家が貧しくて頭も悪かった俺は高校に進学できなくて工場に就職した。
中学を卒業して三十年
ずーっと働いてきたのに給料は手取り十四万円
そこからアパートと月極め駐車場の家賃
光熱費に車のローン 任意保険料に車検の積み立て ガソリン代を払ったら全く残らない。
車検積み立て以外貯金はゼロで
生活費が足りなくてサラ金で借りて凌ぐ事も多い。
最近アパートの近くにドンキホーテができて
食料品が安く買えて大変助かっている
愛車は頭金なし72回ローンで買った中古のムーヴカスタム
この車でドライブしている間だけは辛すぎる現実を忘れられる。
ローダウンとかしてみたいけど金がないので
K-STYLEを立ち読みして我慢する。
俺の勤めている工場は自動車部品会社の下請けで
毎日おなじ流れ作業の繰返しである。
毎年中卒の新人が入ってくるがすぐに辞めてしまうので未だに俺が最年少である。
俺の勤めている工場の社長は二代目で
先代の社長が亡くなって跡を継いだ。
社長はクラウンアスリートに乗っていて
専務(社長の奥さん)はベルファイアのV6に乗っている
部長(社長の長男)はレクサスGSで
大学生の次男坊が通学用にレクサスIS250を買って貰って正直むかついて仕方がない。
毎月貰っている小遣いも明らかに俺の給料より多い。
万札がぎっしり詰まった財布を見せびらかしてくる。
一浪してようやく私立文系に入学した次男坊がレクサスで
勤続三十年の俺が中古のムーヴカスタム
こんな世の中絶対納得いかない。
好きで貧乏な家に頭が悪く生まれてきたわけではないのに。
秋葉原で暴れた加藤の気持ちが俺には痛いほど理解できる。
世の中には俺のような人間は多いと思う
そんな虐げられた人間たちが一斉に立ち上がったら恐ろしい世の中になる
その時が来るまで俺は静かに待つことにしよう。