「力こそパワー」というトートロジーのネタがネット上で見られる。
これのオリジンは、『スター・ウォーズ』新三部作において日本語字幕を担当した
かの誤訳マイスター・T田女史の珍妙な誤訳である。

元のセリフはとある悪役が発した「Force is the very power.」というもので、直訳すれば
「フォースこそ力である」となる。「フォース」は「理力」とも訳される固有名詞だ。
ジェダイやシスといったSW世界の優れた戦士が行使する、宇宙の根源的な力である。
しかしT田氏は、自分が翻訳する作品の基本的な設定を理解していなかったため
この「Force」を単に「力」と訳してしまった。そして何故か「power」の方を固有名詞的に
カタカナ表記するという、アクロバティックに過ぎる発想の転換を披露した。
ここの「power」は武力など物理的な力のみならず、権力という意味をも含む。本来は
権勢欲に憑かれフォースを悪用する人物の心理を、ダブルミーニングで表した科白なのだ。
それがT田氏の手にかかった結果が例の同語反復である。

「力こそパワー!」

もはや伝説級の珍訳となったこの台詞は現在、元ネタが忘れ去られるほどに拡散している。