強めの雨が降った日、助手席の彼女が音無・激臭のオナラを素知らぬ顔で室内に充満させる
あいにくドアバイザーを付けていないので僕は目も眩むような悪臭を窓を開ける事なくじっと耐えた

だが地獄谷から沸き上がる硫黄のような臭いを密閉された軽自動車の狭い室内空間で長時間耐えるのにも限度があり意を決して窓を少し本当にほんの少しだけ開けた

窓から流れ込む新鮮な空気と大粒の雨
新しく買った服を着ておめかししてご機嫌でいた彼女は瞬く間にびしょ濡れになり普段の大人しく可憐な彼女からは想像も出来ないような罵詈雑言の数々を僕に浴びせる
天使と悪魔の如くのギャップと鼻の奥に残った悪臭により正常な判断が困難になっていた僕は彼女にこう言った

テメェーの屁がクセェーんだよ!!

彼女とは別れる事になった
バイザーさえあればと、バイザーさえあればこんな悲劇は起こらなかったのにと後悔した