私達ジャイアントパンダにとって、厳しい夏がやって来た。日本の夏は何回目になるかしら。いつまでたっても慣れないでいる。
そんな苦手な夏だけれど、夏だからこその楽しみもある。小雅が手伝ってくれる梅干し作り、小雅と夕涼みしながらの線香花火。そして…。

「ただいまー」
「母ちゃんお帰りなさい!麦茶できてるよ!」
「ありがとう小雅、助かるわー」
帰宅すると小雅がすぐに用意してくれる、ほど良く冷えた麦茶。優しく染み渡る涼しさと、可愛い小雅の気配りが嬉しい。
「ああ美味しい!」
「良かったー。今日は特に暑くなるよって、下の空き地にいたおじさんから聞いたから、お湯呑みも冷やしておいたんだよ」
「空き地にいたおじさん?どこのおじさん?」
「知らないおじさんだったよ」
「ヒトのおじさん?パンダのおじさん?」
「ヒトのおじさん。あ、そのおじさんがね、余ってるから小雅にあげるって」
小雅が指差すのはテーブルの上、そこには小さな紙袋が二つあった。手にとってみると、どちらもカラカラと乾いた音がした。
「何か書いてあるね、こっちは“絲瓜”で、こっちが“苦瓜”…中身は種かしら?」
「種だって言ってたよ。母ちゃんがいない時に、知らない人から物をもらえませんって言ったんだけど…」
小雅が少し俯いて、しょんぼりしてしまった。