店主急逝の模型店、惜しまれつつ閉店 
在庫処分セールに行列

戦闘機、航空機、戦車、外車。模型の箱が
天井まで積み重なる。仙台市宮城野区二の森の
「模型倶楽部(くらぶ)」が今月末、
創業36年の歴史に幕を閉じる。
店主の内田吉彦さんが2日、67歳で急逝した。
在庫処分の閉店セールに、別れを惜しむ
常連客らが大勢集う。

 セール初日の21日、小さな店に約120人が
駆け付けた。小学生の時から常連の会社員菅原令
(たかし)さん(44)=宮城野区=は
「年月がたっても内田さんは模型店のお兄さん。
地域の子どもたちの成長も見守ってくれた」と
ショックを隠せない。

 内田さんは、ただ模型を売るだけではなかった。
客が欲しい商品を取り寄せ、制作のイロハも教えた。
元日以外の364日、店を開け、熱心な客が
帰るまで閉めない。金がない客にはツケで
買わせたという。

 近年は模型ファンの高齢化や娯楽の多様化などが
重なり、客足は落ちた。それでも早朝に
アルバイトをしながら店を続けた。

 「家では昭和の頑固おやじ。家族の言うことを
一切聞かない」。そうこぼす長男で会社員の
拓郎さん(28)=太白区=だが、セールに
訪れる客の多さに驚いた。「父を少しだけ尊敬した」。
妻一枝さん(60)は「欲のない、
優しい人だからね」と目頭を拭った。

 閉店を決めて数日後、親子連れが店を
訪ねてきたという。

 「おんちゃんいる?」

 小学3、4年生ぐらいの男の子が一枝さんに
聞いた。亡くなったことを伝えると、
顔をくしゃくしゃにして泣きじゃくった。

 「おんちゃんが、作ったら見せてって」

 手には小さな戦車の模型が握り締められていた。

 内田さんが36年守った自慢の「模型部屋」。
28、29日の最後の営業まで模型の箱を
抱えた「少年」たちの笑顔で満たされる。