とおく、とおく。どこまでもどこまでも。
地平線のかなたまで草原が広がっています。

雲ひとつない空には、気持ちよさそうにツバメが飛んでいます。


地平線の頂点に、一本の真っ白な電車が走しっていました。


その姿をみつめる、3人のおじさんたちがいました。
一人は眼鏡で気難しそうな。一人はヒゲのイタリア人。もう一人は・・・
ひときわ背が低い、しわが刻まれた顔でした。


「ぱぁああああああああああああああああああん・・・・・」


堀越「あれが・・・あなたの、ゼロですか。」

三木「ええ。3000両以上作られ、使命を全うし、ああして帰ってゆきます・・・」

堀越「そうですか・・・わたしのゼロは、一機も帰ってきませんでした。」

カプローニ「三木さん、貴方の創造の時間はいかがでしたかな?」


三木さん、と呼ばれたおじさんは、少し考え込んでからこう答えました。


三木「私にとって、あの時間は創造の時間ではなく、懺悔の時間でした・・・」


そういうと、三木さんと呼ばれたおじさんは、とても悲しそうな顔をしました。


堀越「我々は、煉獄に住み続けなければなりません。おそらく、永遠に。」

カプローニ「飛行機というものは、技術というものはそういう業を背負ったものだ。」

三木「そうですな。我々は、彼らとは同じところには行くわけには・・・」

堀越「業と言う奴ですよ。」


3人は顔を合わせて、少しだけ笑いました。


・・・空を、たくさんの飛行機たちが埋め尽くしてゆきます。
みんな、ひかり号といっしょに彼岸へと向かってゆきます。


カプローニ「最後に、いいものをみせてもらえたよ。ありがとう。」

堀越「これでこの世に何も思い残すことはありませんな。」

三木「あとはきっと、若い者たちが上手くやってくれますよ。では、まいりましょうか。」



三木さんがそう言うと、3人は反対側を向いて、歩き出しました。