>>14 ケープの文様見たらこうなった。正直すまんかった\(^o^)/

夜も満ちた頃。大きな影、二つ。
「待たせた」
「いや、全然平気だよ。全然、ちっとも、さっとも。
 七回目だから気にするな。あぁ・・・七回目だし、ね」
一人は銀色の挑発をオールバックから背中へ流す偉丈夫の初老。赤いロングコートを着こなし、整えられた口と顎にヒゲ。力強い光が瞳の奥に伺えるが、ほんの少しだけ細めて言葉を零す。
「目が笑ってなさそうだな」
「えー。わからないだろう、わかんないさ」
「そうだが、他の部位から想像くらい出来る」
「まぁねぇ、そうかも。そうでないと」
一人は口を糸の様に細く伸ばし、目が笑っていなさそうな男。
男、のはずだ。

曖昧な言葉。ーー笑っていそうなーー男、のはずーー
実に簡単な理由。糸の様な細い笑みを浮かべたものは、仮面をつけていた。

狐毛のような橙と、狸の様な灰の色。狐毛は鼻から眉間を超え、本来なら髪の生え際に当たる部分までを覆い尽くす。そこから後頭部へ続くのが灰の色。ピクピクと動く大きな耳を模すように膨らんでいた。ズボンから伸びる灰の色をした尾も、獣人の血を持つことが連想される。
「んでさ、まだなの。まだですか、いい加減進もうよ」
「そうだな、月のあるうちに」
影が揺れる、ただし三つ。大きな影は二つ。そして初老の男と合わせて動く影一つ。
「ふーん、こいつが、この子が。初見だね」
「慌ただしい奴は会えんもんだ」
小さな影。幼子一人。藍色の瞳はどこか虚ろで、体ごと誰もいない空間を眺めている。年は一桁ほどだろうか、小さな身体をしている。赤いケープを纏うが腰まで届き、全身をすっぽりと覆っている。裾には広く鱗の様な装飾が施されている。
「見ないね、見てない。こっちの声も聞こえんか」
「五体問題ない。興味がないだけだ」
「いつもだけど添えてるね、絡めててるね。でっかいよね」
ふいに仮面の男の視線が少女の首元へ移る。そこにはケープを抑える様に、初老の男が左手を首に添えている。
「必要だ。捕まえるのに良い」
「たしかにね、そうですよ。部位だけってのがエコロジー?」
「好みの問題だ」
そう、手だ。赤いコートから伸びている。それはいいが、大きさが異端。少女の顔を覆う程の大きさで、獣の用に毛むくじゃら。
「で」
「ど?」
「・・・評価は」
「そうか、そういや」
「・・・」
「・・・」
「d「で?」取るな」
初老の男の目が狭まる。怒気を滲ませて。仮面の男は改めて、視線を向ける、向ける。向ける。
「・・・でもなんでだろ、なんでかな。見えないね」
「どう、・・・! やめないかっ」
「あれなんだ、残念な。赤いね、絡んでら」
いつの間にか仮面の男の手には鈍色の金属があった。いつの間にか少女の足を覆っていた布がやぶれ、穴をあけている。左足はガータの紐も切れ、完全に素肌をさらけ出している。
赤い模様。太ももに浮かぶのは丸と折れ線を混ぜ合わせたものだった。入れ墨にも見えるそれは、喜ぶようにじくじくと藍色に変わろうとしていた。酸化する様な、まるで開放された様な印象を与えながらじくじくと。
「おぉ」
仮面の男は感嘆の声をあげ視線をあげる。藍色は犯す、ケープも犯す。真白の模様に藍色が交じっていく。まるで溝を掘るように、真白だけをなぞって広がっていく。
のぼる、のぼる。藍色はのぼる。次の目標を求め。次は・・・少女の目。満たすように藍色が増していき、そしてー
「買う前に・・・破るな」
初老の男の左手が震える。握りつぶすような、へし折るような震え。少女の口が細まり、何かを求めるように数度開いて閉じてを繰り返し、止まる。模様から、目から、藍色がどこかへ消えるのを仮面の男は前のめりになりながら眺める。
「それで」
見下ろすように初老の男は聞いた仮面の男は、楽しそうに、少女から視線を外さない。
「呪われた盾娘、買うのか、買わないのか」

続かない。