数学講師・西岡康夫

西岡先生は現在、代々木ゼミナール教育総合研究所という部署に所属しておられ、まだ代ゼミにいるが、代ゼミの本科・単科・季節講習会において教壇に立たないらしい(これは、代ゼミ関係者談による)。

この機会を逃すと西岡先生について語るのは当分先になりそうなので書こうと思います。

西岡先生は元駿台講師で90年代後半に代ゼミへ移籍され (時期的には森茂樹とほぼ入れ替わりという状況であったが、駿台で森と共に仕事をした時期があったようだ)、
代ゼミへ移って東大文系数学・東大理系数学の単科講座を担当された。
西岡が代ゼミへ移籍した当初、駿台数学科は崩壊したという噂が代ゼミ生に広まっていた。

西岡氏の講義は、解法の糸口を、偶然ではなく必然的に見つけられるようになることを目的とし、彼の講義内容は「戦略」や「枠組み判断」と称する完全に独自の手法を用いて、設問にアプローチするというものである。
これは、定石を暗記する方式とは根本的に異なったもので、この方法論の賛否については受講生間で少なからず意見が分かれていた。
西岡氏の手法が特に有効なのは、見たこともない問題に対して解くための糸口を見出すことや、少しでも多くの記述をしようする (つまり、少しでも多くの部分点を取ろうとする) 場合だと思われる。
私も受講したことがあったが、西岡の方法論は、基本的に解法パターンを全て使いこなせることが前提で、そのレベルに達した受験生に価値があると思った(解法パターンを全て使いこなせるようになっただけでも数学の偏差値は70前後に達しているはずであるのだが…)。
実際、数学上級者ほど西岡氏の熱狂的信者になっていたような気がする。しかし、高度な問題をいとも簡単な問題のように解くので、自分も簡単に解けるという錯覚に陥るときがあり、西岡氏の手法を完全に習得できる者は数学上級者の中でも限られていたように思われる。

代ゼミで西岡氏の講義を受けた者の中には、先生の解法はすばらしいが、実際に受験生が試験場で使えるものかどうかは疑わしい、と語る者や、
「この人は、東大理系数学など難解な授業向きでしょう」と言う者もいた。
もちろん、「独自の「3つの戦略」を武器に問題に立ち向かう彼の方法論は本当に素晴らしい」と言う者もいた。

また、「講習会での西岡先生のセンター対策講座も絶対オススメである」「西岡先生のセンター対策における裏ワザは本当に使える!」という声もあり、
季節講習(特に夏期講習)におけるセンター対策講座も非常に定評があった。

ちなみに、西岡は建築学科出身だったせいか、手書きでありながら実際に書いたグラフはコンピューターで描いたかのようにきれいであった。

今野和浩は西岡の弟子らしい。実際、今野は西岡と酷似した講義スタイルを取っている。

西岡先生は現在、イエヨビというネット上の予備校でも活躍中。

私が見る限り、西岡先生は予備校数学界に新旋風を巻き起こしたと言っても過言ではない。
ただ、ひとつ惜しむらくは執筆された数学参考書が期待されたほどは大したものではなかったということだろう。
山本矩一郎・安田亨・森茂樹・米谷達也・秋山仁・長岡亮介のように予備校数学界に一時代を築いた講師達は (秋山と長岡は元代ゼミ講師ではないが)、後に伝説の参考書と呼ばれることになる受験数学書を著作し、
その参考書はその時代に生きる受験生にとって一生の財産となる掛けがえのない本であったりした。しかし、西岡はそのような著作物を今のところ出していない。
現在は非常に良質で優れた受験参考書 (例えば、精講シリーズ・大学への数学・プラチカ・Focus Gold・スバラシクシリーズなど) が本屋の本棚に飾られ、
スタディサプリなどの学習動画配信サイトやYou Tube上の受験数学チャンネルが発達し、そちらの方に圧倒的多数の受験生が持っていかれているという時代の流れによる影響もあるからなのだろうか。