首許をなぞり、下の鎖骨を占領した。
年相応の薄い胸の部分を隠すように、触手が這っていく。
柔らかなお腹の部分を、二本できゅっと締め付けて。
捩った腰を逃がすか、と言わんばかりに襲いかかる。
その下、下腹部に進行をはじめた触手が、一本。
更に、剥き出しになっている右のふとももを撫でるように巻いていく。
くすぐったいなと思う間に、左足の方も絡め取られて。
最後に、左手も右手も、脇を通り付け根からグルグル巻きに。
高町なのはの肉体、侵略終了。

思わず実行犯の顔を覗くも、どう見ても眠っている。悪気はないようだ。
イカが寝ぼけるとこんな惨事になるのか、と他人事のように考えると、少しだけおかしみが沸いてくる。
イカ娘は眠っていても、まわりを癒してくれるオーラを発しているのかもしれない。

ふと気分を弛緩させると、急激に睡魔が迫ってきた。間延びした欠伸を一つ。
ずっとこのままでいたいと、このまま眠ってしまいたいと、思わず考えてしまう。
爆睡中のイカ娘から、こちらにおいでと手招きされている錯覚さえ覚える。
それは確かに、楽な道だろう。嫌なことは、眠ってしまって考えなければ良い。
本来、高町なのはくらいの年頃の少女には、それが許される事態だったのだ。

だけど、それが親友を助けるための道だとは、決して思えない。


「ごめんね、イカ娘ちゃん」


十本の触手は、思いの外簡単に外すことが出来た。
少しずつ、少しずつ、離れていく二人の身体。温かさが消えていく。
最初に握った右手を、名残惜しげにベッドに置く。
触手が動いたせいで乱れていた掛け布団を、そっと被せ直す。
身体は軽くなったはずなのに、気は重い。
それでも、友を救うためだと、ベッドから出ようとして。


「いか……」


「……イカ?」


「いか、ないでっ……!」


駄々をこねるように、眠ったままのイカ娘が苦しそうに手足を動かした。
直したばかりの布団がまたも、皺を作り歪んでいく。
また、少し、迷う。だけど、やっぱり無視することは出来なくて。
再び彼女の白い手を握り、寄り添うように小さな身体を近づける。
帽子で覆われた頭を愛でるように撫でて、優しく耳元で呟いた。


「大丈夫だよ。どこにも、行かないから」
0172禁忌惹厄アフター・ラジオ  ◇GOn9rNo1ts 代理
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2011/01/22(土) 23:02:23ID:SQfGhKmT
ずきんと、罪の意識が頭をもたげる。
眠っているとはいえ、苦しんでいる友達に嘘をつくことは、やはり辛い。
でも、このまま何もせずに無視することは、もっと辛かった。
結局の所、彼女は罪悪感を少しでも打ち消すために、事に及んだのかもしれない。
でも、そんなことは関係ないのだ。
結果として、イカ娘は苦悶の表情を安堵へと塗り替えて、深い眠りに落ちたのだから。
そこに、なのはの意志は汲まれない。行動のみが結果として現実に反映される。


そうだ。


大事なのは、過程ではなく結果だ。
何を思って状況を変革しようが、功績は刻まれるし、大罪は消せない。
大いなる世界に言い訳は一切通用せず、ゲームのようにやり直しなど出来るわけもない。
変わってしまった盤をひっくり返すことなど、それこそ神にしか出来ない芸当なのだから。


「ごめんなさい、夜神さん。ごめんなさい、高遠さん」


「ごめんなさい、イカ娘ちゃん」





だからこそ、彼女は――――



◇ ◇ ◇



『悪魔は実在するのか否か。その一例』




熱い。

ああ、熱い。
0173禁忌惹厄アフター・ラジオ  ◇GOn9rNo1ts 代理
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2011/01/22(土) 23:03:16ID:SQfGhKmT
身体が蝋燭のように、熱かった。
芯から火が付き、ぐずぐずに溶けながら生きている。
そんな感触を、馬鹿らしいと思いつつも否定できない自分がいた。
さながら、地獄の釜でゆでられているようだ。
さながら、獄炎に身を焼かれているようだ。
火を噴くように呼気が漏れる。
真っ赤な色がチロリチロリと、目の端に浮かんでは消えていく。
あまりの熱さにとても耐えられず、何も考えられない。
私は誰だ。ここはどこだ。何もかもが曖昧だ。
ぼうっとした思考が、ぽつりぽつりと浮かんでは消え浮かんでは消え。

「ぁうぃぁ」

ガラガラとした呻き声が聞こえた。近い。思わず身構える。
ドンガラガッシャンと大きな音を立てて揺れる脳味噌の痛みを無視して、大きく周りを見渡す。
誰もいない。暗闇に潜んでいるのか、と目をこらすも見えないものは何時まで経っても見えなかった。
いくら待ってもそれ以上の反応はなく、苛立ちが募る。足下の石ころを蹴飛ばしてみる。
それでも反応がない。遂に痺れを切らし、大声でこちらから呼びかけようとして。

「……ぁぁ」

気付く、それは自分の出した声の紛い物だったらしい。
過去の糸を辿ってみると、魔法としか思えない不可思議な現象が、私の舌をもぎ取ってしまったのだった。
テンマとかいう、二人目のメフェストフェレスによって……!
嫌なことを思い出してしまい、気分が滅入る。これから一生このままかと思うと最悪な気分だ。
もう、他人の懺悔を聞き、迷える子羊を助けることは出来ないかもしれない。
誰とも話が出来ず、普通の生活も難しいものになるだろう。
料理の味を感じることすら、食の楽しみを得ることすら叶わないことだろう。
0174禁忌惹厄アフター・ラジオ  ◇GOn9rNo1ts 代理
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2011/01/22(土) 23:04:41ID:SQfGhKmT

「……ぅっぅっぅ」


また一つ、記憶の欠片を取り戻して、自虐的に笑いたくなった。
私は既に、死んだ人間だったのではなかったか。
覚悟の果てに地獄へ堕ちたかと思えば、実験という名の煉獄にて神からの赦しを請う身ではなかったか。
そんな私が、今更舌の一つや二つ無くしたくらいで、何を悲しむというのか。全くお笑いぐさだ。
……そんな空元気も一人では寒々しく、皮肉気に歪んだ口元から、精気が漏れた。
本当に、最悪な気分だった。暗雲の形を持った絶望が、心の淵に立ちこめる。

だがそこに思考が及び、ようやく私の中の自動熱がり機から、まともな思考回路が構築されたようだ。
前提条件を確認。私は賀来巌。神父と名乗るもおこがましい大罪人である。
大量殺人の片棒を担いだ罪を償うために、決死の覚悟でメフェストフェレス、結城美智夫と対決し。
そして、MWのつまった袋と共に海の藻屑となった……はずであった。
しかし、気がつくと私は未だ五体満足で、三人の見知らぬ男達に介抱されていた。
彼らの話を聞くに、私達は実験なるものに参加させられ、人殺しを強要させられているという。
しかしそれは違う、これは神が愚かなる私に与えた試練に他ならない。
私は覚悟新たに、結城美智夫を『殺す』ために行動を始めたのだった。

そして、それから。
テレビ局で悪魔に唆され、嵌められて、舌をもぎ取られてから。
何をどうしたのかを話すには、トンチンカンな口先が許してはくれなかった。
飛び飛びの記憶を繋ぎ合わせ、張り付けて考えてみると……。

私は舌の消滅という痛みに悶え苦しみ、声にならない叫びをあげた……はずだ。

その後、半乱狂になりながら、命からがらあの場から逃走を図った……はずだ。


(そうして、今に至るのか……?)


どうも、足下がおぼつかない。
ふう、ふうと荒くなった息を整え、現状を認識しようと試みる。
茹だった頭がキリキリと痛むが、そんなことを気にしている暇など無い。
当面の目標を、確認する。為すべきは二人の悪魔を倒すことだ。
二人の悪魔(メフェストフェレス)、結城美知夫とテンマの好きにさせるわけにはいかない。
今もあの二人は何処かで他人を陥れ、高笑いをしているに決まっている。
そんなことを許してなるものか。無垢なる魂を汚すなど、神に仕える身として断じて見過ごせまい。
そうだ。これは私が今まで結城を見逃していた罰に対する、神からの試練なのだ。
一度死んだ汚きこの身を贖罪に費やせと、父なるイエスが仰っておられるのだ。
必ず、神の名においてあの二人には裁きを受けさせなければなるまい。
0175禁忌惹厄アフター・ラジオ  ◇GOn9rNo1ts 代理
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2011/01/22(土) 23:05:47ID:SQfGhKmT
地盤が固まった体がした。
頭の中の小会議を終え、次に周囲を見定める。
さっきまでいたはずのテレビ局は、何処を見渡しても見えやしない。
どうやら私は、思っていたよりも遠いところまで来ていたようだ。
人気のない廃れた町の中で、ぽつんと佇む。
前を見ると、立ち並ぶ建物群の中心に一際大きな円形のドームが見える。
後ろを振り向くと、ちらほら見える民家と共に木々が立ち並んでいる。
雄大な陽の光が目を差し、ちっぽけな己の影を色濃く生やす。
私は何処まで来たのか。何処に行くのか。

さっぱり分からない。

分からないなら、分からないなりに進まねばなるまい。
私だけが、悪魔達の本性を知っているのだ。
ガンガンと鳴る頭痛など、何の問題になりはしない。
やけに霞む目ん玉も、何の足枷になりはしない。
一oでも近く、一秒でも早く、私は役目を果たさねばならぬ。
私がここにいる意味を、成し遂げねばならぬのだ。

使命感が、鉛のような足を動かす。
公園が、百貨店が、八百屋が、民家が、倉庫が、前から後ろへと流れていった。
ああ、進んでいる。そう実感することが、どれほど嬉しいことか。
己の意志で一歩一歩進むごとに、私はまだまだやれると、そう思う。



そうして。



ほうほうの体で、やっとこさ意志を持ち、目標へと歩き始めた私の前に。
0176禁忌惹厄アフター・ラジオ  ◇GOn9rNo1ts 代理
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2011/01/22(土) 23:06:41ID:SQfGhKmT
「ぁ」



悪魔は、現れたのだった。



◇ ◇ ◇




「ぁ、ぁ、ぁぁぁぁぁぁぁ」




ああ、悪魔だ。
地面を這う私を蛞蝓のようだと指さし笑い。
青い大空を、我が物顔で突っ切りながら。
悪魔が、私の許へやって来た。

黒い翼を羽ばたかせながら。
二本の巻き角を揺らしながら。
おぞましい得物を手に持ち手に持ち。
私の命を取りに、やってきた。
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2011/01/22(土) 23:08:02ID:SQfGhKmT
私のすぐ傍に降りてきた悪魔は、三日月のように裂けた口を開く。
狼のような牙が、ずらりと並ぶ。私を噛み殺そうとガチガチと鳴る。
蛇のように長い舌が、伸びる伸びる。私を絞め殺そうと言葉を紡ぐ。


「シンプサン、イッショニアソボウヨ」


突然だった。
少し前の光景が、フラッシュバックした。
そして、今、目の前に立ちはだかるモノとぴったり重なった。

思い出した。全て、思い出した。

どうして忘れていたのか。

忘れることなど、出来ようもないのに!

私がテンマに舌を奪われ悶え苦しんでいた時に。

そいつは、現れたのだ。

屍に群がるハイエナのように、獲物に飛びかかる大鷲のように。
メフェストフェレス、地獄の大公が現れたのだ。
悪魔が、私を喰いにやって来たのだ。
哀れな犠牲者を、贄として腹の中に収めるために。


「ワタシト、オトモダチニナリマショウ?」


大げさに首を傾ぐその様は、出来損ないのヒトの真似を必死でやっているようだ。
嫌悪感が吐いて捨てるほど溢れ出す。冒涜者に返す言葉もないし、舌を失った私に返せる道理もない。
こんな化け物を相手にどうやって逃げることが出来たのか、分からない。
今はそんな些細なことに気が回らない。いや、回す隙間などありはしない。
全神経が、感覚器官が、ソイツを捉えて放さない。吸引される。
悪魔の発する無色の吐息が、風に乗っかって襲いかかって来た。
芳しき甘い匂いが、すうと私の世界に浸蝕していく。

死だ。

死のかほりが、鼻を通って上へ上へ、私の中核に、やって来る。
腐った林檎の皮と絞りたての血液をミキサーにかけた代物を、飲まされている気分。
吐き気がする。嘔吐をこらえて、呼吸が止まる。息が詰まる。
一度滅びた身なれど、これはたまらない。鼻が心が曲がりそうだ。
私はそう何度も死にたがる自殺志願者ではないのだ。
ならばどうする。決まっている。
痺れたボロボロの身体に鞭打ち、焼き焦げた意識を無理矢理に引き摺りながら。



走って逃げた。
0179禁忌惹厄アフター・ラジオ  ◇GOn9rNo1ts 代理
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2011/01/22(土) 23:08:52ID:SQfGhKmT

◇ ◇ ◇



ひたひたと追いかけてくる濃厚な死の気配を感じながら。
舗装された道路を、ひたすらに駆けていく。
寂れた住宅街を縫うように、出来るだけ直線的に進まないように。
その甲斐あってか、それとも慢心でも持っているのか、悪魔は未だ私の腕を取りはしない。


(悪魔などという非現実的存在をこの目でしかと見届けた私は、狂ってしまったのだろうか。
いいや、そもそもこの世界こそが狂いきっている。死んだはずの私が今ここに立っているだけで、何があろうとおかしくない。
もしもここが煉獄ではなく地獄だったのだとしたら、悪魔の一つや二つ出るなど日常茶飯事に相違有るまい。
結城は、悪魔の魂を持った人間だった。
テンマは、人の皮を被った正真正銘の悪魔だった。
そして次は、おぞましい姿を隠すことなく、あくまで悪魔のカタチで三匹目の登場というわけだ。
ああ、神よ。私に、己が罪を浄化することなく朽ちたまへと申されるのか。
それはあんまりな仕打ちにございます。私はまだここでやり残したことが多くあります)


そうこう徒然と駄想を垂れ流して、辿り着いた先に。
肥だめの臭いがぷんぷんする路地裏を通り過ぎて。
痴れ者の訪問を頑なに拒否する鍵だらけの小さな倉庫を素通りして。
逆におおっぽらに開け晒された、民家の前の申し訳程度の門には目も暮れず。
古き良き駄菓子屋も、何故か商品を前にして店主が存在しない八百屋も。
全て全て無視して。
辿り着いた先に。
終着駅。

ブランコと砂場のみが備え付けられた公園で、私は足を止めた。

何度も転び、その度に擦り傷が増えた両足は、最早機能を果たしていなかった。
二つの肺は仲良く息切れを起こし、酸素供給をサボっている。
混濁した脳味噌が、ぐちゃぐちゃに天と地を行ったり来たり。
限界だ。私は砂場に足を取られ、無様に倒れる。

「ぁっ……ぁっ……ぁっ……」

何年ぶりかに地上に出てきたウミガメのように、空気を貪る。
固形物を呑み込んで、吐き出しているような、違和感。
一息吸うたびにガラガラの喉がひりひりと痛む。頭から蒸気が上がる。
実は、私は炎の塊を食らっているのではないだろうか。吐き気がした。
喉から迫り上がって来た嘔吐物を、恥も外聞もなく外気に晒す。

「ぉ、ぉっぅぇええええ」

気持ち悪い。年甲斐もなく全力疾走などするものではない。
汚らしい己の排出物から少しでも遠ざかろうと、ゴロンゴロンと砂場で転がる。
そのまま力尽き、仰向けになる。閉じそうになる瞳を根性で開き続ける。
このまま眠ってしまえば、次に目覚めるのは悪魔の胃袋の中だろう。そんなことは御免被る。
身体中が、壊れかけの時計のごとく軋んでいた。一週間は筋肉痛に悩まされること請け合いだ。
だが、神は私にそんな苦しみの時間さえ与えてくださるつもりはないようだった。
0181禁忌惹厄アフター・ラジオ  ◇GOn9rNo1ts 代理
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2011/01/23(日) 00:00:59ID:6/97yF8L


「オニゴッコハ、モウオシマイ?」


びゅうと少し強い風が吹いたかと思えば、招かれざるお客様のご登場だ。
私がどれだけの時間足掻いていたのかは分からないが、追いついた悪魔は呼吸一つ乱してはいなかった。
ゆっくりと、絶望の色に染まる私を楽しげに見つめながら、近づいてくる。
私は、動かない。指一つ震わすことなく、脱力する。


「ソレジャア、イタダキマス」


そんな私の様子を観念したと見たのか否か、嬉しそうに吠える畜生一匹。
こちらの気も知らずに、雀のように飛び跳ねまわる。
遂に、ソイツが足下までやって来た。顔を覗き込まれる。
私は、力のない目で気弱そうにそいつを見つめ返した。
生死の判断でも見極めているのだろうか、楽しそうな様子からすると踊り喰いをご所望らしい。
調理される、というのも気が狂いそうになる話だが、勿論生きたまま喰われるのだって同じくらい嫌だった。

悪魔はぐわりとアギトを開き、じゅるりと舌なめずり。

電池切れのご馳走に、黒い剛毛で覆われた醜い顔を近づけて。





そして、私の罠に嵌った。





弛緩していた肉体を一変。がばりと、死力を振り絞り起き上がる。
既に私が精魂果てて動けないのだろう、と勘違いしていた悪魔の顔が驚愕の色に染まる。
それを見て馬鹿めと笑う頃には、私の第一行動は終了してしまっていた。

動け動けよ我が手足。今動かねば何になる。
隅々までの筋繊維よ、休みを許可した覚えはない。
私よ私、あと少しだけ頑張れ。負けるな。勝つのだ。
0182禁忌惹厄アフター・ラジオ  ◇GOn9rNo1ts 代理
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2011/01/23(日) 00:02:07ID:6/97yF8L
そう己に念じ、願い、思い描く軌道に乗せて。
私は、全力で左の手をグーからパーにして悪魔の顔に突き出した。
ついさっき砂場に倒れた際に掴んでおいた細かな砂利が、解き放たれて宙を舞う。
真っ赤な悪魔の瞳に吸い込まれていく様は、やけにスローモーションに感じた。


「アアアアアアアアアアアアアアアア!?!?」


我、奇襲に成功せり。
まずは目を潰す、という当初の計画は、あまりにもあっさりと成し遂げられる。
次に、ポケットに幾つか入れておいた小粒の尖った石ころ――転ぶふりをしながら集めていた物だ――を取り出す。
右手に握り、当然の事態に混乱している悪魔の顔に打ち付ける。
目を狙ったが、流石に二度も上手くはいかず、先の部分で頬を裂くのみとなる。
まだまだこれからだ。一度食らいついたら離れるわけにはいかない。
今この瞬間だけが、私の生命線なのだから。
マウントポジションを取り、がなるように吼える。
声は出ない。出るのは音でしかない。
己を昂ぶらせるために、それでも叫ぶ。力の限り。
そうしないと、歯の震えが止まらない。
もう後戻りは、出来ないのだ。


「……ぁ、ぁぁぁぁあああああああああああああッ!」


私は、何も考えずにただ逃げていたのではない。
通った道に公園が有ったのを思い出して、悪魔に気取られぬよう色々と迂回しながらそこに向かっていたのだ。
何のため?勿論、悪魔をこの手で殺してやるためである。
選んだ道は抵抗、闘争、殺害。その一点のみだ。
悪魔から逃げ切るなんて想定は、はじめから選択肢に含まれてなどいない。
そんな弱気で、どうやってこれから奴らと戦うというのか。
私は、きっと慈悲深い神に選ばれたのだ。
人間を不幸にするだけの存在、悪魔を倒し己の罪を贖う者として。
煉獄に堕とされ、罪深き悪魔どもを皆殺しにすることこそが、唯一の天国への道と悟った。

だから私は、コイツを殺す。

コイツの次に、テンマと結城美知夫を殺す。

きっと他にもいるであろう、悪魔共を根絶やしにする。

神よ、見ていてください。

私は、やり遂げてみせます。

血を枯らし、心の臓をもぎ取られようとも。


必ず。必ず!
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2011/01/23(日) 00:03:06ID:6/97yF8L
獣のように雄叫びを上げ、己を奮い立たせる。
悪魔の、心なしか怯えた顔に胸が透く。ざまあみろだ。
今の私は、猫を噛む窮鼠だ。狩人を喰らう獣なのだ。
ヒトとしての、神父としての甘さなど存在しない。
胸の内で荒れ狂う凶暴な十字架が、ヒステリックに金切り声を挙げた。

断罪せよ!断罪せよ!断罪せよ!

神の名において、悪を処刑し正義を示せ!

勝てる。確信する。今の私ならなんだって出来そうだ。
果てしない高揚感が脳髄を駆け巡り、思わずイキかけた。
頭を振る。まだだ、まだ終わってはいない。
トドメを刺すまで神に代わり神罰を、鉄槌を下せ。
悪魔の顔がテンマに見えた。結城に見えた。まだ見ぬ悪の背信者共に見えた。
地獄に堕ちた悪魔共を、煉獄に落ちた私が倒す。

「うぉおおおおおおおおおおお!」

二発目をだらしなく開いた悪魔の口の中に押し込もうと、腕を戻し、再度振る。
それと同時に、左手にも石を持ち、連撃を繰り出そうと力を込めて。
放つ。右ストレートと左のフックを、同時に。

そして。


見えない壁に、吹き飛ばされた。



「……ぁ?」



背中に衝撃。激痛が走る。
公園の地面に叩き付けられた、と気付くのに少し時間が必要だった。
ぐわんぐわんと、耳鳴りがうるさい。世界が遠くなっていくのを感じる。
何故。どうして。真っ白になりかけた頭を無理矢理、現実へと引き戻す。
ここでオネンネするとまずいことになりそうだ、と本能が囁いていた。
苦痛に歪む顔を正面に向けると、赤い血をぽたりと落とし、悪魔がこちらを睨め付けている。
どうやら、テンマが使ったような妖術で私の攻撃に対する即席の防御を成したようだった。
それが、私を一瞬の空の旅に連れて行ってくれたらしい。大したカウンターだ。
0184禁忌惹厄アフター・ラジオ  ◇GOn9rNo1ts 代理
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2011/01/23(日) 00:04:39ID:6/97yF8L
まずい。


嫌な汗が、背中に沸いて出る。


非常にまずい。


もはや私の持っていた優位性は消滅した。
今の私はボロボロの身体で、武器はそこらで拾った石ころ二つ。
対する向こうは目と頬にダメージを与えたものの、まだまだ万全だ。
これでは、まともな戦いになるかさえ怪しい。嬲り殺されてしまう。
どうして、敵の持ちうる怪しげな技について思考を及ばせなかったのか。
どうして、口の中に広がる苦い教訓を、生かすことが出来なかったのか。
今更に己を責め立てても、詮無きことだ。
それに、分かっていたところで只人たる自分にどんな対策が練れた事やら。
それよりも、これからどうするか。それが重要である。
0185禁忌惹厄アフター・ラジオ  ◇GOn9rNo1ts 代理
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2011/01/23(日) 00:06:35ID:6/97yF8L

またしても逃げるか?

――体力も身体も限界だ。不可能の一言に尽きる。

命乞いでもしてみるか?

――そんなものが通じるなら、はじめからやっている。


ならばどうする?

――どうしようもない。


死ぬのか。



私は、死ぬのか。



(諦めて、たまるか)


ふらふらと立ち上がり、両手に尖った石を持ち。
私は、自分で思っていたよりも悪あがきを好む人間らしかった。
闘志は萎えることなく、殺意は治まることなく。
やってやる。口の中で呟く。舌がないから言葉にはならなかったが。

「ぅ、ぅぅぁぁああああああああああああああああああああ!」

地を、持てる限りの力で蹴り……行く。
無我夢中になって突進。玉砕戦法。カミカゼ特攻。
芸がないと言われようが、私にはそれくらいしか残されていなかったのだ。
肩に顔に腕に足に、全てにまとわりついてくる風が気持ちいい。
火照った身体が、ほんの数瞬で冷え切るような錯覚を受ける。
無様に足を出し、次の足を出す。縺れてバランスを崩さないのが不思議なくらいだ。
たった数メートルがとてつもなく遠い。距離感が狂っているのかもしれない。
構わない。身体の何処かが壊れようが頭の何処かがイカれようが、関係ない。
私は、私の贖罪を成す。それだけだ。
だから。
0186禁忌惹厄アフター・ラジオ  ◇GOn9rNo1ts 代理
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2011/01/23(日) 00:07:31ID:6/97yF8L
死ね。


思い切り、右手を後方に伸ばす。走る勢いそのものに振りかぶる。
こちらが突っ込んでくるもの、と予想している悪魔の顔に照準を定め。


死ね死ね死ね。


拾った石の中でも一番大きな、例えるなら野球のボール大の原始的な「武器」に全てを賭ける。
これが上手いことヤツを怯ませてくれれば、その隙に零距離まで詰めて、妖術を使われないうちにケリをつける。


死ね死ね死ね死ね死ね死ね。


私のコントロールがいかほどかは定かではない。
だが、私は神を信じる。己を信じる。


死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね。

じる者は、救われるのだ。


(滅せよ、悪魔――――!)



「があああああああああああああああああああ!!!」



次の瞬間、わたしがかんじたのは





ももいろの、ひかり。





「ぁ……?」
0187禁忌惹厄アフター・ラジオ  ◇GOn9rNo1ts 代理
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2011/01/23(日) 00:08:13ID:6/97yF8L
からだが、つめたい。

ちが、どばどばと。

なにがおきたのか。

わたしはまだ、たたかえる。

ほら、うごけからだよ。

にくむべきあくまを、うちたおすのだ。

うごけ。

うごけ。

うごけ。うごけうごけうごけうごけ。

…………もはや、うごかない。


……わたしは、しぬのか。

なぜだ。

どうしてだ。かみよ。


わたしはまだ。


まだ、つみを。


……ああ。


ああ、ねむい。




ゆうき。



みちお。



わたしは、おまえを――――。
0188禁忌惹厄アフター・ラジオ  ◇GOn9rNo1ts 代理
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2011/01/23(日) 00:09:13ID:6/97yF8L
◇ ◇ ◇





「あ……あ、あ、あ、あ、ああああぁぁ?」




          『3人の参加者を排除した場合の報酬』



「な、んで」



『3人を殺した報酬で、自分とお友達の所属するグループを知り』



「だって、だって、ひさっしょうせってい、だった……?」



   『もしHorが居なければ、他の参加者を手当たり次第に殺して実験を終わらせれば良いんですよ 』



「わたし、は」


                   
           あと、二人……?



      『貴女がそれを望むのなら、私はこの命を差し上げましょう』






「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
0189禁忌惹厄アフター・ラジオ  ◇GOn9rNo1ts 代理
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2011/01/23(日) 00:10:03ID:6/97yF8L

結局。
賀来巌は、優しき男は。
最初から最後まで。
頭から尻まで。
狂いきっていた、ということだった。


どこか遠くで、メフェストフェレスが嗤っている。



【賀来巌@MW 死亡】

【Gー5/公園内:朝】


【高町なのは@魔法少女リリカルなのはシリーズ】
 [属性]:正義(Hor)
 [状態]:疲労(小)、頬に擦過傷。目が少し痛む。
 [装備]:聖祥大附属小学校制服、S2U@魔法少女リリカルなのはシリーズ、核金(シリアルナンバーLXI)@武装錬金
 [道具]:基本支給品一式
 [思考・状況]
 基本行動方針:すずかとの合流と、この場所からの脱出(?)
1:?????。
【備考】
※「魔法少女リリカルなのはA's」、あるいはその前後の時期からの参戦。
※魔法の非殺傷設定はできません。
※核金@武装錬金は武藤カズキと蝶野攻爵しか武装錬金にできません。
0190禁忌惹厄アフター・ラジオ  ◇GOn9rNo1ts 代理
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2011/01/23(日) 01:00:31ID:6/97yF8L
【H−4/ファーストフード店内 朝】


【イカ娘@侵略!イカ娘】
 [属性]:その他(Isi)
 [状態]:健康
 [装備]:風紀委員会特服『白虎』Sサイズ@めだかボックス
 [道具]:基本支給品一式、海の家グルメセット@侵略!イカ娘
 [思考・状況]
  0:あ……れ……?
  1:とりあえず月と高遠に付いていく
  2:タケルがなにをしているのか気になる


【夜神月@DEATH NOTE】
 [属性]:悪(set)
 [状態]:健康
 [装備]:ニューナンブM60(残弾1/5、予備弾数30)
 [道具]:基本支給品一式、不明支給品0〜1
 [思考・状況]
  0:?????
  1:イカ娘を利用した、スタンス判別方の模索と情報収集のための集団の結成
  2:「悪意」を持った者が取る行動とは……?
  3:自身の関係者との接触
  4:高遠に警戒
  5:イカ娘の純粋さを気に入っています
 [備考]
 ※参戦時期は第一部。Lと共にキラ対策本部で活動している間。



【高遠遙一@金田一少年の事件簿】
 [属性]:悪(set)
 [状態]:健康
 [装備]:カリバーン@Fate/stay night
 [道具]:基本支給品一式、不明支給品0〜1、サンジェルマンの紙袋@ジョジョの奇妙な冒険
 [思考・状況] 今まで通りの「高遠遥一」として、芸術犯罪を行う。
  0:?????
1:なのはを人形に仕立てる。
  2:「人形」を作るのであれば人選、状況は慎重に選ぶ。
  3:Vに多大な興味

代理投下終わりです。感想は前に向こうで書きました
0191:「勇ましく剣を持つもの」 ◇2RguXBg.P2 代理
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2011/01/23(日) 01:02:00ID:6/97yF8L
――――爆発が起きた。つまり、ここで殺し合いがあったということ。
しかし当事者たちは殺意の痕跡を残すのみだ。
そして賀来は痕跡すら見つからない。
賀来は仮にも神父だ、積極的に殺しをやる人間ではないだろう――彼が語る悪魔、結城が相手なら別だろうが。
だが、あの様子では錯乱して他の参加者に危害を加えかねない。早く追わねば。

その時だった。

「私の名前は賀来巌……」
首から、首輪から、声が響いた。

これが定例放送というやつか。しかし何故あの神父が?
しかもその声は自信と使命感に溢れ、まるで先程とは別人のようだ。
おまけに主催者からの指示だと?
何から何までどうなってやがる!?

「ゲーム退場者の発表……【七瀬美雪】」


頭をハンマーで殴られたような気分だった。
首輪の向こうの賀来はそれが神の裁定であるかのように粛々と死亡者の名前を読み上げていく。
名簿に慌ててペンを走らせる。どうにも女性が多いようだ。
やはり殺し合いの実験――賀来によるとゲームでもあるらしい――ともなると真っ先に狙われるのはか弱き者だろう。
その最初の生贄として、七瀬美雪は選ばれた――いや、選ぶ手間をも省かれていたに違いない。


明るい少女だった。
常に金田一と共にあり、片方が欠けるとどうにもサマにならない。
その関係は高校では七不思議とされているらしいが、それは成績と顔しか見ない今どきの高校生の偏見というものだろう。
確かに何度も事件に巻き込まれているが、数年後には仲人でもやることになるだろうと疑っていなかった。


しかしその思考は再び放送に阻害された。
我来も完全に主催者の言いなりではなく、それはこの内容を伝えるための代償だったのだ、と思えた。
結城らしき男の危険性と同盟の必要性を朗々と並べ立てる。

その後起きたことは、訳がわからなかった。

要するに、賀来の傍にはもう一人男がいて、そいつが賀来に殺されかけてるらしい。
その男の名は“テンマ”

――そして、首輪からは何も聞こえなくなった。

0192:「勇ましく剣を持つもの」 ◇2RguXBg.P2 代理
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2011/01/23(日) 01:02:53ID:6/97yF8L

――――出来すぎている。
結城の名を喧伝するためとは言え何故か自信に満ち溢れすぎていた賀来。
いくらテレビ局があるからとはいえ、実験の進行に影響が出る定例放送を参加者にやらせる主催者。
結城の名が呼ばれようとするその瞬間に助けを求めるもう1人の男。
更には会場において二人いる“テンマ”の名を賀来は叫んだ。


「全部は主催者が創りだした茶番劇……か?」
この放送で賀来と2人の“テンマ”は不利になりこそすれ有利になることはまずないだろう。
つまり、全ては主催者が疑心暗鬼を加速させるために仕組んだシナリオ上の展開。
あの賀来と“テンマ”は、主催が用意した偽者だ。
放送権の話も『どこかでこいつは主催者と繋がっているかもしれない』と思わせるため。

しかし、別のことも理解してもいた。
たとえ茶番劇に彩られていても、実験の進行に必要な要素――死者とグループ別退場者数、禁止エリアは、確実に伝えられるはずなのだ。


――――つまり、七瀬美雪は、死んだのだ。


これまで何となくこの実験が現実味がないと思ってきた。
聞いたことのない事件に突拍子のない異世界論。そういったものも手助けしていただろう。
「情けねぇなぁ、今までどれだけ警察やってたと思ってるんだ。現実逃避している場合じゃねぇ」
コロシも知り合いがガイ者や犯人だってのも嫌ってほど見てきた。
自分はそうやって耐えればいい。だが――

「……金田一」
無性に名探偵の孫に会いたくなった。
推理を聞きたいのも勿論だが、美雪が殺されて無力感に苛まれているかもしれない。
美雪のいない今、どうにかサポート出来るのは自分しかいない。
何としても、金田一一を見つけ出さねば。


そして、そのふざけた実験を、ぶった斬る。


【H-9:ビル建設現場:早朝】

【剣持勇@金田一少年の事件簿】
 [属性]:その他(Isi)
 [状態]:健康、主催者に強い怒り
 [装備]:マテバModel-6 Unica(装弾数6/6)@現実
 [道具]:基本支給品一式×2、不明支給品1〜5(うち1〜3は、賀来の分)
 [思考・状況]
  基本行動方針:この事件を金田一一と共に解決する
 1:金田一と合流する
 2:放送は必要な部分以外はブラフだろう。
 3:というかここ何処だよ?
 4:異次元? MWという毒ガス兵器? 死神? ばかばかしい…。
 [備考]
 ※参戦時期は少なくとも高遠遙一の正体を知っている時期から。厳密な時期は未定。
 ※Lの仮説を聞いています。

こちらも代理投下終了です
0195創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/01/24(月) 00:16:07ID:Vg99bPL9
ごめんね(´;ω;`)
0197創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/01/26(水) 19:33:18ID:legViG2D
予約リベンジか
0198創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/01/26(水) 21:11:18ID:mo90twt/
まぁ何度も予約→破棄の流れを繰り返しているだけに、次こそはちゃんとしてほしいよね…
0201創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/01/28(金) 19:17:31ID:mN7HiUmp
じゃあま雑談振ってみるか
最近セイヤを見ていて、アテナ?だっけあの女の子も出てたらおもしろそうだと思ったけど、いらない子なのか?
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