俺が中三の時、国語の光村教科書の一発目は大林宣彦の少年時代の体験談であった。
降り続く雨に鬱陶しい思いをしながら、居合わせた老婆に大人ぶって問いかける。
「この雨止みますかねぇ?」すると老婆は「降り出した雨が止まなかったことは一度もござんせん」
大林宣彦はその言葉から自分を決定付けられ、自然との付き合い方の知恵を教わり人生訓となった、みたいなことを述べていた。

俺は「アホクサ」と思った。この老婆はアンタ(中学生時代の大林)の偉そうな問いかけがウザかっただけなんだよ。
止みますかねえ、の問いかけに普通の人間なら「そうだねえ、天気予報では今日一杯は雨らしいが」とか
「キャンプに来てるの?明日には晴れるといいね」などと返すだろう。ところがこの老婆は、誰でも当たり前過ぎて言わない
ようなことを、あえて言葉にして冷たく返しただけ・・・。気づくだろう中学生なら。

のちに調べたらこの題材は一回きりで没になっていた。やはり内容的に拙文なのだろう。次に載っていた「握手」は今でもあるが。

某俗物商業詩人の詩を、毎度毎度の改訂で載せ続けてるのも納得いかない。
さりとて、人徳人格が備わった文学者や詩人などはなかなかお目に掛からないのである。
現在の光村中二題材にある某ニヒリスト詩人なども私生活が相当荒廃していたようだし。