数学講師・木須一郎(きす いちろう)

木須先生の授業スタイルは他の数学講師とは一風変わり、最初に問題の解き方のあらすじを話し、
授業時間の中心は先生の口頭による指示にしたがって生徒自身に解かせるというもの (計算過程の板書などは一切行はず、生徒自身の力で計算を行うことになる、いや、生徒に手計算をさせるという言い方のほうが的確な言い方かも)。
この授業スタイルは賛否両論あったが、当時先生はかなり人気があり、札幌校や福岡校などの地方校舎へも先生は出講されていた。

ちなみに、当時木須先生の受講生だった人によるネット上の書き込みを見つけたので、以下に張っておきます。

February 02, 2009
数学道場
浪人生だったころ、もう二度と会えないだろう凄い先生に出会った。
代々木ゼミナールの福岡校に、東京から来ていた数学の先生。
名前を、木須 一郎先生という。

この先生の授業スタイルは独特である。
先生はホワイトボードをほとんど使わない。先生のつくったオリジナルの教科書には、数学の問題が書いてあるだけ。

僕らは真っ白なノートに向かう。
椅子に座って、僕らに声をかける。
「ハイ、問題読んで〜」
「ハイ、x(エックス)で割って〜」
「ハイ、微分する〜。微分わからないひとは、参考書見ていいからね」
「ハイ、同類項まとめて〜」
「ハイ、ここで○○の定理使って〜、あ、知らない人はこれね。これだけボードに書いておくね〜。(サラサラサラ)知ってるから偉いんじゃないよ、知ってる人は復習して、知らなかった人はこれから覚えればいいよ〜」
「ハイ、答え出た〜?間違ってもいいんだよ〜。でもどこが間違ったは見直して〜」

こんな授業である。この場面で、何をすべきか。それだけを端的に伝えるだけだった。

普通、数学の先生の授業はこうだ。

解法を黒板に解説しながら書く。
生徒は、それを聞きながらフムフムとノートに写す。
授業が終わる頃には、【何となくわかった気】になる。
で、白紙の紙に自分で解けるかというと、まず出来ない。

でも、木須先生の授業を受けていると違う。
家に帰って復習の時、木須先生の声が聞こえてくる。
試験会場でひとりになった時、木須先生の声が聞こえてくる。
じゃぱねっと高田の高田社長の語り口のように。
ふと、白紙の答案用紙を黒く埋めている自分に気がつく。
「案外やるじゃん、オレ。」


こんな感じのスタイルの授業なので、1問あたりを終える時間は半端なく長く、とんでもないほどの時間の授業延長を毎回行う。

そういうわけで、木須先生の授業の特長は、他の数学講師にはない独特の授業スタイルとものすごい時間の授業延長ということかもしれない。

また木須先生の特徴として、テキストがスバラシイということがあげられる。
特に、選定された問題は非常に良問で、その難易度は標準レベルのものばかりでやや難レベルもカバーしているという。
文系で数学を取ろうという者や中下位レベルの理系には最適と言われていた。

木須先生は、代ゼミでは96年まで教壇に立たれ、その後、都内に個人塾を開かれた (東進の講師をしていた期間もわずかながらあった。
代ゼミ・東進を辞めた理由の一つに授業延長のし過ぎが問題となり経営陣と衝突したという噂があった)。
その個人塾の名は開塾当初は “木須一郎数学ゼミ” だったらしいのだが、いつだか “KMS” と改名され、現在も続いる。