アスキーメディアワークス発行 KEIYA著 最終考察 うみねこのなく頃に散

竜 ヤスの気持ちを想像することがカギになっているので、真相にたどり着いた方には女性が多いように感じました。
「うみねこ」は恋人をつくったことがない人には読めない作品なんですよ。恋愛経験のない人が理解するのはつらい作品です。
「恋愛が人の生き死にを司るほどの動機になり得る」ということを、恋愛経験がない人に説明することはできないですよ。
きっと「よくある動機」程度にしか思われないので。でも恋を経験して恋愛に苦しんだことがある人なら、
恋愛によって世界がひっくり返るくらい変化することがわかるはずです。
「また会いに来るぜ」と言われたのに六年も来てくれなかったら頭がおかしくなりますし、
少しでも恋に苦しんだことがある人なら「六年はきついね」と言ってくれると思います。
逆にその苦しみがわからない人はドラマチックなガジェットしか期待してないから「何歳の時に父さん母さんが殺されて」みたいな壮絶な「お話」を待ってる。

k 私は自分の恋愛経験に重ねたりしつつ、ヤスの動機はすんなり受け止められました。

竜 本気で恋をして、上手くいったりいかなかったりするのも、大事な社会経験なんですよ。今の子って面白いから、「振られるのは怖い、痛い」と
情報だけで知ったことを元に「じゃあ恋をしなきゃ痛くも痒くもないじゃん」という不思議な理論を展開している方が多いように感じています。

k 恋愛は十分、殺人の動機になるんですよね。

竜 それが分からない人は、恐らく、「うみねこ」を理解出来ないと思います。
「うみねこ」は「一人の少女が恋と狂気であれだけの事件を妄想するに至るまでの物語」なので、
これをいくら描いても共感できない人には共感できないんですよ。たとえて言うなら金的や生理痛の痛みに似ている。
いくら文章を厚くして描いても、経験がない人には伝わりませんから。