ダイハツ工業の不正問題は、想像以上に根が深そうだ。同社の開発設計の内情に詳しいトヨタ自動車の関係者はこう証言する。「不正発覚の報道を知り、ダイハツ工業ならやりかねないと思った」──。

 この関係者は、トヨタ自動車がダイハツ工業に委託したあるユニット部品の開発に携わった経験を持つ。その際に直面したのが、ダイハツ工業の技術者による不正だ。

 ある時、性能に関する進捗を確かめたところ、ダイハツ工業の技術者から「既に設計目標値(目標とする性能)に達している」との報告を受けた。ところが、実現するには開発にかけた時間が短すぎる。そんなに早く実現することはあり得ないと不審に思った関係者が、証拠となる試験データの提出を求めたところ、虚偽の報告だったことが判明したというのだ。

 この一件から、関係者はダイハツ工業の報告はうのみにせず、逐一、試験データを提出してもらって確認することにした。それだけではない。開発設計プロセスの詳細まで報告させて、ダイハツ工業が主張するアウトプットが正しいか否かをチェックするようにしたというのだ。関係者はこの問題をトヨタ自動車の上司にも報告。以降、このユニット部品を開発するトヨタ自動車の部門では、ダイハツ工業の不正体質が認識され、厳しい確認が行われるようになったという。

 トヨタ自動車の“失敗”は、この時に認識した、ダイハツ工業の開発現場が不正体質に染まっている恐れがあるという情報を、他の部門に「横展開」しなかったことだ。全社的に共有されていれば、ボディー設計部門や品質保証部門なども危険性を把握でき、今回の衝突試験不正を回避できた可能性がある。

 このユニット部品では、たまたまトヨタ自動車の関係者が不正に気づいたが、他の部門は見逃した。その理由として考えられるのは、ダイハツ工業の技術者が巧妙に不正を行っていた可能性である。

 トヨタ自動車の関係者によれば、開発設計の業務を委託する際に実現の可否を問うと、ダイハツ工業の技術者は「常に『できる』と言う」(同関係者)。ところが、実際には実現が困難だったり不可能だったりする業務もある。それを「トヨタ自動車の目の届かない範囲でごまかそうとする」(同関係者)というのだ。

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/08559/