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【軍事】ミリタリー系創作スレ【兵器】3

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0001創る名無しに見る名無し
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2010/08/02(月) 16:10:30ID:wqtO09So
古代ローマから近未来まで、軍事関連の創作スレッドです
トムクランシー的テクノスリラーから架空戦記、果ては漫画まで、
ミリタリー要素が入ってるなら何でもOK!

前々スレ【軍事】ミリタリー系創作スレ【兵器】
http://namidame.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1220331328/l50
前スレ【軍事】ミリタリー系創作スレ【兵器】2
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1257136826/l50

関連スレ

自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた 第69章
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1280728791/l50

非軍事系ガンアクション創作スレ
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1230604510/l50

傭兵系SS創作所
http://yuzuru.2ch.net/test/read.cgi/mitemite/1228634990/l50

■○創作関連質問&相談スレ 59○■
http://toki.2ch.net/test/read.cgi/army/1278569027/l50

中高一貫の防衛女子校設立 十五校目
http://toki.2ch.net/test/read.cgi/army/1276214560/l50
0287創る名無しに見る名無し
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2011/08/04(木) 02:38:28.51ID:4ssvYQCV

凄い久しぶりだが相変わらずの作風で安心しました
投下は二、三年ぶりぐらいかな?
なんとなくこのスレチェックしたら投下されててびっくりしました
0288創る名無しに見る名無し
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2011/08/05(金) 12:19:43.16ID:ew6SyrYR
そういえば原作組は今何やってるんだろうなあ
男組はともかく笠原とかアニメのラストとか目じゃない地獄っぷりにまいってそうだ
0289創る名無しに見る名無し
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2011/08/05(金) 18:28:02.25ID:H14FTAGq
ここって、現実の世界を舞台にした話を書くスレなんでしょうか?軍事が絡んでいれば、自分で背景を
創作しても良いのかな。
0291図書館戦争 ◆f1t8rvbeF8mh
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2011/08/11(木) 00:46:00.92ID:uVFKvArC
正化31年10月22日水曜日11:19 神奈川県小田原市 財団法人情報歴史資料館 二階談話室

「三人きたぞ!」

 敵味方の銃弾が飛び交う中、一階ホールへ降りるための階段前に積まれた陣地へと飛び込む。
 一階部分に突入してきた良化隊は、テロリストを射殺し続けていた裏門守備隊を敷地外壁まで追い払ってしまった。
 結果として施設一階は完全に制圧されてしまい、現在の我々は各階段や非常口で食い止めようと必死になっている。
 
<<本部より各員、検閲終了時刻まであと11分!>>

 残り時間は僅かだ。
 最早まとまった人数を突入させ、こちらを制圧し、検閲対象図書を持ち出すような時間は残されていない。
 今の良化隊にできることは、我々に一人でも多くの損害を出させることぐらいだろう。

「援護します!」

 別の分隊員が隣に駆け込み、小銃で階下に向けて制圧射撃を開始する。
 遠慮なしのフルオート射撃である。

「頭出すな!撃たれるぞ!」

 直ぐに別の隊員が駆け寄り、今度は反対側で射撃を行う。
 全く、今直ぐ中東に派遣しても恥ずかしくない精鋭ばかりだな。

「通信!聞こえるか!」

 負けじと俺も頭を出し、階下の良化隊員たちに向けて射撃を開始する。
 身動きの取れない重症者が数名、這いずって逃げようとする負傷者が五名ほど、反撃してくる奴が一人。

<<感度良好、増援ですね?>>

 流石は最前線で通信士をしているだけある。
 全体の流れをよく見ているじゃないか。

「そうだ!あと機関銃持ってこい!」

 軽傷者の背中に三発、あれでもう助からないだろう。
 隣の奴には、おっと、彼は健常者から死体へクラスチェンジだ。

「何としてもあと十分を支えるぞ!」

 そこまで叫んだところで階下に動きを感じる。
 慌てて伏せるが、警告の叫びを上げる間もなく銃弾が殺到し、勇ましい両隣の隊員は二人とも殉職する。

「誰か手伝え!スタングレネード!」

 とんでもないことだ、このまま制圧射撃で頭を抑えられては建物中央部分を突破されてしまう。

「投擲!これで自分は終わりです」

 閃光手榴弾を投擲しつつ、殺到する銃弾を土嚢で辛うじて受け止めている図書士が叫ぶ。
 文句の付けようのない見事な仕事だ。
 警告の叫び、やや時間をおいて閃光、轟音。
 直接の殺傷能力はないにしても、一時的に敵の抵抗を奪うことが出来るこの装備は非常に便利だ。
0292図書館戦争 ◆f1t8rvbeF8mh
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2011/08/11(木) 00:50:52.97ID:uVFKvArC
「くたばれ!」

 小銃を構えつつ土嚢から身を乗り出して狙いをつける。
 階下には数名の医療班と援護のつもりだったらしい連中。
 おっと、閃光で俺も目が焼かれてしまったらしい。
 敵がどこにいるか分からないので、何を撃ってしまってもこれは事故だ。

「やめろ!撃つな!負傷者だ!」

 人間の言葉らしいものも聞こえた気がするが、耳鳴りが激しい俺には届かない。
 引き金を振り絞り、一人、二人、確認殺害戦果三名。
 直ぐに増援らしい人影が屋外から流れこんでくる。

「おい伏せろ!」

 今度の警告はうまくいき、俺は貴重な同僚をこれ以上失う危機からは逃れられた。
 俺も含めて三人が素早く土嚢の影に伏せ、直後に銃弾が反対側に突き刺さる鈍い音が連続する。
 実践を経験した図書隊員を失う訳にはいかない。
 声を掛け合い目指せ無事故職場だ。

「リロード!」

 一人が叫ぶ。
 弾倉の脱着を行う彼の手際は文句の付けようのないものだ。

「死ねぇ!」

 弾幕が収まった事を確認し、もう一人が援護の射撃を行う。
 一切の躊躇がない、明らかに殺傷を避けようとしない射撃。
 うん、頼もしいね。

<<こちら第三班、左から援護する>>

 別の班が入口に向かって左手の廊下から登場し、階下に向かって制圧射撃と閃光手榴弾の投擲を実施する。
 こちらに正対する形で展開していた敵はひとたまりもない。
 物陰に隠れられたと思ったら、無防備な真横から銃撃を受けたのだから仕方が無いといえばそうだ。
 一瞬で数名が遮蔽物から殴り飛ばされたかのように飛び出し、そのまま動かない。
 数名が何とか抵抗しようと銃身を向け直すが、俺の同僚たちを傷つけさせてなるものか。

「こっちだ!」

 注意を引きつけるようにして僅かな弾倉の残りすべてを叩き込み、全力で土嚢の影へと戻る。
 再び俺めがけて銃弾が殺到し、そして階下から爆発音が聞こえる。
 もういい加減、冗談抜きで耳が使い物にならなくなってきたな。

<<こちら第四班、西側非常階段は今だ健在。
 現在溶接を継続中>>

 鋼鉄の扉というものは実に使い勝手が良い。
 火災の時には炎を遮断してくれるし、敵襲時にはバリケードとして作用してくれる。
 おまけに、溶接が完了すれば容易には突破できない強固な防壁としても機能するというおまけ付きだ。
 消防法に感謝だ。
0293図書館戦争 ◆f1t8rvbeF8mh
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2011/08/11(木) 00:53:16.85ID:uVFKvArC
「あああああ、腕がァあ俺の腕がァアああ!!!」
「負傷者を救助、撃つな!医療班なんだぞ!クソが!退避!」
「たひゅ、たふけ、いき、できな」
「人でなしどもめ!本のために人を殺すのか!」

 階下からは良化隊員たちの怨嗟の声が聞こえてくる。
 もっと苦しめ。もっと死ね。
 まだまだ、俺の両親や仲間たちの流した血には足りないんだ。

「目が、目がみえない!おれの目がみえない!誰か!畜生!畜生!あ」

 至近距離で閃光を観てしまったらしい一人が喚き散らしながらのたうち回っている。
 だが安心して欲しい、もう目の痛みを感じることはないぞ。
 耳障りな敵を黙らせてから振り向いた俺は、駆け寄ってくる機関銃班の頼もしい姿を目にした。
 アレがあれば、もっとたくさん殺せる。
 もっとたくさん守れる。

「直ぐに展開!敵はいくらでもいるぞ!」

 貴重な火力として本日の激戦区ばかりを味わっている彼らは、心の底からの同意を示す歪んだ笑顔で返してくれた。
 
<<本部より各員、第二便到着、増援二個分隊が合流した。
 弾薬が少ない部隊は申告せよ>>

 先ほど聞こえたヘリの音は気のせいではなかったようだ。
 次々とあちこちに突き刺さる銃弾のおかげでどうにも集中できないな。

「入ってきたぞ!弾幕絶やすな!」

 一斉になだれ込もうとしてきた良化隊員たちに次々と銃弾が襲いかかる。
 彼らも当然ながら反撃は行っているが、狭い入口に対して広い室内から一斉に撃ち込まれるこちらの物量に屈してしまう。

「止めろ!撃つな!」

 何か聞こえた気もするが、きっと気のせいだろう。
 だって、目の前の良化隊員たちはもうみんな死んでしまっているじゃないか。

「直ぐに次が来るぞ!」

 奴らはいくら殺しても湧いて出てくるからな。
 全く弾薬費がいくらになるのか心配になってくるよ。

<<こちら二階会議室!敵はハシゴを用いて窓から侵入してくる!
 おい!構わないから蹴倒してやれ!>>

 銃声混じりの通信が入る。
 やれやれ、機動隊じゃないんだからそんな入り方はやめてくれよ。

「ガス弾が来るぞ、防護マスクを持っていないものは直ちに屋上まで戻れ。
 確か第二便で持ってきていたはずだ」

 機関銃手から装備を受け取り、部下たちを下げる。
 これでガス弾が来なかったらいい恥さらしなのだが、たぶん来るんだろうな。
 事前に回されて来る敵情要約にはそう記載されていたのだから間違いない。
 しかしながら、こちらの分析能力を知られるのが好ましくないのはわかるが、情報部関連部員だけではなく、全員に知らせるべきじゃないのか?
0294図書館戦争 ◆f1t8rvbeF8mh
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2011/08/11(木) 00:59:13.85ID:uVFKvArC
「やっと見つけたぞ」

 そんな事を思いつつ防護マスクの装着を確認したところで、聞き慣れた声をかけられた。

「ああ、これは堂上図書正殿、ご無事でしたか」

 軽機関銃を装填する。
 鈍い金属音が鳴り、堂上の隣にいた笠原が嫌そうな表情を浮かべる。
 民間人に近いメンタリティを持つ彼女にとっては、俺は相当に禍々しく見えることだろう。

「なんとかな。そちらも元気そうで何よりだが」

 そう答えつつ、彼の目線は俺の防護マスクと軽機関銃を行ったり来たりしているようだ。
 彼ほどの人物であれば、このクソ忙しい状況で余計ないちゃもんを付けてくることはないと信じたいのだが。

「アンタ、勝手にマシンガンを拾ってきて、そんなに人殺しがしたいか!」

 なるほど、彼が口を出さなくても、こいつがいたか。
 それにしても小娘め、機材の名前ぐらい正しく覚えろ。

「ちょっと失礼!」

 いきなり怒り狂いだした笠原を無視し、俺は軽機関銃の引き金を絞った。
 偵察のつもりなのか数名で突入してきた連中におもてなしを行う。
 どうやら歓迎したいのは俺だけではなかったようで、正面玄関を射界に収める左右の陣地からも銃弾のシャワーが浴びせかけられる。
 おやおや、勇敢な彼らが即死したのは喜ばしいことだとして、必死に這いずっていた負傷者たちまで殉職してしまったようだな。

「おい通信、増援をもう少し呼んでくれ。
 たぶんここに一斉に仕掛けてくるぞ」

 突然の連射に驚いている堂上たちを無視し、俺は近くにいる通信士に命じる。
 ガスを使うにしても使わないにしても、危険性は大きいが一斉に大勢を突入させられるこの正面玄関を突破口にするはずだ。
 そんな事を思っていると、二階右側の陣地にも軽機関銃が到着しているのが見える。
 護衛は一個小銃班か。
 よしよし、これで火力は安心だな。

「いきなり撃つな!それにあの人達は!」

 一体なんなんだろうこの女は。
 ここがどこで、今なにをしているのかを知らないのか?
 戦闘中とは思えない態度に思わず俺が激高しかけた瞬間、何かが煙を引きながら飛び込んできた。
 防護マスクを既に被っておいて正解だったな。
 
「状況ガス!ガス!ガス!防護マスク着装!無いものは下がれ!」

 おいおい、確かにガス弾使用の有無については書面では取り交わしていないが、一応紳士協定で使わないことにしているじゃないか。
 それに、そんなものを使ったところでここは屋内射撃場なんだぞ。
 大歓迎してやる。
0295図書館戦争 ◆f1t8rvbeF8mh
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2011/08/11(木) 01:02:07.52ID:uVFKvArC
「三曹殿」

 あの図書士長が声をかけてくる。
 彼も当然ながら防毒面の準備はできていたようだ。

「もう三曹じゃないぞ。それでなんだ?」

 予め命じておいた図書士たちが運んできた会議用長机を持ち上げ、階段に向けて投げつける。
 にぎやかな音を立てて次々と長机達が階段を転げ落ちていく。
 着色された催涙ガスが立ち込め、ガスマスクで視界が狭まり、さらに防御射撃を浴びながら、この階段を登り切れたらご褒美に至近距離から撃ってやろう。
 ガスが充満するまであと二十秒ほどだろうか。
 セオリー通りすぎる動きからして、ストップウォッチで図りながら突入してくるはずだ。
 この手の突入方法をやったことがない良化隊員たちは、それ以外やり方を知らないからな。

「ご指示をお願いします」

 どうやら訂正するつもりはないらしい。
 
<<至急至急、本部より各員。
 良化隊はガス弾を使用した模様。防護マスクを持っていないものは直ちに屋上まで退避。
 手薄になる部署は報告せよ!>>

 通信機の向こうからは混乱した様子が伝わってくる。
 敵を欺くにはまず味方からというのは有名な言葉だが、それで準備もなしに催涙ガスを吸わされる連中はたまらんだろう。

「全員防護マスク着装を再確認。
 何か動いたら遠慮はいらんから撃て」

 次々と催涙ガスが充満していく中、戦闘準備が進んでいく。
 防護マスクを持っていない者たちは咳き込みつつ廊下へと下がっていき、逆に準備のいい連中が続々と流れこんでくる。
 今後はこれも標準装備になるんだろうが、重いから毎回持っていくのは嫌なんだよな。

「笠原っ!いいから被れ!」

 いきなりの怒号に思わず振り向くと、長身の体を折って座り込んでいる笠原に堂上が防護マスクを無理やり被せていた。
 どうやら彼女は持ってきていなかったようだ。
 確かに彼女は女性通信士として前線には出さない予定だったはずだし、当然といえば当然か。

「そん、な。教官、こそ」

 激しく咳き込みつつそんな事を言っているが、いいから黙っていろ。
 というか、さすがは特殊部隊の教官殿だ。
 自分の防護マスクを部下に与えつつ、引きずって退避しようとする余力を残していらっしゃる。

「すまん、まか、せる」

 人間である以上、刺激物の影響はあるようだが、それでも言葉を発せるとはな。
 感心している俺の鼓膜を、玄田隊長の声が叩く。

<<玄田より全隊員へ。
 あと5分で検閲時間は終了する。
 何としても生き延びろよ。以上だ>>

 気がつけばもうそんな時間になっていたようだ。
 ガスが急速に広がっていく中、敵の攻撃は怖いほどに静かになっている。
 まもなく、突入なのだろうな。
 さあ、ラストスパートだ。
0299創る名無しに見る名無し
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2011/08/11(木) 17:06:46.06ID:7mCk36HT
乙です!
意外と原作組が元気?
笠原あたりは吐くか泣くかしてるかと思ってたけど
0300創る名無しに見る名無し
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2011/08/11(木) 18:36:10.24ID:WH6dj/k0
乙です
図書隊はすごい勢いで経験積んでんなw
こいつらレンジャーとかとも渡り合えるんじゃね
そして笠原はもう転職を考えたほうがいいな
さすがにここまで危険度の高い職場だと過保護じゃなくても親が心配するのは当たり前だわw
0301創る名無しに見る名無し
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2011/08/11(木) 20:11:50.32ID:UWurJYS+
>>300
図書隊はあくまで防御
テロリストに対しては容赦ないけどな
レンジャーとの交戦は政府が自衛隊に出動命令出さない限り無いだろ
0302創る名無しに見る名無し
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2011/08/12(金) 00:28:22.72ID:+S560JX5
>>301
いや…単に能力的なこと言ってるのに
現実的に交戦する可能性がないとか
何ずれたこと言ってるんだ

もっともこれ以上派手にやらかすと自衛隊の出番もありそうな気がするが
0303創る名無しに見る名無し
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2011/08/12(金) 15:14:38.93ID:4EcX/Rsp
>>302
能力的な例えするなら「〜に匹敵する」または「〜相当な戦闘力」
前者だと潜在的な敵扱いになるから
仮にも「書物の守護者」なら言葉の選択は慎重に

元ねたの「図書館戦争」が発表された時は「政権交代」なんてフィクションの時代だったんだよな(遠い目
0305図書館戦争 ◆f1t8rvbeF8mh
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2011/08/18(木) 23:39:48.10ID:ZbGZJ3LO
正化31年10月22日水曜日11:26 神奈川県小田原市 財団法人情報歴史資料館 一階正面玄関前

 情報歴史資料館を廻る攻防戦は、遂に最後を迎えようとしていた。
 大量に打ち込んだ催涙ガスの煙を利用しつつ正面玄関前の階段下に集合する良化隊員たち。
 彼らの手には自動小銃や防弾盾が握られており、煙に乗じて一斉に突入を図るつもりである。

「課長、突入準備完了しました。
 あと二十秒で時間になります」

 ストップウォッチを持っていた課長補佐が声をかける。
 作戦終了まであと僅かとなったこの時、正面玄関前では三十六名の隊員が突入準備を整えていた。
 全員が一人でも多くの図書隊員を道ずれにするため、隠しようの無い殺意を持ち、戦意は負けかけているが故に極めて高かった。

「うん、あと4分と少し、みんな申し訳ないけど、付き合ってもらうよ」

 メディア良化隊神奈川支部小田原支所特務機関強制査察課長という肩書きを持つ彼は、部下たちに語りかけていた。
 そのような事をしている時間が無いことは重々承知しているのだが、それでもこうする必要性を感じたからだ。
 何しろ、これから向かうのは機関銃陣地である。
 そこに、気休め程度の役にしか立たない防弾盾を構えて突撃しなければならないのだ。

「今回の作戦ではこちらがあまりにもやられすぎている。
 こんなことは言いたくないけど、傾いた天秤は正さないといけない。
 一人でも多くの敵を倒し、一人でも多く生きて帰るんだ」

 多くの犠牲が出ることは、残念ながら確定された未来である。
 それでも、いや、むしろだからこそ、彼らはガス弾まで投入して突撃しなければならない。
 叩かれっ放しでは、法務省と文部科学省の間で行われるパワーゲームに確実に悪影響が出てくる。
 それに、現時点で判明している死者数だけでも、首都圏のメディア良化隊は大幅な戦力不足に悩まされることが決定している。
 当面の活動のためにも、今後のためにも、ここでの突入は行われなければならないのだ。

「正直なところ気は進まないけど、これも俸給の内だからね。
 それじゃあ、そろそろ行こうか」

 彼はそこまで言うと正面へと向き直り、指揮棒を振り上げた。

「総員、突入!」

 彼の号令とともに、突入支援にまわされた二個小隊が一斉に支援射撃を開始する。
 三丁の軽機関銃が正面玄関内部に向けて制圧射撃を開始し、さらに89式小銃やMP5から放たれた銃弾が窓という窓に立て続けに撃ち込まれる。
 優先的に弾幕を叩き込まれたために壊滅状態に陥っていた狙撃班たちも、この時ばかりは勇気を出して支援射撃に参加している。

「第一班盾構え!前進!突撃!突撃!」

 班長や主任たちが声を張り上げ、二枚重ねにした防弾盾を構えた隊員たちが階段を一気に駆け上がる。
 ガス弾使用前に撮影された映像により、正面玄関に入って直ぐの場所には障害物は無いはずだ。
 武器としては全員がMP5もしくは拳銃と軽装だが、半円を書くようにして陣を作り、待ち伏せに備えるというのが彼らの仕事だ。
 そのために、盾の使用に影響がある武器を持つことはできない。

「第一班に遅れるな!第二班腰を上げろ!突入!」

 自動小銃を構えた彼らは、戦果拡張が仕事だ。
 防弾チョッキを着込もうとも意味を成さない小銃弾を叩き込むことのできる彼らは、敵の人員を殺傷するという作戦目標に必要不可欠な存在である。
 盾を振り上げて前進する第一班たちが玄関前の階段を上りきろうとするところで、支援の発煙弾がさらに撃ち込まれる。
 今回の作戦のために急遽徴用された警視庁機動隊からの出向ということもあり、彼らの狙いは正確無比だ。
0306図書館戦争 ◆f1t8rvbeF8mh
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2011/08/18(木) 23:40:31.16ID:ZbGZJ3LO
「足を止めるな!展開急げよ!」

 この時、メディア良化隊特殊査察課員の一人である飯豊という名の彼は、仲間たちとともに最前列の第一班に所属していた。
 煙があふれ出る正面玄関の向こうは、濃い霧に覆われているようなものだ。
 視界は全く無いといっても過言ではない。
 
「行くぞぉぉ!!!突撃!!」

 防護マスクを着用しているために苦しい呼吸を何とか耐え、仲間たちとともに正面玄関へと続く階段を駆け上がる。
 彼の左右には良化特務機関訓練学校以来の同期たちの姿がある。
 誰もが今までの激戦に耐え抜き、そして今日という異常な一日も生き延びることができている精鋭だ。
 非力な書店や出版社虐めしかできない一般隊員とは違うという意識が、今日は特にプラスに影響しているようだった。

「飯豊!遅れるなよ!」

 傍らを進む仲根が声をかけてくる。
 低俗なタブロイド紙の記者をやっている父親への反発心から良化隊に入った彼は、今日は一段をやる気に満ちている。

「お前こそな!野田!お前もだよ!」

 自分の左隣を走る同期生に会話を繋げる。
 雄たけびを上げていてこちらの声は聞こえていないようだが、そこからは豊富な戦意しか感じられない。
 あるいは恐怖心を押し殺すために気合を入れ続けているだけかもしれないが、彼の射撃能力は光るものがあり、隣にいてさえくれれば安心して戦える。
 研修期間中に実家の書店に査察に入ったときには随分と荒れていたが、時間が全てを解決し、今では優秀なメディア良化隊員だ。
 
「報告!飯豊ほか二名突入します!」

 胸元のマイクに怒鳴ると同時に破壊された自動ドアを抜ける。
 先ほど追加の発煙弾が撃ちこまれたため、屋内は催涙ガスが充満していて何も見えない。
 とにかく感覚で進み、盾を床に叩き付けるようにして構える。

「報告!敵の抵抗なし!展開完了!」
<<報告!吉田ほか二名突入に成功!展開も完了!>>
<<ほっ報告!和田ほか二名、展開完了しましたっ!>>

 通信機からは作戦が順調に成功していることを示す仲間たちの報告が聞こえてくる。
 思わず頬が緩む。

「なあおい、順調じゃないか」

 隣にいるはずの仲根に声をかける。
 停電しているのか警報音すらならないため、エントランスホールは自分たちが立てる物音以外何も聞こえない。
 後ろからは後続の第二班が立てる賑やかな足音と雄たけびが連鎖して聞こえてくる。

「図書隊の連中、たまらず下がったのかな?」

 仲根から押し殺した声が返ってくる。
 煙と防護マスク越しに見ても分かるほどに緊張しているらしい。

「どうだろうな、どうにも敵の動きが大人し過ぎると思うんだよ」

 反対側の野田からは後ろ向きな意見が聞こえてくる。
 だが、俺としても奴の意見に同意だ。
 これ以上の消耗を避けるためにも、下がれるだけ下がって時間切れを待つという作戦は決して間違っていない。
 そのはずなのだが、今までの猛烈な反撃を見ていると、どうしても連中がそんな策を取るとは思えないのだ。 
0307図書館戦争 ◆f1t8rvbeF8mh
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2011/08/18(木) 23:41:48.50ID:ZbGZJ3LO
<<本部より第一班、第二班が突入した、警戒せよ>>

 やっと来たか。
 一分も経っていないはずなんだが、随分と待たされたような気がするな。

「頭上に警戒!進むぞ!道空けろ!」

 危険を冒して振り向くと、ガスを切り裂くようにして第二班が続々と突入してきていた。
 室内にガスが立ち込めている関係で後光が差しているかのような背景からのその姿は、幻想的ですらあるな。

「突入!道を開けろ!」

 自動小銃を構えたまま第二班は突入を継続する。
 二階や左右の通路に銃を向けて警戒しつつ、後ろから続く隊員たちが階段のある方向へ向けて突き進んでいく。
 訓練にあたったSATや自衛官達が見ても満足感しか覚えないだろうその姿は、非常に頼もしい。
 
「警戒しろよ!」

 前衛に続けて突入に成功した主任が叫ぶ。
 彼と共に入ってきた良化隊員は小銃を頭上に向けてはいるが、立ち込める催涙ガスのせいで視界不良というより視界ゼロである。

「ガスが濃い!頭上に注意!」

 口調こそ厳しいが、どこか虚しさが漂っている。
 第二班は口頭ながら無制限の殺傷行為を許可されており、さらにありったけの弾薬を持たされている。
 だが、決死の覚悟で突入してみれば、抵抗はなく、それどころか敵の姿さえ見えない。
 おまけに味方のガス弾のおかげで何も見えないので奥へ進むこともままならない。
 こんな状況じゃあ俺たちも活躍のしようがないんだが。

「油断するなよ!」

 互いに声を掛け合いつつ、盾を構えたままゆっくりと歩みをすすめる。
 その後ろから第二班も付いてくるが、視界不良が邪魔をして足元を確かめつつという締まらない姿だ。
 左右の同僚と隙間を開けないように気をつけつつ、前進を続ける。
 一歩、また一歩、さらに一歩。
 敵の抵抗はない。
 うまくすれば抵抗皆無で正面玄関制圧ぐらいは出来るかもしれないな。
 俺がそんな事を思ったところで、盾に固い何かが幾つも投げつけられた。

「す、スタングレネード!」

 仲根の上ずった警告が聞こえる。
 それに答える余裕もなく、俺の視界は閃光に包まれた。
0308図書館戦争 ◆f1t8rvbeF8mh
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2011/08/18(木) 23:42:35.22ID:ZbGZJ3LO
正化31年10月22日水曜日11:28 神奈川県小田原市 財団法人情報歴史資料館 一階正面玄関

「スタングレネード炸裂の数秒後に一斉射撃、一人も生きて返すなよ」

 眼下の一階部分からは、良化隊員たちの立てる不用意な騒音が響いてきている。
 外部監視班からの情報では全部で一個小隊ほど、今入ってきているのは二個分隊と少しだけのようだ。
 もう少し引きこんでからのほうが理想的ではあったのだが、時間がない。
 とても残念なのだが、ここまでだな。

「用意」

 隊内無線に向かって囁く。
 機関銃が静かに階下を向き、小銃手たちが攻撃準備に入り、閃光発音筒を持った俺を含めた六名が投擲の準備をする。

「投擲」

 掛け声など出さず、全員が無言で階下へ向けて投げつける。
 すぐさま床に伏せ、目を閉じて耳を塞ぐ。
 一秒、二秒、三秒、閃光、轟音。
 目を閉じていても感じる強い光と、耳を塞いでいても鼓膜を叩く轟音が聞こえる。
 だが、それを苦しむという贅沢はあとだ。
 小銃を構え、階下へ向ける。

「全員撃て!」

 傍らの機銃手が返事もなしに銃撃を開始する。
 周囲に伏せていた隊員たちが、一斉に立ち上がって発砲を始める。

<<第二機銃座撃ち方始め>>

 向かって左側から煙越しにも分かる銃火が見える。
 護衛の隊員たちも撃ちまくっているようだな。
 
<<第三機銃座撃ち方始め。スタングレネード残り三発>>

 ありがたい事に、右側の陣地にはまだ残りがあるらしい。
 残り時間は一分と少しだから、次回に取っておこう。

「敵襲!待ち伏せだ!」

 階下からはうめき声に混じってそんな警告の叫びが上がる。
 遅すぎるんだよ素人どもめ。
0309図書館戦争 ◆f1t8rvbeF8mh
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2011/08/18(木) 23:43:17.99ID:ZbGZJ3LO
「応戦しろ!」

 ようやく反撃し始めたか。
 まあ、煙の中でスタングレネード六発の不意打ちを受けたにしては非常に早い立ち直りだ。
 評価を素人から雑魚に格上げしてやる。
 声が聞こえた方に向けてフルオートの一連射を叩き込む。

「畜生!どこにギャ」

 よし命中。
 喚き声が聞こえないところを見ると、一撃で致命傷を負わせるか気絶させたのだろう。

「頭を上げるな!頭上げるな!ふせr」

 指揮官らしい命令が聞こえたが、直後に途絶えたところを見るとこちらの銃弾が命中したのだろう。
 
「主任!頭部に被弾!後送するぞ!」

 銃声に混じってそんな言葉が聞こえてくる。
 敵指揮官一名射殺。
 こんなものではすまさんぞ。
 煙で視界を遮られつつも、素早く弾倉交換を行う。

「盾を上げろ!早く防ぐんだ!後退!」

 さすがに視界が悪すぎるだけあり、これだけの火力を集中させても直ぐには全滅させられないようだな。
 次回はいい加減に破片手榴弾ぐらいは使わせて欲しいものだ。

「いた、痛い、ちくしょう、いた」

 とはいえ、一個小銃小隊に軽機関銃が三基、それが大きいとはいえわずか一室に集められているのだから、いつまでも当たらないわけがない。
 順調に階下の人々を殺傷できているらしく、金属製の盾が転がる音や、逃げようとしてもみ合う人々の罵声が聞こえる。

「やめろ!撃つな!降伏する!」
「撃つな!撃つな!畜生!撃つな!」

 必死に逃げ惑いつつ戦意が無くなったことをアピールしているようだが、無駄だったな。
 両手を上げて動きを止めたところで一瞬で蜂の巣になっているようだ。
 そもそも、いくら叫ぼうともこちらは銃声で聞こえない。
 おまけにこちらは戦意と殺意が旺盛で、今後の情勢を見据えて一人でも多くの良化隊員を殺害しなければならない。
 止めに、一人でも戦意を喪失した者を射殺した以上、仮に気がついた人間がいたとしても、処罰を逃れるためには目撃者を抹殺しなければならない。
 大変申し訳ないが、良化隊の皆様にはご了承いただく他あるまい。
0310図書館戦争 ◆f1t8rvbeF8mh
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2011/08/18(木) 23:44:43.58ID:ZbGZJ3LO
正化31年10月22日水曜日11:29:30 神奈川県小田原市 財団法人情報歴史資料館 一階正面玄関前

「課長」

 土嚢に身を隠し、必死に状況を掴もうとしている私のところに、課長代理が現れた。
 先程から盛大に流れ弾が飛び込んでくるおかげで、彼はほとんど地面に伏せているような状況だ。

「なんだ?時間か?」

 わかってはいるが、思わず尋ねてしまう。
 査察に関する時間は非常に厳密に管理されており、出来る限り一秒単位のズレすら出さないようにしている。
 それは、事前に申請された時間こそが日本国と戦場という2つの世界を切り替えるための絶対的な存在だからである。

「あと二十六秒です。信号弾の準備をお願いします」

 課長代理の言葉は非常に落ち着いたものであり、またゆっくりとしたものであったが、私は腰に下げた信号拳銃を手にとった。
 私の他に二人、課長級の人間が信号弾を打ち上げる。
 また、それと同時に図書隊の人間も同様に三人が同じ手順を実行する。
 これとは別に双方の拡声器が戦闘終了を知らせるブザーを鳴らすことになっており、これでも発砲をやめなければ、それは処罰の対象となる。
 以前はブザーだけだったらしいが、戦闘の激化が人間の注意力を大きく奪うことから、今回から急遽信号弾による合図も加えられることになったそうだ。
 とにかく、私の部下たちがこれ以上傷つかないのであればそれでいい。
 私は仰向けになると、信号拳銃を大空へと向けた。

「残り五秒、四秒」

 課長代理の冷静な声が残り時間を告げていく。
 部下たちが突入した正面玄関からは、未だに銃声が鳴り続けている。
 誰も後退してこないところを見ると、まず間違えなく全滅か、良くて釘付けになって身動きがとれない状況のはずだ。
 早く、早く終わってくれ。

「二秒、一秒、今」

 課長補佐の言葉と共に、私は信号弾を発射した。
 反動と共に煙を引きつつ信号弾が飛び出し、大空へ向けて飛んでいく。
 視界の端には双方が打ち上げた信号弾が同様に敷地内のどこにいても見えるように飛翔中である。

<<査察終了、査察終了、撃ち方やめ>>

 無線、拡声器、放送設備の全てから大音量で戦闘中止を命じる言葉が発せられ、さらにブザーが鳴る。
 やっと終わった。
 同じ日本人の、それも公務員同士が税金を使って殺しあうなどという愚行の、本日の部が終了してくれた。
 
「課長」

 呆けたように空を眺めていた私を叱るように、課長代理が囁く。
 そうだった、まだ何も終わっていなかった。

「全員武器を格納しろ!直ちに負傷者の収容!救急車までの道を開けろ!」

 照れを隠すように私は声を張り上げ、まだ生き残っていた周囲の部下たちに命令を下し始めた。
 先ほどとは方向性がまるで違うが、これも時間との勝負だ。
 できるかぎりの成果を出さなくてはならないな。
0311図書館戦争 ◆f1t8rvbeF8mh
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2011/08/18(木) 23:46:01.31ID:ZbGZJ3LO
正化31年10月22日水曜日11:35 神奈川県小田原市 財団法人情報歴史資料館屋上 臨時指揮所

「注意!ヘリが離陸します!下がって!頭を下げて!」

 屋上の片隅にあるヘリポート付近で、本部管理小隊の図書士長が声を張り上げている。
 緊急搬送が必要な負傷者の数は未だに多数おり、救急車や図書隊の車両を総動員しても全く不足しているのだ。
 昇降の整理により稼がれる時間がたった一秒であっても、今は大切だ。

「玄田隊長」

 作業の様子を眺めていた玄田のところに、本部管理小隊長が報告に来る。

「おう、なんだ?」

 どうせ碌でも無い報告であることは理解しているが、彼の立場がそれを聞かないという選択を許さない。
 
「現時点で確認されている殉職者と、緊急搬送が必要な重症者の数です」

 手渡されたリストは長い。
 今回は過激化するばかりの昨今の警備の中でも特筆すべき激戦であり、かなりの死人が出ることは覚悟していた。
 しかし、実際に百人を超える死傷者を見せつけられると、さすがの玄田も力が抜けてしまうことを止められない。
 良化隊に与えた損害はこんなものではないだろうが、それはそれである。

「確かに今回の警備で守られたものは、それだけの価値はあるのかもしれん。
 だが、だがな」

 彼が内心で渦巻く何かを吐き出しそうに鳴った途端、傍らの小隊長が叱りつけるように小声で話しかける。

「失礼ですが玄田隊長、それ以上はいけませんよ。
 彼らはなんのために死んでいったんですか」

 処罰を覚悟しているに違いない鋭さを持ったその言葉は、被害の大きさに麻痺しかけていた玄田の意識に強烈な一撃を加えた。
 そうだ、俺たち図書隊はなんのために武装し、なんのために死ぬのか。

「我々の目的は、日本国の自由と民主主義の保全ですよ。
 今さら何を言っているんですか?」

 凍りついたようになった二人に、背広姿の男が歩み寄る。
 一切の権限を持たず、ただ観戦のためだけにこの指揮所に立っていた男。
 情報部の責任者としての権限を持ち、ヤマダ、スズキ、サトウといったありふれた名前で呼ばれる彼は、愉快そうな笑みを浮かべて続けた。

「自称治安維持を担当する警察、国防の任につく自衛隊、そして我々。
 警察は随分と頼りないですが、とにかくこの国の自由と民主主義を護ることが出来るのはこの組織だけです。
 犯罪者、敵国、メディア良化隊、こういった手合いを撃滅することこそが我らの存在意義であり、期待されるべき働きじゃないですか」

 何か恐ろしいものを見るような視線を周囲から浴びせられているにもかかわらず、彼は笑みを崩さなかった。

「これで流れが変わるでしょう。
 良化隊の連中も、我々と殴り合えばどうなるかを少しは理解できたはず。
 今後の展開に乞うご期待といったところですが、失礼」

 そこまで言い放ち、彼はイヤホンから聞こえてくるらしい無線にいきなり集中し始めた。
 まともに相手をしたくない周囲の人々が本来の作業に戻ろうとした瞬間、彼はまたもや口を開いた。
0312図書館戦争 ◆f1t8rvbeF8mh
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2011/08/18(木) 23:47:21.56ID:ZbGZJ3LO
「なんだと!?」

 それは文字では表現できないほどに切迫した、悲鳴にも似た響きの声音だった。
 再び視線が集中するが、彼は先程までのキャラクターを完全に捨て去り、ありのままの態度で何者かの報告に聞き入っている。

「護衛は?全滅だと!?それに、爆破ってお前、あの会場が全て、なのか?」

 先ほどとは全く異なる意味で異常な様子に、玄田は声をかけるタイミングを失っていた。
 いつまでも止まっている訳にはいかない人々は作業を再開するが、それでもチラチラと様子を伺っている。

「何があった?聞かせてもらえるんだろうな?」

 それほど時間が経過したわけではないが、ようやく落ち着いた様子の彼に玄田は話しかけることに成功した。
 声をかけられた方は、引きつった笑みを浮かべつつ、極めて平坦な口調で情報を伝えた。

「野辺山宗八氏の葬儀会場が襲撃された」

 それは、極めて重大な情報である。
 この情報歴史資料館の持ち主であった野辺山氏の葬儀には、メディア良化法に反対する立場の人々が多く参列していた。
 当然ながら、その中には社会的に高い立場の人々もいる。
 例えば、関東図書基地司令にして特等図書監である稲嶺和市氏である。

「それは、稲嶺司令はご無事なのか!?」

 話を盗み聞きしていたらしい他の隊員たちも駆け寄ってくる。
 本来であれば叱責に値する行動なのだが、そもそも玄田自身あまりのことに我を見失ってしまっていた。

「わからん」

 対する彼は、周囲の様子で逆に落ち着かなければと思ったのか、口調は先程より若干冷静さを取り戻している。

「護衛は全員射殺されていた。
 おまけに葬儀会場が大規模に爆破され、周囲一帯は阿鼻叫喚の地獄絵図らしい」

 状況は最悪を超えていた。
 葬儀には、稲嶺司令だけが参加していたわけではない。
 通常業務に差し障りのない範囲で複数の図書隊幹部が参列しており、それ以外の参列者たちも潜在的な図書隊派の人々だ。
 こんな事を言っては不謹慎極まりないが、大打撃である。

「既に県警は緊急配備を敷いたそうだ。
 現在周辺の県警に働きかけて全ての県境を封鎖すべく手配中とのことらしい。
 周囲の消防は全て出動らしいので、恐らくは大規模な火災も発生しているはず」

 通常の火災とは異なり、建造物に対する爆破テロで大規模な火災まで発生したということは、恐らく内部の人間は絶望的である。
 参列者は数百人の規模のはずだが、恐らく生存者は数十人いれば御の字といったところだろう。

「犯行声明は出ているのか?」

 当然の質問である。
 まだ具体的なところは見えていないが、話を聞いただけでも相当の大規模テロである。
 今日の戦闘でも片鱗は見えていたが、良化法に賛同する団体は、本格的なテロリストとしての道を歩むことを決定したようだ。
 そうであるからには、暴力によって自己の意見を主張するための何らかの声明がなくてはならない。

「今のところはまだだが、必ず声明が出されるはずだ。
 私は基地に戻る。ここの撤収を急いでくれ」

 そこまで言い放つと、情報部の男は足早に階下へと消えていった。
0314創る名無しに見る名無し
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2011/08/19(金) 00:21:27.61ID:VlZZCJqa
乙です
とうとう良化隊もなりふり構わず本気を出してきたか・・・
これはマジで内戦になるかもしれんね
0317創る名無しに見る名無し
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2011/08/20(土) 03:13:46.18ID:5H4iQ1UL
笠原は司令の護衛についてなくてよかったなほんと
ここまでくると本気で自衛隊介入してきそうだな
0318創る名無しに見る名無し
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2011/08/20(土) 13:12:24.89ID:/9BMVSmM
自衛隊は戦場に投入はしても事件の捜査や犯人逮捕は警察の仕事だからな

皆殺しにしてもかまわないなら自衛隊が最適だが
0319創る名無しに見る名無し
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2011/09/05(月) 07:43:28.60ID:SuCyGPsj
保守
0320創る名無しに見る名無し
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2011/09/08(木) 01:54:10.07ID:9r+H2VF/
ほしゅ
0321創る名無しに見る名無し
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2011/09/22(木) 21:28:19.18ID:UQoAry4X
保守
0322創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/09/22(木) 21:50:50.30ID:ZqZX5sJs
サバイバルマンガを発見した。
ttp://non.gazo-ch.net/thread/34/533508/#TOP533508
0325創る名無しに見る名無し
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2011/10/05(水) 18:31:58.07ID:dHSLayPS
【オンラインゲームはネクソン!】

パソコンのマウスをクリックすると銃弾が発射されて最悪の場合、敵が死ぬ。

テロリストと特殊部隊が殺しあうゲーム。その名はCSO。
殺すと、その分はクレが貰えてさらにレベルもあがる。
戦うスタンスは様々。
マグスナでキルを稼ぐクソ野郎、マシンガンで芋るクズ、チートを使う変態。
またクランというチームを作り、なれ合いをするバカもいるようだ。
俺の名前は、「まーくんEX」。階級は大尉2。
実生活では、高校の講師をしている平井真幸って言う男。
主に、非課金武器のガリル先生でキルを稼ぐ突入型だ。
最近はゾンサバでボンバーマンになり楽しんでいる。

「新MAP現実」

現実?
なんだそりゃ?
しかも最大人数40?

クリックする。
だが、そこにあったものは待機室ではなく真っ青な画面だった。

ブルースクリーン?
何が起きてる?

突如、記憶が吹き飛ぶ。
体はかなしばりにあったみたいに動かない。
目を瞑ると、自分の心臓の鼓動のみが聞こえる。

腹が裂けそうに痛い。
死ぬ?
死ぬのか?
あーあ、嫌だな…。
バーカ。死にたくねぇよ…。

魂を引き込まれるような感覚とともに意識が無くなった。
0326創る名無しに見る名無し
垢版 |
2011/10/05(水) 22:22:56.79ID:dHSLayPS
【CT 20人】
波平
あーちゃんカンガルー
俺様☆キタ〜
佐々木智也
まーくんEX
弁は死ね
キラービット
araki
ジョゼフ
チョン×テセ
I LOVE おっπ
ハルカカナタ
King
TAKASHI
こんにちわ根岸
JaCKerL
◎アンチ運営◎
伝説の右FW
マツバラマコト
GANTZ
0327創る名無しに見る名無し
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2011/10/08(土) 17:47:16.70ID:V5NzvLhH
目の前に現れたのは、ネオンが光るオフィス街。
空は夜なのに対して、あたりは不気味に明るい。
そして、足の裏からは、コンクリートの感触が伝わる。
ここは現実。
実際にチームデスマッチを体験するというステージ。
両手に握られているのは、『IMI GaliI ARM』。俗に言う『ガリル』。
装弾数35発。保持可能弾数90発。
威力はそれなりだが、反動しにくくて軽い。
他のメンバーも状況を把握できていないらしく、罵倒している。

「どないなっとんねん。俺は帰るで。」 
「おいおい、ふざけんじゃねぇぞ!!!」
「実銃…?」

パン

辺りは血液で染まる。
太った少年が、額から血を流して力無く倒れた。

『キラービット→GANTZ』

人が死んだ。
眼鏡をかけた青年のサブマシンガンから煙が出ている。
本当に実銃。
遅れて、悲鳴が上がる。

「あっああぁ…ぁぁあああああああああああぁぁぁっ!!!!!」
「銃口っ向けんじゃねぇ!!!」
「落ち着け!!!殺し合う前に同士討ちになるぞ!!!」
「…とりあえず…単独行動は控えよう…。」

ガリルを下ろす。
どうやら、本当に殺し合いになるようだ。
0328創る名無しに見る名無し
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2011/10/08(土) 18:25:14.73ID:V5NzvLhH
心臓が抉り出そうに痛い。
何が何だかわからず、思考が止まっている。

「まず、どう動くか?」
「この厨房がリーダーぶるつもりか?」
「では、状況を把握できている奴がこの中にいるか?」

金髪の男がそう言うと小柄な少年は黙る。
確かに、誰も理解できない。
いきなり実銃を渡されて、暴発で人が死んだ。
そして怖い。

その時だった。

ボン、という音とともにリーダーぶった男が撃たれる。
ガリルを持つ手が震えた。
頼れるリーダーが撃たれる。
どこから撃った?
ボーと立ちすくむ俺を小柄な少年が引っ張る。

「狙撃みたいだな…しかも上手く脳みそに当てている。」

小柄な少年が倒れる。
胸に的確に一発の銃弾を受け、膝から崩れ落ちた。
近くで銃声が鳴る。
マグスナを構えた大男が遮蔽物に隠れた敵を撃つ。

「俺に続くんや!!!止まったら殺されるで!!!」

関西弁の男が走る。
何人か続いたが、数人は撃たれて倒れた。
背後では、何人かのスナイパーが狙撃している。

「これじゃ、保たねぇぞ!!!全滅するっ。」

死ぬ?
撃たれる?

直後、近くにあったアスファルトが破裂し俺は気絶した。
0329創る名無しに見る名無し
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2011/10/08(土) 18:40:21.91ID:V5NzvLhH
・追記

『BOT JIM→佐々木智也』
『BOT JIM→ジョゼフ』
『俺様☆キタ〜→BOT JIM』
『BOT BEN→araki』
『BOT NICK→King』
『BOT NICK→ハルカカナタ』
0336666squadron
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2011/11/24(木) 21:40:13.68ID:1+nissG1
水曜日

全艦艇で警報が鳴り響いていた。
緊急総員配置のベルのかんだかい音に、唸りをあげて飛来する砲弾の飛翔音と、腹に響く着弾音が重なる。
厚く垂れ込めた雲のした、各自が出し得る最大速力で遁走を図る援ソ船団FR77を追撃する灰色の艦影があった。
船団撃滅に執念を燃やすドイツ軍は、じつにゲルマン的な勤勉さで潜水艦、航空機と手をかえ品をかえての攻撃の後に、つ
いに堂々たる主演女優−8インチ砲8門と21インチ魚雷発射管12門を持つ重巡洋艦−が満を持しての登場とあいなっ
たのであった。
慌しく発艦準備が進められる護衛空母の鼻先では、荒ぶる北海の波頭を切り裂いて戦隊旗艦ユリシーズとその忠実な盟友で
ある “おいぼれ”スターリングが、羊の群れと襲撃者の間に割り込もうと全速で回頭している。
「なんということだ!なんということだ!」
ユリシーズの艦橋では、ティンドル提督が足を踏み鳴らし、特大の癇癪を爆発させていた。
大英帝国海軍きっての高性能レーダーを有するユリシーズが、敵の水上艦艇に砲戦距離までの接近を許すなぞあってはなら
ないことである。
だがいかに卓抜した性能を誇るマシンいえど所詮は不完全な人間の手に成るものであり、電気的、あるいは人的要素に起因
するトラブル、または天候その他の悪条件によって、所定の性能を発揮できないという事態はいつだって起こりうるのであ
った。
そしてジャイルズじいさんの血圧をさらに押し上げているのが、決死の戦いに挑む女王陛下の巡洋艦二隻を差し置いて、ヒ
ッパー級の集中砲火を浴びるという栄誉にあずかっているのが旧植民地製の安物空母、我らがグラップラーだという事実で
あった。
ヒッパー級としては火力で劣る軽巡洋艦二隻よりは航空戦力運用艦である空母のほうが優先度度の高い目標であろうし、艦
首を風に正対させるため船団から飛び出していたグラップラーが一番狙い易かったというのもある。
そのグラップラーの主機械室では機関長が、回転計式速力指示器が19ノットにあがっていくのをほとんど疑惑の目で見守
っていた。
それはこの商船改造空母の“理論上”の最高速度ということになってはいたが、“下り坂”でもなければとても出せる速度
ではないというのが全乗組員の統一見解なのだ。
艦橋では艦長が、ヒッパー級の着弾を追いかけるのに大忙しだった。
砲弾は同じ場所に落ちないというジンクスに従い、艦の前方に水柱が立つたびにその方向に舵を切るよう指示を出しながら、
艦長は機関室を呼び出した。
「全速か!」
「はい」
「敵艦は接近中だ、煙は気にするな」
「煙幕バーナー許可願います」
「許可する」
煙幕を吐きながら逃げ惑うグラップラーの左右に、いかにもドイツ的な几帳面さで等間隔に水柱が林立する−初弾からばっ
ちりと夾差されていながら奇跡的に直撃弾はなかった−なか、ずんぐりとしたグラマン戦闘機が山火事に追われるヒヨドリ
のように慌てふためいて飛び立っていく。
0337666squadron
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2011/11/24(木) 21:41:01.77ID:1+nissG1
666飛行中隊のパイロットは、このときばかりは日ごろの戦闘序列などクソくらえとばかりに早いもの勝ちで飛行機に駆
け寄り、発進準備できたものから順次飛び立っていった。
最初に発艦したのはエリザベス・G・ハットン中尉が搭乗する<クイーンのQ>だった。
シャーロット・ホームズ少尉の<グースのG>、エイプリル・ダーレス少尉の<アップルのA>が後に続く。
飛行隊長のエメット・ブラウン大尉が操縦する<ハニーのH>は4番手だった。
大尉は上昇して先行した3機を先導するポジションにつくと、無線で母艦を呼び出し指示を求める。
即座に簡潔かつ明瞭な指令が返ってきた。
『ただちに攻撃にかかれ!』
レイチェル・ウエストウッド少尉がエレベーターで上がってきた<ジンジャーのJ>に乗り込むと、機付き整備長が両手を
振りながら駆け寄ってきた。
「待ってくれ、この機には燃料がないんだ!すぐ給油するからもう少し待ってくれ!」
燃料計はほとんどゼロを指している。
このまま離艦しては5分も飛べないだろう。
またヒッパー級の斉射砲弾が唸りをあげて頭上を通過し、至近弾の爆圧が9千トンのジープ空母を揺るがした。
レイチェルはにっこり笑うと車輪止めを外すよう合図した。
エンジン全開で飛び出した<ジンジャーのJ>は車輪が甲板を離れると同時に鋭い旋回を打ち、敵艦めがけてまっしぐらに
飛んでいった。
以後、バーモンジー出身の勇敢な婦人航空兵を見たものはいない。
2時50分、グラップラーの飛行甲板から最後の一機が飛び立った。
4機のマートレットからなるブラウン大尉の攻撃隊は、ヒッパー級の艦首を12時として、2時の方角から高度600フィ
ートで接近していた。
緊急発進したマートレットの左右の主翼下には、“こんなこともあろうかと”ヒッチコック技術軍曹のチームがありあわせ
の材料を使い、艦の工作室で作製した即席の爆弾架が装着され、それぞれ一発ずつの100ポンド爆弾が吊り下げられてい
る。
進撃するマートレットのコックピットから、ヒッパー級の艦首近くにひときわ大きな水柱があがるのが見えた。
『ありゃなんなら?』
ハットン中尉のグラスゴー訛りが無線機から流れる。
それは666中隊最初の犠牲者、ジェニファー・ペイジ少尉の<ヴァージンのV>が海面に突っ込んだ証しだった。
ドイツ軍艦が現れたとき、戦闘空中哨戒についていたペイジ少尉はいちはやく襲撃行動を開始していたのだが、向こう見ず
なまでに接近して掃射攻撃を繰り返す艦上戦闘機は、ついに37ミリ砲弾の直撃を受けたのである。
ボート甲板に配された連装機関砲の射撃手が放った榴弾は、舷側を掠めるようにして飛び抜けるグラマンのコックピット直
前の胴体に突き刺さり、潤滑油タンクの中で爆発した。
風防ガラスの前に開いた大穴から炎と煙を吹き出し、マートレットは石のように落下し、あっという間に海面下に姿を消し
てしまったのだった。
『よし、やっつけるわよ!』
ブラウン大尉は攻撃を命じた。
0338666squadron
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2011/11/24(木) 21:41:48.58ID:1+nissG1
4機の戦闘機は対空砲火を分散させるために編隊を解き、大空に散開した。
そしてそれぞれ別々の方角から時間差をつけ、盛んに対空砲火を撃ち上げる1万トンのドイツ巡洋艦めがけて、45度の降
下角度で突っ込んでいく。
エメットは機銃の発射ボタンを押しながら操縦桿をほとんど動かさず、軽く方向舵ペダルを踏んで機体を横滑りさせた。
6挺のブローニング機関銃が吐き出すオレンジ色の曳光弾が、ヒッパー級の甲板を舐めていく。
強力な50口径弾は探照灯を撃ち砕き、20ミリ機関砲の俯仰ハンドルを破壊し、水兵の体を引き裂いて血と臓物がごちゃ
混ぜになったズタ袋に変えた。
機関銃の発砲炎で主翼の前縁を真っ赤に輝かせながら、戦闘機は怒り狂ったクマバチの群れように飛び回った。
それがだれの投下した爆弾か、正確なところは誰にもわからない。
そのときヒッパー級の頭上には10機を越すマートレットが在空していて、ひっきりなしに爆撃と機銃掃射を繰り返してい
たのだ。
確実にいえるのは誰かが投下した爆弾がドイツ巡洋艦の煙突に飛び込み、煙路の中で炸裂したということだ。
大きく破孔の生じた煙路から、重油を燃焼させることで生じる真っ黒な排気ガスがボイラー室に押し寄せた。
ドイツ海軍の鉄の規律をもってしても、急速にボイラー室に充満する有毒な煙の中で配置に留まり続けることは不可能だっ
た。
ボイラー室は放棄され、ドイツ巡洋艦はゆっくりと速度を落とし、遂に行き足を止めた。
ユリシーズの艦橋では興奮した“農夫”ジャイルズが肉薄しての魚雷攻撃を叫んでいたが、吼え狂う戦隊司令はキャリント
ンに優しく羽交い絞めにされ、艦長は180度回頭して船団に復帰するコースをとるよう命じた。
目的地はまだ遠くであり、行く手に次の障害が待ち受けていることは確実である以上、手負いの猛獣に止めを刺すためにこ
ちらが大怪我をするリスクを犯すわけにはいかぬのである。
グラップラーには攻撃を終えた艦載機が続々と帰投していた。
ただし出撃した機体より戻ってきた機体は2機少ない。
ペイジ少尉の<ヴァージンのV>、そしてウエストウッド少尉の<ジンジャーのJ>が未帰還となった。
樽のような胴体から降着装置を引き出したマートレットが次々と着艦コースに入るなか、アリシア・ミッチェルマン少尉が
エンジン不調を連絡してきた。
アリシアが機乗する<デキシィのD>はエンジンに機関砲弾を受け、シリンダーの一つが吹き飛んでいた。
サイクロンエンジンは大打撃に屈することなくいまだ回転を続けていたが、油温計はとっくに振り切れ、クランクケースの
中で破片が跳ね回るガラガラという音がコックピットに響き渡っていた。
故障機が甲板を塞ぐことを避けるため、艦長は不時着水を命じた。
<ジンジャーのJ>が駆逐艦サイラスの艦尾を横切り、着水体勢を取ったところで戦闘機の機首が爆発した。
超低空を飛んでいたグラマンは右に傾いて翼端で海面を叩き、毬のように跳ねあがってくるくると回転しながら海に突っ込
んだ。
双眼鏡を構えたオー艦長の視界には、開け放たれたコックピットの中でハーネスを締めたままぐったりと突っ伏した搭乗員
の姿がはっきりと映っていた。
サイラスの救命ボートが海面に降りるよりもはやく、国立劇場でオフィーリアを演じることが夢だった20歳のパイロット
を乗せた戦闘機は、北海の波間に沈んでいった。

ttp://002.shanbara.jp/jisakue/view/b_4.jpg
0339創る名無しに見る名無し
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2011/11/26(土) 18:02:27.18ID:ac8tnuoL
>>336-338
続航に深く感謝感激する。

ポケ戦やら親玉さんらでなくて中途半端でお腹の弱いヒッパーで良かった。
死亡フラグもう一本折ったんだから、後はDoCか巡洋艦戦隊か知らないけど、
間接護衛隊に任せるんだ爺さんw

この話読み始めてからマートレット好きになったけど、
対空火力が疎かとは言え主力艦に立ち向かうと流石に。
ご冥福をお祈りします。
0340創る名無しに見る名無し
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2011/12/09(金) 13:23:49.01ID:NZIBBCrz
保守
0341 忍法帖【Lv=4,xxxP】
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2011/12/25(日) 05:36:38.90ID:gGKZl122
保守代わりにてす
0342図書館戦争 ◆f1t8rvbeF8mh
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2012/01/04(水) 20:18:03.55ID:90LQZJkP
正化31年10月22日水曜日21:10 関東図書隊武蔵野基地 車両置場

<<本部より通達、第二中隊は直ちに戦闘準備。
 別命あるまで待機せよ。なお、実包装填を許可する>>

 屋外に置かれたスピーカーが命令を伝える。
 全ての照明を点灯させた敷地内は、夜間にもかかわらず真昼のように明るい。

「第一小隊集合!番号!」

 完全武装の図書隊員たちが自分の番号を読み上げ、装具の点検を開始する。
 稲嶺司令の拉致を受け、全国の図書隊は臨戦態勢に突入した。
 彼らは警察などという組織の力を借りずに、自力で全ての問題を解決するつもりでいたのだ。

<<安全衛生委員は弾薬庫前に集合、直ちに分配に入れ>>

 彼らは自分たちに与えられた全ての法的権限と判例を曲解の限りを尽くして利用するつもりだった。
 稲嶺司令が拉致され続けている状況を、図書隊に対する武力攻撃であると判断し、彼がいる地域を確認次第、そこを刑法などの法律の対象外に置くと宣言したのだ。
 一度それが決定されれば、あとは場所を特定することだけが重要となる。

「警部補、これはまずいんじゃないですかね?」

 図書隊の説得のために派遣された警察官たちは、完全に場の空気に飲まれていた。
 彼らの周囲にいるのは只の公務員ではない。
 法律によって人間への発砲を許可され、そしてその経験を豊富に持っている人々なのだ。

「まずいといってもなぁ、そもそもが警備を買って出ておいて、まんまと攻撃を許しちゃったのはこっちだからねぇ」

 まるでやる気のない警部補は、この場の責任者でありながら問題を解決しようという意欲が皆無だった。
 未だかつて図書館の立場に立って何かができた試しのない警察が、今更出てきて任せろと言って何になるというのだ。
 信用が皆無というどころではない、こうして敷地内を通してくれるだけでも有り難いというものだ。

「そこで止まりなさい」

 高圧的な言葉が投げかけられた時、警部補は一つの時代の終わりを痛感した。
 日本国では、最早今までの常識は通用しなくなったようだ。

「先ほど稲嶺司令の場所が判明しました。
 既に部隊が急行中であり、警察の協力は必要なくなりました。
 お引き取りください」

 武装した図書隊員の一団は、存在感だけで今すぐ消え去れと声高に主張していた。
 彼らの顔に浮かんでいるのは、明確な敵意。

「失礼だろう君!我々は警視庁から派遣されたんだぞ!」

 同行していた巡査部長が喚く。
 彼の言う事はもっともである。
 だが、ここは関東図書隊の基地であり、警察権力の及ぶ場所ではない。

「既に当該地域は法令に基づき特別対応地域に指定された。
 これ以上警察の協力は必要ない。
 我々は既に作戦行動中のため、速やかに退去しなさい」

 警察官たちが行動しやすくなるように、周囲の図書隊員たちは自動小銃を構える。
 その効果は直ちに発揮され、警察官たちは足取りも軽やかに退去を始める。
 そんな彼らを追い越すようにして、ステンシルで図書隊の隊章を施された軽装甲機動車の縦隊が追い越していった。
0343図書館戦争 ◆f1t8rvbeF8mh
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2012/01/04(水) 20:24:24.43ID:90LQZJkP
正化31年10月22日水曜日21:17 東京都千代田区霞が関1-1-1 日本国法務省 地下二階 メディア良化隊総務部第三管理室

 法務省の中にその部屋はあった。
 表向きの組織図や案内板には決して名前の載る事のない部署であり、当然ながら後ろ暗い仕事をしている。
 図書隊情報部も存在を知りながら一握りの人間にしか情報を伝えていない彼らは、抗争を激化させないという任務に付いているのだ。
 この部署には警視庁公安部、防衛省情報本部、図書隊情報部からの連絡官が常駐し、この抗争を内戦へと発展させないための涙ぐましい努力を行なっていた。
 つまり、諸外国の諜報機関や国際テロ組織、国家に反旗を翻しそうな思想家や過激な市民団体を図書館をめぐる問題から排除するという仕事だ。
 だが、この部署は今、崩壊の危機に瀕していた。

「管理官、防諜回線三番に関東図書隊総務部のヤマダさんからお電話です」

 私物をまとめだした図書隊情報部員を手すきの全員が必死に呼び止め、あちこちからかかってくる電話に残りの全員で応答する中、その報告は入った。
 室内が静まり返り、全員がこの部屋の事実上の責任者であるスズキ管理官を見る。
 この種の特殊な任務に関わる都合上、この部屋の全員が仮の名前で呼び合っている。
 そのため、彼らの名刺や名簿上の表記は全てカタカナの苗字のみとなっており、互いの正体を探ることは紳士協定で禁じられていた。
 あくまで建前上の協定であり、彼らは独自の方法でお互いに全員の個人情報を本人よりも詳しく知っているのだが。

「わかった」

 全員の視線が集中する中、管理官は受話器を取った。
 彼のみならず、電話の相手もこの室内の全員も、今から交わされる会話は内容次第では日本国の歴史に関係してくることを了解している。
 全ての電話は会議が始まるので後ほど折り返すの一言で切られ、通常回線用の交換器の電源が切られる。

「もしもし、スズキだが。
 ああ、状況は理解している」

 彼の声音は鋼鉄のように固く、そして僅かも揺るぎなかった。
 しかし、それは自身の正当性の確信からではなく、長い実務経験と職業意識のみを拠り所とするものだった。

「いや、決してそのようなことはない。
 そうだ、これはバランスを崩すものという認識は我々も持っている、そうだ、今回の件はあくまでも偶発的なものだ。
 適切な処理はもちろん約束する。
 それも可及的速やかに、だ」

 電話の相手は相当にヒートアップしているらしい。
 本来であれば交渉ごとではタブーとされる行為であるが、世の中にはそれを一つの手段として行う輩はたくさん存在する。
 例えば立場の弱いものにこちらの要望を無理やり受け入れさせたり、何と思われても構わないので今後は交渉を永遠にしたくない時に、感情的になることは有効な手段となる。

「いや、独自の判断での報復は我々の看過できることではない。
 居場所や正体を掴んでいるのであればまずは我々に伝えて、そうだ、それを行うのであれば図書隊は我々の敵に、いや、だから、このまま終わらせるつもりは我々にもない。
 何度も言わせるな、マフィアじゃあるまいし、血の報復などということはやめてくれ。
 忘れないでくれ、我々は味方だなどというつもりはないが、図書隊だけを一方的に不利な立場に追いやるつもりは無い」

 説得は難航しているらしい。
 血の報復を主張する図書隊に対し、それだけはやめてくれとメディア良化隊が訴えるのは滑稽に見える風景だが、互いに武装組織である以上は当然のやりとりだ。
0344図書館戦争 ◆f1t8rvbeF8mh
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2012/01/04(水) 20:28:53.82ID:90LQZJkP
「それはわかる。
 確かに我々ではそちらに賛同する議員や活動家を用意することはできないが、それはこちら側への圧力でなんとでも出来る。
 ああ、いや、国会の議席調整は私の権限では約束はできんが、世論誘導は確約しよう」

 その言葉に私物整理を行なっていた図書隊連絡員は鼻を鳴らす。
 この種の任務に従事する以上、子どもじみた正義感は彼も捨ててはいるが、それでもなお、管理官の発した言葉は民主主義国家としてありえないものだった。
 確かに今の日本国は、メディア良化法の名の元に独裁国家にまさるとも劣らない情報検閲体制が整えられている。
 外国からの情報流入も、国内からの情報発信も、国内への報道も、出版も、放送も、インターネットでさえも、高度な管理下にある。
 メディア良化法に従わないものはマスコミも個人出版者も、それどころかインターネット上の一ユーザーも街頭演説者でさえも、見つけ出され、武装したメディア良化隊員によって排除される。
 さすがに粛清や洗脳、強制収容こそないが、自由な意思が法律と武装組織によって統制されているという面では何の変わりもない。
 その統制側に席を置く管理官が世論誘導を確約するのであれば、まあ、ある程度の援護はしてくれるのだろう。
 しかしそれは、殺害された政治家や著名人や活動家たちの代替となる程の規模であるはずがなく、そして永続するという保証もなかった。
 この時、図書隊に属する全員が、均衡状態の維持という言葉に何の価値も見いだせなくなりかけていた。
 日本国始まって以来といっても過言ではない凶悪なテロを目の当たりにし、良化隊は明確な敵であり、警察はその役目を果たさず、自分たちは自分たちでしか守ることができないという被害妄想に近い感情を抱いていた。
 第三者の視点としてみれば極端に過ぎるという意見もあるかもしれないが、当事者の立場で考えれば、周到に準備されたに違いないこのテロ活動が実現しているという時点で、疑いようのない事実に見える。
 葬儀会場は国内外の注目が集まり、国会議員を筆頭に政財界の著名な人物が集い、テロ活動を行うにはうってつけの場所だったのだ。
 確かに警察による警備が敷かれてはいたが、蓋を開けてみれば参列者の大半が死亡または行方不明。
 図書隊の最高責任者は誘拐され、挙句の果てにそのまま逃げられ、結局図書隊が自力で発見するという始末。
 これは何か、図書隊の勢力を削ぐ目的か、あるいは図書隊以外で何らかの合意が交わされた結果に違いないと思ったとしても無理はない。

「そうだ、何なら今回のテロに対してサクラしかいない特別報道番組も放送させよう。
 ああ、こちらでわかっている過激派の処理は約束する。
 そうだ、もちろん稲嶺司令殿の救出作戦も邪魔しない。
 こればかりは好きにやってくれ、できれば一人ぐらいは捕虜を取ってくれると嬉しいが、現場の状況に任せる。
 顔さえわかれば死体もそれなりに語ってくれるからな」

 室内の全員が息を飲んでやり取りを見守っている間に、会話は和解に向けて進んでいた。
 今回の誘拐事件の解決に対するフリーハンドの承認と、少なくとも当面の全面支援。
 図書隊が求めているのはそれだった。
 決して無視できない武力を持った組織の日本国に対する撤回不可能な不審。
 これだけは絶対に回避しなければならないものだった。
 管理官もそうだが、メディア良化隊上層部にとって、統制不可能な内戦状態に陥る事は、先進国として絶対に回避しなければならないものである。
 そして、それと同時に、良化隊が絶対の権限を握り、後の世の独裁体制の礎になることも同様に避けねばならぬことだった。
 客観的に見れば今もそうなのだが、それでも上層部の一部の人々はそう考えていた。
0345図書館戦争 ◆f1t8rvbeF8mh
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2012/01/04(水) 20:35:32.46ID:90LQZJkP

正化31年10月22日水曜日21:26 東京都日野市上空

 休む間もなく再出動を命じられた俺は、完全武装の隊員たちと共に出動中だった。
 作戦目標は稲嶺司令の身柄確保。
 経験を重視し、元自衛官ばかりで構成されたこの部隊は、法律及び組織の全面バックアップと、高い戦意で補強されている。

「あの、失礼ですが三曹殿ですよね?」

 ぼんやりと天井を眺めていた俺に声がかけられる。
 見ると、記憶に顔が残っている年配の図書士だった。

「おお、カンボジアで一緒だったな」

 見覚えがあるどころではない。
 彼は自衛隊在籍時代に、共に砲煙弾雨の中を駆け抜けた戦友だった。
 悪夢の第十三次カンボジアPKO、国際テロ組織との戦いで部隊の半数が死傷した最後のPKO。
 どこから持ってきたのかは分からないが東製の装甲車両まで持ちだしてきた相手に対し、限られた重火器のみを拠り所にする自衛隊は惨敗した。
 それでも全滅しなかったのは特筆に値するべきことではあるが、とにかくこの派遣部隊には多大な犠牲者が発生し、目の前の図書士も俺も、重症で米軍基地に後送されている。

「除隊後にお会い出来なかったというのに、まさか戦場で再開できるとは。
 お互い、難儀な人生を送っているようですね」

 確か、彼は野次馬たちに逃げこもうとしたゲリラへ無差別発砲をした責任を問われて諭旨免職処分となっていたはずだ。
 なんとか図書隊に拾ってもらうことは出来たようだな。
 生きた人間を殺傷した経験を持つ仲間がいることは非常に心強い。
 まあ、図書隊防衛部にいて対人戦闘経験が無い奴というのはほとんどいないが。

「また宜しく頼む。
 それにしても、よりにもよって日野とはね。
 我々も舐められたものだ」

 稲嶺司令の発信機が伝えてきた場所は、東京都日野市郊外。
 そこにある廃倉庫だった。
 図書隊は直ちに周辺地域を関東図書隊物流センターとして購入する事を決定した。
 地権者のもとに一個小隊を派遣し、その場で購入契約を完了。
 直後に関東図書隊の所有予定地に武装集団を発見したとして、各種法令に基づいて戦闘地域指定を宣言した。
 もちろんメディア良化隊および警視庁からは抗議が殺到したが、図書隊法務部はその内容について検討の上、明朝の回答を約束して電話を切った。
 戦闘地域指定は、図書隊、メディア良化隊双方が一方的に宣言できるものとして法律に定められている。
 しかしながら、実際には多方面に渡る影響が予測されるために、予備戦闘地域とされる図書館以外は事前の協議が必要とされている。
 一方的な宣言というものは、図書隊が創設されて以来初めての事であった。
0346図書館戦争 ◆f1t8rvbeF8mh
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2012/01/04(水) 20:39:49.45ID:90LQZJkP
「降下地点まであと五分!装具点検!」

 本部と通信を取り合っている図書監が怒鳴る。
 その言葉に全員が自動小銃の装填と安全装置を確認し、スタングレネードの個数を確認し直す。
 今回の任務は人質救出のため、軽機関銃は持ち込まれてはいない。
 屋内戦闘が予想されるため、89式小銃よりは9mm機関拳銃の方が良かったかもしれない。
 だが、敵がボディーアーマーを装着している可能性を考え、確実に戦闘能力を奪える攻撃力が重視されていた。
 それならそれで折り曲げ銃床型が欲しかったが、使用経験がないものも多いため見送られてしまっている。
 この戦闘が終わったら、全員に使用経験を持たせないといけないな。

「こんな勝手をして、法務省は黙っているのでしょうか?」

 隣の図書士長は未だに不安らしい。
 そういう事は上が考えればいいことだ。

「実弾携行して市街地上空を夜間飛行しているんだぞ。
 根回しは全部終わってるだろうさ。
 心配しないで、稲嶺司令以外全部撃ち殺せばおしまいだよ」

 窓から地上を見る。
 先発した車両部隊の上空をそろそろ通過するはずだが、彼らの姿は見えるだろうか。
 どんどん疎らになっていく住宅の灯火。
 道路がそこにあることを示す街灯の連なり。
 停車しているらしい車両のヘッドライトの煌き。

「なんじゃありゃあ」

 下を見た俺は、友軍を発見した。
 炎上する車両、見間違えようのない曳光弾の煌き、無数の銃火。

「おい!下の連中襲撃されてるぞ!」

 俺の叫びに応えるように、機体底部を何かが叩く音が鳴り始めた。

「なんだ!?何の音だ!?」

 窓の直ぐ側を曳光弾が次々に通過していく。

「航空灯を消すんだ!基地へ緊急連絡!」

 機内は一気に慌ただしくなる。
 相変わらず機体底部からは着弾を示す鈍い衝突音が連鎖していた。

「全員掴まれ!高度を上げるぞ!」

 コクピットに近い方から警告の叫びが上がり、エンジン音が一気に轟音の度合いを高める。
 眼下の戦場では、敵のものらしい車両が爆発したらしく、オレンジ色の閃光が発生していた。
0347図書館戦争 ◆f1t8rvbeF8mh
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2012/01/04(水) 20:45:35.78ID:90LQZJkP
正化31年10月22日水曜日同時刻 東京都日野市郊外

「左!制圧しろ!」

 前方の敵バリケードに向けて制圧射撃を行なっていた軽機関銃が、目標を民家に立て篭もった敵部隊へと目標を変える。
 窓が砕け、壁が穴だらけになり、住人か敵兵の悲鳴が漏れ出す。
 さらに、道を塞ぐようにして横倒しになっていた乗用車が爆発する。
 だが、もはや図書隊員たちに遠慮をする余裕はなくなっていた。
 奇襲により撃破された先頭車両は、装甲がない高機動車だったために完全に破壊されており、漏れ出した軽油に引火して激しく燃え上がっている。
 その炎は周辺の民家へと延焼しようとしており、この戦闘が続けば稲嶺司令救出に支障が出てしまう。
 また、敵は市街地全てを利用して攻撃を仕掛けてきており、路上に釘付けになっている彼らは、このままでは皆殺しにされてしまうのだ。

「これ以上はまずいです、我々も民家を盾に移動しましょう」

 殺到する銃弾を掻い潜って次席指揮官の元へとたどり着いた図書士長が進言する。
 先頭車両にいた人員は全員が殉職しているため、この部隊は指揮権を継承した三等図書監が苦労して指揮していた。

「よし、直ぐに移動する。
 車両はこの場に放棄、武器弾薬と無線だけはきっちり持ち出すか壊すかしておけよ」

 彼は元自衛官ではないが、図書隊において幾度と無く実践を経験し、さらには情報部の非公然活動員も務めている。
 そのため、一般隊員とは異なる思考回路を持っていた。

「報告!上空に味方らしきヘリコプター!」

 隊員からの報告に、二人は空を見上げる。
 地上から伸びる曳光弾の煌き。
 航空灯を消しているために位置の把握が難しいはずの友軍ヘリが、微かに底部を点滅させて現在位置を知らせている。
 そんなはずがない。
 UH-60は軍用機である。
 自分の位置を暴露するような機能が付いているはずがないのだ。
 
「あいつら、上に向けて撃ってやがるのか」

 図書監は表情を歪めた。
 空に向けて撃てば、弾丸は驚くほど遠くへと飛んでいく。
 そして、斜めに放たれた銃弾は、殺傷能力を持ったまま地上に落下するのだ。
 それ以前の問題として、対空射撃は禁止されている。
 撃墜された機体が市街地に落ちれば大変なことになるからだ。
 それを覚悟で対空射撃を行なっているということは、今戦っている相手はマトモな連中ではない。

「おい、何人かで適当な民家に入って電話を借りろ。
 ただちに増援部隊を呼び寄せるんだ。
 非常事態故に民間資産の強制徴用については俺が責任を取るから早くな」

 この作戦は人質奪還のための奇襲のはずだったが、もはやどうこう言っている場合ではない。
 事は既に市街地戦闘に発展しているのだ。
 速やかに出来る限りの増援をかき集め、敵を倒さねばならない。
 増速して飛び去っていく友軍機を見送りつつ、彼は部下たちの指揮に戻った。
0349創る名無しに見る名無し
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2012/01/04(水) 22:02:54.35ID:1Krj0u1C
新年最初の乙
もう内戦以外の何者でもないw
もはや良化隊でもコントロールしきれていない連中が暴れてるのか
0351創る名無しに見る名無し
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2012/01/06(金) 18:27:11.59ID:eGQ5hiTP
この作品のせいで図書館シリーズ全部読んだ
予想以上にストロベリっててびっくりw

0353創る名無しに見る名無し
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2012/02/06(月) 06:52:31.78ID:uzCT1/Js
保守
0354創る名無しに見る名無し
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2012/02/14(火) 14:08:25.31ID:Bf5/KDGS
バレンタイン保守w
0355創る名無しに見る名無し
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2012/02/17(金) 11:19:52.49ID:kjgK0Rld
こんな空母考えてみた 
箱型で中が空洞装置になっていて
戦闘機は空洞の中を滞空する形で出撃、着艦
空母自体はホバーのように水面をきすいしながら進む
空洞から出る風圧で船体を浮かしながら進む
メリット船速が早い
デメリット空洞の中に滞空するため着艦が難しい

0356創る名無しに見る名無し
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2012/02/17(金) 15:00:10.74ID:jJwzMlhf
>>355
たぶん「風洞実験装置」から思いついたんだろうけど
物理の作用・反作用を考えたらどんだけ無茶かわかるかと
0357創る名無しに見る名無し
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2012/02/17(金) 16:25:44.84ID:kjgK0Rld
>>356
そうそう水面に浮かぶ筒型のジェット空母
船より飛行機に近いかも
0359創る名無しに見る名無し
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2012/02/22(水) 14:26:30.57ID:Q5EbLxdr
358>>古いイラストですねー

無人機専用の弾丸考えてみたよ
6mmぐらいの反応炸薬弾
火薬の周りに0.3mmのタングステンワイヤーを巻きつけてその外側に
1mmぐらいの厚さの銅を覆う
小さなゴルフボールみたいな形
信管には圧電素子を使って着弾で爆発させる
(信管にスイッチが内臓してありバレル内でONになるようにする)
ガスで発射する
メリット弾丸を大量に搭載できる、対人に効果あり
デメリット弾が高い、
イメージ的には金属製のBB弾が破裂して溶けた銅が
ワイヤーを伝って指向性をもって破裂する
指向性を持たすためにワイヤーの巻き方を単一性にする
0360創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/02/23(木) 18:49:50.13ID:OU05VN9n
>>359
すごいね!!
どうやったら思い付くんだw
最近ミリタリーにハマりだして絵描いたりしてるけど、専門書的なん欲しくなってきた!
しかし武器かんがえたり戦法かんがえたりする人ってホントすごい。
0362創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/03/03(土) 04:47:20.06ID:XnYtQKDZ
右肩に押し当てているのに、なぜ左手でトリガーグリップをムリクリに握るんだね?
0363創る名無しに見る名無し
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2012/03/03(土) 09:30:06.24ID:YSz22IjK
そう、そうなんだorz
後でスナイパーライフルで画像検索して気付いたんだ…
もっと勉強して出直してくるわorz
0372創る名無しに見る名無し
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2012/08/12(日) 21:32:07.65ID:SDgjA8vH
超能力者VS連合国軍隊の戦争とかどうかな?
もちろん、主人公はただの自衛官でね
0373創る名無しに見る名無し
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2012/08/12(日) 21:32:43.32ID:SDgjA8vH
超能力者VS連合国軍隊の戦争とかどうかな?
もちろん、主人公はただの自衛官でね
0376創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/11/16(金) 14:32:17.53ID:6Cuwspw1
保守
0377創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/12/06(木) 19:16:46.93ID:mWi6O7gv
経団連がPMCの集合体と言う側面を持ち
実質的に国を牛耳ってる近未来日本とか。
0378創る名無しに見る名無し
垢版 |
2012/12/08(土) 22:11:36.71ID:dks0DSZZ
>>377
面白そう
0381創る名無しに見る名無し
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2013/01/13(日) 09:17:35.87ID:NTk+RU6Y
保守
0382創る名無しに見る名無し
垢版 |
2013/02/24(日) 21:29:36.45ID:DWE6EDEq
保守
0384VERTIGO ◆IyF6/.3l6Y
垢版 |
2013/03/28(木) 19:43:06.97ID:rD6Jgkz5
2ちゃん経由で同人誌にした作品を投下。
設定とか文章とか、かなりゆるい感じです。

「VERTIGO」
1945年8月、太平洋戦争終結後、ソ連軍は占守(しむしゅ)島に上陸した。
兵力と物量に勝るソ連軍は激戦の末に北海道を占領し、アメリカは青森でこれを迎え撃った。
膠着と混迷の末、日本は分断と戦争の時代を迎える。
米ソの対立に、津軽海峡は最も緊迫した海域と化し、幾度の衝突が波濤を血に染めた。
時代は過ぎ、兵器は進化を遂げ、ソヴィエトはロシアになり、科学は発展する。
そして21世紀半ば、IPS細胞の活用と機械工学の発展により、人類は遂に人工の体を完成させるまでに至った。
しかし、津軽海峡に残る国境線は依然として、第二次世界大戦後から変わらずにいる。

INTRODUCTION PHASE:CRASH

佐久 一存(さく かずまさ)  海兵隊曹長
「オリオン61、ディクレア・エマージェンシー!」
(オリオン61、緊急事態を宣言する)
風の音だけが、ごうごうとガラスの向こうを滑っていく。
ぐるりと座席を包む青空から降り注ぐのは、夏の昼の日差し。
ヘルメットのバイザーを降ろしてもなお、佐久は眩しさを感じて目を細めた。
トビウオに似た、二人乗りの小さなT(タンゴ)‐4(フォー)練習機は、今本当にトビウオと同じ状態で飛んでいる。
「アイ・セイ・アゲイン、フレームアウト!」
くぐもった荒い息遣いの中に、教官の緊迫した音声が響く。
航空機のエンジン停止を意味するその言葉が、まるで嘘のように素通りしていく。
推進力を失った機体は、グライダー状態で空を滑り落ちていた。
甲高いエンジン音の消えた、異様な無音の中で、佐久の脇の下を流れる汗。
後部座席の教官、黒部大尉が、必死で機体の安定を保とうと闘っている。
0385VERTIGO ◆IyF6/.3l6Y
垢版 |
2013/03/28(木) 19:48:50.35ID:rD6Jgkz5
主翼、尾翼、垂直尾翼のそれぞれ後部にある舵を動かせば、例えグライダー状態でもある程度の操縦は効く。
机上の教育で教わったそれを、佐久はまさに体感していた。
通常の操縦時よりもやや遅れた反応の、ゆるやかな旋回。
それとともに、高度3000フィート(900メートル)から見下ろした地平線が斜めに変化する。
――里山の合間、田園がキラキラと陽光に輝いて美しい。
見上げると、空の鮮やかな青に、すっと刷いたような美しい雲。
指先の血管は痺れるように熱くて冷たいのに、そんな事を感じている自分が不思議だ。
こぉ、こぉ、と、きつく口元を覆う酸素マスクから漏れる呼吸音を聞きながら、佐久はそんな事を考えた。
「アキタタワー、オリオン61、ナウ、オーバー・ユゼ。リクエスト・エマージェンシー・ランディング」
(秋田管制塔へオリオン61、現在湯瀬上空。緊急着陸を要求する)
「オリオン61、エマージェンシー・ランディング・アプルーヴド」
(オリオン61、緊急着陸を許可します)
海軍秋田基地の管制官の、掠れてはいるが少なくともパニックではない声がノイズ混じりに飛び込んでくる。
ガタガタと伝わるのは、風に吹かれた機体の振動。
「2700!・・・2600フィート!」
高度を示す計器は刻々と、その数字を減らしていく。
山の肌はその分だけ、近づいてくる。飛び去っていく木々の葉。
心の底の透明な冷たさで、その景色を見送る。
何も感じていないのか、全ての感情が許容量を振り切っているだけなのか。
どちらなのかも分からないまま、佐久はただ周囲の風景を、見つめ続ける。
近づいてくる航空機はいないか。下から上昇してくる航空機はいないか。
機影を探す。
地上に落ちる、自分の機の影が、山を舐める。
2500・・・2000フィート・・・
意味もなく握った操縦桿は、今も手袋越しに無情な沈黙を続けるだけだ。
風が吹いている。
0386VERTIGO ◆IyF6/.3l6Y
垢版 |
2013/03/28(木) 19:54:01.67ID:rD6Jgkz5
翼がガタガタと音を立てた。一瞬、感じた異常な振動に、ぞわっと神経が逆立つ。
振動が一気に機体全部を揺さぶる。
――その時、不意に強烈な力が機体を翻した。
持ち上げられた片翼が、機体を傾ける。エンジンの止まった機体には強すぎる乱気流に、重力が左側に偏った。
重力の変化に、体を固定するハーネスが食い込む。
新幹線の轟音にも似た、風の強い音が機体全てを飲み込む。
「クソッ」
妙にはっきりと、黒部の罵る声が聞こえた。
天と地が混ざり合うような感覚が、視界を揺さぶる。
翼がぎしぎしときしむ。コックピットいっぱいに、垂直になった地平線が広がる。
それもただの一瞬で、瞬きをする前に天地は逆転した。
地面が天にある。空が足の下にある。
肺が詰まって、喉で呼吸が止まる。
頭に浮かんだのは、たった一つの言葉だった。
――もうだめかもしれない。
目に見えない乱気流は、飛行機を容易く吹き飛ばす。
足許が抜けるような感覚を、全身で感じる。
コックピット中に鳴り響く、対地接近警報のアラームを聞いた気がした。

PULL UP PULL UP

無意味な人工音声が上昇を指示していた。
コントロールを失った機体は、風に翻弄されながら一気に高度を失っていく。
「佐久!ベイルアウト準備!!」
怒鳴り声が聞こえる。
緊急脱出を命じる教官の声。
内臓がふわふわと浮くような感覚がこみ上げてくる。妙に世界が眩しい。
――生きている。まだ、生きている。
強く感じたのは、残り少ない命のリミットが、すぐそこにあるということ。
ゆっくりと機体が回転して、また斜めの地平線がせりあがってきた。機体が水平になる瞬間を狙わなければ、ベイルアウトは成功しない。
まだだ・・・まだ・・・
佐久自身なのか、それとも教官の声なのか、機体が水平になる瞬間をじりじりと待つ。
コックピットがふわふわと水平に近づく。目の前には、避けられない山。
山肌に突き刺さるように迫っていく機首。佐久の名前を叫ぶ教官。
凄まじい重力で、腕を押さえつけられているようだ。
佐久は、渾身の力をこめて、緊急脱出のレバーに手を伸ばした。
0387VERTIGO ◆IyF6/.3l6Y
垢版 |
2013/03/28(木) 20:00:04.99ID:rD6Jgkz5

谷川 誓(せい) 空軍伍長
血溜まりの表面に、比重の異なるオイルが粒になって浮かんでいる。
幾粒も、幾万粒も、揺れながら血の流れに乗っている。
その中に混じり、焦げた小さな薬莢や、細かな金属片が浮遊していた。
遅すぎたヘリコプターの羽音が、その血と油の海を共振に粟立てる。
血液をかき集めたいのは山々だが、今はそんなことをしている場合ではなかった。
オイルは、谷川伍長の抉れた皮膚の下から止めどなく流れ落ちている。それに目をくれることもなく、全体重を両腕に落とした。
膝をつき、垂直の方向へ掌を押し込む。掌のしたの肉体の質量が、その度に体重を拒む。
激しい呼吸に乾いた喉の奥から、その肉体の名前を呼んだ。
アンモニア臭い、硝煙に濁った夜陰に呼ぶ声が消える度、呼気が白く立ち昇る。
床に横たわった身体の、肋骨の合間のまさに心臓の直上、重ねた掌の一点へと重力を加える。
血に赤く濡れてはいるが、元々は同じく灰色の迷彩服を着ているその長躯の、筋肉の感触が掌を押し返す。
その度に、谷川伍長の露出した人工筋肉の破れ目からオイルが飛ぶ。
左肱を掠った小銃弾は皮膚と人工筋肉を抉り、その奥に隠れていた強化プラスチック骨格とオイルのチューブまでもを破損させていた。
そこからまた、混ざり合った血液とオイルが流れる。
灰色の迷彩服は濃い赤と、黒ずみに染まり、左腕全体が痺れて遠かった。
それでも、心臓を目掛けて圧を加え続ける。
伸ばした腕に体重が掛かる度、神経が金槌で殴られたような痛みが走る。呻き声の漏れる唇に、汗の苦い味が何度も流れ込んだ。
戻ってくる。野戦衛生の教範通りに処置すれば、戻ってこない筈がない。
その確信だけが、心臓マッサージを続けさせる。
窓の外から差し込む強力なヘリコプターのサーチライトが、廊下一面に散らばるコンクリとガラスの細片を光らせる。
一瞬廊下を舐めたストロボの陰影に落ちるのは、溶けたガラスのような穴だらけのヘルメット、そしてオイルと、大きな血溜まり。
床についた膝から、迷彩服が血液を吸い上げてあっという間にグチャグチャになる。
体重をかける度、血溜まりに波紋が広がった。
命をつなぐ。
それだけを念じながら、呼吸の止まった肉体に体重をかける。
一瞬廊下を舐めたストロボの陰影に落ちるのは、溶けたガラスのような穴だらけのヘルメット、そしてオイル。
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