時は80年代、まだソビエト連邦が存在し、東西冷戦の緊張感が続いた頃。
休日に何気なく秋葉原に来ていた在日米軍の情報将校が、ラジオデパートのパーツ売り場の前で突然顔面蒼白になり硬直した。視線の先にあったのは980円の
空冷用ファン。佐官が硬直した訳は、その羽根の形状にあった。
それは、当時米軍でも最上級の軍事機密として同盟国に対してさえ完全に秘密の無音プロペラそのものだったのだ。大きさこそ異なるが全く同じ形をなのだ。
佐官は気を取り直すと、何食わぬ顔で一つ購入し、飛んで基地に帰り、部下に調査を命じた。

調査結果は驚くべきものだった。その980円ファンの特殊形状を設計したのは、大田区の街工場に勤める工業高校中退のヲタ社員で、「静かなファンが欲しい」 
という顧客の要望に対して自作した流体力学のシミュレータで開発したのだった。

彼はある日、大井競馬で佐々木の予想の縦目を買ったら150万円が得られたので、am9512を16個調達。兄から貰ったKIM-1というワンボードコンピュータでコントロール
するシミュレータを完成させたそうだ。
工業高校中退で、流体力学を正式に学んだ事も無い彼は、顧客の要望に応えたい一心で、飲み屋で東京工業大学の教授や講師を捕まえると質問攻めにして、オイラー方式の
シミュレータを独学で作り上げたのだという。

残念ながら、今ではソフトのソースコードも残っておらず、ハンドアセンブルしたコードを一バイトづつ16個の2732に書き込んだ大作も破片があるだけである。
(実は顧客の一人娘にヲタ社員は一目惚れして、顧客を満足させてヨメに貰うと
頑張ったのだという。しかし一人娘はヲタに興味はなく、泡銭欲しさに堀の内へ行ってしまった。それを知ったヲタ社員は自棄酒を飲み、自室にあったシミュレータを蹴飛ばした
そうだ)

尚、米軍が厳密に評価・計測したところ980円のプロペラの方がごくわずかでは
あったが、当時米軍が持っていたものよりも高性能で静かだったそうだが、この結果は直ちに抹消され、980円にファン等全く知らないと、その佐官は後日記者に答えた。
(一人娘が川崎のソープへ行ったとの情報は米軍による工作だった。一人娘はソープの
電話番をやっていただけだったことが後に判明した)