●予選が弾みに
 歓喜の渦の中にいる6人。しかし、その1週間前にアテネに降り立った時のチームのムードとは対照的だったのだ。
 鹿島は「アテネの選手村で過ごすうちに、これからどうなるのか、自分達は演技ができるのかと不安ばかりが募ってきた」と述懐する。これを吹き飛ばしたのが、予選の中野の平行棒だ。
中野は年上の鹿島、冨田にも冗談を言って場を和ませるムードメーカーの大胆な演技と、正確な着地で勢いづき、チームは首位で通過した。「予選のトップで『俺たちはやれる』と確信した」と鹿島。
予選の得点は決勝には反映されないものの、6人は揺らぎない自信を胸に決勝に臨んでいた。
 それでも、五輪独特の緊張感からは逃れられない。決勝の最初のゆか運動では点が伸びず出遅れた。6種目を登録6人中3人で試技し、全得点が持ち点となる「6・3・3制」では、失敗が許されない。
そんな中、五輪3回出場の塚原直也のあん馬で、下降ムードを一気にばん回した。「4年前は結果ばかり意識し過ぎた」と振り返る塚原。
父光男さんの元で猛練習。その中で「自分の演技を追求することだけを考えられるようになった」と言う。種目ごとに分析できる冷静さも身に着いた。
「あん馬は少々崩れても力で取り返せる、計算できる」と塚原。落ち着いてさばき、高得点を上げた。この上昇気流に乗り、
つり輪では、この種目だけの水鳥寿思が「これまでで最高の演技ができた」と自画自賛する9.625。また、2位で迎えた最終演技鉄棒で、主将の米田が先頭で高得点をマーク。鹿島と冨田につなげた。

●無邪気な一面
 中野は言う。「6人全員が、周囲に惑わされない確固たる自分を持っていた。全体練習後も、鹿島さんは4〜5時間も残って練習していた」。
そんな6人、五輪終了後にパルテノン神殿を見学。紺碧のエーゲ海でも泳いだ。
決勝で6種目中5種目をこなし「正直、大変な役回りだなと思った」冨田は、「青空にそびえる建造物を見て、今までにない感動を得た。それまで感じる余裕がなかった」と微笑む。
また中野は「冨田さんとぼくは溺れそうになった」と笑う。大仕事を成し遂げた青年たちの、無邪気な一面も垣間見れた。


以上です。
一段落が長くて変な位置で改行してます。読みにくくてすみません。