http://www.chunichi.co.jp/article/feature/kurumakakumei/list/CK2017042802000232.html

2017年4月28日 紙面から

EV時代が来たら・・・揺らぐ製造ピラミッド

電気自動車(EV)が新たな潮流になりつつある世界の自動車産業、ガソリンエンジン車の製造を前提
にしてきた伝統的なモノづくりは経験したことのない大波に直面し、新たにベンチャー企業や電機メーカ
ーも参入してきた。業界の地殻変動が予想される中、生き残りを目指す部品メーカーの間では「脱自動
車」の動きも始まっている。


◆部品激減 中小は転機に苦悩

 年間出荷額の20%が消える-。ガソリンエンジン車がモーターで動
くEVに変わると、部品が大幅に減り、メーカーの売り上げダウンは避
けられない。日本自動車部品工業会がまとめた二〇一五年度の出荷デー
タを「残る部品」と「なくなる部品」に分けると、自動車産業を支えて
きた中小の関連メーカーに厳しい「EVの時代」が見えてくる。

 愛知県内にある企業。経営者の男性(65)は主要製品載せた自社
のパンフレットを開き、つぶやいた。「これも、これも、みんな使えな
くなる」

 燃料配管の継ぎ手や燃料タンクのキャップなどを手がけ、従業員は百
五十人。昨年の業績はトヨタ自動車の生産好調を受け、リーマン・ショ
ック前を越える過去最高に。

 しかし、今ある製品の大半はEVには不要。もし全ての新車がEVに
なったら、売り上げの七割は吹っ飛ぶ。大市場の中国でEV重視の流れ
が強まっていることが気がかりだ。

 コストと品質の改善に汗を流す毎日。「大きな変化は分かるが、目の前の仕事をこなすのに精いっぱ
い」。男性が複雑な表情を浮かべた。エンジン関連部品に依存した経営を転換する糸口を見いだせないで
いる。

 こうした悩みは、多くの部品メーカーに共通する。愛知県豊田市が昨年七月、市内の中小千社を対象に
した調査では、回答企業の三分の一が「主要な自社製品が次世代自動車に採用される可能性はない」と答
えた。新事業に取り組む必要性を感じつつも対策が取れていない企業は二割に上がる。

 「ハイブリッド車(HV)を含め、ガソリンエンジンがすぐに全部なくなるわけではないし…」。別の
中堅部品メーカー幹部は歯切れが悪い。

 熱湯の中に入れられたカエルは驚いて逃げるが、水をじわじわ加熱されると逃げる機会を失う。自動車
関連企業などでつくる協同組合豊田市鉄工会の近藤邦彦事務局長(72)は警鐘を鳴らす。「危機は近づ
いているのに実感を持つ企業が少ないのが怖い。『ゆでガエル』になってしまうかもしれない」