>>749

コンコンコンッ。
「御免!」
玄関をノックする音と、低くて渋い男性の声。ドアは開けたままだけれど、その姿は隠れて見えない。
「はあい?どちら様でしょう?」
「こちらへワシの孫がお邪魔していると聞きましてな」
「えっ?もしかして貴方は」
「あっ!じいじ!じいじでしゅ!」
シャン子ちゃんがスプーンを握ったまま、しかも裸足で飛び出してしまった。
「待ってシャン子ちゃん!」
人違いだったら大変な事だわ、と私も慌てて後を追う。でもそれは一瞬の杞憂に終わった。
「おお!シャン子!シャン子おおおおー!」
「じいじー!じいじー!キャッキャッ」
声の主はシャン子ちゃんのお爺様。シャン子ちゃんを高い高いしては抱きしめ、高い高いしては抱きしめ。
目尻の下がりきったお顔は、すっかり好好爺。でも若々しくてお元気そうで何よりだ。
「ああ良かった、霊霊さんでしたか。ご無沙汰しております」
「こちらこそ、ワシの孫と息子夫婦が世話になっていながら、ご無沙汰してしまって申し訳ない」
「とんでもない、どうぞどうぞ、お上がりになって。外は暑かったでしょう。小雅、おしぼりを出してちょうだい」
「はーい!シャン子ちゃんのおじいちゃん、こんにちは!」
「こんにちは、小雅ちゃん。マレーバクのお嬢ちゃんは、初めましてだね。ワシ、シャン子のじいじです」
「こ、こんにちは…コトです…」
大人の男性のパンダを初めて見たコトちゃんは、少しびっくりしてしまったようだ。
でも霊霊さんの膝でくつろぐシャン子ちゃんを見て、すぐに打ち解けたみたい。さすが大家族の父、子供達の相手がお上手ね。