人の習性の中には、同一化というものがある。
基本的には、自分より優れていると思う人の真似をしてしまう、というものだ。
たとえば、美男や美女などは、経験的に、他者が自分の動作を真似ることを知っている。
これは、多くの人が、美男や美女の美しさに憧れて、彼らの動作を同一化しょうとすることの表れだ。
ところが、この習性は必ずしも、優れていると思う人の真似だけをするとは限らないということだ。
カエルの子はカエルという言葉があるが、優れていない平々凡々な人々の子供もまた平凡に
育つということをいう言葉だが、家族というものは人生の中で最も多くの時間を共有するものだ。
親が平凡な人間であっても、子供は知らず知らずの内にその影響を強く受け、同一化してしまうということだ。

おさらいすると、人間は基本的に優れているものに対して同一化しょうとする。
しかし、それには例外があり、時間を多く共有している人物の影響をも強く受け、同一化してしまう。

これを啓発に応用してみると、生活を良い方へ転換させるコツは、自分が一緒にいて不愉快に思う人物や
自分が低俗になったり、愚かになってしまうと危惧する人物とは離れることである。
そして、なるべく、優れている人たちがいるコミュニティーに加わることである、ということが出来る。

独学がなかなかうまくいかない理由もそこにあるような気がする。
人間は競争が好きだ。もちろん、勝ち目のない競争ではなく、拮抗する競争が。
そういう拮抗する競争は人間を力強く高める。
だが、独学にはそれがない。優れている人物を見上げて、それを目標にすることも出来ない。
勉強する習慣や自分を律する心がまだ成熟していない段階では、何かを勉強するときは専門機関を利用したほうが良い。
そこで、快活に振舞い、教師や生徒と仲良くすることである。
そこには、勉強に前向きで、自分を高めようとする人たちが数多くいるからである。
お金はかかるが、生涯の友や、それが得られなくても、勉強する習慣を身に付けられると思えば安いものだ。