挫折を乗り越え4年後にメダル獲得。


日本男子体操が「銅」 最後のあん馬で逆転
読売新聞東京朝刊 1988年9月21日

【ソウル20日=読売特派員団】第24回夏季オリンピック・ソウル大会は20日、第4日を迎え、体操の男子団体総合で
日本が銅メダルを獲得した。前半の規定で3位につけていた日本は、この日の自由演技で一時4位に落ちたものの、
最後のあん馬で逆転、圧倒的な強さを見せたソ連、東ドイツに次いで3位となった。

この日は日本勢が奮起した。重量挙げ60`級は、世界の第一人者、ネイム・スレイマノグル(トルコ)がトータルで
342.5`の驚異的な世界新記録で優勝、日本の村木洋介(岡山・倉敷商高教)が5位、小栗和成(岐阜・恵那高教)が
7位に入賞、さらに射撃のクレー・トラップで渡辺和三(三和)も6位に入った。大会第5日の21日は、いよいよ自転車の
女子スプリントに橋本聖子(富士急)が登場する。


ヤング日本 大逆転「銅」 西川、水島 土壇場10点連発 総合前半池谷8位 "再建"へ確実な一歩
毎日新聞東京朝刊 1988年9月21日

迎えた最後の種目は、日本があん馬、中国がつり輪、そしてブルガリアは跳馬だった。この時点で3位ブルガリアと
4位の日本とは0.500、日本と5位・中国とは0.100差。コンマ以下の厳しいメダル争いとなった。日本の小西主将は
「得意種目なので、普通にやれば勝てると思ったが、緊張してしまった」と、重苦しい場面での胸中を明かし、
みんなに「暗い顔をしても仕方がない。明るくいこう」と声を掛けた。これで、すっかり、みんなの気分が落ち着いた。
先頭の山田が9.75の好スタートを切り、続く池谷が足のよく伸びたトーマス旋回で9.80。小西、佐藤が、ともに9.90で
続くと、エース・水島が、リズミカルな動きと切れ味鋭いトーマス旋回。着地もピタリと決めて10点満点。

こうなると、次々に高得点が出やすくなる団体戦の特色が出た。西川も流れるような足の運びで満点を連発。
この時、すぐ横のつり輪では、中国が、李寧の9.95で必死に追い上げていたが、満点にはかなわない。
ブルガリアの跳馬は9.55、9.60と伸びず、西川の満点演技が、逆転銅メダルをもたらした。

「最後なので、何も考えずに思い切ってやった」と水島が声を詰まらせると、西川と池谷は「自分たちの体操を
しただけ」と、会心の笑顔。日本チームは、史上もっとも若いチームだ。怖いもの知らずの西川と池谷が、
持ち前の明るさでムード・メーカーとなり、エース・水島もヒジの痛みをこらえて気合の入った演技。
しかし、若いゆえに、まとめ役・小西の苦労も大変だった。助言を反発されたりして悩んだことも多かったが
「我慢してよかった。それでチームがまとまったのだから」と、小西は、感極まりながら、振り返った。

銅メダルとはいえ、ソ連や東独との差は、あまりにも大きい。遠藤監督は「着地の乱れが目立ちすぎた。
今後、ソ連のように安定した着地ができるようにしなければ」とうれしさも半分といった表情だった。
かつての体操ニッポンの栄光に身を置いた遠藤監督だけに「銅」にこだわるのかもしれない。
しかし若さを爆発させての3位の持つ意味は大きく、再建に向けて、確実な一歩を歩み出したのは間違いない。
(玉置通夫特派員)