敵地、埼玉ドームでマジック1で迎えた西武戦
先発岩崎が7回無失点、打線も繋がりをみせ優勝を決定する勝利だった。
ドームに響くファンの歓声、どこからか聞こえる「今年こそ日本一だ!」の声
歓喜の渦の中、今年移籍してきた内川は独りベンチで泣いていた
横浜で味わった屈辱、哀しみ、悔しさ、そして何より信頼出来ないチームメイト・・・
それを今ソフトバンクホークスで味わう事は殆ど無かった。
「やっと・・やっと優勝出来たんだ・・・!!」内川は勝利の美酒に酔いしれた
どれくらい経ったろうか、内川ははっと目覚めた
どうやら飲み過ぎて眠ってしまったようだ、酔いの頭痛が現実に引き戻した
「やれやれ、帰って身体を休めなきゃ。まだまだペナントは終わってないんだ」内川は苦笑しながら呟いた
立ち上がって伸びをした時、内川はふと気づいた
「あれ・・・?ここは横浜スタジアム・・・?」
内川の目に飛び込んできたのは、空席が目立つ観客席だった
チームに浴びせられる罵声に混じって、ベイスターズの応援歌が小さく響いていた
どういうことか分からずに呆然とする内川の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた
「セイイチ、サッカーしようぜ!早く行くぞ」声の方に振り返った内川は目を疑った
「お・・・大家さん?」「なんですか内川さん、居眠りでもしてたんですか?」
「て・・寺原・・・お前はオリックスじゃ・・・」「なんだ内川、かってに寺原を移籍させやがって」
「金城さん・・・」内川は半分パニックになりながらスコアボードを見上げた
1番:内川 2番:石川 3番:ハーパー 4番:村田 5番:スレッジ 6番:下園 7番:カスティーヨ 8番:武山 9番:寺原
暫時、唖然としていた内川だったが、全てを理解した時、彼の心は闇に包まれた
「勝てない・・・勝てないんだ・・・・」
中根からグラブを受け取るも、うなだれ守備につけない内川、その目に光る涙は歓喜の涙とは無縁のものだった・・・
翌日、ベンチで冷たくなってる内川が発見され、吉村と村田は病院で静かに息を引き取った