藤井聡太八冠、将棋界だけでなく「地方鉄道」の救世主に 一日駅長や車掌体験が大反響


 前人未到の将棋の「八冠」を達成した藤井聡太。大の鉄道好きでも知られ、ゆく先々で鉄道を楽しみ、ファンにも公開。
こうしたファンサービスには、将棋の普及と、地方鉄道の救世主の期待もかかる。AERA 2024年2月5日号より。

【写真】JR大曲駅構内で除雪車両を運転し、指さし確認をする藤井聡太八冠

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 藤井聡太八冠(21)が鉄道を楽しむ様子がメディアを通して紹介されることで、地方鉄道も盛り上がる。

 ことでん運輸サービス部係長の津田全史(まさし)さんは、

「体験の様子はSNSでも大きな反響があり、みんなの関心も高まって、明るい話題になりました」

 と言い、第三セクター「三陸鉄道(通称『三鉄』)」の広報担当、三河和貴子さんは、

「藤井さんのお陰で、三鉄のイメージアップになりました」

 と話す。

■地方鉄道の救世主に

 ライターで、本誌の連載「棋承転結」でもおなじみの松本博文さんは、藤井が鉄道の一日駅長や車掌体験をするのは、地元のことも考えてのことだという。

「ファンあっての将棋界ですので、地方のために何かしたいという気持ちは、多かれ少なかれ棋士はみんな持っていると思います」

 しかも鉄道であれば、藤井本人が好きで周囲もそれを知っているので、主催者側もオファーしやすいだろうという。

「とりわけ藤井さんは、自分は将棋界の『顔』という自覚を持っています。しかも八冠という立場になれば、
色々なところでファンサービスをするのは自分の義務で、ひいてはそれが、将棋の普及につながるとも考えていると思います」(松本さん)

 2001〜03年、雑誌「将棋世界」の編集長を務め、『伝説の序章 天才棋士・藤井聡太』の著書もあるなど藤井をよく知る田丸昇九段(73)も、
藤井がタイトル戦で各地を回ることは「町おこし」に繋がっているという。

「昨年6月、日本将棋連盟の新会長に就任した羽生善治九段は、会長になるに当たりいくつかのプランを挙げましたが、
その一つに、各地の自治体と連携した『地方創生』があります。藤井もその思いを持っていて、請われれば車掌体験などもやっているのだろうと思います」

 自らも「乗り鉄」だという田丸九段。いま岐路に立つ各地の地方鉄道が、藤井によって盛り上がることを期待し、こう話す。

「藤井聡太という存在がなければ、今のような将棋界の賑わいはなかったです。藤井は将棋界の救世主でした。同じように、今度は地方鉄道の救世主になってほしいですね」

(文中一部敬称略)(編集部・野村昌二)

※AERA 2024年2月5日号より抜粋