私はかつて世界を支配していた
私の言葉で天地と海が生まれた
今私は世界から離れ草原に独り
自分で生やした草を食む

私が賽を投げ筆を走らせると
皆は驚嘆の表情を浮かべた
そして湧き起こる喝采「世界の始まりだ、創造主万歳!」

だが一度世界が動き出すと次の結末が求められる
ふと気付けば私の館の周りには
定義されえぬ空間と終わりのない物語が広がっていた

世界が軋む音を聴け 魔殿の名無しの叫びを聴け
私の閃きに ペンに 白紙の頁になり
世界を彩る演者となれ

何故だかわからないが あの場所に再び立った時
口にすべき言葉は見つからなかった
それはかつて私のつくった世界

あの空に紡がれる呼び声を聴け 彼女の壊れる声を聴け
私の剣に 本に 力になり
物語を終わらせる言葉となれ

しかしとある事情により 私の名前が呼ばれることはないだろう
あらゆる言葉を尽くしても足りない
それは懐かしく愛しい私の物語