本日朝刊掲載文です。


 日本代表のメダルラッシュに沸いたアテネ五輪。その中で「お家芸復活」を最も印象づけ、ファンに感動を与えたのは、モントリオール五輪以来28年ぶりに金をもたらした体操男子団体総合チームの6人だ。
序盤の劣勢から巻き返し、逆転勝利へ導いた原動力。それは豊富な練習量に裏付けられた自信と、仲間と築き上げた絆だった。

●緊張乗り越え
 8月16日、アテネ。6人で17演技を終え、最初の種目ゆか運動の7位から2位まで順位を上げた日本。金メダルの行方は、最終演技者・冨田洋之の鉄棒にかかっていた。既に米田功が9.787、鹿島丈博が9.825の高得点をマークした。
 首位のルーマニアはこの鉄棒でミスを連発。頂点がすぐそこに見えるだけに、冨田の緊張は極限に達していた。しかしもう1人の冷静な自分も感じていた。
冨田は「最初から鉄棒勝負になると思っていたので、館内の熱気に戸惑うことなく集中できた」と振り返る。離れ技を決めなければならない10点満点ではなく、正確さを心掛けた。
鉄棒の下では、5人の仲間が手をつないで見つめる。その中でスーパーE何度のコールマンを成功。歓声が上がった。「これでいけると思った」チーム最年少の中野大輔。
一歩もずれない完璧な着地。冨田は思わずガッツポーズ。「後からビデオを見て『こんな派手に決めて、自分じゃないみたい』と思った」と照れた。9.850。チーム18演技中、最高得点で締めくくった。