日曜の朝、都内某所
車愛好家たちが集まる小さなサイトのツーリングオフが開かれようとしていた
集合時間10分前、既に来ているメンバーは7人
その輪の中へ、俺は愛車アルトエコで乗り付けた
「おはよう!アルトキッドです!今日はよろしく!」
元気よく自己紹介する
「…あ、おはようございます」
「アルトキッドさんってAT限定なんですよね?若いですね…」
なぜか皆の視線が泳いでいる

「遅くなってスイマセ〜ン!」
LS460に乗ったオッサンが大きな声を出しながらやってきた
「幹事のレクサスオヤジです。今日は皆さんよろしくお願いします」
この人が今回のオフの主催者であり、サイトの管理人でもあるレクサスオヤジさんだ
「あ、どうも!アルトキッドっす。よろしく」
俺が挨拶をすると、レクサスオヤジは眉間にシワをよせて、俺とアルトエコをジロジロと見てきた
「え〜っと…アルトキッド君だっけ?君さぁ、今日どこに行くか知ってる?」
「え…?富士山を見ながらそば食うオフっすよね?」
「うん。で、君の車…それ軽だよね?」

何が言いたいのかわからない。愛車を軽呼ばわりされてイラっときた俺は言った
「何が言いたいんスか?」
「高速道路に乗るんだけど…軽じゃついて来れないよね?」
「…大丈夫っスよ!ブン回せば皆さんに迷惑かけないくらいのスピードは出ますし」
爆笑の渦が起こった。そしてレクサスオヤジは苦笑いしながら言った
「軽は高速道路を走っちゃダメなんだよ。それにそのスピードメーター見てごらん」
視線を落とす。そこには140km/hが限界のメーターがあった
「高速道路は150〜250km/hくらいで流すからね。君の軽じゃついて来れないよ(苦笑」

俺は泣きながら家に帰ると、そのまま枕を濡らして眠ってしまった
目を覚ますと午後10時、パソコンの電源を入れてあのサイトを覗いてみる
そこの掲示板には、今日のツーリングオフを楽しそうに振り返るメンバーたちの書き込みがあった
俺は偽ハンドルネームを使って『レクサスオヤジ臭ぇんだよ!死ね!』と書き込む。
すぐに管理人からのレスがあった
『アルト君だね。当サイトのルール通り、君をアク禁にします』