【★】戦場特区【★】
時は近未来。東京湾には巨大な人工島が完成し、日本最大の
貿易・外交の拠点となっていた。そこは当初「東京都湾上市」
と呼ばれていたが、湾上市議会が都議会を凌ぐ発言力を持って
しまい、行政に支障が生じた。23区が「東京市」と呼ばれて
いた頃と同じ問題が生じたのである。都議会は神奈川県議会・
千葉県議会と協議し、湾上を「東京都北湾上市」「神奈川県
西湾上市」「千葉県東湾上市」の3つに分割する計画を立てたが
日本が世界に誇る湾上の影響力が分割する事で削がれると考えた
国会が一方的に湾上を、特定の都道府県に属さない国の直轄地
「湾上特区」と定め、人工島の中心に「特区省」を設置した。
これに対し関東の各行政府内の地方分権を推進する勢力は湾上の
富や影響力を国が独占する事を嫌って対策を協議、元々都内に
在った関東州庁(この時代すでに道州制が定着している)を特区に
移転すると言う手段に出た。かくして湾上特区には「特区大臣」と
「関東州知事」と言う二人の頂点が並び立つ事となり、特区内の
企業も大臣派と知事派に別れて対立する事になったのである。