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【評価】創作物の批評依頼所【批判】

0001創る名無しに見る名無し
垢版 |
2010/10/25(月) 22:11:59ID:waiZ1CaZ
自分の作品を批評してもらいたい人のためのスレです
SS、絵、音楽などジャンルは問いません
ただし、外部作品を晒すときは、作品のあるスレやサイトなどにこのスレで批評依頼した旨を何らかの形で記載してください

添削や赤入れなどは、板内に専用スレがあればそちらで
なければ、ここで依頼しても構いません
0042 ◆TC02kfS2Q2
垢版 |
2011/07/31(日) 04:17:52.15ID:R0unlf1Q
批評、直したらよいところがあればよろしくお願いします。
0043『ありがとう、って言いたいけれど』 ◆TC02kfS2Q2
垢版 |
2011/07/31(日) 04:19:53.41ID:R0unlf1Q
 ゆずなには人に言えない趣味があった。
 ひたすら隠し続けて、人に晒すことはゆずなはけっして許さなかった。
 ただ、ゆずなが犯したたったひとつの過ちで、脆く崩れ去ってしまう日が来てしまったのかもしれない。

 「忘れ物ですが」

 電車から降りる直前にゆずなは声をかけられた。声の主は同い年ぐらいの女子高生。街では進学校で有名なセーラー服に身を包み、
気取る気配を持つことの無いメガネのレンズがきらりと傾き始めたお日さまの光を跳ね返す。タイプで言えばしっかり屋さんの委員長。
膝丈で揃ったスカートと白い靴下が嫌でもゆずなの妄想癖を込み上がらせる。きっと口癖は「ちゃんとなさい!」だろう。
 ただ、うとうとしていた車内でノートを忘れただけ。それを拾ってもらっただけ。ただそれだけのこと。気にするなと言えば
気にしないけど、それでもゆずなは気にしてしまうタチの悪い子。なぜならノートを開いたままゆずなは舟をこいでいたから。
電車を降りる客がゆずなと少女の肩をかする。車内に入り込む夏の暖かい空気が扇風機の風と混じって漂うので自然に眠気を誘う。
 ノートを黙って受け取るも、ゆずなは古風なセーラー服の少女の顔を直視することは出来なかった。恩知らずと言われても構わない。
出来ることなら、ここから早く立ち去らせて欲しい。乙女心は空を流れる夏の雲のように崩れながら消えるものだと言い訳したいけど
無様なことに、ゆずなから礼の言葉すらすっと出てこなかった。行動と思考が追いついていない証拠なことぐらい分かっている。なのに。
 車掌のアナウンスが急かすので、二人は一緒に駅のホームに降り立った。夏の眩しい青空の下、閉ざされた車中からの開放はやけに
手厳しい。彼女はよく見れば車内でよく見る顔だとノートを手にしたゆずなは思い出した。彼女は世間的には良いことをしたのに、
なぜか恥じらう姿はゆずなにはよく分からなかった。赤くなった彼女の頬がやけに眩しく見える。

 「ありがとうごさいます」
 「どういたしまして」
 「……はい」

 一番大事なことは中身を見られなかったかどうか。
 真夏の日差しの駅のホーム。ゆずなと一緒に向かい合う。乗っていた電車は走り去り、捨て台詞のように風を撒き散らす。
閑散とした住宅街、このあたりで動いているものと言えば見えなくなった電車ぐらい。それと、ゆずなの落ち付かない気持ち。
 もし、ノートの中身を見られてしまったら……とゆずなは迷うことなくことの顛末を描いていた。それはクセと言っても違わない。
お互い名前を知らないとはいえ、車中でよくあわせる顔だ。顔では恥らっていても、どこかで笑って見下しているのかもしれない。
 
 「どこのオタクさんですか。電車でマンガなんか描いていて」
 「よくまあ、こんな恥ずかしいセリフ書けるもんだね。かっこいい子ばかりじゃないの」
 「『おれのものになれよ』ねえ……。男子ばかり追い回しているつもり?紙の上だけで」
 
 知られても見られても利害関係は無いはずなのに、最悪の結末が待つプロットばかりのコマをきってしまうゆずなは、
慌てて自作のマンガが描かれたノートをカバンに入れた。かたちになるには程遠い、理想ばかりな素人の殴り書きのお話。
だけども自分の理想を吐き出すにはノートってヤツが口も堅くて素直で非常に相手がしやすいのだ。三次元の目じゃない。だから。
0044『ありがとう、って言いたいけれど』 ◆TC02kfS2Q2
垢版 |
2011/07/31(日) 04:24:22.05ID:R0unlf1Q
 人に言えない趣味がある。
 それを知られてしまったら。

 しかも相手は街では進学校で有名な学校の子だ。尻尾を掴んでおもちゃにするんだったら自分なんか格好のカモだ。
自分のように「これ、かわいい」と見た目で選んだ今風の制服と、ほんのちょっとだけ頑張れば入れることだけで引き寄せられた、
滑り止め程度の高校の子とは接点なんかあるはずない。まさに月とすっぽん。月が見せる表情がやけに冷たく感じるじゃないか。
 そうだ、敢えて接点があると言うんだったら……自分を笑いものにする為。空色のリボンと短いスカートを踏み躙る為。
このあたりの子なら憧れの高校の制服姿の子が、自分のようなヤツをぐりぐりと踵で地面に捻り込まれても、肩を叩いて
インチキなセリフで諌めるマンガのようなヒーローなんていないんだ。カッコイイことなんてリアルには無いのかも。
ノートを忘れる前より三次元の人間が怖くなってきて、口をつぐむばかりのゆずなは自問自答する。「間違っているのだろうか」と。

 「違う!」
 
 セーラー服の少女はゆずなたちを降ろして走り去る電車を手で止めようと振り返った。無論、そんなことは出来るはずが無い。
鉄輪がリズムよくレールの繋ぎ目を超えてゆく音が重く響き、その間隔が狭まるに連れて小さく遠くなる。やがて車両はカーブを曲がり、
乗客たちはゆずならを残して改札を通り過ぎて、ホームの上には風とセミの声だけが残される。セーラー服の彼女のスカートは揺れて、
ゆずなのスカートは翻る。
 
 「ここ、降りる駅じゃない」
 「え?」
 「どうしよう……。次の電車って20分後ですよね」
 
 ホームに備えられた時刻表を焦って指でなぞるのはセーラー服の彼女だった。なんでも塾の時間に間に合わないらしい。
そう言えば。普段この駅を利用している制服姿で彼女が着ているものを見たことは無い。もしかして、自分が慌てて降りたから、
話しかけていたから、話を途切れさせることが嫌だったからついこの子も一緒に降りたんだろう。そう納得するしかなかった。
 マンガの中なら「塾、サボっちゃおっか?」だなんてセリフ、ぱっと出てきてもおかしくないけれど、それをも思いつかない
目の前の見た目『委員長』さんは気持ちおろおろとしながら、カバンを握って足を揃えているだけだった。ゆずなにはその制服で
その仕草を見せているところがものすごく新鮮に感じた。もしかして、自分の妄想のなかで欠けているものなのかもしれない。
 
 「わたし、よく人から『ちゃんとなさい!』って言われるのに……」と、再び彼女は頬を赤らめた。

 「ちょっと歩けば、バスが走ってる国道に出ますから」と彼女を安心させる。拾ってくれたノートに彼女のような
キャラを加えて新たなお話を考えてみようと妄想を膨らませようかな。ゆずなはバス停までの短い道のりを一緒に歩く。
そして血の通った三次元の人間を見る目が無い自分に気付かせてくれて「ありがとう」って言いたい。言えないけれど。


   おしまい。


よろしくお願い致します。
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