中央バスは、慶太がよくやっていた迂回買収で攻めていたよ。
鉄砲玉になったのは小佐野賢治と、北交ハイヤーの柴野。
いずれも27%を取得して、五島名義に書き換えて買収終了になるところまで行っていた。

小佐野との関係はすでに経済舎弟にあったので自然だけど、柴野はバス事業への色気もあったので東急に一時加担したってわけ。
ところが柴野の裏に慶太ありがばれてしまい、道内経済界の観光関係から突き上げを喰らい、北海道銀行が加担して「柴野よ、そのまま持った株を五島に譲れば、北交を潰したろか?」
ということになり、柴野はビビッて株を道銀に預け五島の元から逃げる。

逃げるっても函館に隠遁しただけだが、五島の部下の安田に見つかり、五島の前に引きつりだされる。
柴野は「俺の株ですよ、俺の株を誰に売ろうが関係がない」と突っぱねて、慶太を激昂させる。
すでに柴野は道銀に頼んで株を再びばら撒いたあとだったので慶太は歯軋りするしかなかったらしい。

ここは小佐野が「五島さん、あんたが今回は負けだ、もうあきらめるべき。だから俺の集めた株もいったん引き取ってくださいよ。その後はどうするか考えればいい」
と、諭して、諦める。
慶太は柴野に憎しみを覚えたが、周りから諭されて仲直りする。

北海道の進出第一回目はこうやって失敗したらしい。
第二回目は、北海道グランドホテル社主を見方につけて、じょうてつを浅野一族から奪取することに成功したんだけど、
交通・観光・不動産・流通の全面征服までは行かなかったらしい。
昭和40年代前半、今も盛業中の「クレードル興農」事件を東急が前面無償救済することで北海道に残っていた反感が薄れて改めて全面進出するまで待ったんだと。


読みたい人だけ読めばいいと思うのでつらつら書いた。